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障害者雇用で優遇される税金とは?企業が受けられる税制優遇措置を解説

公開日:2023/10/26

監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP

障害者雇用で優遇される税金とは?企業が受けられる税制優遇措置を解説

障害者雇用により、助成金の非課税措置と事業所税の軽減措置が受けられます。本記事では障害者雇用で受けられる税制優遇措置の内容を解説します。

障害者雇用による税制優遇措置を受けるためには、要件を満たさなければなりません。制度内容や問い合わせ窓口などを正しく理解し、自社の障害者雇用推進に役立てましょう。

より詳しく知りたい方は「障害者雇用とは?2023年度以降の障害者雇用促進法の変更点について解説」もあわせてご覧ください。

目次

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障害者雇用に積極的な企業が受けられる税制優遇措置とは

障害者の雇用や就業に積極的な企業は、次の税制優遇措置を受けられます。

税制優遇措置の内容

● 助成金の非課税措置
● 事業所税の軽減措置
いずれも恒久措置で、適用期限はありません。順番に詳しく解説します。

助成金の非課税措置(法人税または所得税)

助成金の非課税措置では、次の補助金や助成金へ課税される法人税または所得税が優遇されます。

非課税措置の対象となる補助金・助成金の種類

● 国や公共団体からの補助金、給付金
● 障害者雇用納付金制度にもとづく助成金
障害者雇用納付金制度で企業が受け取れる補助金は、次の4種類です。

障害者雇用納付金制度で企業が受け取れる助成金の種類

● 障害者作業施設設置等助成金
● 障害者福祉施設設置等助成金
● 重度障害者等通勤対策助成金
● 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
以上の補助金や助成金を固定資産の取得や改良に使うと、使った金額分を非課税にできます。

国や地方公共団体から受け取る助成金などは、基本的に収入に該当し、法人税または所得税の課税対象です。ただし、法令で非課税所得と規定されている場合は、課税されません。

助成金の非課税措置を適用すれば、法令の規定があるなしにかかわらず、固定資産の取得や改良に使った金額を非課税にできます。適用する際の会計処理は以下の通りです。

会計処理非課税になる税金
法人圧縮帳簿で損金算入法人税
個人事業主総収入金額に不算入所得税


損金を詳しく知りたい方は、「損金とは?費用・経費との違いから、算入・不算入の事例までわかりやすく解説」をご覧ください。

事業所税の軽減措置

事業所税は、東京都や政令指定都市などの、課税団体に該当する地域で事業所を構えていると課せられます。ただし、小規模事業所は除きます。課せられる事業所税は、軽減措置を受ければ、税負担の軽減が可能です。

事業所税は資産割と従業員割に分けられ、資産割は事業用家屋の延べ床面積、従業員割は従業員給与に対して課税します。

要件を満たす事業所の事業主が設置した施設の事業所税(資産割)に対し、税額控除が可能です。

事業所の要件雇用している障害者数が10人以上で、障害者の割合が労働者の総数に対して50%以上
資産割の控除対象要件を満たす事業所の事業主が「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」で設置した施設で行う事業の事業所税
控除される内容課税標準の事業所床面積2分の1相当


なお、雇用している障害者と労働者の総数に占める障害者割合の、人数カウント方法は以下の通りです。

雇用している障害者数重度以外の障害者で、短時間労働者は1人を0.5人でカウント
労働者の総数に占める障害者割合短時間労働者を除く重度障害者は1人を2人、重度以外の障害者の短時間労働者は1人を0.5人でカウント


延べ床面積が1,500平米の場合、1平米あたりの税率が600円で事業所税の資産割を考えてみましょう。この場合、事業所税の資産割は1年で90万円(1,500㎡×600/㎡[税率]×1年)が標準課税です。

