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インプラント治療の費用は医療費控除の対象?いくら還付されるのかも解説

監修 竹国 弘城 1級FP技能士・CFP

インプラント治療の費用は医療費控除の対象?いくら還付されるのかも解説

インプラント治療は基本的に自由診療となるため、費用が高額になる傾向があります。しかし、インプラント治療にかかった費用は医療費控除の対象です。

確定申告をすれば税金を計算する際に所得から治療費の一部を医療費控除として差し引けるため、実質的な治療費の負担を抑えられます。

本記事では、医療費控除の対象になる歯科治療の範囲やインプラントの医療費控除で返ってくる税金について解説します。医療費控除を忘れず申告し、治療費の負担を軽減しましょう。

目次

インプラント治療は医療費控除の対象になる?

インプラント治療は、基本的に自由診療であり公的医療保険が適用されません。通常、病気やけがで治療を受けたときに支払う医療費には公的医療保険が適用されるため、私たちは実際にかかった医療費のうち、1~3割の負担で済みます。

しかし、保険が適用されないインプラント治療の場合、治療にかかった費用は全額自己負担となるため、費用が高額になる傾向があります。治療に使うインプラントのメーカーや治療する歯の数などで異なりますが、1本につき30~40万円かかるのが相場です。

ただし、インプラント治療を含む歯科治療にかかる費用は、一般的に医療費控除の対象となるため、確定申告をすれば所得税・住民税の負担が軽減されます。

医療費控除の対象となる歯科治療は、「その症状などに応じた一般的な支出水準を著しく超えない部分の金額」とされています。インプラント治療のほかに医療費控除の対象となるのは、以下のような費用です。

医療費控除の対象となる費用

  • 虫歯・歯周病の治療費
  • 治療で一般的に使用される材料(金やポーセレン、セラミックなど)を用いた治療の費用
  • 親知らずの抜歯
  • 子どもの成長阻害防止のための不正咬合(歯並びやかみ合わせが良くない状態)を治すための矯正治療費用
  • 虫歯や歯周病の「治療目的」で医師から使用するよう指示された歯ブラシや歯みがき粉の購入費(通常使用、予防目的の購入費は対象外)
  • 処方された薬の購入費
  • 治療のための通院費(自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代は除く)

通院費に関しては、バスや電車などの公共交通機関を利用したときは対象となりますが、自家用車で通院した際のガソリン代・駐車場代は含まれません。公共交通機関で通院した際は、通院した日と金額を記録しておきましょう。

医療費控除の対象にならないもの

歯科治療にかかる費用のうち、一般的な水準を超えない部分は医療費控除の対象となります。しかし、予防や美容(容姿や容ぼうの美化)を目的とする費用は対象外です。

したがって、以下のような費用は医療費控除の対象となりません。

医療費控除の対象とならない費用

  • ホワイトニングの費用
  • 美容目的の歯列矯正費
  • 通常使用の歯ブラシや歯磨き粉、入れ歯安定剤の購入費
  • 予防目的の医薬品(ビタミン剤など)の購入費
  • 健康診断費用(重大な疾病が見つかり、治療を受けることになった場合は対象になる)
  • 歯科ローンで支払った利息

すべての歯科治療が医療費控除の対象になるわけではないため、注意してください。

そもそも医療費控除とは?

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えるときに一定の所得控除が受けられるものです。税金を計算する際に所得から控除額を差し引けるので、その分所得税・住民税の負担が少なくなります。

医療費控除を受けるための条件は、以下の2つです。

医療費控除を受けるための条件

  • 自分または生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費である
  • その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費である

支払った医療費の合計が10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%)を超える場合に、医療費控除が受けられます。

ただし、健康保険から支給される高額療養費、民間の生命保険から支払われる保険金(給付金)などで補填される金額がある場合は、支払った医療費から差し引かなければなりません。また、医療費控除額の上限は200万円です。

医療費控除について、詳細は別記事「医療費控除とは?確定申告に必要な書類の書き方や計算方法について分かりやすく解説」もあわせてご確認ください。

インプラントの医療費控除でいくら返ってくる?

