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病気休暇とは?休職との違いや企業が導入するメリット・デメリット、注意点を解説

監修 寺島有紀 社会保険労務士

病気休暇とは?休職との違いや企業が導入するメリット・デメリット、注意点を解説

病気休暇はケガや病気治療のために使える休暇制度です。病気休暇を取得できる職場なら、ケガや病気を抱えた従業員も働きやすく、離職を回避できます。

病気休暇の制度導入を検討する企業の経営者や、人事担当の方は、他社の導入状況導入するメリットなどへの理解を深めておきましょう。

本記事では、病気休暇の概要や休職制度との違い、企業が導入するメリットやデメリット、導入時の注意点を解説します。

目次

病気休暇とは?

病気休暇はケガや病気の療養目的で取得でき、通常の年次有給休暇とは別に付与される休暇です。治療が必要な疾病を抱える人や、療養しながら就労する人をサポートします。

病気休暇に該当する休暇は、傷病の療養目的で利用できる以下の休暇や制度です。

病気休暇に該当する休暇や制度

● 年次有給休暇とは別に、療養のために使える休暇
● 通院や治療のために時間単位あるいは半日単位で取得できる休暇
● 療養中や療養後の時短勤務制度
● 失効した年休を積み立てて長期療養時に使える制度
名称や取得日数などは企業ごとに異なり、就業規則に詳細が記載されます。シックリーブ休暇と呼ばれる場合があるほか、取得日数も3〜30日など企業によって大きく異なります。

休職制度と病気休暇の違い

休職制度と病気休暇は、休み方や休んでいる期間の過ごし方などが異なります。

休職制度は何らかの事情で通常通りに働けない場合、労働契約を維持したまま就労義務が免除される制度です。

ケガや病気、その他の事情で働けない状態になると、労働者側は労務提供できません。使用者と交わした労働契約が果たされないため、労働契約の解除、つまり解雇事由になり得ます。

しかし、休職制度を使える場合、契約解除が一定期間猶予されます。休職制度を使って十分な休息や治療をし、働ける状態に回復すれば職場への復帰が可能です。

休職制度に該当する制度には、療養休職・出向休職・刑事休職・公務休職・特別休職などが挙げられます。

民間企業ではほとんどの場合、休職中の給与は無給です。しかし、業務あるいは通勤が原因の疾病やケガであれば労災による休業補償、業務あるいは通勤と関係のない疾病やケガによる休職であれば、傷病手当金の支給を受けられる可能性があります。

一方、病気休暇は休職制度とは別で、ケガや病気の治療・療養のために取得できる休暇です。休職制度とは異なり、まとまった期間を休む以外に、単日や時間単位で休暇取得し、働きながら療養するケースもあります。

なお、民間企業に病気休暇や休職制度の法的な規定はありません。就業規則で内容を定めるため、企業ごとに制度の有無や内容は異なります。

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公務員の病気休暇

国家公務員の病気休暇は、人事院規則一五―一四の第21条で定められています。療養のためにやむを得ないと認められれば、国家公務員は必要最小限の期間、病気休暇を取得可能です。ただし、臨時職員・条件付き採用期間の職員・検察官は適用対象から外れます。

また給与減額の対象外となるため、病気休暇の期間中も給与は支払われます。ただし除外日を除き、連続して90日を超える期間の取得はできません。

地方公務員の病気休暇は、地方公務員法に基づく地方条例で定めています。地域ごとに差違はありますが、国家公務員と同じく連続90日を上限と定めるケースが多いです。

民間企業の病気休暇

民間企業の病気休暇は、企業ごとに就業規則などで定めるため、名称や内容が異なります。また、病気休暇の制度自体を導入していない企業も珍しくありません。

病気休暇の導入状況は2割程度

お勤め先に病気休暇制度を望む人は多いですが、制度を導入している民間企業はまだ少ない状況です。

厚生労働省の働き方・休み方改善ポータルサイトでは、特別な休暇制度に関する資料を公開しています。

特別な休暇制度に関する調査結果もあり、お勤め先に特別休暇制度があってほしいかを労働者に問う設問もありました。54.6%が有給扱いの病気休暇を望み、8.5%が無給でも病気休暇を望む結果が出ています。

しかし、企業側の回答では病気休暇を導入している割合は低い状況です。同調査では病気休暇を導入している企業は19.7%でした。

出典:厚生労働省「令和4年度「仕事と生活の調和」の実現及び 特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査 報告書」

厚生労働省の令和4年就労条件総合調査でも、病気休暇を導入する企業の割合を調査しています。調査結果では、病気休暇を導入する企業は、22.7%でした。

出典:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」

いずれの調査も病気休暇を導入する民間企業の割合は2割前後です。また、従業員規模の大きい企業は導入割合が高く、小さくなるほど割合が低下する傾向も見られます。

療養しながらでも働きやすい職場の整備は、多様な働き方を推進するために欠かせません。各自の事情に合った柔軟な働き方を実現するため、民間企業も病気休暇の制度整備が必要です。

病気休暇は有給扱いになる?

