バックオフィスのトレンド情報をまとめて解説!

マイナンバー法の一部改正で何が変わる? 変更内容から国民への影響まで解説

公開日:2023/06/24

監修 松浦 絢子 弁護士

マイナンバー法の一部改正で何が変わる? 変更内容から国民への影�響まで解説

2023年、マイナンバー法の一部を改正する法律案が国会に提出されました。今回は法改正による変更点や、国民にどのような影響があるのかを解説します。

マイナンバーおよびマイナンバーカードは、これからのデジタル社会の基盤として位置付けられています。

マイナンバーカードの普及が促進されるなか、注目の集まるマイナンバー法の改正案について理解を深める必要があるでしょう。

そもそもマイナンバーカードは作るべきなのか? については、「マイナンバーカードは作るべき? メリットとデメリットについて解説」をご覧ください。

目次

スモールビジネスを、世界の主役に。

freeeは会計・人事労務ソフトなどのサービスを開発・提供し、バックオフィス業務の煩雑さからの解放を目指します。経営に関するお悩みは、ぜひfreeeにご相談ください!

マイナンバー法とは

マイナンバー法の正式名称は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」です。

これまでマイナンバー法により、社会保障・税・災害対策分野の限られた範囲で、個人番号(マイナンバー)の利用が認められていました。

マイナンバー法では個人番号(マイナンバー)の利用や保護など、取り扱い方を定めています。

マイナンバー法等の一部を改正する法律案とは

マイナンバー法等の一部を改正する法律案の目的は、マイナンバーおよびマイナンバーカードの利用促進です。

マイナンバー法等の一部を改正する法律案は、2022年に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の内容を踏まえたものです。

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、マイナンバー制度をデジタル社会の基盤として位置付けています。

また国民にとって利便性を感じてもらうことを前提に、マイナンバーの利用範囲を拡大していく旨も記されています。

マイナンバー法等の一部を改正する法律案により、法令準備を実施し、2024年以降にシステムなどの整備を行う計画です。なお2025年までに新しい制度の施行を目指しています。

マイナンバー法改正の6つのポイント

マイナンバー法改正の主なポイントは6つです。

マイナンバー法改正のポイント

1. マイナンバーの利用範囲の拡大
2. より迅速な情報連携に向けた見直し
3. マイナンバーカードと健康保険証の一体化を進める
4. マイナンバーカードの取得・利用に関する利便性の向上
5. マイナンバーカードの券面見直しで「本人確認」機能を強化
6. 公金受取口座の登録を促進
以下でそれぞれ詳しく解説します。

1.マイナンバーの利用範囲の拡大

これまで社会保障・税・災害対策分野の限られた範囲で、個人番号(マイナンバー)の利用が認められていました。

改正により、マイナンバーを利用できる範囲が下記のような場面にも広がります。

マイナンバーの利用範囲

● 理容師・美容師・小型船舶操縦士・建築士などの国家資格に関する手続き
● 自動車登録に関する事務
● 在留外国人に関する事務
● その他(国家公務員の手当の支給など)の事務
出典:デジタル庁「マイナンバー法の改正事項」

国家資格や各種免許の管理の多くは、窓口で手続きが必要で、紙面で処理が行われています。そのため、資格保有者と行政の双方に負担がかかっていました。

マイナンバーを利用すればオンラインでの申請や添付書類の省略が可能になり、事務手続きの負担を軽減できます。

マイナンバー法の改正事項
出典:デジタル庁「マイナンバー法の改正事項」

同様に自動車の登録に関する事務や、外国人の在留資格の更新手続きなどでも、必要な限度でマイナンバーの利用が認められます。

2.より迅速な情報連携に向けた見直し

従来のルールでは、法律に規定がない事務でのマイナンバー利用はできませんでした。しかしコロナ禍を経て、迅速な情報連携の必要性が重視されるようになりました。

今回の改正により、法定に準ずる事務であれば、マイナンバーの利用が可能になります。「準ずる事務」とは、法定されている事務と趣旨や目的が同一であり、内容や作用の面が基本的に同じ事務です。

