労働保険の年度更新は前年度(2025年4月〜2026年3月)の確定保険料を精算し、当年度(2026年4月〜2027年3月)の概算保険料を申告納付する年に1度の手続きです。
2026年度の申告・納付期間は2026年6月1日(月)から7月10日(金)までで、雇用保険料率の引下げと電子申請義務対象事業所への紙申告書送付廃止が同時に始まります。
本記事では、2026年度の変更点・5月までに済ませる準備・賃金集計の境界事例・freee人事労務での進め方・申告ミスの修正実務までを解説します。
目次
- 2026年度(令和8年度)の年度更新で変わった3つのポイント
- 雇用保険料率が0.1ポイント引き下げられた
- 電子申請義務対象事業所には紙の申告書が送付されない
- 労災保険率は令和6年改定のまま据え置き
- 労働保険の年度更新とは|仕組みと2026年度のスケジュール
- 労働保険=労災保険+雇用保険
- 年度更新で行う3つの計算
- 2026年度のスケジュール
- 6月1日までに済ませる5月の準備チェックリスト
- 賃金台帳を確定する
- 雇用保険料率と労災保険率を確認する
- 納付方法と分割納付の方針を決める
- 賃金集計でつまずきやすいケース|通勤手当・出向者・65歳以上
- 賃金算入の判定一覧
- 通勤手当の取り扱い
- 出向者の賃金は誰が集計するか
- 65歳以上・休業中・賞与の扱い
- freee人事労務で年度更新を進める方法
- 一般的な年度更新の5ステップ
- freee人事労務での年度更新4ステップ
- 電子申請に必要な前提条件
- freee人事労務を使うときの注意点
- 申告ミスに気づいたら|修正申告と追徴金・延滞金の実務
- 修正申告の流れ
- 追徴金・延滞金の発生条件
- 修正申告を避けるためのチェック
- まとめ
- よくある質問
2026年度(令和8年度)の年度更新で変わった3つのポイント
2026年度の年度更新で変わるのは、雇用保険料率の引下げ・電子申請義務対象事業所への紙申告書送付廃止・労災保険率の据置の3点です。
前年度の料率を流用すると概算保険料が過大計算されるため、料率の数値変更がまず押さえるべきポイントです。
雇用保険料率が0.1ポイント引き下げられた
一般の事業の雇用保険料率は令和7年度の14.5/1000(1.45%)から令和8年度は13.5/1000(1.35%)へ0.1ポイント引き下げられました。内訳は労働者負担5/1000・事業主負担8.5/1000です。
料率の適用判定は賃金締切日基準で、2026年4月1日以降に締切日が到来する給与から新料率が適用されます。給与計算ソフトの料率設定が令和8年度版へ切り替わっていない場合、概算保険料の計算で過大納付が発生します。
| 業種 | 令和7年度(合計) | 令和8年度(合計) | 労働者負担 | 事業主負担 |
|---|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 14.5/1000(1.45%) | 13.5/1000(1.35%) | 5/1000 | 8.5/1000 |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 16.5/1000(1.65%) | 15.5/1000(1.55%) | 6/1000 | 9.5/1000 |
| 建設の事業 | 17.5/1000(1.75%) | 16.5/1000(1.65%) | 6/1000 | 10.5/1000 |
電子申請義務対象事業所には紙の申告書が送付されない
資本金1億円超の法人など電子申請が義務付けられている事業所には、令和8年度から労働保険年度更新申告書の紙が送付されません。
該当事業所は、電子申請に使うアカウントやe-Govの利用環境を事前に準備する必要があります。
資本金1億円以下の中小事業者には従来どおり紙の申告書が送付され、希望すれば電子申請への切り替えも選べます。
労災保険率は令和6年改定のまま据え置き
労災保険率は3年に一度を目安に見直され、令和8年度は令和7年度から変更ありません。業種コードと適用率は厚生労働省「労災保険率表」で確認できます。
一般拠出金(石綿健康被害救済法に基づく)は労災保険適用事業のみが対象で、料率は1000分の0.02(0.002%)が平成26年4月から据え置きです。雇用保険のみ加入の事業者は対象外です。
2026年度の変更点まとめ
- 一般の事業の雇用保険料率は令和7年度1.45%から令和8年度1.35%へ0.1ポイント引下げ
- 給与計算ソフトの料率設定が令和8年度版に切り替わっていないと概算保険料が過大計算される
