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L字カーブとは? M字カーブとの違いや女性の働き方における課題・解消策を解説

公開日:2023/09/13

監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP

L字カーブとは? M字カーブとの違いや女性の働き方における課題・解消策を解説

L字カーブとは年齢階級別に見た女性の正規雇用比率の線グラフのことで、アルファベットの「L」のようなカーブに見えるのが由来です。

20代後半をピークに急低下していく現象を示すグラフは、日本女性の働き方の課題を示しているとして、早急な解消が求められています。

本記事では、L字カーブの概要、これまで課題とされてきたM字カーブとの違いを知り、問題の解消に向けて企業として取り組むべき課題をわかりやすく解説します。

目次

L字カーブとは?

年齢階級別に見た女性の正規雇用比率の線グラフは、アルファベットの「L」のようなカーブを描くことからL字カーブと呼ばれています。正規雇用比率は、15歳以上の人口に占める正社員(正職員)の比率を示したものです。

L字カーブを描く要因は、10~20代にかけて急激に増加する女性の正規雇用比率が、25~29歳の58.7%をピークに右肩下がりに低下しているためです。

出典:https://www.google.com/url?q=https://www.kantei.go.jp/jp/content/000116409.pdf%23page%3D24&sa=D&source=docs&ust=1691505907877284&usg=AOvVaw0dGD8uL9qlotU6CBQlJHM4

一方で、働く女性の数は、2012年から2021年までの間に約340万人も増加しました。 実際、就業率のデータによると、20~50代までの女性たちの8割前後が何らかの形で就労していると考えられます。

つまり、日本女性は20代後半までは正社員(正職員)が中心ですが、30代以降はパートタイマーや派遣社員などの非正規雇用で働く人が中心になっているのが現状です。

M字カーブとの違い

L字カーブが正規雇用比率のグラフが示す形であるのに対し、M字カーブは年齢階級別の女性就業率のグラフが、「M」のようなカーブを描くのを意味しています。就業率は15歳以上の人口に占める働く人(就業者+完全失業者)の比率を示したものです。

1981年の就業率を見ると、20代後半と30代前半を底としたM字の線グラフを描いています。当時は結婚や出産を機に離職して、育児が落ち着いたタイミングで再就職する女性が多かったのでしょう。

しかし現在は、2015~2019年の第1子出産後の女性の継続就業率(働き続けている女性の割合)は53.8%となっています。これは1985〜1989年の23.9%と比べると2倍超の割合です。

中高年の女性の正規雇用率は依然として低いものの、日本では育児休業制度や保育所の整備が進んでいます。制度が整ってきたこともあり、離職せずに働き続ける女性は確実に増え、M字カーブは解消されつつあると考えられているようです。

女性の正規雇用比率がL字カーブになる原因とは?

働く女性の数が増えM字カーブも解消されつつある今、なぜ正規雇用比率がL字カーブを描くのか、その理由を詳しく解説します。

家事育児の負担が大きくなる出産後に離職を選ぶ

働く女性の多くが、結婚や出産を機に家事や育児との両立に難しさを感じるようになり、出産後に会社を退職する傾向にあります。

厚生労働省の統計によると、子育てをしている女性は、時短勤務で会社での労働時間を週32時間とすると、家事や育児にかかる時間を含めた総労働時間は週77時間程にも及びます。

一方で、男性は結婚したり家族が増えたりしても労働時間には大差がありません。家事や育児の負担が女性へ偏っている事実が、会社を辞める要因となっているようです。

仕事と家事・育児の両立がむずかしいとする原因として、女性の6割近くが「自分の気力・体力がもたない」と回答しています。

出典:日本能率協会総合研究所「厚生労働省委託事業 令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業」(2021年3月)

会社に育児を支援する制度や雰囲気が不足している

正社員として働く女性が育児休業などの制度を利用しなかった理由で、最多の回答が「会社に制度が整備されていなかった(28.4%)」です。会社側の支援体制の不足が、正規雇用の女性の離職を後押しする結果となっています。

ほかにも、育児休業制度を取得しづらい職場の雰囲気や育児休業取得への職場の無理解(14.9%)などの回答も見られました。たとえ制度があってもすすんで利用できない環境による影響も大きいようです。

出典:日本能率協会総合研究所「厚生労働省委託事業 令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業」(2021年3月)

一度離職すると正社員としての再就職がむずかしい

L字カーブによると、25~29歳をピークに女性の正規雇用比率が急激に減少しており、20代後半に会社を退職する女性が多いとわかります。しかし一方で、30代から50代までの就業率はほぼ横ばいです。

出典:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版(2-10図 女性の年齢階級別正規雇用比率)」

これはつまり、一度正社員を辞めると、女性が再び正社員として復職するのはむずかしい現状を示唆しています。

正社員としての復職が困難な理由は、残業のあるフルタイムでの働き方が困難で、パートや派遣社員などの非正規雇用に流れているためと考えられるでしょう。

また、厚生労働省の調査によると、フルタイムで働く非正規雇用者のうち、約3割が正社員を希望していたものの、そのうち約5%しか正社員に就けなかったとの結果が出ています。

L字カーブには、正社員を離職した女性が正社員としてキャリアを再スタートするむずかしさも表れているようです。

ほかにも、再就職したくても仕事と家庭の両立に不安を感じる女性は8割前後にのぼります。両立しやすい条件に合う仕事が見つからない、家族の支援がなくて断られる、などの理由も女性の働き方に影響しています。