また利用範囲を拡大するための法改正が不要となったため、より速やかな情報連携の実現が期待できます。

3.マイナンバーカードと健康保険証の一体化を進める

マイナンバーカードの「健康保険証利用」を推進するため、下記の2点が変わります。

健康保険証利用の改正点

● 乳児の場合、マイナンバーカードの顔写真が不要となる
● 資格確認書*が提供される
※保険証の代わりになる証明書

乳児の場合、顔つきの変化が早いためマイナンバーカードの顔写真は必要ありません。

またマイナンバーカードと健康保険証が一体化された後、マイナンバーカードでオンライン資格確認ができない人は「資格確認書」の取得が認められました。

オンライン資格確認とは、マイナンバーカードのICチップや健康保険証の記号番号等により、オンラインで保険資格の情報を確認することです。

健康保険証が廃止され、マイナンバーカードと一体化されると、マイナンバーカードを持っていない人はオンライン資格確認ができなくなってしまいます。

そのためマイナンバーカードを持っていなくても、医療機関の窓口で資格確認ができるように資格確認書が発行されることになりました。

資格確認書の申請は、マイナンバーカードを紛失・更新中の人や、介護が必要な高齢者、子どもなどの申請を想定しています。

資格確認書があればマイナンバーカードがなくてもスムーズに保険診療を受けられますが、原則本人による申請が必要です。

なお有効期限は1年とされており、行政と申請者の双方に事務手続きの負担がかかる点が危惧されています。

4.マイナンバーカードの取得・利用に関する利便性の向上

マイナンバー法の改正に伴い、下記のようにマイナンバーカードがより取得しやすくなります。

マイナンバーカードが取得可能な窓口

● 国外転出者が在外公館で、マイナンバーカードに関する事務手続きが可能になる
● 市町村の指定する郵便局で、マイナンバーカード申請の受付ができる
これまで、国外に居住する人がマイナンバーカード申請を行う場合、一時帰国したうえで本籍地市町村まで行く必要がありました。

改正後は在外公館で、マイナンバーカードの交付や、電子証明書の発行などに関する事務が行えるようになります。

マイナンバー法の改正事項
出典:デジタル庁「マイナンバー法の改正事項」

また健康保険証とマイナンバーカードの一体化に向け、郵便局でもマイナンバーカードの交付申請の受付が可能になります。

暗証番号の入力が必要な「電子利用者証明」を行わず、利用者を確認する方法の規定も整備される予定です。マイナンバーカードはますます便利なツールになるでしょう。

5.マイナンバーカードの券面見直しで「本人確認」機能を強化

戸籍や住民票の氏名に「振り仮名」が法制化されることを踏まえ、マイナンバーカードの券面にも氏名の振り仮名が追加されます。

公証された振り仮名で、各種手続きの本人確認として利用できるようになります。

また希望する場合は氏名のローマ字表記および西暦の生年月日を、追記欄に記載することも可能です。

マイナンバー法の改正事項
出典:デジタル庁「マイナンバー法の改正事項」

6.公金受取口座の登録を促進

マイナンバー法の一部改正で、公金受取口座の登録方法が増えます。

従来の公金受取口座の登録方法は、次の3種類です。

従来の公金受取口座の登録方法

● マイナポータル経由
● 行政機関等経由
● 金融機関経由(2023年度下期以降に順次開始予定)
上記の公金受取口座の登録方法に加えて、新たに「行政機関等経由登録の特例制度」が追加されます。