- 年度更新の手続き全体は、いつまでに何を済ませる必要があるか
労働保険の年度更新とは|仕組みと2026年度のスケジュール
労働保険の年度更新は、前年度に概算で納めた保険料を確定額で精算し、当年度の概算保険料を申告納付する年1回の手続きです。
ここでは資本金1億円以下で建設業以外の一元適用事業を前提に、2026年度の運用を整理します。
労働保険=労災保険+雇用保険
労働保険は業務災害や通勤災害に対応する労災保険と、失業給付や雇用継続を支援する雇用保険で構成されます。一般拠出金は労災保険適用事業に発生する別建ての拠出金で、年度更新の申告書(様式第6号)で同時に申告します。
一元適用事業では労災保険と雇用保険を1枚の申告書で処理しますが、建設業や農林水産業の一部は二元適用事業として別々に申告するため、ここでは扱いません。
年度更新で行う3つの計算
年度更新では3つの計算を1回の申告でまとめて行います。
第1は前年度(2025年4月〜2026年3月)の賃金総額に前年度料率を掛けた確定保険料、第2は当年度(2026年4月〜2027年3月)の見込み賃金総額に当年度料率を掛けた概算保険料、第3は前年度概算との差額を当年度概算に充当・追加納付・還付で精算する処理です。
料率改定年は前年度(令和7年度1.45%)と当年度(令和8年度1.35%)で異なる料率を使い分けるためミスが起きやすくなります。
2026年度のスケジュール
2026年度の申告・納付期間は2026年6月1日(月)から7月10日(金)までで、提出方法は窓口・郵送・電子申請の3種類から選べます。
労災保険と雇用保険の両方が成立している継続事業では概算保険料額が40万円以上、どちらか一方のみ成立している事業では20万円以上、または労働保険事務組合に委託する場合に3期分割納付の選択が可能です。
分割納付の納期限は第1期2026年7月10日(金)・第2期2026年11月2日(月)・第3期2027年2月1日(月)です。
労働保険事務組合に委託している事業主は、労働保険事務組合が指定する期限に従います。
6月1日までに済ませる5月の準備チェックリスト
5月のうちに賃金台帳の確定・料率の確認・分割納付や口座振替の方針決定を済ませると、6月1日からの申告作業が1週間以内で完了します。
賃金台帳を確定する
2025年4月1日から2026年3月31日までに支給確定した給与・賞与・通勤手当・現物給与の合計額を、雇用保険対象者と労災保険対象者で分けて月別に集計します。退職者・休職者・産休育休中の従業員の集計漏れが起きやすい箇所です。
集計は、保険料算定期間中に支払いが具体的に確定した賃金を基準に進めます。たとえば2026年3月末締めで4月支給の給与でも、2026年3月31日までに支払いが具体的に確定した賃金は令和7年度の確定保険料側に含めます。
雇用保険料率と労災保険率を確認する
自社の業種が一般の事業・農林水産・清酒製造の事業・建設の事業のどれに該当するかを確認し、令和8年度の雇用保険料率を適用します。労災保険率は据置のため令和7年度と同じ料率が適用されますが、業種コードに変更がないかを厚生労働省「労災保険率表」で確認できます。
給与計算ソフトの料率設定が令和8年度版に切り替わっているかも5月中に検証します。
納付方法と分割納付の方針を決める
概算保険料額が40万円以上見込みであれば、3期分割納付の選択が可能です。労災保険または雇用保険のどちらか一方のみ成立している事業では、20万円以上が延納の基準になります。
一括納付か分割納付か、また口座振替を利用するかを5月中に決めておきます。
令和8年度の全期・第1期から口座振替を新規利用する申込期限は2026年2月25日で終了しているため、5月時点では既存利用の確認や第2期以降の申込可否を確認します。
電子申請義務対象事業所は紙申告書が届かないため、電子申請に使うアカウントやe-Govの利用準備を5月中に完了させます。
5月の準備チェックリスト
- 2025年4月1日〜2026年3月31日の賃金台帳を雇用保険対象者・労災保険対象者で分けて月別に集計確定
- 自社業種に該当する令和8年度の雇用保険料率と据置の労災保険率を給与計算ソフトに反映
- 概算保険料額40万円基準(片保険のみ成立は20万円基準)で一括または3期分割を選択し、電子申請の準備を完了
賃金集計でつまずきやすいケース|通勤手当・出向者・65歳以上
労働保険の対象賃金は労働の対価として支払う全額で、通勤手当も非課税限度額に関係なく全額算入します。
所得税の感覚で「非課税分は除外」と判断すると確定保険料が過少申告になり、政府による認定徴収となれば追徴金10%が課されるリスクがあります。
