食料品の消費税減税が閣議決定された、と受け止められています。しかし令和8年8月5日に閣議決定されたのは、税率そのものではありません。
飲食料品の消費税率を令和9年4月1日から2年間1%とする方針は、「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針のなかで示されました。
税率を変える法律案は、まだ国会に提出されていません。本記事では、決まったこと・これから決まること・飲食料品を扱う事業者への影響を解説します。
目次
食料品消費税1%は令和9年4月から2年間
令和8年8月5日、政府は「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針を閣議決定しました。このなかで、飲食料品の消費税率を令和9年4月1日から2年間1%とする方針が示されています。
閣議決定されたのは、法律ではなく基本方針です。
実現すれば消費税導入以来初の引き下げ
基本方針は「足下の物価高に鑑み、できる限り早期に対応を講ずる観点から、令和9年4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品に係る消費税率を1%とする」と定めています。
令和9年は2027年、令和11年は2029年です。1%の適用期間は、令和9年4月から令和11年3月までの2年間です。
実現すれば、消費税の導入以来はじめての税率引き下げです。消費税は平成元年4月に3%で導入されています。
法律案はまだ国会に提出されていない
令和8年8月5日に閣議決定されたのは、「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針です。税率を変える法律案は、国会に提出されていません。
政府は9月に大綱を決定したうえで臨時国会に法律案を提出し、早期成立を目指すとしています。適用開始日・対象品目の細部・経過措置は、この大綱と法律案で決まります。
対象になるのは酒類・外食を除く飲食料品
基本方針は「軽減税率の対象となっている飲食料品」を1%の対象としています。現行の軽減税率8%の対象範囲が、そのまま起点です。
現行8%の対象と週2回以上の新聞
軽減税率8%の対象は、酒類を除く飲食料品と、定期購読契約に基づき週2回以上発行される新聞です。外食・ケータリングなどは、飲食料品に含まれません。
おもちゃ付き菓子のように食品と食品以外があらかじめ一体となった一体資産は、税抜価額1万円以下かつ食品の価額の割合が3分の2以上の場合に限り、全体が軽減税率の対象です。
複数税率が混在する取引の区分経理・適格請求書の記載事項は、「インボイス制度とは?概要や変更点を図解でわかりやすく解説!」で解説しています。
新聞など軽減税率品目の扱いは未定
基本方針が1%とするのは「軽減税率の対象となっている飲食料品」で、同じ軽減税率の対象である新聞には触れていません。/p>
新聞の税率の扱いや、一体資産・外食の線引きを現行と同じにするかは、大綱と法律案で決まります。将来の税率の組み合わせは、この段階では断定できません。
課税方式で変わる事業者への影響
飲食料品の税率引き下げで納付額がどう動くかを決めるのは、業種ではなく課税方式です。納付額の増減と、手元に残る利益の増減は別の話です。
以下は、基本方針どおり実施された場合の計算上の向きです。
本則課税で還付側に回りうる食品販売事業者
本則課税は、売上げで受け取った消費税額から、仕入れ・経費で支払った消費税額を差し引いて納付額を計算します。
飲食料品の税率が1%になると、売上げの消費税は減ります。一方で、水道光熱費・包装資材・配送費などの経費にかかる10%は変わりません。
控除しきれない分が出れば、納付側から還付側に回ります。還付は申告後のため、それまでの資金の流れは変わります。
ただし、全員が還付を受けられるわけではありません。基本方針は「仕入税額控除の還付が受けられない農業従事者等」への対応を検討するとしています。
該当する理由は基本方針が書いていないため、ここでは断定しません。仕入税額控除の考え方は「消費税の仕入税額控除とは?基礎知識とインボイス制度での変更点をわかりやすく解説」で解説しています。
納付が増える本則課税の飲食店
外食は軽減税率の対象外で、今回の引き下げの対象にも入っていません。
飲食店の売上税率は10%のままですが、食材仕入れで控除できる税率は8%から1%に下がるため、納付額は増えます。
ただし、納付額の増加がそのまま損失になるわけではありません。食材の税込仕入額も減税分だけ下がり、控除の減少分は仕入代金の減少で戻る関係にあります。
損得は、仕入価格に減税分が反映されるかで分かれます。中間とりまとめも「減税分ほど税込価格が下がらない可能性」を課題のひとつに挙げています。
店内飲食10%と持ち帰り1%で同じ商品の税率が分かれるため、店内と持ち帰りの区分・記録が実務の焦点です。
基本方針は、外食産業への影響を含めて見極め、資金繰り支援等の予算措置を検討するとしています。
計算式不変でも動く簡易課税の納付額
簡易課税は、控除できる仕入税額を「売上げに係る消費税額×みなし仕入率」で計算します。実際の仕入れにかかる税率が下がっても、この式には反映されません。
計算式が変わらないことと、納付額が変わらないことは別です。納付額は売上げに係る消費税額で決まるため、飲食料品を売る事業者は税抜売上高が同じでも、売上げに係る消費税額が減ります。
みなし仕入率が同じなら、納付額も減る方向です。
外食を提供する飲食店は、売上税率が10%に据え置かれるため、簡易課税の納付額は原則変わりません。免税事業者は消費税を申告しないため、納付額の計算上は影響を受けません。