しかし、事業所税の軽減措置を受ければ、床面積の2分の1相当を税額控除できるため、1年間の事業所税の資産割は45万円となります。

従業員割は、課税標準の従業員給与総額の算定で、障害者へ支払う給与総額が控除できます。また従業員割は事業所の要件が特にありません。

たとえば、全従業員への給与総額が2億円、税率が0.25%だと、事業所税の従業員割は50万円(2億円×0.25%[税率])です。

給与総額のうち障害者へ支払った給与があれば、2億円から差し引いて従業員割を求めます。障害者へ支払った給与が2,000万円なら、事業所税の従業員割は45万円です。

軽減措置で負担軽減された税額分を、ほかの予算へ充当できるでしょう。

固定資産税と不動産取得税の軽減措置は令和5年3月31日で終了

2023年3月末までの期限付き優遇措置に、固定資産税の軽減措置と不動産取得税の軽減措置がありました。

終了した優遇措置ですが、要件を満たせば軽減措置を受けられます。2023年3月末までに施設を取得し、障害者雇用の継続が軽減措置を受けるための前提条件です。

障害者を20人以上雇用し、労働者の総数に占める割合が50%以上の事業所が軽減措置を受けられます。雇用する障害者のカウント方法は、以下の通りです。

短時間労働者を除く重度障害者1人を2人としてカウント
重度以外の障害者で短時間労働者1人を0.5人としてカウント

固定資産税の軽減措置

固定資産税の軽減措置では、障害者の雇用が多い事業所の事業主が、固定資産税の減額を受けられます。

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金を使って取得した、事業用施設の固定資産税が減額対象です。該当施設の固定資産税は5年度分、所定の金額が減額されます。

減額される固定資産税の算出方法

取得価格の6分の1 × 障害者雇用割合 × 税率 = 減額される固定資産税の金額
固定資産を詳しく知りたい方は、「固定資産とは?金額基準や流動資産との違い、課税対象となる資産を解説」をご覧ください。

不動産所得税の軽減措置

不動産取得税の軽減措置では、障害者の雇用が多い事業所の事業主が、不動産取得税の減額を受けられます。

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金を使って取得した、事業用施設の不動産取得税が減額対象です。該当施設を引き続き3年以上、事業用に使用すると、取得に伴う不動産取得税が減額されます。

減額される不動産取得税の算出方法

取得価格の10分の1相当額 × 税率 = 減額される不動産取得税の金額

機械等の割増償却措置は令和4年3月31日で終了

2022年3月末までの期限付き優遇措置に、機械等の割増償却措置がありました。

要件を満たす事業主が減価償却する場合、普通償却限度額に12%の割増償却が可能になる制度です。所定期間に取得や製作、建設した機械や設備などを割増償却できました。割増償却できる対象年度は、減価償却する事業年度やその前5年以内に開始した各事業年度です。

なお、割増償却できたのは、障害者が労働に従事する事業所の資産に限られます。

減価償却を詳しく知りたい方は、「減価償却とは?対象資産や目的、計算方法をわかりやすく解説」をご覧ください。

雇用や税金の不明点は公的機関に問い合わせよう

障害者雇用で受けられる税制優遇措置は、要件を満たさなければなりません。

また、事業所税の軽減措置の資産割や、固定資産税と不動産取得税の税制優遇制度は、要件確認が必要です。要件確認の手続きは、最寄りの都道府県支部高齢・障害者業務課または高齢・障害者窓口サービス課で行います。

税制優遇制度自体への不明点などは、最寄りの税務署や都道府県税事務所に問い合わせましょう。

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まとめ

障害者雇用を実施している企業が要件を満たすと、助成金の非課税措置や事業所税の軽減措置を受けられます。

また、固定資産税と不動産所得税の軽減措置は、2023年3月末で終了しました。ただし、2023年3月末までに施設取得し、要件を満たせば所定期間は税額が軽減されます。

自社が税制優遇措置の要件を満たしているかの確認は、都道府県支部高齢・障害者業務課または高齢・障害者窓口サービス課へ問い合わせましょう。

よくある質問

障害者雇用で企業が受けられる税制優遇措置はある?

障害者雇用で企業が受けられる税制優遇措置は「助成金の非課税措置」「事業所税の軽減措置」です。

障害者雇用で企業が受けられる税制優遇措置を詳しく知りたい方は、「障害者雇用に積極的な企業が受けられる税制優遇措置とは」をご覧ください。

障害者雇用で非課税になる税金はある?

助成金の非課税措置では、助成金に課せられる法人税または所得税が非課税となります。

障害者雇用で非課税になる税金を詳しく知りたい方は、「助成金の非課税措置(法人税または所得税)」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史