医療費控除を受けることで、返ってくる所得税・住民税の額はいくらなのでしょうか。

日本では、所得税に累進課税制度が採用されており、所得が多いほど税率が上がる仕組みです。具体的には、課税所得金額に応じて5~45%の範囲で所得税率が決まります。

医療費控除によって還付される所得税額は、「医療費控除額×所得税率」の式で求められるため、所得税率が高い方ほど多くの控除を受けられます。ここでは、以下のケースを例に医療費控除で返ってくる税額を試算しました(復興特別所得税を除く)。

  • 年収(給与収入):700万円(課税所得金額:約360万円)」
  • 給与所得控除180万円
  • 社会保険料控除約109万円
  • 基礎控除48万円
  • インプラント治療に支払った医療費(医療費控除対象):40万円
  • 保険金などで補填された金額:0円
  • 所得税率:20%(復興特別所得税を除く)

医療費控除の額は、「(1年間の医療費合計-保険などで補填された金額)-10万円(または総所得金額等の5%)」の式で計算します。上記の場合、保険金などによる補填がないため、医療費控除額は40万円-0円-10万円=30万円となります。

「医療費控除額×所得税率」の式に当てはめると、軽減される所得税額は、30万円×20%=6万円です。

また、医療費控除は住民税でも受けられます。住民税率は一律10%であるため、軽減できる税額は30万円×10%=3万円です。

つまり、上記のケースの場合、インプラント治療にかかった費用で医療費控除を受ければ、治療費の負担を実質的に9万円(所得税6万円・住民税3万円)軽減できます。

インプラントの医療費控除を確定申告する際のポイント

インプラント治療の医療費控除を申告する際に知っておきたいポイントを解説します。インプラント治療を受ける予定の方・受けた方は、以下の点を踏まえて医療費控除の申告を行いましょう。

確定申告する際のポイント

  • ローンやクレジットでインプラント費用を支払っても対象となる
  • 治療を受けた日ではなく支払った日を基準に判断する
  • 家族のために支払った費用も医療費控除の対象となる
  • 領収書を保管しておく

ローンやクレジットでインプラント費用を支払っても対象となる

歯科ローンやクレジットカードでインプラントの費用を支払った場合も、医療費控除の対象となります。ただし、歯科ローンで支払った場合、元金部分は医療費控除を受けられますが、利息分は対象になりません。

医療費控除を受けられる時期は、ローンやクレジットカードの請求日(支払日)ではなく、信販会社が医療機関に対して立替払いをした年です。歯科ローンで治療費を支払った場合、ローンの契約が成立した年に全額が医療費控除の対象になるため、返済が数年にわたる場合でも最初の年に支払った医療費として申告します。

なお、歯科ローンを利用して支払い、治療費の領収書が手もとにない場合は、歯科ローンの契約書や信販会社の領収書の保管が必要です。

治療を受けた日ではなく支払った日を基準に判断する

医療費控除の対象となるのは、その年の1月1日~12月31日までに支払った医療費です。治療を受けた日ではなく、支払った日が基準となります。

たとえば、「12月中に治療を受けたが、医療費を12月31日までに支払っていない」場合は、その年の医療費控除には含まれません。年をまたいで支払った医療費は、翌年分の医療費控除の対象となるため、注意してください。

家族のために支払ったものも医療費控除の対象となる

本人だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も医療費控除の対象となります。

夫婦ともに総所得金額等が200万円以上の共働き夫婦の場合は、所得の多い方が医療費控除を受けた方が、控除額は多くなります。以下のケースを例に考えてみましょう。

  • 夫の年収(給与収入):700万円(課税所得金額:約360万円、所得税率:20%)
  • 給与所得控除180万円
  • 社会保険料控除約109万円
  • 基礎控除48万円
  • 医療費控除額:30万円妻の年収(給与収入):300万円(課税所得金額:約106万円、所得税率:5%)
  • 給与所得控除98万円
  • 社会保険料控除約48万円
  • 基礎控除48万円

上記の場合、夫が2人分の医療費を支払い、控除を受けた場合に軽減できる所得税は、30万円×20%=6万円です。一方、妻が控除を受けた場合は30万円×5%=1万5,000円となります。夫が医療費控除を受ければ、妻が控除を受けるよりも所得税・住民税を軽減できます。

インプラント治療の領収書を保管しておく

インプラント治療で支払った医療費の領収書は、大切に保管しておきましょう。確定申告の際に提出する必要はありませんが、申告期限から5年間は、税務調査で求められた際に提示・提出しなければなりません。

万が一領収書をなくしてしまった場合、治療を受けた医療機関に申し出れば、支払証明書を発行できる可能性があります。ただし、発行には手数料がかかるため注意してください。