賃金算入の判定一覧
賃金集計に含めるか含めないかの判定は、厚生労働省「労働保険対象賃金の範囲」で定義されています。
実費弁償・慶弔費・退職金は除外し、労働の対価として支払うものは原則全額算入する設計です。
<賃金算入の判定一覧表>
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 含める | 基本給・諸手当・賞与・通勤手当・現物給与(食事・住宅等) |
| 含めない | 退職金・結婚祝金等の慶弔費・出張旅費の実費弁償・解雇予告手当 |
通勤手当の取り扱い
通勤手当は所得税の非課税限度額(月15万円)に関係なく全額が労働保険料の対象賃金に算入されます。所得税の非課税枠と労働保険料の算入範囲は別ルールで設計されているためです。
定期券の現物支給も賃金として算入対象で、月額換算した金額を労働者の賃金に加えます。
出向者の賃金は誰が集計するか
在籍出向者の賃金集計は雇用保険と労災保険で取扱いが異なります。雇用保険は「主たる賃金を受ける雇用関係」(給与の多い方)でのみ被保険者となり、出向元と出向先の賃金は合算しません。
労災保険は実際に労務を提供している出向先で適用するため、出向元から支払われる給与も合算して出向先で申告します。
| 保険 | 在籍出向者の取扱い |
|---|---|
| 雇用保険 | 主たる賃金を受ける雇用関係(給与の多い方)でのみ被保険者。賃金は合算しない |
| 労災保険 | 出向先で適用。出向元支払い分も合算して出向先で申告 |
65歳以上・休業中・賞与の扱い
65歳以上の労働者は高年齢被保険者として平成29年1月から雇用保険の被保険者となり、令和2年4月からは雇用保険料の徴収対象に加わっています。
週20時間以上勤務で31日以上の雇用見込みがあれば被保険者となり、賃金は通常の被保険者と同じく全額算入します。
産前産後休業・育児休業中の従業員は実際に支払いが具体的に確定した賃金額のみを算入し、無給期間は0円として扱います。賞与は保険料算定期間中に支払いが具体的に確定したものを全額算入し、決算賞与・期末賞与も対象です。
集計時の注意ポイント
- 通勤手当は所得税の非課税限度額に関係なく全額算入(除外すると過少申告リスク)
- 出向者は雇用保険=主たる賃金側・労災=出向先で合算と取扱いが異なる
- 65歳以上・賞与は支払いが確定した分を全額算入、休業中の無給期間は0円として扱う
freee人事労務で年度更新を進める方法
freee人事労務は、給与明細データから賃金を自動集計し、保険料の自動計算・申告書様式に対応した画面表示・e-Gov経由の電子申請に対応しています。給与明細を確定済みであれば賃金は自動で取り込まれ、集計や計算のミスを減らせます。
一般的な年度更新の5ステップ
年度更新を手作業で進める場合の流れは、賃金集計から納付まで5ステップに整理できます。
一般的な年度更新の5ステップ
- STEP 1:前年度の賃金集計(雇用保険対象者・労災保険対象者で分けて月別に集計)
- STEP 2:料率の確定と保険料の算出(確定保険料・概算保険料・一般拠出金)
- STEP 3:様式第6号(労働保険概算・確定保険料/一般拠出金 申告書)への記入
- STEP 4:提出(窓口・郵送・電子申請から選択)
- STEP 5:納付(一括または3期分割納付・口座振替)
実務の中心はSTEP 1の賃金集計とSTEP 3の申告書作成で、ここでミスが起きると再計算と提出のやり直しが発生します。
freee人事労務での年度更新4ステップ
freee人事労務を使う場合は手作業の5ステップが4ステップに圧縮されます。
freee人事労務での年度更新4ステップ
- STEP 1:賃金の自動集計(確定済み給与明細から雇用保険対象賃金・労災対象賃金を自動算出)
- STEP 2:保険料の自動計算(確定保険料・概算保険料・一般拠出金・納付額をfreee側で算出)
- STEP 3:申告書様式に対応した画面での確認(紙申告の場合も画面の数字をそのまま転記)
- STEP 4:電子申請またはダウンロード(GビズIDプライムとe-Gov API連携が設定済みであれば直接送信)
賃金集計と申告書転記の手作業がfreee側に置き換わるため、対象期間の給与明細がfreee人事労務で確定していることが前提条件になります。電子申請機能は法人事業所向けで、社労士による代理人申請には対応していません。
電子申請に必要な前提条件
freee人事労務から電子申請する場合の前提条件は2つあります。1つはGビズIDプライムアカウントの取得で、法人代表者または個人事業主本人による申請が必要です。
