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限定正社員とは? 契約社員との違いや導入するメリット・デメリット、注意点を解説

公開日:2023/09/25

監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP

限定正社員とは?契約社員との違いや導入するメリット・デメリット、注意点を解説

限定正社員は、無期雇用の正社員のうち、勤務内容や勤務地などで限定のある社員です。限定正社員の種類、導入するメリットやデメリットを解説します。

企業の人手不足が深刻化するなか、多様な働き方を許容する制度設計は、人材の確保と定着の観点からも欠かせないプロセスです。限定正社員の内容や仕組み、導入する際の注意点を把握し、自社の人事管理に活かしましょう。

目次

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限定正社員とは

限定正社員とは、勤務地や職務、勤務時間などの範囲が限定されている正社員です。

「子育てをしながら正社員で働きたい」「親の介護のため地元で働きたい」など、働く人材にはさまざまなニーズが存在します。

限定正社員は、このような多様な働き方に合わせた雇用を実現できる制度です。厚生労働省では、限定正社員を「多様な正社員」と呼称しています。

また、近年日本は超高齢化社会へ突入し、企業にとって人手不足は重要な課題です。限定正社員制度の導入は、従業員のワーク・ライフ・バランスの実現に寄与し、人材確保につながる制度として注目を集めています

限定正社員の種類

限定正社員の主な種類は以下の3つです。

種類内容
勤務地限定正社員● 転勤が限定されている、転居を伴う転勤がないまたは転勤が一切ない正社員
● 育児や介護で転勤が困難な人材、地元での就職を希望する人材に有用
職務限定正社員● 担当する職務や業務内容が限定された正社員
● 高度な専門性のある業務、固有の資格が必要な職務などに有用
勤務時間限定正社員(短時間正社員)● フルタイムの正社員と比較し、1週間の所定労働時間が短い正社員
● 妊娠や育児、介護や持病、高齢などが理由でフルタイム稼働が難しい人材の雇用に有用
出典:厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト」

なお、限定する内容は勤務地・職務・勤務時間だけでなく、企業の状況により、多様な働き方の正社員を雇用できます。

限定正社員と正社員・契約社員の違い

限定正社員と正社員、契約社員は法律上の区別があるわけではないですが、一般的には以下のように定義づけがなされています。

名称内容
正社員労働契約の期間に定めがなく、フルタイムで働く直接雇用の社員
限定正社員正社員のうち、勤務地や職務、勤務時間などが限定されている社員
契約社員労働契約の期間に定めがある社員
出典:厚生労働省「さまざまな雇用形態」

限定正社員と正社員、契約社員の大きな違いは、労働契約の期間に定めがあるかないかです。契約社員は契約期間の満了で労働契約が終了しますが、正社員と限定社員は期間満了での雇用の終了はありません。

また、契約社員は企業との契約で勤務時間や職務、勤務地などが異なります。

限定正社員と正社員は、働き方の範囲以外の部分、たとえば福利厚生や社会保険などは多くの場合で共通します。

ただし、頻繁に転勤のある企業の場合、勤務地限定正社員と正社員では従業員の心身にかかる負担が異なるでしょう。

このようなケースでは、限定正社員と正社員の間で賃金水準に一定の差が設けられるケースもあります。

限定正社員を導入するメリット

限定正社員の導入が企業にもたらすメリットは多岐にわたります。

限定正社員を導入するメリット

● 多様な人材の確保につながる
● 働きやすい労働環境をつくれる
● 有期契約社員の受け皿になる
以下にその詳細を解説します。

多様な人材の確保につながる

限定正社員導入の大きなメリットは、多様な人材の確保につながる点です。

働く人材のなかには、フルタイム勤務や転勤が難しい人や、専門スキルを活かしたいなどのニーズをもつ人が存在します。

限定正社員で、「転勤のない事務職」「分析のみ担当するアナリスト職」などの職種を設定すれば、特定のニーズに対してアピールが可能です。幅広い層の人材へリーチできるようになり、自社の採用活動に貢献します。

働きやすい労働環境をつくれる

限定正社員の導入は、従業員が働きやすい労働環境を整備できる点もメリットです。勤務地や勤務時間が限定されれば、従業員は生活環境やプライベートの時間をコントロールしやすくなります。ワーク・ライフ・バランスの実現にもつながるでしょう。

従来は勤務地や勤務時間を限定する際、契約期間の定めのある非正規雇用で募集するなど、正規雇用と非正規雇用を二極化する場合もありました。

限定正社員であれば、正社員として安定した雇用のもと、生活設計やキャリア形成を図れます。

企業側にとっても、従業員が働きやすい労働環境をつくることは従業員の満足度や定着率に寄与します。人材採用で働きやすい環境をアピールでき、採用競争力を強化できる点も利点です。

