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子の看護休暇とは? 法律に定められる対象や要件、会社に求められる対応を解説

公開日:2023/07/31

監修 岡崎 壮史 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

子の看護休暇とは? 法律に定められる対象や要件、会社に求められる対応を解説

子の看護休暇は、小学校就学前の子どもが病気やけがをした場合に、従業員が看護を目的に取得できる制度です。

この制度は育児・介護休業法によって規定されており、2021年の法改正により、国はより多くの取得を推進しています。従業員の子の看護休暇の取得は法的に認められる権利であり、会社として適切な対応が必要です。

本記事では、子の看護休暇の概要や適用要件、会社側が注意しておくべきポイントなどを詳しく解説します。

目次

子の看護休暇とは

子の看護休暇は、小学校就学前の子どもを養育する従業員が、有給休暇とは別に取得できる休暇制度です。2002年当初は育児・介護休業法に「努力義務」として定められましたが、2005年からは従業員の権利として義務化されました。

子の看護休暇は、原則として子ども1人につき年間5日(対象となる子どもが2人以上の場合は10日)取得可能です。

子の看護休暇の示す「1年」は、会社による定めがとくになければ、4月1日から翌年3月31日までとされています。子どもの病気やけがは予測できるものではないため、当日の申し出も可能です。

子の看護休暇は法の定める休暇制度であるため、取得を理由とした従業員に対する不利益な査定や取り扱いは禁止されています。また、会社で取得の前例がなかった場合にも、従業員からの申し出が必要です。

介護休暇との違い

育児・介護休業制度には、子の看護休暇と同様に定められる休暇制度として、介護休暇があります。介護休暇の取得日数は、家族1人につき年間5日(対象となる家族が2人以上の場合は10日)を上限としており、子の看護休暇とよく似ています。

しかし、子の看護休暇は対象者が小学校就学前の子どもをもつ従業員であるのに対し、介護休暇は要介護状態の家族がいる従業員です。

介護休暇の「要介護状態の家族」には、未就学の子どもを含めた、子・配偶者(事実婚を含む)・父母・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹が含まれます。

介護休暇子の看護休暇
対象者介護が必要な家族の世話をしなければいけない従業員子供が病気や怪我をした場合の従業員
休暇取得の資格一定の要件を満たす介護が必要な家族がいること子供が小学校就学前であること
休暇期間通常は年間最大5日(対象家族が2人以上の場合は最大10日)通常は年間最大5日(子供が2人以上の場合は最大10日)
給与休暇中の給与支給は企業による休暇中の給与支給は企業による
その他休業開始予定日の2週間前まで当日でも可


子の看護休暇と介護休暇にはいくつかの違いはありますが、どちらも法によって従業員の権利として定められています。そのため、会社は申し出に応じて適切に対応しなければなりません。

併せて「育児・介護休業法の改正ポイントを解説!企業が取るべき対応とは?」も確認しておくことで理解を深められるでしょう。

子の看護休暇を取得する際の要件

従業員が子の看護休暇を取得するには、一定の要件を満たしている必要があります。子の看護休暇の取得要件を詳しく確認しておきましょう。

<子の看護休暇を取得する際の要件>

概要
対象者● 小学校就学前の子どもを養育する全従業員(日雇い労働者を除く)
日数・単位● 子ども1人につき年間5日(対象となる子どもが2人以上の場合は10日)
● 日単位、半日単位、または時間単位
● 1時間の整数倍の時間として取得可能
目的● 病気やけがの子どもの世話や看病、予防接種や健康診断のために取得可能
賃金● 会社が有給または無給とすることを自由に決められる
※雇用期間が6ヶ月未満や1週間の所定労働日数が2日以下の方は対象外となることがあります。

対象者

子の看護休暇の対象者は、小学校就学前の子どもを養育する従業員で、男女は問われません。日雇い労働者を除くすべての従業員が対象で、正社員やパートなど雇用形態に関わらず取得可能です。

