令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)の雇用保険料率は、一般の事業で14.5/1000から13.5/1000に引き下げられました。給与計算ソフトの料率設定が令和7年度のままだと過大控除が発生し、従業員への差額返還処理が必要になります。
本記事では、業種別の新旧料率・賃金締切日基準による適用判定・4月給与で起きやすいミス・過大控除発覚時の修正手順・freee人事労務での反映確認までを扱います。
目次
- 令和8年度の雇用保険料率|業種別の新旧比較
- 一般の事業の料率変更(14.5/1000→13.5/1000)
- 農林水産・清酒製造/建設の事業の料率変更
- 雇用保険二事業(事業主のみ負担)は据置
- 新料率はいつから適用するか|賃金締切日基準
- 4月1日以後に支払われる賃金が対象
- 3月締め4月支給と4月締め5月支給の判定
- 賞与(一時金)の取扱い
- 4月給与で起きやすい3つのミス
- 料率更新の反映漏れ(過大控除)
- 業種コードの取り違え
- 通勤手当・現物給与の算入範囲の誤り
- 過大控除が発生した時の修正手順
- 当月内に気付いた場合
- 翌月以降に気付いた場合
- 差額返還の仕訳と賃金台帳の修正
- freee人事労務での料率反映確認
- 料率設定の確認画面
- 4月給与の再計算機能の使い方
- 修正履歴の保存
- よくある質問
令和8年度の雇用保険料率|業種別の新旧比較
令和8年度の雇用保険料率は、一般の事業で合計14.5/1000から13.5/1000に引下げられました。労働者負担と事業主負担の内訳も変更されており、農林水産・清酒製造の事業と建設の事業もそれぞれ1ポイント引下げです。
一般の事業の料率変更(14.5/1000→13.5/1000)
一般の事業の令和8年度料率は、労働者負担5/1000・事業主負担8.5/1000(うち失業等給付等5/1000+雇用保険二事業3.5/1000)の合計13.5/1000です。令和7年度は労働者負担5.5/1000・事業主負担9/1000の合計14.5/1000だったため、それぞれ0.5/1000ずつ引下げの内訳になります。
月給30万円の従業員の場合、労働者負担分の控除額は月1,650円から1,500円に150円減少します。年間では1,800円の手取り増です。
<表:令和8年度 雇用保険料率(一般の事業)>
| 区分 | 令和7年度 | 令和8年度 | 差 |
|---|---|---|---|
| 労働者負担 | 5.5/1000 | 5/1000 | ▼0.5/1000 |
| 事業主負担(失業等給付等) | 5.5/1000 | 5/1000 | ▼0.5/1000 |
| 事業主負担(雇用保険二事業) | 3.5/1000 | 3.5/1000 | 据置 |
| 合計 | 14.5/1000 | 13.5/1000 | ▼1/1000 |
農林水産・清酒製造/建設の事業の料率変更
農林水産・清酒製造の事業は16.5/1000から15.5/1000、建設の事業は17.5/1000から16.5/1000に引下げられました。いずれも1ポイントの引下げで、内訳は労働者負担と事業主負担(失業等給付等)がそれぞれ0.5/1000ずつ下がる構造です。
建設の事業は雇用保険二事業の料率が4.5/1000で一般・農林水産より1/1000高い水準が維持されています。複数業種を営む事業所は、主たる事業の業種コードで判定する必要があります。
雇用保険二事業(事業主のみ負担)は据置
雇用保険二事業の料率は、一般・農林水産・清酒製造の事業で3.5/1000、建設の事業で4.5/1000のまま据置です。引下げの対象は失業等給付等の部分のみで、事業主負担の合計も0.5/1000の引下げにとどまります。
労働者負担と事業主負担の比率が変わる点も実務上の注意点です。
年末調整や離職票作成時の保険料計算では、新旧の比率の違いを確認する必要があります。
新料率はいつから適用するか|賃金締切日基準
令和8年度料率は2026年4月1日以後に支払われるべき賃金から適用されます。具体的には、賃金締切日が4月1日以後に到来する給与から新料率を使い、3月締めの給与は支給日が4月であっても旧料率(14.5/1000)で計算する設計です。
4月1日以後に支払われる賃金が対象
雇用保険料の料率適用は「支払われるべき賃金」基準で判定します。賃金の対象期間ではなく、賃金締切日が判定の起点です。
3月1日〜3月31日締めの賃金は、たとえ支給日が4月10日であっても令和7年度料率(14.5/1000)で計算します。4月1日〜4月30日締めの賃金は、支給日が5月10日でも令和8年度料率(13.5/1000)です。
3月締め4月支給と4月締め5月支給の判定
賃金締切日と支給日の組み合わせ別に料率を整理すると、判定の境界線が明確になります。3月締め3月支給・3月締め4月支給はいずれも旧料率、4月締め4月支給・4月締め5月支給はいずれも新料率の扱いです。
月末締め翌月25日支給の事業所では、4月25日支給の給与(3月締め)が旧料率の最後、5月25日支給の給与(4月締め)が新料率の最初になります。給与計算ソフトの料率切替タイミングを事前に確認しておく必要があります。
賞与(一時金)の取扱い
賞与も給与と同じく賃金締切日基準で判定します。3月決算賞与で締切日が3月31日のものは旧料率、4月1日以後に締切日が到来するものは新料率です。
雇用保険料率は給与と賞与で同率のため、賞与計算時に別途切替を意識する必要はありません。ただし、賞与の締切日が明確でないケース(経営判断で随時支給する決算賞与等)では、支給決定日や辞令交付日を実務上の締切日と扱うのが一般的です。
4月給与で起きやすい3つのミス
