監修 安田 亮 公認会計士・税理士・1級FP技能士
IT導入補助金は要件を満たせば個人事業主も利用可能です。IT導入補助金を活用すると事業のデジタル化で必要なITツール導入費用の補助が受けられます。
ITツールを導入すれば、たとえば毎日の会計処理に多くの労力を使っている個人事業主の場合、システムで日々の業務を効率化できます。それによって根幹業務により集中できるでしょう。
この記事では、IT導入補助金の内容や個人事業主の方が活用する際に注意したいこと、IT導入補助金の申請方法を解説します。
目次
- IT導入補助金とは?
- IT導入補助金は個人事業主も対象?
- 対象者
- 申請枠
- 補助額と補助率
- IT導入補助金を個人事業主が申請する際のポイント
- 申請には必要書類がある
- IT導入補助金は複数回の公募がある
- 補助金の対象に注意が必要
- IT導入補助金の申請方法
- 1.IT導入補助金制度の内容を把握する
- 2.IT導入支援事業者とITツールを選定する
- 3.「gBizIDプライム」アカウントなどの準備
- 4.交付申請
- 5.交付決定の連絡
- 6.補助金の対象となる事業を実施
- 7.実施した事業の実績を報告
- 8.補助金額の確定と交付
- 9.事業実施効果の報告
- 経理を自動化し、業務を効率的に行う方法
- まとめ
- よくある質問
- IT導入補助金とは?
- IT導入補助金を利用する際のポイントは?
IT導入補助金とは?
IT導入補助金とは、RPAツールや基幹業務システムなど、ITツールを導入する際にかかる費用を補助する助成金です。
中小企業や小規模事業者などが、自社の経営課題やデジタル化の状況にあわせ、 生産性や売上の向上を目的にITツールを導入する場合、費用面の負担をサポートします。
IT導入補助金には通常枠とセキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠などの申請枠があります。導入するITツールの種類や目的などにしたがって、該当する枠で申請する仕組みです。
ただし、補助の対象となるのはあらかじめ事務局に登録されたITツールです。中古品や交付決定前に購入したITツールは対象外である点に注意しましょう。
IT導入補助金の最新スケジュールや申請方法はこちらをご覧ください。
IT導入補助金は個人事業主も対象?
IT導入補助金の対象は中小企業と小規模事業者などとなっており、個人事業主も要件を満たせば申請が可能です。以下、IT導入補助金の内容を解説します。
対象者
IT導入補助金の要件のひとつめは「中小企業・小規模事業者などであること」です。このうち、個人事業主と関係する「小規模事業者」の定義を以下に表記します。
小規模事業者の定義
● 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):常勤の従業員が5人以下● サービス業のうち宿泊業・娯楽業:常勤の従業員が20人以下
● 製造業そのほか:常勤の従業員が20人以下
個人事業主の方も、小規模事業者の定義に該当する場合はIT導入補助金の申請が可能です。
ただし、上記以外にも「日本国内で事業を営んでいること」「従業員の最低賃金が地域別最低賃金以上であること」など複数の要件があり、申請の際にはすべての要件を満たす必要があります。
詳しい要件に関してはこちらをご覧ください。
申請枠
IT導入補助金には、下記の4つの申請枠があります。
IT導入補助金の4つの申請枠
● 通常枠(A類型・B類型)● デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
● デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
● セキュリティ対策推進枠
インボイス制度への対応を見据え、会計ソフトや受発注ソフト、それにともなうPCやタブレット、レジなどの購入については「デジタル化基盤導入枠」が設定されています。
さらに、サイバー 攻撃などへの対策としてセキュリティサービスを利用したい場合には、セキュリティ対策推進枠を活用できます。
補助額と補助率
IT導入補助金の補助額と補助率は下記の通りです。
申請枠 | 補助額 | 補助率 |
通常枠(A類型) | 5万円~150万円未満 | 1/2以内 |
通常枠(B類型) | 150万円~450万円以下 | 1/2以内 |
デジタル化基盤導入枠 |
・ITツール:~350万円 ・PC、タブレットなど:~10万円 ・レジ、券売機:~20万円 |
・ITツール:3/4以内~3/2以内 ・PCやレジなど:1/2以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万円~100万円 | 1/2以内 |
申請する枠や導入するツールにより、補助額や補助率が異なります。
IT導入補助金を個人事業主が申請する際のポイント
個人事業主の方がIT導入補助金を申請する際には、以下のポイントに注意しましょう。
申請には必要書類がある
IT導入補助金の申請には法人・個人それぞれに必要書類があり、個人事業主の方の場合には、下記の書類が必要です。
IT導入補助金の申請に必要な書類
1. 運転免許証または運転経歴証明書または住民票2. 所得税の納税証明書(その1またはその2)
3. 確定申告書
IT導入補助金は複数回の公募がある
IT導入補助金2023は2023年3月28日(火)より受付を開始しています。過去を参考にすると、IT導入補助金は複数回の公募がなされているので、公募スケジュールの確認が大切です。
2023年4月1日時点で公表されているスケジュールは下記の通りです。
申請枠 | 区分 | 申請締切日 |
通常枠 | 1次締切 | 2023年4月25日(火)17:00(予定) |
2次締切 | 2023年6月2日(金)17:00(予定) | |
