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キングサーモン企業とは?行政がスタートアップと協働するプロジェクトを解説

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) アベリア人事労務コンサルティング

キングサーモン企業とは? 行政がスタートアップと�協働するプロジェクトを解説

キングサーモン企業とは、先端的なプロダクトやサービスでグローバル市場を席捲し、後続するスタートアップのロールモデルとなる企業のことです。

東京都では、キングサーモン企業の輩出を目的に「キングサーモンプロジェクト」を実施しています。

グローバルな活躍を目指すスタートアップ企業にとっては自社を大きく成長させるためのきっかけになるため、キングサーモン企業のことが気になっている経営者の方も多いでしょう。

本記事では、キングサーモン企業の概要キングサーモンプロジェクトの実施内容公募内容などを解説します。

目次

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キングサーモン企業とは

キングサーモン企業とは、先端的なプロダクトやサービスを生み出して世界で活躍し、後続するスタートアップのロールモデルとなるような企業のことです。

なお、東京都では下記のように定義しています。

社会課題の解決に資する先端事業を東京から世界に普及させて急成長し、成熟都市東京の一翼をになうとともに、後続のベンチャー精神に燃える人にとってグローバルスタートアップのロールモデルとなるような企業

出典:東京都「行政×スタートアップの オープンイノベーションのガイドライン」

東京都では、スタートアップの国内外での成長を後押しする事業として「キングサーモンプロジェクト」を令和元年にスタートさせました。

本プロジェクトでは、東京都が抱える社会課題の解決に繋げる先端プロダクトを有するスタートアップと協働し、キングサーモン企業への成長を後押しすると同時に、東京都の抱える問題の解決も目指しています。

なお、キングサーモンの意味は、世界を席捲するスタートアップの輩出サイクル確立を「魚のサケ」の生態になぞらえた表現です。

「東京とともに成長したスタートアップが、グローバルの大海で大きく成長し、東京で後続のスタートアップを生み、育てるような存在になってきてもらいたい」という願いが込められています。

キングサーモンプロジェクト推進の背景と目的

キングサーモンプロジェクト推進の背景には主に2つあります。

ひとつ目は、世界的なイノベーションの競争が激化するなか、先端的なプロダクトやサービスを生み出すスタートアップ企業の存在が重要視されつつあることです。

海外ではユニコーン企業と呼ばれるスタートアップ企業が多数輩出されていますが、日本ではこのような企業が少ない状態です。そのため、日本でもイノベーションの担い手となるスタートアップ企業の輩出が求められています。

2つ目は、東京がグローバルな都市間競争に打ち勝ち、持続的成長を実現するためには、有望な先端事業を発掘して、イノベーションによる生産性向上を図っていく必要があることです。

東京では、今後人口減少社会を迎えるなど、さまざまな社会課題を抱えており、先端事業が有力な解決手段となることが期待されています。

このような背景のなか、キングサーモンプロジェクトでは以下のプロセスを通じて、グローバル市場を席捲する課題解決型のロールモデルとなるスタートアップ企業を、東京から輩出することが目的です。

キングサーモンプロジェクトのプロセス

  1. 先端事業と都政課題のマッチング
  2. 都政の現場を活用した実証実験と販路拡大のための戦略立案などの支援
  3. 事例のモデル化による水平展開

また、課題解決型のスタートアップ企業の輩出とともに、「起業→拡大→イグジット(株式公開などによる利益回収)→次の起業(または支援)」という起業サイクルの確立によって、イノベーションによる東京の成長と社会課題の解決を目指しています。

キングサーモンプロジェクトの実施内容と流れ

キングサーモンプロジェクトは以下の4つの内容から構成されています。

実施内容と流れ

  • 実証実験
  • 公共調達の促進
  • 海外販路拡大に向けた戦略立案および実行支援
  • 水平展開

それぞれ解説します。

1 実証実験

採択されたスタートアップ企業へ都政現場を実証フィールドとして提供することで、東京都が抱える社会課題の解決に資するプロダクトやサービスを用いた実証実験を実施します。

たとえば第1期(令和元年度採択)では、力仕事や現場での腰の負担を軽減するアシストスーツを提供する企業が、介護事業や福祉現場での自社商品の有用性を検証しました。

2 公共調達の促進

東京都が実証実験の結果を踏まえて、社会課題の解決に資すると認められるプロダクトやサービスを認定し、東京都の各部署での契約に基づく購入などを促進します。

ただし、あくまでも促進のため、購入などを確約するものではない点に注意が必要です。

なお、認定を受けるには実証実験終了後、別途東京都に申請しなければいけません。認定の詳細は採択企業として選ばれたあとに確認ができるので、覚えておきましょう。

3 海外販路拡大に向けた戦略立案および実行支援

採択企業によるプロダクトやサービスの海外展開を想定し、トップセールスや海外展開にかかわる方策の検討・支援を実施します。

たとえば第2期(令和3年度採択)の採択企業は、2022年にスペインで開催されたSmart City Expo World Congressで、日本パビリオン内の東京ブースで出展し、リアルメタバースプラットフォームの紹介を行いました。

4 水平展開

最後に、本事業で得られた成果を「スタートアップ×社会課題解決」の成功事例のモデルとして、後続のスタートアップ企業などへ水平展開します。

具体的には、採択企業と連携したPR事業や、世界を席捲するスタートアップ企業を継続的に輩出するための仕組みの検討などです。

たとえば東京都主催の「東京都 ASAC×KING SALMON PROJECT 合同開催セミナー~シード期におけるスタートアップの成長戦略~」では、採択企業が登壇し、製品開発から販売までの経緯、市場のニーズに応えるために行った改革や販売戦略などが共有されました。