有利不利の判断と届出は、税理士等への確認が必要です。
基本方針どおり実施された場合の動きは、次のとおりです。
<表:課税方式による納付する消費税額の動き>
| 課税方式 | 飲食料品を売る事業者 | 外食を提供する飲食店 |
|---|---|---|
| 本則課税 | 預かる消費税が減り経費の10%は残るため、納付から還付に回りうる | 売上げの10%は据え置きで食材の控除が減るため、納付額が増える |
| 簡易課税 | 売上げに係る消費税額が減るため、納付額も減る方向 | 売上税率10%は据え置きのため、納付額は原則変わらない |
| 免税 | 消費税の申告そのものを行わない | 同左 |
自分の行が、還付側・納付側・変わらない側のどれに当たるかを確認できます。
飲食料品1%は給付への先行措置
1%という税率は、妥協の産物ではありません。令和9年4月に間に合わせるための条件で、足りない分は給付で埋める設計です。
0%でなく1%の理由はシステム改修期間短縮
高市総理は7月30日の会見で、飲食料品の消費税率について次のように説明しました。
「1%であれば0%とするよりも事業者のシステム改修の期間を短縮でき、令和9年4月から実施可能であることが明らかとなりました」
0%が技術的に重い理由までは、会見でも語られていません。基本方針は「期間を短縮できる」とだけ述べています。
残る1%分は、公的機関が保有する所得情報を活用した「所得に連動したきめ細かな給付」を令和9年度に導入して埋め、「全体として飲食料品に係る消費税の実質ゼロ化を実現する」としています。
給付額・対象所得水準は、恒久財源の確保とあわせて検討する項目で、まだ決まっていません。
令和11年4月に戻る税率は10%ではなく8%
令和11年4月に戻る税率は、10%ではなく8%です。
引き下げ前の飲食料品は標準税率10%ではなく、軽減税率8%でした。戻る先も、同じ8%です。
したがって、税率が動くのは令和9年4月と令和11年4月の2回です。システム改修と価格見直しは、1回ではなく2回で見込む必要があります。
高市総理は7月30日の会見で、令和11年4月の給付の本格導入にあわせて、飲食料品の消費税率を元の8%に戻す考えを示しています。基本方針は先行導入を令和9年度、給付の本格導入を令和11年度としています。
中間とりまとめは、2年後の税率引き上げへの懸念と、関係事業者の事務負担を課題に挙げています。税率改正法案は未提出で、施行日・対象・税率は基本方針から変わる可能性があります。
freee会計で課税方式と税区分の設定を確認する
いま手元で確認できるのは、採用中の課税方式と税区分です。
freee会計では、[その他設定]メニュー→[事業所の詳細設定]の「消費税の設定」で、免税・簡易課税・一般課税といった課税方式を選択します。一般課税は、本則課税とも表現される方式です。
同じヘルプページには、課税事業者か・簡易課税の届出があるか・課税売上高と課税売上割合から課税方式を判別するフローチャートも掲載されています。
税率は[マスタ・口座]メニュー→[税区分]から、使用する税区分と消費税率をそれぞれ設定します。令和元年10月の税率変更時は、取引発生日を起点に、選択した税区分に紐づく税率で税額が計算されました。
9月の大綱と法律案の内容によって、対象範囲や税率の細部は変わる可能性があります。決まった内容とそこで求められる対応は、freee法対応ガイドで随時確認できます。
まとめ
令和8年8月5日に閣議決定された「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針は、飲食料品の消費税率を令和9年4月1日から2年間、1%とする方針を示しました。税率改正法案は未提出で、政府は9月の大綱決定後、臨時国会に提出するとしています。
1%は、0%より事業者のシステム改修期間を短縮し、令和9年4月に間に合わせるための条件です。残る1%分は「所得に連動したきめ細かな給付」で埋め、実質ゼロ化を目指す設計で、令和11年4月には税率が10%ではなく8%へ戻ります。
事業者への影響は課税方式で分かれます。本則課税は飲食料品を売る事業者が納付から還付に回りうる一方、飲食店は納付額が増えます。
簡易課税は飲食料品を売る事業者の納付額が減る方向で、外食を提供する飲食店と免税事業者は原則変わりません。
まず自分の課税方式を確認したうえで、9月の大綱と法律案の内容を待つことが、次に取るべき順番です。
よくある質問
食料品の消費税1%はいつから始まりますか?
令和8年8月5日の閣議決定は、令和9年4月1日から2年間とする方針を示しました。税率改正法案は未提出で、政府は9月の大綱決定後、臨時国会に提出するとしています。
詳しくは「食料品消費税1%は令和9年4月から2年間の方針」で解説しています。
外食や酒類も1%の対象ですか?
1%の対象は、軽減税率の対象となっている飲食料品です。酒類・外食は現行の軽減税率でも対象外のため、今回の引き下げにも含まれません。
詳しくは「対象になるのは酒類・外食を除く飲食料品」で解説しています。
免税事業者にも影響はありますか?
免税事業者は消費税を申告しないため、納付額の計算上は影響を受けません。ただし、仕入れ・売上げの税率が変われば、価格設定や取引先とのやりとりには影響します。
詳しくは「課税方式で変わる事業者への影響」で解説しています。
なぜ0%ではなく1%なのですか?
高市総理は7月30日の会見で、1%であれば0%より事業者のシステム改修期間を短縮でき、令和9年4月から実施可能だと説明しました。残る1%分は「所得に連動したきめ細かな給付」で埋め、実質ゼロ化する設計です。
詳しくは「飲食料品1%は給付への先行措置」で解説しています。