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型) | 1次締切 | 2023年4月25日(火)17:00(予定) |
2次締切 | 2023年5月16日(火)17:00(予定) | |
3次締切 | 2023年6月2日(金)17:00(予定) | |
セキュリティ対策推進枠 | 1次締切 | 2023年4月25日(火)17:00(予定) |
2次締切 | 2023年6月2日(金)17:00(予定) |
今後、スケジュールが追加された場合には、IT導入補助金の公式サイトなどで随時公表されます。
補助金の対象に注意が必要
IT導入補助金は、通常枠では「ソフトウェア費やクラウド利用料、導入関連費」、セキュリティ対策推進枠では「サービス利用料」など、補助の対象となる費用が決まっています。
また、デジタル化基盤導入類型ではパソコンやタブレット、レジや券売機などの購入費用も補助対象ですが、あくまでITツールを使用するための補助制度であり、パソコンなどハードウェアの単体購入は補助の対象外となる点には注意してください。
IT導入補助金の申請方法
IT導入補助金を利用する際の流れは下記の通りです。
IT導入補助金2023を申請する流れ
1. IT導入補助金制度の内容を把握する2. IT導入支援事業者とITツールを選定する
3. 「gBizIDプライム」アカウントなどの準備
4. 交付申請
5. 交付決定の連絡
6. 補助金の対象となる事業を実施
7. 実施した事業の実績を報告
8. 補助金額の確定と交付
9. 事業実施効果の報告
1.IT導入補助金制度の内容を把握する
先述のように、IT導入補助金には通常枠やセキュリティ対策推進枠などの種類があり、対象となる費用や補助金、補助率などが異なります。
そのため、IT導入補助金の公式サイトや公募要領、交付申請の手引きなどをよく読み、制度の内容や申請の仕方を理解するのが大切です。
2.IT導入支援事業者とITツールを選定する
IT導入補助金では登録されたIT導入支援事業者を選定し、導入するITツールを選択します。自分の事業でどのような機能をもつITツールが必要か検討したうえで、適切なIT導入支援事業者とITツールを決定しましょう。
なお、IT導入支援事業者には、個人事業主がI補助金を使ってツールを導入する際のサポートをする役割があります。申請の手続きやITツールで不明な点があるときは、IT導入支援事業者に相談しましょう。
3.「gBizIDプライム」アカウントなどの準備
IT導入補助金はWebからの申請が必要で、申請システムにログインするには「gBizIDプライム」アカウントが必要です。「gBizIDプライム」アカウント取得には約2週間かかるので、事前に取得しておきましょう。
「gBizIDプライム」アカウントの取得には携帯電話、印鑑証明書もしくは印鑑登録証明書、登録印が必要です。必要なものを揃えたら、gBizIDの公式サイトの申請書作成画面でアカウント取得の申請ができます。
そのほか、情報セキュリティに関する「SECURITY ACTION」の宣言、「みらデジ」ポータルサイトでの「経営チェック」の実施も、申請前に行ってください。
4.交付申請
IT導入支援事業者と相談し、導入するITツールの選定や事業計画の策定が完了したら、申請手続きを行い ます。
IT導入支援事業者から「申請マイページ」の招待メールを受け取り、申請マイページを開設しましょう。
その後、gBizIDでログインし、必要情報を入力します。IT導入支援事業者の入力内容を確認後、SMS認証による本人確認を行い申請すれば完了です。
5.交付決定の連絡
申請手続きが完了すると、提出された内容をもとに事務局で審査が行われます。交付が決定されると事務局から通知がくるので、それまで待ちましょう。
なお、交付決定前にITツールの契約や購入は避けてください。
交付決定前の契約・発注、納品、請求などは補助金交付の対象外となります。
6.補助金の対象となる事業を実施
交付決定の連絡を受けたら、ITツールの導入など対象となる補助事業を実施します。
事業完了後は報告書の提出が必要となるので、請求書や代金を支払った証明となる書類は大切に保管しておきましょう。
7.実施した事業の実績を報告
IT導入補助金の事業実績報告は、補助金を申請する際に使用した申請マイページで行います。
必要な情報の入力や書類の添付、補助金受取口座などを入力し、事務局に対して実施した事業内容を報告しましょう。
8.補助 金額の確定と交付
提出された報告をもとに、事務局では確定審査が実施されます。
審査完了後に補助金額が確定し、補助金が登録した受取口座に交付される流れです。
9.事業実施効果の報告
補助終了後も、事業実施で得られた効果の報告が必要です。実施効果報告の頻度は申請した枠や内容で異なります。
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まとめ
業務のDX化は、一般企業だけでなく個人事業主にも重要な課題です。ITツール導入の補助が受けられるIT導入補助金は、業務の効率化や自動化を考える個人事業主に役立つ補助が充実しています。
IT導入補助金にはいくつかの申請枠があり、補助の対象となるITツールには要件が定められています。IT支援事業者などと相談し、自分の事業やニーズにあったITツールを導入してみましょう。
よくある質問
IT導入補助金とは?
事業の課題解決に必要なITツールの導入費用などを補助する制度です。
IT導入補助金を詳しく知りたい方は「IT導入補助金とは?」をご覧ください。
IT導入補助金を利用する際のポイン トは?
個人事業主がIT導入補助金を申請する際は、必要な書類や手続き、スケジュールをよく確認しておきましょう。
IT導入補助金を利用する際のポイントを詳しく知りたい方は「IT導入補助金を個人事業主が申請する際のポイント」をご覧ください。
監修 安田亮(やすだ りょう) 公認会計士・税理士・1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。