監修 門脇一彦 岡山商科大学経営学部特任教授、キャリアセンター長・國學院大學経済学部兼任講師
小売業者などが展開するプライベートブランド商品は、スーパーやドラッグストアなどで目にする機会も増え、現在、注目が高まっています。
一般的に、同程度の品質の商品と比較してプライベートブランド商品はリーズナブルです。手の届きやすい価格のため、毎日のように物価上昇のニュースが流れるなか、消費者の支持を集めています。
本記事では、プライベートブランドとほかのブランドの違いや低価格の理由を解説します。
目次
- プライベートブランド(PB)とは?
- ナショナルブランド(NB)との違い
- ストアブランド(SB)との違い
- OEMとの違い
- プライベートブランドが安い理由は?
- プライベートブランドのメリット
- コストを下げ利益率を向上させられる
- 顧客の囲い込みができる
- プライベートブランドのデメリット
- 在庫を抱えるリスクがある
- ナショナルブランドの売上低下
- 自社でクレーム対応が必要
- プライベートブランドを展開するポイント
- ブランドコンセプトを確立し発信する
- 食品には製造元を表示する義務がある
- 適切な在庫管理・価格設定を行う
- 開業届はツールで簡単・正確に!
- まとめ
- よくある質問
- プライベートブランドとは?
- プライベートブランドのメリットは?
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プライベートブランド(PB)とは?
プライベートブランドは、コンビニやスーパー・ドラッグストアなどの小売業者や卸売業者が、自社で開発して販売する独自ブランドです。
ブランドを指す場合と、商品自体を指す場合があります。また、プライベートブランドは「自主企画商品」とも呼ばれます。
プライベートブランド商品の例
● 食料品や飲料● 衣料品
● 家電製品
● 衛生用品
● 台所用品
● 化粧品
● 生活雑貨
● 家具や寝具 など
ナショナルブランド(NB)との違い
ナショナルブランド(NB)は、メーカーが企画・開発して製造し、小売業者が販売するブランド・商品です。
ナショナルブランドは一般的に店舗を問わずどこでも販売されています。プライベートブランドは、基本的に開発を行った自社店舗や自社ウェブサイトの通信販売でのみ販売されます。
ストアブランド(SB)との違い
ストアブランド(SB)は、プライベートブランドと同義として扱われる場合もあります。
区別して考える場合、ストアブランドは元々ある既存商品をベースにして改善された商品を指すケースが一般的です。プライベートブランドのほうは、顧客のニーズに沿って新しく開発された商品である点が異なります。
OEMとの違い
OEMは「Original Equipment Manufacturing」の略です。主に製造業者が別の業者に一部の商品の設計・製造を委託することを意味します。
プライベートブランドを扱うのは主に小売業者や卸売業者です。商品の製造は他社に委託するケースが主流ですが、自社で製造までを行う場合もあります。
プライベートブランドが安い理由は?
自社で販売価格・利益率をコントロールできるプライベートブランドは、同程度の品質のナショナルブランドと比較して安い価格設定が可能です。
コストカットで原価が下がった部分を、商品の価格に柔軟に反映できるためです。コストを下げられる理由としては、卸売業者や流通など仲介面での削減が挙げられます。
また、プライベートブランドは基本的に自社の店舗に来店する顧客がターゲットであるため、広告宣伝費の削減効果も見込めます。
ただし近年では、プライベートブランドでも安さではなく品質を売りとした商品展開をするケースも見られるようになりました。価格で優位性を持たせる以外にも、プライベートブランドの戦略は多様化していると考えられます。
プライベートブランドのメリット
企業がプライベートブランドを展開するメリットは以下の通りです。
企業がプライベートブランドを展開するメリット
● コストを下げ利益率を向上させられる● 顧客の囲い込みができる
コストを下げ利益率を向上させられる
自社の流通経路の活用や、卸売業者を挟まない製造元からの直接仕入れなどの方法で、中間マージンに値するコストを削減できます。
また、基本的に既存顧客をターゲットとして販売する商品のため、一般的な商品のマーケティングと比較して広告宣伝費も削減できる点がメリットです。
ナショナルブランドの商品はメーカー希望小売価格が設定されているなど、価格設定を融通しづらい特徴があります。
しかし、自社で開発して販売するプライベートブランドは独自に販売価格を決定でき、利益率もコントロールしやすくなります。
顧客の囲い込みができる
プライベートブランドの強みは、「お客様の声」をダイレクトに取得できる点です。顧客の要望を集め、いち早く商品開発・改良に活用し、ニーズにマッチしたオリジナル商品を提供できます。
また、「店舗限定」「地域限定」など差別化も容易に実現できます。包装やパッケージのデザインを統一し、戦略的なブランディングの実施も可能です。ブランドのファンの囲い込みに成功すれば、根強い人気が期待できます。
プライベートブランドのデメリット
コストカットや顧客の囲い込みが期待できるプライベートブランドですが、実際に導入するにあたっては事前に把握しておくべき注意点も存在します。
企業がプライベートブランドを展開するデメリット
● 在庫を抱えるリスクがある● ナショナルブランドの売上低下