もう1つはe-Govとfreee人事労務のAPI連携設定で、申請時にfreee人事労務の画面からe-Govを通じて電子申請できます。
電子申請義務対象事業所(資本金1億円超の法人等)は令和8年度から紙申告書が送付されないため、自社で電子申請する場合は5月中にGビズIDプライムの取得を完了させる必要があります。GビズIDプライムは申請から発行までに審査期間を要するため、5月の取得完了から逆算して早めに申請を済ませておきましょう。
freee人事労務を使うときの注意点
freee人事労務で賃金が自動集計されるのは給与計算機能で確定済みの給与明細だけです。集計対象期間内に給与明細が未確定の月がある場合は、年度更新画面に賃金が反映されません。
出向者・賞与・通勤手当の取扱いは前章「賃金集計でつまずきやすいケース」の判断ルールに従う必要があります。freee人事労務側の自動集計はマスターに登録されている賃金データを反映するため、出向者の合算ルールなど個別判断が必要な箇所は申告前に最終確認が要ります。
申告ミスに気づいたら|修正申告と追徴金・延滞金の実務
申告後にミスを発見した場合は、所轄労働基準監督署または労働局に修正申告で対応します。
自主的な訂正申告と政府による認定徴収では追徴金の取扱いが異なり、自主修正であれば追徴金が課されないケースが多い設計です。
修正申告の流れ
過少申告に気づいた場合は、修正後の申告書と誤りの説明書類を所轄労働基準監督署に提出します。提出窓口や必要書類は事業所の所在地によって異なるため、提出前に所轄監督署に電話で確認するのが確実です。
過大申告の場合も同様に修正申告で還付請求が可能で、当年度の概算保険料に充当する形でも処理できます。
追徴金・延滞金の発生条件
労働保険の保険料の徴収等に関する法律第21条では、政府が認定徴収した不足額に対して追徴金10%を課す規定があります。ただし天災等のやむを得ない理由がある場合や追徴額が1000円未満の場合は除外されます。
納期限後に督促を受けた場合は、同法第28条で延滞金が発生します。延滞金の率は時期により変動するため、利率の数値は納期限経過時点の特例基準割合を厚生労働省で確認できます。
修正申告を避けるためのチェック
提出前の最終確認では、賃金合計額の桁・対象者数・適用料率の年度の3点を給与計算ソフトと申告書で突合します。
freee人事労務の年度更新画面で計算結果を確認する場合も、雇用保険対象賃金・労災保険対象賃金・一般拠出金の3区分が正しく集計されているかを5月の賃金台帳確定時にチェックしておく形が望ましい流れです。
まとめ
2026年度の労働保険年度更新は6月1日から7月10日が申告・納付期間で、一般の事業の雇用保険料率は1.45%から1.35%へ引き下げられました。労災保険率と一般拠出金は据置です。
5月のうちに賃金台帳の確定・料率の確認・納付方法の決定を済ませ、賃金集計では通勤手当の全額算入・出向者の取扱い・65歳以上の徴収対象を確認すると、6月以降の申告が滞りなく進みます。
freee人事労務は賃金の自動集計・保険料計算・申告書転記・電子申請を支援し、GビズIDプライムを取得すれば紙申告書送付がない法人事業所の自社申請にも対応できます。
よくある質問
概算保険料が前年と大きく変わる見込みの場合は?
事業規模の拡大などで賃金総額の見込額が当初申告より2倍を超えて増加し、概算保険料の額が申告済み額より13万円以上増加する場合は、増加概算保険料の申告・納付が必要になる可能性があります。
減少する場合の取扱いは事業の状況によって異なるため、所轄労働基準監督署または年度更新コールセンター(0120-963-339)で確認できます。
詳しくは「労働保険の年度更新とは|仕組みと2026年度のスケジュール」で解説しています。
口座振替の申請期限はいつまで?
口座振替を新規に申し込む場合の申請期限は、年度更新の申告納付期間より前に設定されています。令和8年度の全期・第1期から利用する申込期限は2026年2月25日で終了しており、第2期から利用する場合の申込期限は2026年8月14日です。
すでに口座振替を利用している事業所は継続適用となり、再申請は不要です。
詳しくは「6月1日までに済ませる5月の準備チェックリスト」で解説しています。
代理人に申告を委託する場合は?
社会保険労務士に申告を委託する場合は、委任状の作成と社労士事務所への賃金台帳・給与計算データの提供が必要です。電子申請を社労士経由で行う場合の代理権限や提出方法は、利用する電子申請環境によって異なります。
詳しくは「freee人事労務で年度更新を進める方法」で解説しています。
