2025年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行され、一定の暑熱環境で作業させる事業者には熱中症対策が義務付けられました。2026年夏は、この義務が本格的に問われる最初の繁忙期です。
義務の対象は屋外作業に限らず、厨房・倉庫・製造現場・配送など暑くなりやすい職場の多くに及びます。
本記事では、義務化された報告体制と手順の整備、対象作業の範囲、違反時の罰則、2026年夏の実務対応までを解説します。
目次
職場の熱中症対策が2026年夏に重要な理由
2025年6月の規則改正で熱中症対策が事業者の法的義務になったため、2026年夏はその対応状況が労働基準監督署の確認対象になりやすい時期です。
厚生労働省によると、2025年の職場における熱中症の死傷者数は1,803人、このうち死亡者数は19人にのぼりました。
死亡事例の多くは初期症状を見逃したことによる重症化が原因とされ、発見から対処までの体制づくりが対策の中心に据えられています。
なお熱中症は屋外の建設業だけでなく、製造業・運送業・警備業・飲食業など幅広い業種で発生しており、空調の効きにくい倉庫や厨房を持つ中小企業も対象になり得ます。
2025年6月施行の改正労働安全衛生規則で義務化された内容
改正労働安全衛生規則(令和7年厚生労働省令第57号)は2025年6月1日に施行され、労働安全衛生規則第612条の2が新設されました。
この改正の目的は、熱中症のおそれがある作業者を早期に見つけ、状況に応じて迅速に対処することで重症化を防ぐ点にあります。事業者には大きく分けて二つの義務が課されました。
報告体制の整備と周知
一つ目の義務は、熱中症の自覚症状がある作業者や、おそれがある作業者を見つけた人が速やかに知らせるための報告体制を整えることです。
具体的には、連絡先や担当者を事業場ごとにあらかじめ定め、関係する作業者へ周知する必要があります。
報告先が曖昧なままでは、体調不良の申告が遅れて重症化につながるため、誰に・どう伝えるかを明文化しておくことが求められます。
悪化防止の措置と実施手順の整備
二つ目の義務は、熱中症の症状悪化を防ぐための措置と実施手順を事業場ごとに定め、関係作業者へ周知することです。
手順に含めるべき主な項目は次のとおりです。
手順に定める主な措置
- 作業からの離脱と涼しい場所への退避
- 身体の冷却(水分・塩分の補給を含む)
- 必要に応じた医師の診察・処置
- 緊急連絡網と緊急搬送先の連絡先・所在地の把握
これらをあらかじめ決めておくことで、異常を察知してから搬送までの初動が滞りなく進みます。
義務の対象となる作業の範囲
義務がすべての作業に一律で適用されるわけではなく、暑さの程度と作業時間によって対象が定められています。
対象となるのは、WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で行う作業のうち、次のいずれかに該当するものです。
<表:熱中症対策の義務対象となる作業要件>
| 環境の要件 | 作業時間の要件 |
|---|---|
| WBGT28度以上 または 気温31度以上 | 継続して1時間以上の作業 |
| WBGT28度以上 または 気温31度以上 | 1日当たりの作業時間が4時間を超える作業 |
WBGTは気温だけでなく湿度や輻射熱を加味した指標で、同じ気温でも湿度が高いほど数値は上がります。
屋外の現場に限らず、空調が不十分な倉庫・厨房・工場でも基準を超えることがあるため、自社の作業環境がどの程度の暑さになるかをまず把握しておく必要があります。
義務違反の罰則
熱中症対策の義務は努力義務ではなく、違反した場合に罰則の対象となり得る点が今回の改正の特徴です。
報告体制の整備や手順の作成・周知を怠ると、労働安全衛生法第22条に基づく事業者の措置義務違反として扱われる可能性があります。
同条違反の罰則は、労働安全衛生法の罰則規定により6か月以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金です。
加えて、熱中症で労働者に健康被害が生じた場合は、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任を問われることもあります。
罰則の有無にかかわらず、労働者の健康と事業の継続性の両面から、対策の実施は事業者にとって避けられない課題です。
令和8年クールワークキャンペーンと2026年夏の準備
厚生労働省は毎年夏を中心に「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開しており、令和8年(2026年)の期間は5月1日から9月30日までです。
このキャンペーンは、改正規則で義務化された取り組みの定着と、職場の自主的な熱中症対策の推進を目的としています。
2026年夏に向けて事業者が準備しておきたい実務は次のとおりです。
2026年夏に向けた実務の整理
- 自社の作業環境のWBGT値や気温を測定し、義務対象に該当するか確認する
- 体調不良時の報告先・担当者を定め、書面や掲示で周知する
- 退避・冷却・搬送の手順と緊急連絡網を整備する
- パート・アルバイト・外国人労働者・単独作業者にも内容を周知する
特に単独で作業する従業員は異常の発見が遅れやすいため、定期的な連絡や見回りの仕組みをあわせて検討することが望まれます。
夏の繁忙期には長時間勤務や連続勤務が重なりやすく、疲労の蓄積は熱中症のリスクを高めます。
「残業時間とは?上限規制や平均時間、企業が対応すべきことを解説」もあわせて確認し、勤務時間の管理と熱中症対策を一体で進めることが有効です。
freee人事労務での従業員情報と勤怠の管理
熱中症対策を実務に落とし込むうえでは、従業員の連絡先や勤務状況を正確に把握しておくことが基礎です。
freee人事労務では、従業員情報や緊急連絡先を一元管理できるため、体調不良時の連絡体制づくりに役立ちます。
勤怠管理の機能で出退勤の打刻や労働時間を記録すれば、長時間勤務や連続勤務の状況を確認しやすくなる点も実務上の利点です。
熱中症対策は労働安全衛生法に基づく取り組みの一部であり、法令全体の位置づけは「労働安全衛生法とは? 2024年・2025年の改正事項や事業者の義務などをわかりやすく解説」で確認できます。
よくある質問
職場の熱中症対策はいつから義務化されましたか?
改正労働安全衛生規則が2025年6月1日に施行され、一定の暑熱環境で作業させる事業者に熱中症対策が義務付けられました。
報告体制の整備と悪化防止措置の手順作成・周知が、事業者の法的義務として課されています。
詳しくは「2025年6月施行の改正労働安全衛生規則で義務化された内容」で解説しています。
どのような作業が義務の対象になりますか?
WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で、継続して1時間以上、または1日当たり4時間を超えて行う作業が対象です。
屋外作業に限らず、空調が不十分な倉庫や厨房での作業も基準を超えれば対象に含まれます。
詳しくは「義務の対象となる作業の範囲」で解説しています。
義務に違反した場合の罰則はありますか?
報告体制や手順の整備を怠ると労働安全衛生法第22条違反として扱われ得ます。この場合の罰則は6か月以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金です。
健康被害が生じた場合は、安全配慮義務違反による民事上の損害賠償責任を問われることもあります。
詳しくは「義務違反の罰則」で解説しています。
