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労働基準法2026:残業45時間と裁量労働制の議論動向を整理

自民党政務調査会が労働基準監督署の対応見直し(残業45時間ラインでの指導見直し)を求める提言を行い、厚生労働省が裁量労働制の実態調査を実施するとの報道があります。ただし2026年5月時点で、施行時期や改正案の具体的内容は確定していません。

本記事では、現行労基法の36協定上限規制の確認・議論されている2つの論点・確定事実と未確定事実の区別・中小企業がいま準備できることを扱います。

目次

なぜ今、労働基準法改正の議論が動いているのか

労働新聞と福井新聞の2つの報道を起点に、労基法改正議論の動きが目立っています。働き方改革関連法の施行から数年が経過し、運用面の見直しを求める声が出てきた構図です。

自民党政務調査会の提言(労働新聞報道ベース)

労働新聞「労基署対応見直しを 残業45時間とする指導で 自民党」の報道によると、自民党政務調査会が労基署の指導実務の見直しを求める提言を行ったとされています。提言の主旨は、月45時間ラインでの労基署の積極的指導の運用見直しです。

提言の公式文書は現時点で未確認で、施行時期や改正案の具体的内容は議論段階です。現行労基法本体の上限規制(月45時間・年360時間)は変わっていません。

厚労省の裁量労働制実態調査(福井新聞報道ベース)

福井新聞「裁量労働制 実態調査へ 厚労省 基準法改正議論巡り」の報道によると、厚生労働省が裁量労働制の実態調査を実施するとされています。

実態調査の目的は、基準法改正議論の基礎データを集めることです。

調査結果次第で制度改正の方向性が決まる構図ですが、調査の進行状況も現時点では公式公表段階に至っていません。

議論の背景:働き方改革関連法施行から数年経過しての見直し

2019年4月に時間外労働の上限規制を含む働き方改革関連法が施行され、中小企業への適用拡大は2020年4月、建設業・運輸業・医師等への適用は2024年4月と段階的に進んできました。施行から数年経過した時点で、運用面の見直しや実態調査が行われる流れは過去の制度改正でも見られたパターンです。

ただし、今回の議論が法改正につながるかどうか、いつ法案提出・施行に至るかは、現時点で未確定の領域です。

まず押さえる現行労基法|36協定の上限規制(確定事実)

議論の前提となる現行労基法の上限規制を確認します。現行法では36協定の上限が明確に定められており、違反時には罰則と労基署の是正勧告の対象となります。

月45時間・年360時間の原則上限

36協定(時間外・休日労働に関する協定届)の原則上限は、月45時間・年360時間です。1年単位の変形労働時間制を採用している場合は、月42時間・年320時間となります。

この上限は労基法第36条第4項に基づく規制で、すべての企業に適用される確定ルールです。

特別条項付き36協定の上限(100時間未満/2〜6か月平均80時間)

臨時的な特別の事情がある場合に限り、特別条項付き36協定で原則上限を超える時間外労働が可能です。ただし特別条項にも上限があります。

表:特別条項付き36協定の上限

項目上限
月の時間外労働+休日労働100時間未満
2〜6か月平均の時間外労働+休日労働80時間以内
年の時間外労働720時間以内
月45時間超の月数年6回まで

これらの上限はいずれも法定の絶対基準で、特別条項を結んでいても超過は許されません。

罰則と労基署の指導実務

上限規制違反時の罰則は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です(労基法第119条)。労基署は臨検により違反を発見した場合、是正勧告書を交付して改善を求める実務を行います。

過労死認定の労災請求件数の増加と連動して、労基署の指導実務は近年強化されている傾向にあります。今回の自民党提言は、この指導実務の運用見直しを求めるものとされています。

出典:厚生労働省「労働時間・休日」

議論の論点①|残業45時間労基署指導の見直し

自民党提言の中核とされる「労基署対応の見直し」について、報道で示されている内容と現行実務との違いを整理します。

報道されている提言内容(労働新聞ベース)

労働新聞報道によれば、自民党政務調査会は労基署が月45時間ラインで積極的に指導を行う現行の運用について見直しを求めているとされています。提言の背景には、業界団体からの声や政治的文脈があると報じられています。

ただし提言の公式文書は現時点で未確認で、詳細や法改正への進展可能性は議論段階にとどまります。

現行の指導実務との違い

現行の労基署実務では、月45時間を超える時間外労働が継続している事業所に対して臨検や指導が行われています。是正勧告や改善指示が出されるケースもあり、企業は労基署への対応負担を抱えている状況です。

議論の方向性は、この指導基準の運用見直しとされていますが、「指導見直し」と「労基法本体の上限変更」は別物である点に注意が必要です。労基法本体の月45時間上限は変わっておらず、議論の対象は労基署の運用面に限られている可能性が高いと整理できます。

確定していること・未確定なこと

確定事実と未確定事実を区別すると次のとおりです。

表:確定事実/未確定事実/報道ベースの区別

区分内容
確定事実現行労基法の36協定上限規制(月45時間・年360時間)/特別条項の上限/罰則
報道ベース自民党政務調査会の提言があったこと(労働新聞報道)
未確定提言が法改正につながるかどうか/施行時期/具体的な見直し内容

未確定の領域については、議論進展に応じて改めて確認する姿勢が必要です。

議論の論点②|裁量労働制実態調査

もう一つの議論論点である裁量労働制実態調査について、報道で示されている内容と現行制度を整理します。

厚労省実態調査の目的(福井新聞ベース)

