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雇用保険被保険者証とは?必要な手続きや再発行の方法を解説

監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

雇用保険被保険者証とは?必要な手続きや再発行の方法を解説

「雇用保険被保険者証」とは従業員の雇用安定や再就職支援に関わる重要な書類のひとつです。基本概要や必要な場面、再発行の方法をわかりやすく解説します。

また、事業主や人事労務の担当者に向けて、加入時の手続きや雇用保険被保険者証の適切な保管方法も紹介します。

普段の業務や日常生活であまり使う機会のない書類ですが、加入している従業員が雇用保険からの給付を受けるために必要な書類です。

目次

雇用保険被保険者証とは?

雇用保険被保険者証とは、雇用保険の加入者であると証明する書類です。

雇用保険が適用される労働者を雇う雇用者(事業主)は、事業所を管轄するハローワークへ雇用保険被保険者資格取得届を提出して、雇用保険への加入手続きが必要です。

雇用保険被保険者証は、ハローワークから事業所を通じて労働者に対して交付します。被保険者番号や被保険者の氏名・生年月日、受理日などの情報が記載されています。

雇用保険の被保険者番号とは

雇用保険被保険者証に記載されている「雇用保険の被保険者番号」は、被保険者期間を算定するための番号です。

被保険者ごとに固有の番号が付与され、転職や氏名を変更した場合でも、原則変わりません。

被保険者が複数の被保険者番号を持つと、雇用保険への加入期間が正しく算定できないおそれもあります。その場合は、ハローワークで複数の番号を統合する手続きが必要です。

被保険者期間が本来よりも短く算定されれば、失業等給付の受給期間や受給額にも影響し、適切な給付を受けられません。

労働者が不利益を被る可能性があるため、雇用者(事業主)は被保険者番号を確認したうえで、雇用保険への加入手続きを適切に行わなくてはなりません。

雇用保険被保険者証はいつ必要?

雇用保険被保険者証が必要になる場面は、従業員を雇い入れるときと従業員が退職するときです。

従業員を雇い入れるとき

雇用保険被保険者証は、従業員を雇い入れる際の手続きが必要です。

雇用保険の適用対象に該当する従業員を雇い入れたら、雇用保険被保険者資格取得届を提出し、交付された雇用保険被保険者証を従業員に渡します。

また、雇い入れた従業員が前職で雇用保険に加入していたなら、前職で受け取っている雇用保険被保険者証を提出してもらい、雇用保険被保険者番号を引き継ぎが必要です。

前職で雇用保険へ加入していた際の被保険者番号を記載して雇用保険被保険者資格取得届を提出すると、新しい被保険者証が交付されます。

従業員が退職するとき

退職した従業員が失業給付の手続きをする際や、転職先で雇用保険へ加入する際には雇用保険被保険者証の提出を求められます。

雇用保険被保険者証を会社側で保管していた場合は、従業員の退職時に忘れずに渡しましょう。また、従業員が退職する際、会社は雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出しなくてはなりません。

雇用保険被保険者証は雇用者と従業員どちらで保管するべき?

雇用保険被保険者証は原則、被保険者である従業員自身が持つべき書類です。

しかし、紛失を防ぐために雇用者が社内で保管している場合もあります。雇用保険被保険者証は従業員が退職しない限り、使われる場面はほとんどありません。そのため、従業員が常に持っていなくても問題視されるケースは少ないです。

しかし、厚生労働省やハローワークは、雇用者側で保管すべきでないとしています。雇用保険被保険者証が交付されたら、速やかに従業員に渡し、従業員自身で保管する方が適切です。

従業員を雇うときに必要な雇用保険の手続き

従業員を雇い入れたときは、事業所を管轄するハローワークに必要事項を記入した「雇用保険被保険者資格取得届」を提出し、雇用保険へ加入する手続きを行います。

雇い入れた従業員が被保険者になったと確認されれば、ハローワークから雇用保険被保険者資格取得等確認通知書と雇用保険被保険者証が交付されます。

なお、「雇用保険被保険者資格取得届」は、雇用した月の翌月10日までに提出しなければなりません。雇用した日が月末近くの場合、提出期限までの期間が短く点は留意しておきましょう。

就業規則の変更

今まで雇用保険への加入歴がない新卒入社の人の場合、被保険者番号は付与されていないません。そのため、「雇用保険被保険者資格取得届」の被保険者番号の欄は空欄にし、「取得区分」は「1新規」を選択します。

「被保険者となったことの原因」は、新卒入社で3月1日~6月30日の間に採用したなら「1 新規雇用(新規学卒)」を、7月1日~2月末での採用なら「2 新規雇用(そのほか)」を選択します。