有期契約社員の受け皿になる

2013年に労働契約法が改正され、「無期転換ルール」が定められました。有期労働契約が反復更新されて通算5年を超え、かつ従業員が申し出た場合、無期労働契約に転換しなければならない取り決めです。

限定正社員は勤務地や勤務時間を各従業員の事情にあわせて設定でき、無期契約に転換する有期契約社員の受け皿に有用です。

また、近年の人材不足のなかでは、正社員の採用が思うように進まないケースも想定されます。このようなとき、パートタイマーや契約社員など有期契約社員の限定正社員化により、人材確保を進めている企業も存在します。

無期転換ルールについては「無期転換ルールとは?企業に求められる対応と導入手順」をご覧ください。

限定正社員を導入するデメリット

限定正社員は多くのメリットがある一方、導入にはいくつかのデメリット・注意点が挙げられます。以下、2つの視点から限定正社員導入のデメリットを紹介します。

限定正社員を導入するデメリット

● 正社員との処遇のバランスが難しい
● 制度設計や人事管理の負担が増える

正社員との処遇のバランスが難しい

限定正社員と正社員は働き方が異なるため、それぞれの処遇をどうするかが課題です。

正社員に全国規模の転勤または海外転勤がある場合、勤務地限定正社員と比較すると正社員にかかる負担は大きいと想定されます。このような場合は、賃金水準に一定の差を設ける必要があるでしょう。

一方、正社員のなかにも転勤しない社員がいる場合には、勤務地限定正社員のみ負担が軽いわけではありません。そのため、正社員と限定正社員の賃金水準の差は小さいかたちが望まれます。

限定正社員と正社員で不公平がある場合、従業員が不満を抱くケースもあるでしょう。そのため、限定正社員を導入する際には、限定正社員と正社員双方に不公平感を与えない制度設計が大切です。

制度設計や人事管理の負担が増える

限定正社員を導入する際には、いくつかの制度設計が求められます。

限定正社員を導入する際に必要な制度設計

● 就業規則の雇用区分の変更
● 限定正社員の定義追加
● 限定正社員と正社員、有期契約社員を転換する制度の整備
また、限定正社員を導入すると従業員の雇用形態が増加します。そのため、勤怠管理や人事評価、給与計算などで人事労務部門の業務量が増える場合もあるでしょう。限定正社員を導入する際は、人事労務部門の負担への配慮も必要です。

限定正社員を導入する際の注意点

最後に、限定正社員を導入する際の注意点を2つピックアップして解説します。

限定正社員を導入する際の注意点

● 限定する範囲を明示する
● 従業員とのコミュニケーションを図る
以下で詳しく説明していきます。

限定する範囲を明示する

限定正社員を導入する際は、「勤務地」「職務」「勤務時間」など、限定する範囲の具体的な明示が必要です。

たとえば勤務地限定の場合、「採用時に決定した地区のみでの勤務」「都道府県をまたぐ異動を行わない」などと明示します。そのほか、職務限定の場合は「定常的な基幹業務に従事する」「商品の販売業務に従事する」などです。

限定した内容は就業規則に定めるほか、労働契約書や辞令などで従業員に通知しましょう。

従業員とのコミュニケーションを図る

限定正社員を導入する際は、制度の設計や運用に関して従業員とのコミュニケーションが大切です。新たな人事制度の導入は、従業員の理解や納得が成功の鍵を握ります。

導入予定の制度に関する十分な情報提供を行い、労働組合や過半数代表との協議を実施しましょう。幅広い従業員の利益が代表されるよう、従業員の代表者は公平性が担保されるかたちでの選任が求められます。

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まとめ

少子高齢化に伴う人手不足が深刻化するなか、限定正社員の導入は人材の確保や定着につながる施策です。これまで出産や育児、介護や高齢を理由に正社員を諦めていた人材を、正社員として活用できます。

限定する内容は勤務地や職務、勤務時間などがあるので、企業の状況に合わせた選択を行いましょう。また、雇用区分が増えることにより、個人情報の管理が難しくなるのではと不安を感じる場合は、管理ツールの導入をご検討ください。

よくある質問

限定正社員とは?

限定正社員とは、勤務地や職務、勤務時間などの範囲が限定されている正社員です。

限定正社員を詳しく知りたい方は「限定正社員とは」をご覧ください。

限定正社員を導入するメリットは?

限定正社員を導入するメリットには、多様な人材を確保できる、働きやすい環境をつくれるなどが挙げられます。

メリットを詳しく知りたい方は「限定正社員を導入するメリット」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史