福井新聞報道によれば、厚労省は裁量労働制の実態調査を実施するとされています。調査の目的は、労働実態の把握と基準法改正議論の基礎データ収集です。

調査結果は今後の制度改正議論で参考にされる位置付けですが、厚労省の公式公表は現時点で未確認です。

専門業務型・企画業務型裁量労働制の現行制度

現行の裁量労働制には2類型があります。専門業務型は新商品研究開発や情報処理システム分析など19業務が対象で、労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。

企画業務型は事業運営に関する企画・立案・調査・分析の業務が対象で、労使委員会の決議と労働者本人の同意、労基署への決議届の提出が要件となります。いずれの類型もみなし労働時間制を採用し、実労働時間に関わらず労使で定めた時間働いたとみなす仕組みです。

調査結果次第で起こり得る制度改正の方向性

実態調査の結果次第では、業務範囲の見直し、健康確保措置の強化、労使委員会の運用要件の厳格化などの方向性が検討される可能性があります。

ただし、具体的な改正内容は調査結果の公表後に議論が進む段階のため、現時点では予測の域を出ません。

中小企業がいま準備できること

改正が確定していない段階でも、自社の36協定運用確認と勤怠データ整備は先行して進められます。改正確定後に対応を始めるよりも、いまから運用基盤を整えておく方が移行コストを抑えられる構図です。

自社の36協定運用の現状確認

現在届け出ている36協定の内容を確認し、上限規制違反がないか、特別条項の発動回数が年6回以内に収まっているかを点検します。協定の期限切れや、業務内容の変更に伴う再協定の必要性も合わせて確認します。

36協定運用チェックリスト

  • 現行36協定の届出内容と協定期間
  • 月45時間・年360時間の遵守状況
  • 特別条項発動の月数(年6回以内)
  • 月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内の遵守
  • 年720時間以内の遵守

勤怠データの整備状況チェック

勤怠管理システムを使って残業時間を正確に集計しているか、賃金台帳に時間外労働の記録が残っているかを確認します。労基法第109条により賃金台帳・出勤簿等は5年間(経過措置で当分の間3年間)の保存義務があります。

紙のタイムカードや自己申告制で管理している場合は、客観的な記録への切替も検討対象です。改正確定後に対応を急いでも、過去のデータが揃っていないと正確な分析ができません。

議論動向のキャッチアップ方法

厚労省の労働政策審議会・労働条件分科会の議事録は公式サイトで公開されています。業界団体や社労士からの情報収集も合わせて行い、議論の進展時には社内共有体制を整えておく形が望ましい運用です。

特に2026年後半から2027年にかけては、裁量労働制実態調査の結果公表や、自民党提言を受けた検討会の動きが予想されるため、定期的なフォローが必要になります。

出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」

freee人事労務での勤怠データ整備

freee人事労務の勤怠管理機能を活用すると、残業時間の自動集計と36協定の超過状況の確認ができます。改正確定後に備えて、勤怠データの蓄積を進める基盤として機能します。

残業時間の自動集計と勤怠モニターでの確認

勤怠管理機能では、月別・年別の残業時間が自動集計されます。36協定の上限管理は「勤怠モニター」機能で行い、時間外労働(当月)・時間外労働(年間)・時間外+休日(当月)・時間外+休日(平均)・時間外労働超過回数などのアラート基準を設定できる設計です。

アラート基準を上回った従業員には勤怠モニター上にアラートアイコンが表示され、該当者だけをフィルタで絞り込むこともできます。特別条項を結んでいる事業所では、月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内・年720時間以内などの規制値に対する超過状況を勤怠モニター上で把握できます。

36協定届の電子申請の取扱い

36協定届はe-Gov等で電子申請できますが、freee人事労務から36協定届を直接電子申請できるかは、freee公式のe-Gov対応書類一覧で確認が必要です。

freee人事労務がe-Gov対応として公開している書類には、労働保険の年度更新・定期健康診断結果報告書・ストレスチェック結果等報告書などが含まれます。

改正確定後に備えるデータ蓄積

労働関係書類の法定保存期間は原則5年、経過措置で当分の間3年とされています。これを踏まえた保存体制を整えるとともに、改正後の影響分析のためには複数年分の勤怠データを参照できる状態にしておくと有用です。

部署別・職種別の集計データも合わせて整備しておくと、制度改正時の対応方針検討に役立ちます。

よくある質問

残業45時間ラインの労基署指導は、自社にも適用されているのか

労基署の臨検対象は、過去の労災発生や労働者からの申告等を契機に選定されます。月45時間超の時間外労働が継続している事業所は対象になりやすい傾向です。

詳しくは「議論の論点①|残業45時間労基署指導の見直し」で解説しています。

議論が確定する時期の見通しは?

現時点では確定情報がありません。過去の労基法改正は審議会での議論から法案提出・施行まで2〜3年かかるケースが多く、今回の議論も同程度の期間を見込む形が一般的です。

詳しくは「なぜ今、労働基準法改正の議論が動いているのか」で解説しています。

業務委託契約者は労基法の労働時間規制の対象になるか

業務委託契約者は労働者性が否定される場合、労基法の労働時間規制の対象外です。ただし、実態が労働者と変わらない場合は労働者性が肯定され、規制の対象となる可能性があります。

詳しくは「まず押さえる現行労基法|36協定の上限規制(確定事実)」で解説しています。

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