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下請法の「しわ寄せ」とは?防止対策や下請事業者との取引における注意点を解説

監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP

下請法の「しわ寄せ」とは?防止対策や下請事業者との取引における注意点を解説

下請事業者への「しわ寄せ」が問題になっており、事業者は公正な取引を求められています。違反事例を理解し、下請事業者への負担軽減が必要です。意図せず「しわ寄せ」を行うリスクを避けるために、下請法の内容を知っておきましょう。

本記事では、「しわ寄せ」の内容や具体例を紹介したうえで、国の対策取引の注意点を解説します。

目次

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下請けに生じる「しわ寄せ」とは?

「しわ寄せ」とは、通常、親事業者の不当な行動や責任の転嫁によって、下請事業者に負担や損失が押し付けられることを指します。

働き方改革を大企業が推進するうえで、下請けにあたる中小事業への「しわ寄せ」が問題になっています。

中小企業は大企業の仕事量や厳しい締め切りに対応し、金銭的な負担が出てきているのが一例です。

下請事業者を守る法律に下請法があり、親事業者には11項目の禁止事項が課せられています。

たとえば、注文した物品等の受領を拒む「受領拒否」はそのひとつです。そのほかにも、下請代金を受領後60日以内に定められた支払期日までに支払わない「下請代金の支払遅延」などがあります。

さらに、禁止事項とは別に親事業者には4つの義務も課されています。

親事業者の4つの義務

● 発注書面を交付する
● 取引に関する書類を作成・保存する
● 支払期日を定める(物品等の受領から60日以内)
● 支払いが遅延した場合、遅延利息を支払う
自社だけでなく、取引先である下請事業者にも配慮した働き方をすることが大切です。

【関連記事】知らなかったでは困る!下請法の違反行為とそれに対する罰則とは

下請けに生じるしわ寄せの具体例

具体的にどのような行為がしわ寄せにあたるのか、5つの例をあげて解説します。

なお、親事業者が下請法に違反をすると、公正取引委員会等から勧告や指導が入ります。また違反の内容によっては、最高で50万円の罰金刑が科される可能性がありますのでご注意ください。

しわ寄せの具体例

● 減額
● 買いたたき
● 不当な給与内容の変更・やり直し
● 受領拒否
● 不当な経済上の利益提供要請

減額

親事業者の一方的な理由により、見積もりから減額をしてはいけません。

たとえば、見積書にて短納期発注に特急料金を定めていた場合、その金額の支払いが求められます。

下請業者に一切の責任がないにも関わらず、親事業者の予算の問題で通常料金しか支払わない場合はしわ寄せにあたります。

買いたたき

買いたたきとは、通常よりも安い費用で代金を定めることを指します。

たとえば、親事業者が短納期発注により生じる人件費などを加味せずに、下請業者に通常より低い単価で発注してはいけません。

行政機関が指導を行ったケースに、次のようなものがあります。親事業者が見積もりよりも納期を短縮するよう下請業者に依頼したが、人件費の増加を加味せずに代金を通常通りに支払ったケースです。

不当な給付内容の変更・やり直し

急な予定変更ややりなおしにより、下請事業者に負荷をかけたケースです。

親事業者の一方的な理由により発注数量を急遽増やし、下請事業者が長時間労働を余儀なくされた場合、行政機関から改善を求められます。

逆に発注後、下請事業者側に問題がなかったにも関わらず、親事業者が発注数量を減少させる行為も、しわ寄せにあたります。

契約していたトラックの待機を親事業者が当日キャンセルし、その対価を下請業者に支払わなかった事例も、行政機関から指導を受けました。

受領拒否

不当な理由で、商品やサービスの受け取りを拒否してはいけません。

受領拒否の事例では、下請業者が納期に間に合わなかったため、親事業者が商品の受領を拒否したというものがあります。

この事例では、発注後に親事業者が納期を一方的に変更し、長時間勤務で対応した背景もあり、行政機関から指導を受けました。

不当な経済上の利益提供要請

人員の提供などを無償で依頼することもしわ寄せの事例にあたります。

下請事業者に親事業者の従業員を無償で派遣させ、休日勤務や残業が必要になった場合などがその一例です。

人員派遣以外にも、量産が終了し、発注を長期で行っていない金型などを下請事業者に無償で保管させていたケースも該当します。

下請中小事業者へのしわ寄せ防止対策

現在、しわ寄せを防止するために、国が積極的に働きかけをしています。

厚生労働省は「しわ寄せ防止総合対策」の4つの柱を発表しました。また、公正取引委員会による「最低賃金の引上げ等に伴う不当なしわ寄せ防止に向けた中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を提示しています。