令和5年度キングサーモンプロジェクトの公募内容

キングサーモンプロジェクトの採択企業となるためには、応募が必要です。事業のテーマや分野などの指定はありませんが、応募資格やスケジュールなど細かい決まりがあるため、確認しておく必要があります。

令和5年度キングサーモンプロジェクトの公募内容を紹介します。

プロジェクトの応募資格

令和5年度キングサーモンプロジェクトの応募資格は以下のすべてを満たすスタートアップ企業です。

  1. 東京都内において事業展開を行っていること、又は行おうとしていること。
  2. 概ね創業10年を超えないこと。
  3. 応募時点で株式市場において未上場であること。
  4. 既に売上計上しているプロダクト・サービスを有する事業者であること。
  5. プロジェクトの実施能力を有しており、かつ、事業継続するにあたって財務基盤の安全性が確保されていること。
  6. 本事業で実施するプロジェクトについては、国や他自治体からの委託や助成を受けておらず、令和6年3月31日までの間は受けない予定であること。
  7. 地方自治法施行令(昭和26年政令第16号)第167条の4の規定に該当しない者であること。
  8. 会社更生法(平成14年法律第154 号)第17条及び第30条の規定による更生手続き開始の申立てがなされている者でないこと。
  9. 民事再生法(平成11年法律第225号)第21条の規定による再生手続き開始の申立てがなされている者でないこと。
  10. 反社会的勢力またはそれに関わるものとの関与がないこと。
  11. 応募主体者が連携企業とコンソーシアムを組んでプロジェクトを実施する場合には、連携企業が上記の⑥から⑩のいずれにも該当しないこと。

出典:東京都「プロジェクトの公募」

応募後のスケジュール

応募後は、以下のスケジュールで進みます。


スケジュール実施内容実施時期
①書面審査課題解決の実現性や企業の成長性などに基づき書面審査を実施応募後、1〜2週間程度で審査結果を通知予定
②深掘ヒアリング書面審査通過後、プロジェクト仮設の検討などに関してヒアリングを実施個別に日程調整
③行政現場マッチング行政現場と調整を行い、プロジェクトの実施可能性や受入可否を検討個別に日程調整
④プレゼン審査マッチングした企業に対して審査基準に基づくプレゼン審査を実施個別に日程調整
⑤プロジェクト組成-できるだけ早期のプロジェクト組成を目指す
出典:東京都「プロジェクトの公募」

プロジェクトの応募方法

プロジェクトの応募には、以下の書類が必要になるので、確認しておきましょう。

応募書類

  • 応募申請書
  • 応募にあたっての表明
  • 発行後 3ヶ月以内の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の類(写)
  • 税務署に提出した直近の決算報告書一式(B/S、P/L、CF 計算書)

応募申請書と応募にあたっての表明は、東京都のキングサーモンプロジェクト特設サイトからダウンロードが可能です。

その他、必須ではありませんが、応募申請書を補足する内容を示す資料(パンフレットなど)の提出をすることもできるので、状況に応じて準備しておきましょう。

なお、各書類には細かい決まりがあります。たとえば、応募申請書はパワーポイントで計15枚以内や、複数のプロジェクトに応募する場合は、応募するプロジェクトごとに応募申請書の準備と提出が必要などです。

応募の際は、詳細をしっかりと確認するように注意してください。

必要書類の提出期間と提出方法

必要書類の提出期間は、募集の開始から採択企業予定数が埋まるまでです。なお、令和5年度は、令和5年7月26日に募集が開始しており、採択企業数3件が決定した時点で締め切りになりました。次回の公募に応募希望の場合は注意しましょう。

また、書類の提出方法は電子メールのみとなっており、持ち込みや郵送は行っていません。


提出先メールアドレスkingsalmon@bornrex.com
提出先協働促進サポーター(株式会社ボーンレックス)

その他、複数プロジェクトに応募する場合には、応募するプロジェクトごとに別メールでの応募が必要になるので、覚えておきましょう。

採択企業に選ばれるためには、自社の状況を正確に把握し、しっかりと申請を行うことが大切です。

採択企業となるためには、できるだけ早期の応募が好ましいですが、慌てずに、まずは自社の状況を把握することから始めてください。

まとめ

キングサーモン企業は、東京都が実施する「キングサーモンプロジェクト」によって輩出を目指す「グローバルな活躍かつ、後続するスタートアップのロールモデルとなる課題解決型の企業」のことです。

キングサーモンプロジェクトの採択企業に選ばれれば、東京都のサポートを受けながらグローバルで活躍できる企業を目指すことができるため、企業にとっては大きなメリットになるでしょう。

ただし、採択企業になるためには、応募要件を満たしたうえで、必要書類を提出しなければいけません。

応募期日の締め切りは設けられていませんが、予定している採択企業数に達した時点で締め切りです。次回の公募に応募する場合は早めの行動を心がけましょう。

よくある質問

キングサーモン企業とは?

キングサーモン企業とは、先端的なプロダクトやサービスを生み出して世界で活躍し、後続するスタートアップのロールモデルとなるような企業のことです。

キングサーモン企業に関して詳しく知りたい方は「キングサーモン企業とは」をご覧ください。

キングサーモンプロジェクト推進の背景は?

世界では先端的なプロダクトやサービスを生み出すスタートアップ企業の存在が重要視されつつあり、日本でもグローバルで活躍するスタートアップ企業の輩出が求められています。

また、東京では人口減少社会を迎えるうえでさまざまな社会課題を抱えており、先端事業が有力な解決手段になると期待されています。

キングサーモンプロジェクト推進の背景を詳しく知りたい方は「キングサーモンプロジェクトの背景と目的」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ)

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴 良史