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産休育休手当とは?支給される条件や申請手続き、受け取り金額の計算方法を解説

監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

産休育休手当とは?支給される条件や申請手続き、受け�取り金額の計算方法を解説

本記事では働く人の妊娠や出産、育児に欠かせない産休育休手当について解説します。出産や育児を控えた従業員がいる場合、制度への理解が不可欠です。

産休・育休中は従業員の収入が途絶える場合もあるため、申請してもらえるお金について正しい理解が必要です。

目次

産休育休手当とは

妊娠や出産、育児のために仕事を休むと産休育休手当が受け取れる場合があります。この 産休育休手当とは、産休中の出産手当金、出産時の出産育児一時金、育休中の育児休業給付金の3つの手当の総称です。それぞれに制度が異なるので違いを覚えておくとより理解が深まります。

まずは、産休育休手当として知られる3つの手当の概要をそれぞれ紹介します。

産休で支給される出産手当金と出産育児一時金

産休中にもらえる給付金が出産手当金と出産育児一時金です。

産休とは会社員の女性を対象とした産前・産後休業制度です。母体保護を目的に、出産予定日から6週間(多胎児は14週間)を逆算した日までの産前と出産翌日から8週間の産後を休業とする仕組みです。

ただし、強制的に休業となるのは産後6週間のみで、産前休業は従業員からの任意の申し出により取得となり、産後6週から8週までは一定の条件をもとに就業可能な期間となっています。

出産手当金は、産休を取得すると会社で加入する健康保険から支給されます。原則として出産予定日を基準に産休中に申請し、数ヶ月後にまとめて支給されます。

支給額は、原則支給開始日以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額の3分の2相当額です。出産が予定日より早まった場合は産前休業日数(最長6週間)からその日数が差し引かれ、遅れた場合はその日数分が産前に加算されます。

出産育児一時金は、出産した子どもひとりにつき原則42万円が支給されます。出産育児一時金も健康保険から支給されますが、会社員だけではなく、配偶者の扶養に入っている専業主婦・主夫や国民健康保険に加入する自営業者なども対象です。

別記事「産休手当とは?いつ・どれくらいもらえる?支給条件や申請方法まで詳しく解説」もあわせてご確認ください。

育休でもらえる育児休業給付金

育児休業給付金は、育休の取得状況に応じてもらえるお金です。

育休とは法律に定められた育児休業制度です。会社員の仕事と育児の両立を支援する制度で、配偶者が専業主婦・主夫でも取得できます。

育休期間は、出産日から8週間の産休期間後から、原則として子どもが1歳に達するまでとなります。父母ともに育休を取得するときは、子どもが1歳2ヶ月に達するまで利用可能です(パパ・ママ育休プラス)。

子どもの保育園が決まらないなど休業の必要性が認められる場合は、最長2歳まで期間を延長できます。

また、女性の産休中に男性が取得できる制度として、2022年10月から新たに産後パパ育休が始まっています。男性を対象とした育児休業制度で、子どもの出生後8週間(産休期間)以内に計4週間まで取得できます。2回に分割して取得が可能であり、また会社によっては休業中の勤務も認められています。

育児休業給付金は、取得日数180日までは休業開始時賃金日額の67%、それ以降は50%相当額を受け取れます。取得日数は従業員ごとにカウントされるため、父母ともに180日間の育休を取得すると、それぞれに対して給付割合67%の育児休業給付金180日分が支給されます。

別記事「育児休業は男性も取得可能?2022年法改正とあわせて制度の概要を解説」もあわせてご確認ください。

産休育休手当を支給される条件

産休育休手当を受け取るには、一定の条件を満たす必要があります。産休手当と育休手当に分けてそれぞれの条件をみていきましょう。

産休手当の支給条件

産休中にもらえる出産手当金と出生育児一時金は、どちらも健康保険から支給されます。そのため健康保険への加入状況が支給の前提条件です。

出産手当金を受け取るには、以下の条件を満たす必要があります。

出産手当金の支給条件

  • 勤務先の健康保険に加入する被保険者であること
  • 妊娠85日(4ヶ月)以降の出産であること(早産や死産なども対象)
  • 出産のために産休を取得していること
  • 産休中に出産手当金以上の給料を受け取っていないこと

会社員を対象としているため、国民健康保険の被保険者や配偶者の扶養に入っている人は対象外となり、前職の任意継続健康保険に加入中の人は、以下の継続給付の条件を満たしていない限りは対象外です。

また、産休中に給料を受け取っていたとしても、出産手当金の支給額を下回るときは給料を差し引いた金額が支給されます。

産休中に退職しても、次の継続給付の条件を両方とも満たす場合には出産手当金は全額支払われます。

継続給付の条件

  • 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間があること
  • 資格喪失日の前日(退職日)に出産手当金の支給条件を満たしていること