それぞれで伝えられている内容をまとめて確認しましょう。

事業者が遵守すべき関連法令などを周知徹底

しわ寄せに関する理解を深めるために、事業者に以下のような情報提供を行っています。

情報提供の例

● しわ寄せに関する課題の共有をする
● リーフレットなどを用いて遵守すべき慣例・法令の内容を周知する
● しわ寄せ防止に向けた周知啓発を行う
● しわ寄せに関する相談に応じる
● しわ寄せ防止キャンペーン月間を設定する
● 事例集を用いて下請法違反の疑いがある事案を共有する
このような情報提供を通して、国はしわ寄せ防止に向けた周知啓発に取り組んでいます。

しわ寄せに関する情報提供

労働局及び労基署等はしわ寄せの情報を集め、適切に共有する仕組みを整えています。

下請事業者が声を発しやすいように公正取引委員会が設置したのが、不当なしわ寄せに関する下請相談窓口です。さらに、下請法の基本を理解できるオンライン相談会も実施しています。

しわ寄せ相談が寄せられた場合には、地方経済産業局に情報提供し、通報制度を厳格に運用しています。

しわ寄せ防止に向けた重点的な要請と下請法等の執行強化

企業全体に関連法規を共有するだけでなく、個別対応も実施しています。大企業を個別訪問して、労働時間等設定改善法の要請を行うことが一例です。

しわ寄せ事案の情報を得た場合は、厳正な対処を行い、改善を求めています。

業所管省庁による働きかけ

公正取引委員会や中小企業庁から、関連省庁に向けて周知啓発をするように働きかけも行っています。所管省庁に対し、業界団体への指導や啓発による業界全体へのアナウンスや、しわ寄せへの行政指導の活性化を求めています。

下請法を考慮した中小事業者との取引時における注意点

下請事業所と取引するときの注意点を3つ紹介します。

下請事業所と取引するときの注意点

● 納期を適正化する
● 発注内容の頻繁な内容を抑制する
● 労務費などが上昇した場合は対価に反映する
そのほか、「下請中小企業振興法の振興基準」が参考になるため、ぜひこちらもご覧ください。

納期を適正化する

週末発注・週初納入や、終業後発注・翌朝納入などの短納期発注を抑制しましょう。リードタイムを考慮して発注するように注意が必要です。

追加発注や支給物の遅延が起きた場合は、下請事業者の不利益にならないように納期変更などの措置をしなければいけません。

発注内容の頻繁な変更を抑制する

下請事業者に配慮した発注をしましょう。発注内容や数量を頻繁に変更させず、平準化させるように意識しなければいけません。

合理的な生産ができるように発注計画を長期化し、安定した提供がしやすいように、発注者側にも配慮が必要です。

労務費などが上昇した場合は対価に反映する

やむを得ない事情で下請事業者に負担がかかる場合は、対価を増やす必要があります。

たとえば、支給材を生産終了後も長期で保管するように依頼したり、特急対応を頼んだりして費用が発生する場合は、その分を金額に反映しましょう。

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まとめ

大企業の働き方改革などの影響を受け、下請事業者の「しわ寄せ」が問題になっています。

下請事業者の長期労働や低賃金を避けるために、国も対策を講じている今、大企業もその方針を遵守しなければいけません。納期の適正化や、発注内容の変更抑制などを行い、双方が共栄できる取引を目指しましょう。

よくある質問

下請けに生じるしわ寄せとは?

発注事業者の依頼により、下請事業者が一方的に負担を被ることをしわ寄せといいます。

しわ寄せの内容を詳しく知りたい方は、「下請けに生じる「しわ寄せ」とは?」をご覧ください。

下請けに生じるしわ寄せの具体例は?

減額や買いたたき、不当な給付内容の変更、受領拒否など、下請事業所が不利になる取引があげられます。

しわ寄せの事例を詳しく知りたい方は「下請けに生じるしわ寄せの具体例」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史