出典:厚生労働省「出産・育児等を機に離職した女性の再就職等に係る調査研究事業(平成26年度厚生労働省委託調査)」

L字カーブ解消のために企業に必要な取り組み

L字カーブは、女性の自由な働き方、ひいては生き方にも影響を与えており、早急な解消が求められます。それでは、L字カーブ解消のために企業として必要な取り組みを解説します。

出産や育児について正しく理解する

まず、企業は出産や育児について正しく理解することが大切です。

企業は、育児休業取得条件を満たした従業員から休業の申し出を受けた場合、正当な理由なくこれを拒否することはできません。

これは、会社に制度があるかないか、就業規則に定めてあるかどうかで判断するものではなく、法律上、育児休業を取得させなければならないということです。

もしも当該申し出を正当な理由なく拒否したときは、行政上の厳しい指導を受ける可能性があります。研修などを通じて、企業は出産育児の制度や仕事と育児を両立していくうえでの問題点を正しく理解することが求められます。

男性の育休取得を促進する

L字カーブの現状からは、男女の働き方改革を通じて、まだまだ女性に偏りがちな家事・育児の負担を軽減する必要があります。男性が家事・育児に関わる時間を増やすためにも、男性の育児休業制度の取得をすすめることが大切です。

近年、男性の育児休業取得率は増加傾向ですが、それでも2020年度の民間企業での取得率は12.65%にとどまっています。

出典:男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」(2-19図 男性の育児休業取得率の推移)

また、たとえ育児休業を取得していても、男性(正社員)の取得期間は43.1%が3日以内で、十分な日数とはいえません。

出典:厚生労働省委託事業「平成29年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」p.152(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

男性が勤務時間を1時間減らしても、家事・育児の時間は6分ほどしか増えないとの試算も出ています。育児休業を1ヶ月以上取得した男性は、取得しない男性と比べると、家事・育児への時間が週4時間長いとの結果も出ています。

つまり、女性の負担を減らせるほど男性が家事や育児に関わるためには、長期の育児休業の取得を促進する企業の環境整備が大切でしょう。

長時間労働を是正する

長時間労働も女性の離職や男性の家事・育児への参加を阻む要因です。会社として長時間労働の是正への姿勢が、ひいては女性の離職を防ぎ、L字カーブの解消につながるでしょう。

長時間労働を美徳とする企業文化が日本には根づいていましたが、働き方改革により、働き手の意識も少しずつ変わりつつあります。決められた時間内で効率よく働く社員が増えれば、結果として業務生産性も向上します。

また、労働時間の在り方を見直すだけではなく、テレワークの普及などの柔軟な働き方の導入も効果的です。ベビーシッターや家事代行サービスなど家事・育児をサポートする補助制度も導入し、実効性を伴った働き方改革を進めるとよいでしょう。

従業員の正規雇用化を進める

日本ではここ30年で非正規雇用者が増加を続けています。背景には1990年代後半の「労働者派遣法」の改正による派遣労働者の適用拡大があり、雇用を調整しやすい非正規雇用の採用が進みました。

総務庁「労働力調査」によると、1990年と2022年の非正規雇用の割合(25~34歳)を比べると、男性は3.2%から14.3%へ、女性は28.2%から31.4%へ上昇しています。

非正規雇用者は正規雇用者よりも収入が少ない傾向があります。収入の少なさや不安定さから、育児休業で仕事を休めないと考える男性も多いようです。そのため、従業員の正規雇用化を進めることも企業に求められています。

正社員への応募機会を与える、正社員への転換を推進する措置を講じるなど、正規雇用化を進めましょう。

従業員の正規雇用化に取り組む企業は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を利用できます。キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者やパートタイム労働者の正社員への転換や待遇の改善などを目的とした、厚生労働省の助成金のことです。

出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」

ただし、キャリアアップ助成金の支給要件は複雑です。労使双方すべての要件を満たす必要がありますので、ご興味のある方は上記の資料などを確認してみてください。

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まとめ

年齢階級別に女性の正規雇用比率を線グラフ化すると、20代後半をピークとしたL字カーブを描きます。

近年では、就業率のグラフを示すM字カーブが解消されつつあります。全世代で働く女性が増えてきている今、日本経済の発展のためにも女性が正社員として働ける環境づくりが必要です。

女性が活躍する社会に向けて、L字カーブを解消するためには、男性の家事・育児への関わりが欠かせません。会社として育児休業や休暇などの支援制度をはじめ、労働環境を改善する取り組みを進めましょう。

また、非正規雇用者の増加も男性を家事・育児から遠ざける要因のひとつです。従業員の正社員化にあたっては、キャリアアップ助成金の対象となります。

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よくある質問

L字カーブとは?

L字カーブとは、日本女性の年齢階級別正規雇用比率の線グラフがアルファベットの「L」のように見えることを意味します。女性の正規雇用は25~29歳をピークに右肩下がりに低下しており、横に倒した「L」のようになっています。

L字カーブの概要を詳しく知りたい方は「L字カーブとは?」をご覧ください。

L字カーブとM字カーブの違いは?

L字カーブとは、日本女性の年齢階級別正規雇用比率の線グラフを指します。一方でM字カーブは、女性の年齢階級別就労率の線グラフが「M」のようなカーブを描くことを指します。

L字カーブとM字カーブの違いを詳しく知りたい方は「M字カーブとの違い」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史