ただし、労使協定を結ぶと、会社は以下の要件に該当する従業員からの取得申し出を拒否できます。

労使協定により取得申し出を拒否できるケース

1 入社後、雇用期間が6ヶ月未満の従業員
2 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

取得の日数・単位

子の看護休暇は、原則として子ども1人につき年間5日(対象となる子どもが2人以上の場合は10日)取得可能です。1日単位や半日単位、あるいは時間単位で取得できます。「時間単位」とは1時間の整数倍の時間とされています。

かつては、1日単位または半日単位での取得でした。しかし、1日あたりの所定労働時間が4時間以下の従業員は1日単位でしか取得を認められず、働き方による不公平が生じていました。

2021年1月からは法改正により、全従業員が時間単位で取得できるようになり、育児と仕事の両立を後押しする内容に変わっています。

出典:厚生労働省「介護休暇・子の看護休暇の 時間単位取得について」

取得の目的

子の看護休暇は、病気やけがをした子どもの世話や看病のほか、予防接種や健康診断を受けるためにも取得可能です。予防接種には、行政が費用を負担する定期接種だけではなく、インフルエンザなど任意によるものも含まれます。

取得中の賃金

労働基準法の定める年次有給休暇と違い、子の看護休暇には休暇中の賃金に関する法律上の定めがありません。つまり、子の看護制度を有給とするか無給とするかは、会社が自由に決められます。

ただし、労働基準法では、看護休暇中の賃金の支払いの有無や計算方法、支払方法などは、会社の就業規則に明記する必要があります。

しかし無給にする会社は多く、実際、2021年度時点で子の看護休暇を実施する事業所のうち「無給」は65.1%です。
出典:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」

現状では、無給とする制度の利用は、経済的な負担や収入の減少が伴うため、従業員にとっては魅力的な選択肢とは言えないでしょう。

従業員のワークライフバランスを支援するためには、助成金の活用などを通じて、子の看護休暇を「有給」とする取り組みが必要です。

取得の方法

子の看護休暇は、会社に対する従業員の申し出により取得できます。子どもの病気やけがには急な対応が必要な場合が多いため、会社は書面・ネット・電話など、さまざまな申し出に対応する必要があります。

たとえ書面での申請をルールとしていても、事後提出を認めるなど、柔軟な対応が望まれるでしょう。

会社は取得の申し出に対し、医師の診断書など取得理由を証明する書類の提出を求めることが可能です。

ただし、診断書作成は負担がかかる場合があります。国は従業員の負担を軽減するため、会社に対して配慮を求めています。

子の看護休暇を取得する際の注意点

子の看護休暇は従業員の権利であるため、会社はいつ申し出があっても適切に対応しなければなりません。しかし、子の看護休暇の取得に際してはいくつかの注意点があります。

子の看護休暇取得時の注意点

● 時季変更権の対象とならない
● 時間単位での取得では勤怠管理に気をつける
以下より取得時の注意点を解説します。

時季変更権の対象とならない

子の看護休暇は、時季変更権の対象とはなりません。

時季変更権とは、従業員が有給休暇を取得した「時季」により業務に不利益が生じる場合、会社が取得の時季を変更できる権利です。たとえ子の看護休暇を有給としていても、時季変更権の適用からは外れます。

子の看護休暇は子どもの看護が目的なので、従業員が休む時季を変更することはできません。

たとえ業務に支障が出る場合でも、会社は子の看護休暇の申し出に対して時季変更権を行使できないと覚えておきましょう。

時間単位での取得では勤怠管理に気をつける

法改正により、2021年1月から子の看護休暇は時間単位で取得できるようになりました。

しかし、看護休暇の取得単位には以下のような適用条件が設けられており、従業員の勤怠管理の際には注意が必要です。

子の看護休暇の取得単位における適用条件

1 取得時間数の合計が1日の所定労働時間に相当する場合、1日分の看護休暇を取得したものとして扱う
2 1日の所定労働時間が1時間単位ではない場合、端数を繰り上げた時間数を所定労働時間として考える
1日の所定労働時間が1時間単位でない場合とは、たとえば1日の所定労働時間が7時間半などのときを指します。所定労働時間が7時間半とすると端数の30分を繰り上げた8時間を所定労働時間とします。