なお、新卒以外の雇用経験のない新規入社社員の場合も、「2 新規雇用(そのほか)」を選択しましょう。

雇用保険被保険者資格取得届の記入例
出典:厚生労働省「雇用保険被保険者資格取得届の記入例」

中途入社の場合

中途入社の従業員の場合、雇用保険へ加入していた期間があれば、被保険者番号は原則同じ番号を使用します。

ただし、被保険者番号には有効期限があり、雇用保険が適用される職場を離れて7年以上経過すると、原則被保険者番号は失効します。

中途入社の従業員を雇うときは、被保険者番号が有効か失効しているかで原則手続きが異なるため、注意しましょう。

【雇用保険の被保険者番号が有効な場合】

中途入社した従業員が、雇用保険の適用される職場を離れて7年未満なら、被保険者番号は有効です。そのため、以前と同じ被保険者番号を使い、雇用保険の加入手続きが必要です。

被保険者番号は、前職で加入していた雇用保険被保険者証を提出してもらい確認します。新しく番号を取得すると、加入期間の算定が適切にできず、従業員に不利益を与える可能性があります。

雇用保険被保険者資格取得届の記入方法は以下の通りです。

雇用保険被保険者資格取得届の記入方法

● 被保険者番号:被保険者証に記載されている番号を記入
● 取得区分:「2再取得」を選択
● 被保険者となったことの原因:「2 新規雇用(そのほか)」を選択(※)

※ただし、65歳以上の人を雇った場合は「4 そのほか」を選択
【雇用保険の被保険者番号が失効している場合】

中途入社した社員が、雇用保険の適用される職場を離れて7年以上経過している場合、被保険者番号は失効しています。

被保険者番号が失効している場合は、新卒入社の人の場合と同様に原則新しい番号を取得します。

雇用保険被保険者資格取得届の記入方法は以下の通りです。

雇用保険被保険者資格取得届の記入方法

● 被保険者番号:空欄
● 取得区分:「1新規」を選択
● 被保険者となったことの原因:「2 新規雇用(そのほか)」を選択(※)

※ただし、65歳以上の人を雇った場合は「4 そのほか」を選択

雇用保険被保険者証を紛失した場合は再発行できる

7年以内に雇用保険へ加入していた期間がある中途採用の従業員が、もしも雇用保険被保険者証を紛失していても、再発行が可能です。

雇用保険被保険者証を再発行する方法

雇用保険被保険者証を再発行するときは、ハローワークで再交付を申請します。申請方法には、ハローワークの窓口へ行くほか、郵送や電子申請もあり、使いやすい方法を選びましょう。

● <雇用者がハローワークに申請する場合>
従業員が在籍中で、雇用者がハローワークに申請する場合は、所定の書式に必要事項を記載し、事業主印を押印して提出すれば再交付が可能です。

雇用保険関係各種届出書等再作成・再交付申請書や、雇用保険関係各種書類再交付申請書など、書式は都道府県労働局ごとに異なる場合があります。

● <雇用者が被保険者証の電子ファイル(PDF)を保管している場合>
雇用者が被保険者資格取得届を電子申請で行い、被保険者証の電子ファイル(PDF)を保管している場合は、印刷またはファイルを入手するだけで済みます。

● <被保険者本人がハローワークへ行って申請する場合>
退職後など被保険者本人がハローワークへ行って申請する場合は、本人確認書類や前職の会社名・所在地などがわかる書類を持参しましょう。

● <代理人が窓口で申請する場合>
代理人が窓口で申請する場合は、委任状と代理人の本人確認書類、被保険者証を再発行する本人の本人確認書類を持参します。

必要事項を記入した、雇用保険被保険者証再交付申請書を窓口に提出し、手続きを進めます。

● <郵送で申請する場合>
郵送で申請する場合は雇用保険被保険者証再交付申請書に必要事項を記入し、本人確認書類と切手を貼付けた返信用封筒を添えて、ハローワークに送付しましょう。

● <電子申請する場合>
電子申請はe-Gov電子申請を使って行います。窓口に出向く手間はありませんが、電子署名が必要なため、事前に電子証明書の交付を受ける必要があります。

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まとめ

「雇用保険被保険者証」とは、従業員が雇用保険へ加入していると証明する書類です。雇用保険の対象となる人を雇い入れた事業者は、加入手続きが必要です。

雇用保険被保険者証に記載されている被保険者番号は、転職しても原則、同じ番号を使い、加入期間を通算します。

従業員が新入社員で被保険者番号を持っていない場合は、新しく被保険者番号を取得し、従業員が前職離職後7年以内に中途入社の場合は前職での被保険者番号を使います。

また、雇用保険被保険者証を紛失した場合は、企業で保管する電子ファイルが有る場合は印刷してもらうかファイルを入手、またはハローワークでの再発行が可能です。

よくある質問

雇用保険被保険者証とは?

雇用保険の加入者であると証明する書類です。

雇用保険被保険者証を詳しく知りたい方は「雇用保険被保険者証とは」をご覧ください。

雇用保険被保険者証を紛失した場合はどうすればいい?

企業に在籍中の方は事業主または担当者に相談し、企業経由もしくは本人がハローワークの窓口または郵送、電子申請で再交付の手続きをします。

雇用保険被保険者証を再発行する方法を詳しく知りたい方は「雇用保険被保険者証を紛失している場合は再発行できる」をご覧ください。

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修者 羽場康高