● 自社でクレーム対応が必要
在庫を抱えるリスクがある
プライベートブランドには在庫リスクが存在します。プライベートブランド商品が売れ残った場合、在庫を抱えるのは開発した自社です。
売れ残りを返品する先もないため、商品の需要は適切に把握しましょう。製造量は、需要を見越した入念な調整・管理が必要です。
ナショナルブランドの売上低下
プライベートブランドの売り上げが上がった場合、開発した企業の目線で見れば喜ばしいでしょう。
しかし、プライベートブランドの売り上げの割合が上がると、結果としてナショナルブランドの売上低下が懸念されます。
また、プライベートブランド商品が売り場を占める割合が多くなればなるほど、消費者にとっては選択肢が狭まります。一時的にプライベートブランドの売り上げが上がっても、長期的な視点で見た場合、顧客離れを招きかねません。
品揃え面での魅力低下は店舗・企業全体の評価の低下につながる可能性も考えられるため、商品販売のバランスには注意しましょう。
自社でクレーム対応が必要
プライベートブランドの商品に対するクレームが発生した場合、自社で対応する必要があります。
ナショナルブランドであれば、販売した商品に何らかのトラブルが生じた場合、メーカーがクレーム対応にあたるのが一般的です。
しかしプライベートブランドは自社が開発して販売する商品であるため、自社が責任を持って問題解決に努めなければなりません。
製造を他社に委託するOEMのケースでも同様です。OEMを導入する場合は品質管理の体制を整えるようにしましょう。
プライベートブランドを展開するポイント
実際に企業がプライベートブランドを立ち上げて展開し、成功させるためのポイントや注意点を紹介します。
企業がプライベートブランドを展開するポイント
● ブランドコンセプトを確立し発信する● 食品には製造元を表示する義務がある
● 適切な在庫管理・価格設定を行う
ブランドコンセプトを確立し発信する
ブランドにはブランドコンセプトが必要です。世間に品質が認知されているナショナルブランドと比較すると、プライベートブランドは認知度が低く、品質面や信頼性に不安を感じる消費者もいます。
プライベートブランドを購入の選択肢に入れてもらえるよう、不安を解消するための情報発信を行いましょう。
売り場や自社のウェブサイトなどで「注目ポイント」「開発者のこだわり」「テーマ」などを積極的に周知するのも有効です。
また近年では、持続可能な社会を目指すための取り組みが企業にも求められています。リサイクル可能な包装・パッケージを取り入れたり、環境に配慮した製造方法を採用したりするなど、SDGsの意識を念頭に置いて発信するのもよいでしょう。
食品には製造元を表示する義務がある
食品を販売する場合、食品表示法に基づき「製造所の所在地及び製造者の氏名または名称」の表示が義務付けられています。
製造所が2ヶ所以上の場合は、所在地の表示に代わって製造所に紐づく製造所固有記号を表示することも認められます。ただし、消費者から製造所・製造者の問い合わせがあった場合は、情報開示をしなければなりません。
商品を購入する人が安心して製造者の情報を確認できるよう、法律で定められた情報を適切に明記しましょう。
適切な在庫管理・価格設定を行う
プライベートブランドでは、開発した自社が在庫責任を負います。売れ残った場合の返品先もなく、過剰在庫にかかる経費は自社の負担です。
製造量の調整には、需要の見極めが重要です。適切な量の製造を計画・管理し、在庫リスクに注意しましょう。
また、少なくとも同一商圏では、プライベートブランド商品の販売価格を統一しましょう。
同じグループの店舗・同一の商品であるにもかかわらず店舗によって販売価格が違う場合、消費者に不信感を与える恐れがあります。
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まとめ
プライベートブランドは、小売業者や卸売業者などが自社で開発し販売するブランドです。ブランドの商品自体を指す場合もあります。
開発は自社で行い、製造部分を他社に委託する手法が一般的ですが、自社で製造を行うケースもあります。
プライベートブランドは、中間コストや広告宣伝費などの経費を下げられる点が特徴です。結果として、利益率をコントロールしやすくなります。
一方で在庫リスクやクレーム対応の必要性もあるため、メリット・デメリット双方を加味して展開を検討しましょう。
よくある質問
プライベートブランドとは?
コンビニやドラッグストア・スーパーなどの小売業者や卸売業者などが、自ら開発して販売するブランドや商品を指します。
プライベートブランドについて詳しく知りたい方は「プライベートブランド(PB)とは?」をご覧ください。
プライベートブランドのメリットは?
中間コストや広告宣伝費などの経費削減によって、利益率をコントロールできます。また、自社のファンになってもらうことで顧客の囲い込みを実現できます。
プライベートブランドのメリットを詳しく知りたい方は「プライベートブランドのメリット」をご覧ください。
監修 門脇 一彦(かどわき かずひこ) 岡山商科大学経営学部特任教授、キャリアセンター長・國學院大學経済学部兼任講師
1959年大阪市生まれ。神戸大学経営学研究科博士後期課程、博士(経営学)。大手空調企業で機器開発及び業務改革を実践後、ITコンサルタントを担い現在に至る。2021年より現職。経営戦略、技術管理、IT活用、医療サービスマネジメントなどを研究。