4月給与計算では、料率更新の反映漏れ・業種コードの取り違え・対象賃金の算入範囲の誤りという3つのミスが頻発します。いずれも従業員からの問い合わせと差額返還処理を引き起こすため、給与計算前のチェックが重要です。
料率更新の反映漏れ(過大控除)
給与計算ソフトの料率設定が令和7年度(14.5/1000)のままだと、令和8年度料率(13.5/1000)で計算すべき4月給与が過大控除になります。月給30万円の従業員なら月150円、年収500万円の従業員なら月208円の過大控除が発生します。
少額に見えますが、従業員全員分が積み重なると修正処理の手間は大きくなります。給与計算実行前に料率設定画面で「令和8年度版」になっているかを必ず確認するのが安全です。
業種コードの取り違え
業種コードの判定ミスは、特に複数事業を営む事業所で起きやすいミスです。建設業と一般事業の両方を営む持株会社で、誤って一般事業の料率(13.5/1000)を建設事業の従業員に適用すると、雇用保険二事業の料率差(3.5/1000 vs 4.5/1000)が反映されません。
一括有期事業(建設)の特殊判定にも注意が必要です。建設業の事業所では、現場ごとの取扱いや元請・下請の関係で適用料率が変わるケースがあります。
通勤手当・現物給与の算入範囲の誤り
雇用保険料の対象賃金は労働の対価として支払う全額です。通勤手当は所得税の非課税限度額(月15万円)に関係なく全額を算入する点が、見落とされやすいポイントになります。
現物給与(食事・住宅)も労使の合意がある場合は算入対象です。出張旅費や慶弔費等の実費弁償は対象外として整理します。詳しくは「労働基準法2026:残業45時間と裁量労働制の議論動向を整理」をご覧ください。
過大控除が発生した時の修正手順
過大控除に気付いたタイミングによって対処方法が変わります。当月内なら給与明細の再発行で完結し、翌月以降になると差額返還の仕訳と賃金台帳の修正が必要になる流れです。
当月内に気付いた場合
給与支給日前に過大控除に気付いた場合は、給与計算をやり直し、明細書を再発行して支給します。すでに振込済みで支給後だが当月内なら、次回給与での調整も可能です。
従業員への説明は「料率改定の反映漏れにより、◯月分の雇用保険料が◯円過大に控除されておりました。次回給与で差額を返還いたします」といった文面で簡潔に伝えるのが望ましい形です。
翌月以降に気付いた場合
翌月以降に発覚した場合は、差額返還処理が必要です。5月給与で4月の過大分150円を返還する場合、5月給与明細に「過大控除返還」等の項目を設けて加算表示します。
賃金台帳には4月の控除額の訂正記録を残し、5月の返還処理と紐付けて管理します。源泉徴収簿への反映も忘れずに行います。
差額返還の仕訳と賃金台帳の修正
差額返還の仕訳は、社会保険料の預り金を取り崩す処理が基本形です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金(雇用保険料) | 150円 | 普通預金 | 150円 |
賃金台帳の訂正表示は、訂正前の金額に取消線を引いて訂正後を併記する方法と、システム上の修正履歴として残す方法があります。労基法第109条の保存義務(5年)を考慮し、訂正の経緯がわかる形で記録を残すのが実務の基本です。
freee人事労務での料率反映確認
freee人事労務では、会社の業種を労働保険設定で登録すると、その業種に基づいて雇用保険料率が自動適用される設計です。料率改定のタイミングでは、給与明細上の計算結果を確認し、業種設定・適用月が正しいかを点検します。
料率設定の確認画面
[設定]メニュー→「給与設定」セクション→[労働保険]のパスで設定画面を開きます。画面上部の年月ナビゲーションから確認したい年月を選び、業種設定と労働保険設定の内容を確認します。
雇用保険料率は業種によって異なるため、業種選択が誤っていると、雇用保険料の計算結果も誤った値になります。複数事業を営む事業所は、freee上の雇用保険の業種選択が実態に合っているかを確認します。
4月給与の再計算機能の使い方
すでに4月給与を計算済みで控除額に違Headers和感がある場合は、給与明細上の雇用保険料の計算結果を確認します。給与明細画面で雇用保険料の金額をクリックすると、給与ドリルダウンで内訳を確認できます。
設定や明細に誤りがある場合は、freeeヘルプセンターの案内に沿って、従業員情報、手当の労働保険料計算対象、雇用保険の業種設定などを確認・修正します。
過大控除が発覚した場合の差額返還の進め方は、当月明細を修正・再発行するのか、次月給与で調整するのかを、自社の運用ルールに合わせて決めるのが基本です。
修正内容の記録
賃金台帳は給与明細データから自動作成される仕様です。料率改定に伴う修正を行った場合は、修正内容と理由が後日確認できるよう、社内メモや業務記録を残しておきます。
よくある質問
失業等給付以外の保険料(労災・健康保険)も4月から変わりますか?
労災保険率は令和7年度から据置で、令和8年度も変更ありません。健康保険料率は協会けんぽ・健康保険組合ごとに改定時期が異なるため、社会保険料の計算の基本ルールと合わせて、加入先からの通知を確認する必要があります。
詳しくは「令和8年度の雇用保険料率|業種別の新旧比較」で解説しています。
月の途中で業種コードが変わった場合の処理は?
事業所の主たる事業が変わった場合は、変更日以後に支払う賃金から新料率を適用します。労働局への業種変更手続きも合わせて行います。
詳しくは「令和8年度の雇用保険料率|業種別の新旧比較」で解説しています。
雇用保険料率が変わると標準報酬月額にも影響しますか?
雇用保険料率の変更は標準報酬月額(健康保険・厚生年金)には影響しません。標準報酬月額は別途の改定ルール(定時決定・随時改定)で決まる仕組みです。
詳しくは「新料率はいつから適用するか|賃金締切日基準」で解説しています。