また原則として、時間単位の取得は法律上「連続するもの」と定められており、「中抜け」取得への対応は法的に求められていません。

ただし、育児と仕事の両立のため、国は法律を上回る柔軟な対応を会社側に促しています。

子の看護休暇において企業で取り組むべき課題

厚生労働省の「令和3年度雇用均等基本調査」によると、子の看護休暇を制度として定めていると回答した事業所は65.7%です。30%以上の事業所で定めがなく、とくに中小企業ほど導入が進んでいないのが現状です。
出典:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」

従業員にとって働きやすい労働環境を整え、適切に対応するためにも、以下の整備を進めていくべきでしょう。

子の看護休暇において企業で取り組むべきこと

● 就業規則に記載する
● 不利益取り扱いの禁止に注意する
● 制度目的を社内周知する
以下で子の看護休暇を導入するにあたって、会社が取り組むべき課題を解説します。

就業規則に記載する

子の看護休暇に関する事項は、労働基準法により、就業規則に記載しなければなりません。

そのため、会社は適用条件や賃金の有無などを就業規則に明示し、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

子の看護休暇は育児・介護休業法に基づき、従業員の最低限の権利を保障する制度です。

会社には従業員に対して、法律で最低限求められる権利だけでなく、追加の福利厚生や労働条件を提供する努力が求められています。

ただし、法律に違反する内容は無効とされるため、法律を順守した権利の尊重が必要です。

従業員は就業規則の変更前でも子の看護休暇の取得は可能ですが、会社としては早めの対応を心がけましょう。

不利益取り扱いの禁止に注意する

会社は、子の看護休暇の申し出や取得を理由に、従業員に対する不利益な取り扱いをしてはいけません。

不利益な取り扱いとは、解雇や契約解除・降格・人事考課での不利益な評価・減給などです。もし会社が不利益な取り扱いを行った場合、その行為は無効とされます。

たとえば、子の看護休暇を無給とする規定は認められますが、取得した休暇を超えた時間も無給として扱うのは違法です。

制度目的を社内周知する

法律に定められた従業員の権利にもかかわらず、産休制度や育休制度に比べると、子の看護休暇はまだ認知度が低い休暇制度といえます。

子の看護休暇の取得を促進するために、制度の概要や適用要件、申請方法などを従業員へ周知することが大切です。

特に育児休業を取得した従業員は看護休暇を必要とする可能性が高いため、育児休業時に子の看護休暇の説明をすることも有効でしょう。

従業員への周知と同時に、業務に支障が出ないように、取得しやすい労働環境の整備も大切です。

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まとめ

子の看護休暇は法律に定められた従業員の権利であるため、従業員から取得の申し出があれば会社として適切に対応する必要があります。

適用条件を確認して、就業規則の見直しや従業員への周知、労働環境の整備などを進めましょう。

2021年からは時間単位の取得も可能となっており、会社は以前よりも細やかな勤怠管理が必要になっています。

管理の負担を減らすためにも、勤怠管理や給与計算を自動化できるツールの導入も検討するとよいでしょう。

よくある質問

子の看護休暇とは?

子の看護休暇とは、小学校就学前の子どもが病気やけがなどのしたときに、看護を目的に従業員が取得できる休暇制度です。原則として子ども1人につき年間5日まで取得できます。

子の看護休暇の概要を詳しく知りたい方は「子の看護休暇とは」をご覧ください。

子の看護休暇の取得要件は?

子の看護休暇は日雇い労働者を除くすべての従業員を対象としています。従業員から会社への申し出により1時間単位での取得が可能です。

子の看護休暇の取得要件を詳しく知りたい方は「子の看護休暇を取得する際の要件」をご覧ください。

監修 岡崎壮史(おかざき まさふみ) 社会保険労務士・1級FP技能士・CFP

マネーライフワークス代表。現在は、助成金申請代行・活用コンサルとして、企業様の助成金の申請代行や活用に向けたサポート業務、金融系サイトへ多くの記事を執筆・記事監修を担当し、社労士試験の受験指導講師としての活躍の場を全国に展開している。

監修者 岡崎壮史