出生育児一時金の支給条件は次の通りです。

出生育児一時金の支給条件

  • 健康保険に加入する被保険者及び被扶養者であること
  • 妊娠85日(4ヶ月)以降の出産であること

出産育児一時金は勤務先の健康保険の他、配偶者の扶養に入っている人や国民健康保険の被保険者も対象となります。

育休手当の支給条件

育児休業給付金は雇用保険から支払われるため、雇用保険被保険者期間・労働日数の状況が主な条件となります。

育児休業給付金の支給条件は下記になります。

育児休業給付金の支給条件

  • 育休を取得した雇用保険の被保険者であること
  • 育休開始日の直前2年間のうち賃金支払基礎日数が11日以上(あるいは就業時間が80時間以上)ある月が12ヶ月以上あること
  • 原則就業不可。ただし、労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間で、一時的・臨時的な就労に限っては、育休中の1ヶ月あたりの就業日数が10日以下(あるいは就業時間が80時間以下)であること

育休開始日の直前2年間に条件に定める就業状態が12ヶ月に満たない場合にも、一定の条件により条件が緩和され、支給条件を満たす場合もあります。

また、有期雇用契約従業員は、子どもが1歳6ヶ月になるまでに雇用契約期間の満了が明らかではないという条件が加わります。

出生時育児休業給付金の支給条件は、育児休業給付金とほぼ変わりません。ただし、通常の育休とは違い、産後パパ育休では部分的な就業が認められる場合もあるため、休業中の就業日数についての条件が異なります。

出生時育児休業給付金の支給条件

  • 産後パパ育休を取得した雇用保険の被保険者であること
  • 育休開始日の直前2年間のうち賃金支払基礎日数が11日以上(あるいは就業時間が80時間以上)ある月が12ヶ月以上あること
  • 労使協定を締結し、従業員が合意した範囲で、産後パパ育休中の就業日数が最大10日以下(10日を超える場合は就業時間80時間以下)であること(休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分、休業開始・終了予定日の就業は所定労働時間未満などの上限あり)

就業日数の条件である「最大10日間」は、産後パパ育休で可能な最長28日間の休業を取得したときの日数です。28日間より短くなれば、その日数に比例して就業日数も短くなります。

産休育休手当の申請に必要な手続き

産休育休手当は産休や育休を取得すれば自動的に支給されるわけではありません。支給条件を満たし、必要な書類を準備して、すみやかに申請を行う必要があります。ここでは、産休手当と育休手当に分けてそれぞれの手続き方法を紹介します。

産休手当の申請方法

産休手当のうち、出産手当金の申請は会社を経由あるいは直接、加入する健康保険へ必要書類を提出します。通常は所定の出産手当金支給申請書を会社に提出し、会社が手続きを行います。

産前・産後と分けての手続きも可能ですが、そのつど、医師や事業主の記入が必要となるため、産後にまとめて申請するのが一般的です。

出産手当金の申請期限は、産休開始日の翌日から2年となっています。

出産育児一時金には、病院が手続きをして手当を受け取る直接支払制度、被保険者が手続きをして病院が手当を受け取る受取代理制度、被保険者が手続きをして手当を受け取る従来の方法と、3つの利用方法があります。それぞれに申請方法が異なります。

申請方法

  • 直接支払制度の場合、病院で直接支払制度利用の合意文書を交わす
  • 受取代理制度の場合、出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)と母子手帳コピーなどを健康保険へ提出する
  • 従来の方法の場合、窓口で出産費用を支払ったあとに出産育児一時金支給申請書、領収書のコピー、直接支払制度を利用しない旨を記した合意文書のコピー

出産育児一時金は出産日の翌日から申請可能で、出産手当金と同じく期限は2年です。

直接支払制度・受取代理制度とも、病院窓口での支払いは出産費用の実費から手当を差し引いた差額となります。

出産費用が支給額に満たないときの対応は、内払金支払依頼書と領収書のコピーで差額を請求すると、後日に差額分が支給されるなど、健康保険制度により異なります。

育休手当の申請方法

育児休業給付金と出生時育児休業給付金の申請は、原則として従業員を雇用する会社が行います。育休あるいは産後パパ育休の取得を記した所定の申出書を会社に提出すると、従業員の手続きが完了します。

会社は従業員に代わり、ハローワークで給付金の受給資格の確認とともに、育児休業給付金の申請を行います。初回以降の申請は原則2ヶ月ごととなります。受給資格の確認と、2つの給付金申請は別々に手続きも可能です。

ハローワークでの手続きでは、雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書、育児休業給付受給資格確認票・(出生時)育児休業給付金支給申請書の2つの書類が必要です。

さらに、従業員の賃金台帳や出勤簿、育児休業申出書、母子健康手帳の写しなどが添付書類として求められます。育休期間の変更や延長などがあれば再度手続きをします。

出生時育児休業給付金の申請は、出産日(予定日より早く出産した場合は出産予定日)から8週間を経過する日の翌日から可能で、期限は申請開始日から2ヶ月を経過する日の属する月末です。育児休業給付金の申請期間は、育休開始日から4ヶ月を経過する日の属する月末までとなります。

産休育休手当の支給額はいくら?