病気休暇が有給扱いになるかは企業ごとに異なりますが、制度導入している企業も無給のケースがほとんどです。

人事院では国家公務員の勤務条件を検討する資料を作るため、民間企業の勤務条件制度などを調査しています。

休暇制度に関する調査では、病気休暇の制度がある企業のうち有給扱いにしている企業は30.4%でした。休暇制度を導入していても、有給扱いにしている企業は現状多くありません。

出典:人事院「民間企業の勤務条件制度等調査」

また、賞与は仕事の成果に応じて支給されます。長期間病気休暇を取っていると、評価される業務への貢献が減るため、ボーナス査定への影響も考えられるでしょう。

企業方針や査定方法でも異なるため断定できませんが、病気休暇の取得が収入に影響するケースも存在します。

病気休暇を企業が導入するメリット

病気休暇を企業が導入するメリットは以下が挙げられます。

病気休暇を導入するメリット

● 職場内での感染症拡大の防止や、ケガ・病気の早期回復
● ケガ・病気の療養が理由の離職を回避
● 従業員の健康へ寄与する制度充実で企業の魅力向上
病気休暇がない場合、体調不良でも無理をして従業員が出勤するかもしれません。

感染力の強い疾患にかかっていた場合、職場内での感染拡大リスクが高まります。人から人にうつらない病気やケガの場合も、無理をすれば症状悪化の原因です。

ケガや病気のなかには長期的な治療や療養、リハビリが必要なケースもあります。病気休暇の制度が整っていないと、働きながらの治療は困難と考え、退職する従業員も出てくるでしょう。

治療や療養のために休暇を取得しながら働ける制度を用意していれば、ケガ・病気が理由の離職を減らせます。

また、従業員の健康を考え、治療しながらでも働きやすい制度が整っていれば、企業の魅力向上にも効果的です。従業員を大切にする企業イメージがつけば、求職者の増加につながり、人材確保にも役立つでしょう。

病気休暇を企業が導入するデメリット

病気休暇を導入すると、休む従業員の労働力を何らかの方法で補てんしなければなりません。人件費コストが増加する点は、企業が病気休暇を導入するデメリットです。

短期間なら、残りの従業員でカバーできるかもしれません。しかし、長期に渡って病気休暇を取得する場合は、人員補充しなければ業務に支障をきたすケースもあるでしょう。

人員補充しない場合、休む従業員の業務をフォローする従業員へ過度な負担がかかり、職場への不満を生む要因となるでしょう。過労から健康を損なったり、転職を考える引き金になったりします。

人員補充すれば業務負担は解消されますが、雇う人数が増える分、人件費増を避けられません。休んでいる従業員が復帰した際は、増員した従業員をどう扱うかも考慮が必要です。

病気休暇を導入する場合、従業員の休暇取得が業務に与える影響を考慮しましょう。そして、病気休暇を必要とする従業員が安心して利用できる社内体制も必要です。

企業が病気休暇を導入する場合の注意点

病気休暇を導入する場合、企業は次の点に注意しましょう。

病気休暇を導入する場合の注意点

● 就業規則に病気休暇を明記する
● 就業規則を変更したら労働基準監督署へ届け出る
● 従業員に周知し、必要に応じて取得させる
順番に詳しく解説します。

就業規則に病気休暇を明記する

企業の休暇制度は、就業規則に記載しなければならない「絶対的記載事項」として扱われます。新たに休暇制度を設けた場合は、就業規則に明記しましょう。既存ルールを変更して制度を新設した場合も、内容の修正が必要です。

休める日数や取得時の手続きも明確にし、就業規則の記載内容を整えましょう。

就業規則を変更したら労働基準監督署へ届け出る

就業規則の作成・変更時は、所轄の労働基準監督署への届け出が必要です。病気休暇の導入に伴う就業規則の変更時は、忘れずに届け出ましょう。

就業規則を変更する際の手順は「就業規則を変更するには?就業規則の変更届けの作成方法」で、くわしく解説しています。

従業員に周知し、必要に応じて取得させる

就業規則を変更したときは従業員に周知し、必要に応じて取得できる体制を整えましょう。

就業規則の周知は企業側の義務であり、制度内容を知らなければ従業員が適切に利用できません。また、形式だけの制度導入にしないため、休暇取得した際のフォロー体制も必要です。

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まとめ

病気休暇はケガや病気の療養のために使える休暇で、法定の年次有給休暇とは別に付与されます。

民間企業では、病気休暇の導入率はまだ低い状況です。また、法律上の規定はないため、企業ごとに内容は異なります。

病気休暇を企業が導入すれば、感染症の拡大防止や体調不良の早期回復につながるでしょう。療養を理由に離職する従業員が減り、離職率の低下や休暇制度の充実化などによって企業の魅力も向上します。

なお、休暇を取る人の業務をフォローするため、状況にあわせて人員の補てんも検討が必要です。導入の際は就業規則へ明記し、労働基準監督署へ届け出て、従業員への周知も行います。

働きやすい職場環境を整えるため、病気休暇の制度導入を検討しましょう。

よくある質問

病気休暇とは?

病気休暇はケガや病気療養のため、通常付与される年次有給休暇とは別で取得できる休暇制度です。

病気休暇を詳しく知りたい方は「病気休暇とは?」をご覧ください。

病気休暇による療養期間中の給料やボーナスは?

公務員は病気休暇中も給与が支払われますが、民間企業は会社ごとに対応が異なり、無給のケースも多いです。

病気休暇中の給与やボーナスを詳しく知りたい方は「病気休暇は有給扱いになる?」をご覧ください。

監修 寺島 有紀(てらしま ゆき) 社会保険労務士

一橋大学商学部卒業後、新卒で楽天株式会社に入社、社内規程策定、国内・海外子会社等へのローカライズ・適用などの内部統制業務や社内コンプライアンス教育等に従事。その後社会保険労務士事務所に勤務を経て現在は、中小・ベンチャー企業のIPO労務コンプライアンス対応から海外進出労務体制構築等、国内・海外両面から幅広く人事労務コンサルティングを行っている。

監修者 寺島有紀