「行政機関等経由登録の特例制度」では、既存の給付受給者に「公金受取口座として登録することに同意するか」の回答を求めます。

そして一定期間内に不同意の回答をしない場合、当該口座を登録される仕組みです。

デジタルに慣れていない人でも簡単に登録できるため、公金受取口座の登録の促進が期待されます。

マイナンバー法が一部改正された背景

マイナンバー法が見直された背景には、社会における「抜本的なデジタル化の必要性」の顕在化があります。

社会のデジタル化の重要性が認識されるとともに、マイナンバーとマイナンバーカードの利用促進に重点が置かれました。

しかし現状では、デジタル化が進んでいない分野がある、国外在住者のマイナンバーカード取得が進まないなど、多くの課題があります。

マイナンバー法は国民の利便性向上を前提として、マイナンバーカードの普及を図り、デジタル社会の基盤を築くために改正されます。

マイナンバー法の一部改正によるメリット

マイナンバー法の一部改正によって生じるメリットは次の3つです。 【事例】

マイナンバー法の一部改正によって生じるメリット

● マイナンバーカードを取得しやすくなる
● より円滑に保険診療を受けられるように
● 各種手続きを効率的に行えるようになる

マイナンバーカードを取得しやすくなる

在外公館や郵便局など、申請可能な窓口が増えるため、マイナンバーカードを取得しやすくなります。

とくに国外転出者の場合、これまではカード交付のために本籍地市町村まで足を運ばなければなりませんでした。今回の改正によって一時帰国する必要がなくなったため、大幅な負担削減といえます。

また、市町村から指定された郵便局であれば、マイナンバーカード交付申請の受付が可能です。

より円滑に保険診療を受けられるように

マイナンバー法の一部改正により、乳児のマイナンバーカードの顔写真が不要になり、より使いやすくなりました。

これまで、乳児の急速な成長による顔つきの変化への対応が難しい点や、適切な顔写真を撮るのに苦労する点が問題視されていました。

そこで今回の改正により、乳児のマイナンバーカードの取得や、窓口での本人確認がスムーズになると予想されます。

またマイナンバーカードを用いた、健康保険のオンライン資格確認ができない人は、「資格確認書」の取得が認められました。

そのため、今までマイナンバーカードを取得できなかった人や、紛失・更新中の人でも保険診療が受けられるようになります。資格確認書の取得に複雑な手続きは必要なく、保険者が認めた代理人に対して交付可能です。

これまでマイナンバーカードと健康保険証の一体化によって、「保険診療が受けられない」という事態が発生していました。

そうした事態を防ぐため、上記のような乳児の顔写真を不要にしたり、オンライン確認を緩和したりする改正が行われました。

マイナ保険証については、「マイナ保険証とは? 制度の概要やメリット・デメリット、登録方法をわかりやすく解説」をご覧ください。

各種手続きを効率的に行えるようになる

マイナンバーおよびマイナンバーカードの利用範囲拡大により、各種手続きの効率が上がり、国民にとって利便性が向上します。

たとえばマイナンバーを利用すれば、国家資格の登録や変更手続きでの添付書類が不要となります。

行政だけでなく、国民にとっても手続きの負担が少なくなるのはメリットです。

まとめ

デジタル社会の基盤として、マイナンバーおよびマイナンバーカードの普及・利用の促進が求められています。

マイナンバー法の一部改正の目的は、国民の利便性向上を前提とし、国民と行政の双方の負担軽減や、事務の効率化を図ることです。

今回の法改正で国民にとってマイナンバーカードを取得しやすく、利用できる場面が増える点はメリットといえます。

よくある質問

マイナンバー法とは

マイナンバー法とは、個人番号(マイナンバー)の取り扱いに関する規則などを定めた法律です。

マイナンバー法を詳しく知りたい方は、「マイナンバー法とは」をご覧ください。

マイナンバー法等の改正案とは

マイナンバーおよびマイナンバーカードの利用促進のため、マイナンバー法を一部改正し、国民の利便性を高める内容にしたものです。

マイナンバー法等の改正案を詳しく知りたい方は、「マイナンバー法等の一部を改正する法律案とは」をご覧ください。

監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

監修者 松浦絢子