インプラントで医療費控除を受ける際の確定申告のやり方

医療費控除は年末調整では手続きできないため、会社員でも確定申告が必要です。ここでは、確定申告の流れを解説します。

  1. 1.必要な書類を準備・作成する
  2. 2.確定申告書を提出する

必要な書類を準備・作成する

医療費控除の申請に必要となるのは、主に以下の書類です。

医療費控除の申請で必要な書類

  • 医療費の領収書や保険金で補填される金額がわかるもの
  • 医療費控除の明細書
  • 確定申告書
  • 源泉徴収票(会社員の場合)

医療費控除だけでなく生命保険料控除や社会保険料控除などを申告する場合は、上記以外にも証明書などの書類が必要です。

申告の際は、確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付して提出します。医療費控除の明細書には、治療を受けた病院名や医療費の額を記入しましょう。健康保険組合から送られてきた「医療費のお知らせ」を添付すれば「医療費控除の明細書」の記載を簡略化できます。

確定申告書には、医療費控除の明細書で計算した医療費控除額を「所得から差し引かれる金額」の「医療費控除」の欄に記入します。医療費の領収書は、提示・提出する必要はありませんが、見ながら記入し、確定申告期限後から5年を経過するまで保管しておきましょう。

確定申告書を提出する

確定申告は、1月1日~12月31日までの所得について、原則として翌年2月16日~3月15日までに手続きをします。

年末調整の対象になる会社員など、所得の申告が不要で、医療費控除による税金の還付を受けるだけの方は、控除を受けたい年の翌年1月1日から5年間申告書を提出できます。

国が運営する行政手続きのオンライン窓口「マイナポータル」と連携すれば、医療費通知情報を一覧で確認、取得可能です。確定申告書作成の際には、取得したデータを自動入力できるため、確定申告の手間が省けます。マイナポータル連携の利用には、マイナンバーカードと事前設定が必要です。

また、医療費の領収書が多い場合には、国税庁のサイトからダウンロードできる「医療費集計フォーム」を活用するとよいでしょう。

確定申告書の提出方法は、e-Tax・郵便・窓口(税務署)持参の3つです。e-Taxを利用すれば、自宅にいながらパソコンやスマホでいつでも手続きでき、還付も書面より早く受けられます。

確定申告を簡単に終わらせる方法

確定申告に関する作業を効率化したいとお考えの方には、確定申告ソフト「freee会計」の活用がおすすめです。

freee会計には、以下のような機能があります。

  • 銀行口座やクレジットカードを同期して出入金を自動入力
  • 家計簿感覚でできる帳簿付け
  • 確定申告時、税額控除の金額を自動算出
  • e-tax(電子申告)対応でオンライン申告も可能

日々の経費管理から確定申告の対応まで、さまざまな作業を自動化して時間や手間を大幅に削減できます。

勘定科目も予測して入力できるため、慣れない人でも安心して使用いただけます。

また、確定申告の際には質問に回答すると税額控除の金額を自動算出できます。ご自身で面倒な計算をする必要がなく、スムーズな書類作成が可能です。

さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになります。オプションサービスに申し込めば、電話での質問も可能です。

freee会計を使うとどれくらいお得?

税理士などの専門家に代行依頼をすると、確定申告書類の作成に5万円〜10万円程度かかってしまいます。freee会計なら月額980円(※年払いで契約した場合)から利用でき、自分でも簡単に確定申告書の作成・提出までを完了できます。

忙しい年度末の負担を減らすためにも、ぜひfreee会計の利用をご検討ください。

まとめ

インプラント治療にかかった費用は医療費控除の対象となるため、治療費の負担を軽減できます。治療費のほかに、通院にかかった公共交通機関の交通費も含まれます。

医療費控除は年末調整では控除できないため、確定申告の手続きが必要です。領収書を保管しておき、忘れず申告しましょう。

医療費控除を申告する際は、確定申告書に「医療費控除の明細書」の添付が必要です。freeeの確定申告ソフトなら、○×形式の質問に答えるだけで必要な書類を簡単に作成できます。

よくある質問

インプラント治療は医療費控除の対象?

インプラント治療を含む歯科治療にかかる費用は、一般的に医療費控除の対象となるため、確定申告をすれば所得税・住民税の負担が軽減されます。

インプラント治療の医療費控除を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

医療費控除とは?

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えるときに一定の所得控除が受けられる制度です。

医療費控除を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

監修 竹国弘城(たけくに ひろき) 1級FP技能士・CFP

RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。

監修者 竹国弘城