産休育休手当の標準報酬月額や収入から産休育休手当の計算が可能です。

支給額を計算するときは、産前・産後休業中、育児休業期間中は社会保険料が免除になり、受け取る給付金は非課税のため所得税と住民税の負担が減る可能性も考慮しましょう。

産休手当の支給額

1日あたりの出産手当金は「支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2」で計算できます。これに支給日数をかけると総支給額がわかります。

支給開始日以前の就業期間が12ヶ月未満であれば、別途、標準報酬月額を以下のように設定します。

標準報酬月額

  • 支給開始日の属する月以前の直近の継続する月の標準報酬月額の平均額
  • 標準報酬月額の平均額30万円(支給開始日が平成31年4月1日以降)

直前の年収が360万円(毎月固定額、通勤交通費・賞与なし)の女性従業員が上限の産休日数を取得して、予定日どおりに出産した場合の出産手当金を計算します。

標準報酬月額:360万円÷12=30万円
標準報酬日額:30万円÷30日=1万円

標準報酬日額1万円を先ほどの計算式に当てはめると、総支給額は下記の通りです。

1万円×3分の2×(産前休業日数42日+産後休業日数56日+予定日の増減0日)=65万3,366円

育休手当の支給額

育児休業給付金は、支給日数によって給付割合が変わります。休業開始から180日以内の支給額は「休業開始時賃金日額✕支給日数✕67%」、それ以降の支給額は「休業開始時賃金日額✕支給日数✕50%」と計算します。

産後パパ育休を取得した場合は出生時育児休業給付金を受け取れますが、計算式は育児休業給付金と同じです。最長28日の産後パパ育休の場合、支給日数180日以内の給付割合67%が適用されます。

出生時育児休業給付金を受給したとき、育児休業給付金はその取得日数と合わせた最大180日以内で67%が適用されます。

それでは、育児休業給付金を具体的に計算します。産休から子どもが1歳になるまで引き続き育休を取得した女性従業員で、休業開始時賃金日額9,000円で休業中に給料を受け取っていないと仮定し計算します。

休業開始後180日以内の支給額:9,000円×180日×67%=108万5,400円
それ以降の支給額:9,000円×129日(※)×50%=58万500円
※子どもが1歳に達するまでの期間:産後休業8週間(56日)と休業開始後180日を除いた日数(約4ヶ月)

上記の計算だと、合計支給額は166万5,900円となります。

産休育休手当の支給日はいつ?

産休育休手当の支給日についても確認しておきましょう。

出産育児一時金の直接支払制度と代理受取制度では、病院が手当を受け取って出産費用の支払いに充てるため、支給日を気にする必要はありません。健康保険の被保険者本人が手当を受け取る場合は、申請から1ヶ月ほどでの支給が多いようです。

出産手当金は産前・産後で分割して申請しても一般的に一括で支給されます。支給のタイミングは加入する健康保険制度により異なり、申請後2週間から2ヶ月ほどとなっています。気になる方は健康保険へ直接問いあわせましょう。

育児休業給付金と出生時育児休業給付金は、会社からハローワークへの申請(電子申請も可)を行い受給資格の確認を受けて、およそ2ヶ月後に初回の申請を行います。

支給決定通知書の交付後に約1週間程度で支給され、2回目以降も会社が原則2ヶ月に1回のペースでハローワークに申請(電子申請も可)すると受け取れます。

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まとめ

産休育休手当とは、妊娠や出産、育児を目的に会社を休んだ場合に支給される手当です。出産手当金、出生育児一時金、育児休業給付金・出生時育児休業給付金などが該当します。

休業中の生活費や経済的な負担をカバーできる大切なお金です。支給条件や申請方法などを把握しておきましょう。

よくある質問

産休手当とは?

産休中にもらえる出産手当金や出産育児一時金です。出産手当金は、健康保険に加入している会社員の方が受け取れ、出産育児一時金は会社員の方だけでなく、国民健康保険に加入している方なども受け取れます。

産休手当を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

育休手当とは?

育休の取得状況に応じてもらえる育児休業給付金です。取得日数180日までは休業開始時賃金日額の67%、それ以降は50%相当額を受け取れます。

育休手当を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修者 羽場 康高氏