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女性活躍推進法とは?改正ポイントや企業に必要な取り組みをわかりやすく解説

監修 松浦 絢子 弁護士

女性活躍推進法とは?改正ポイントや企業に必要な取り組みをわかりやすく解説

女性活躍推進法とは、女性の働き方を改革し、関連情報の見える化や活用の推進を目的とした法律です。本記事では概要や企業が取り組むべき事柄を解説します。

女性活躍推進法は2016年に施行され、2020年と2022年に改正されています。

女性の社会進出は進んでいますが、出産や育児での離職は多く、女性管理職の割合も低い水準にあるなど男女間で就労状況に差があるのが現状です。

また、将来的な労働力不足が予想される日本では、女性も社会で活躍できる環境作りが重要です。

目次

女性活躍推進法とは?

女性活躍推進法とは、正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、女性の働き方を改革して、関連情報の見える化・活用の推進を目的とした法律です。

就労状況・条件の男女差を解消し、男性の暮らし方や意識改革も進めて、女性が活躍できる社会にするため導入されました。

女性活躍推進法は2016年4月から施行され、労働者数301人以上の事業主に、女性が活躍できる行動計画の策定・公表が義務づけられました。

2022年4月に改正され、労働者数101~300人以下の事業主にも行動計画の策定・公表が義務化されています。

女性活躍推進法が制定された背景

女性活躍推進法が制定された背景には、次の3点が関わっています。

女性活躍推進法の制定背景

● 働きたくても思うように働けない女性がいる
● 諸外国と比較して管理職の女性割合が低い
● 今後の労働力不足を解消するには女性の活躍も必要
上記のような課題を解決するため、女性活躍推進法が制定され、職場での男女の不平等を改善する取り組みが進められています。

働きたくても思うように働けない女性がいる

15歳~64歳までの女性の就業率は時代とともに上昇していますが、一部の女性は育児や介護などの事情から仕事に就けていません。

子育て期の女性は、第一子出産を機に約5割の女性が離職しているデータもあります(※)。

離職後の再就職では非正規雇用者になる場合も多く、雇用の不安定さや賃金が低くなる問題を抱えている状況です。

また、離職して再就職すると、仕事のブランクが発生します。女性が働くうえで、長期的なキャリア形成を阻害する要因にもなっています。

出典:内閣府男女共同参画局「平成30年11月「第1子出産前後の女性の継続就業率」及び 出産・育児と女性の就業状況について」

諸外国と比較して管理職の女性割合が低い

日本は、諸外国と比較して役員や管理職に相当する役職者の女性割合が低水準です。アメリカやイギリス、フランスでは管理職に占める女性割合が30%超えに対し、日本は13.3%(※)です。

日本では家事や育児、介護は女性主導で行うものという根強い意識があり、育児や介護を理由に離職する女性も珍しくないため、男性中心の雇用状況を改善できていません。

役員や管理職に女性の割合が少ないと、企業経営に関する女性目線の意見を得にくく、結果的に女性が働きやすい職場整備が進まない可能性があります。

また、モデルとなる女性管理職が不在の状態は、女性従業員の意欲・キャリアへの志向を削ぐ原因にもなりかねません。

手本となる女性管理職がいなければ仕事への意欲や希望を見出せず、仕事を通じた自己実現を望む女性が減少してしまうおそれもあります。また、女性の能力が発揮される機会が失われ、管理職の女性割合も低い状態から改善されないままになることも考えられます。

出典:国土交通省「令和3年版 国土交通白書」

今後の労働力不足を解消するには女性の活躍も重要

労働力不足を解消するには、働きたくても働けない女性がいる状況の改善も重要です。

日本は人口減少の局面を迎えており、将来的には総人口が9,000万人を割り込むとも予想されています。
出典:内閣府「令和2年版高齢社会白書(全体版)」

人口減少に伴い、産業活動の担い手となる15歳~64歳までを指す生産年齢人口も減少し、社会全体での労働力不足が懸念事項です。

女性が能力を発揮できる環境を整え、誰もが意欲的に働ける社会になれば、労働力不足の対策になります。

女性活躍推進法の改正ポイント

2020年6月と2022年4月に施行された改正後の女性活躍推進法には、大きく3つのポイントがあります。

改正のポイント

● 女性活躍の情報公開を強化
● プラチナえるぼし認定を創設
● 行動計画の策定や情報公開義務の対象を拡大
社会での女性活躍をさらに後押しするため、企業が行うべき取り組みや認定制度が追加されました。

【2020年6月~】女性活躍の情報公表を強化

2020年6月からは労働者301人以上の事業主が情報公表する項目を強化しています。

対象の事業者は「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立」に設定されている項目から、各ひとつ以上(合計2項目以上)を公表しなければなりません。

さらに、2022年7月8日からは「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」の項目に「男女の賃金の差異」が新設され、公表必須の項目とされています。

女性活躍の情報公開項目選択数
【女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供】
1 採用した労働者に占める女性労働者の割合
2 男女別の採用での競争倍率
3 労働者に占める女性労働者の割合
4 係長級にある者に占める女性労働者の割合
5 管理職に占める女性労働者の割合
6 役員に占める女性の割合
7 男女別の職種または雇用形態の転換実績
8 男女別の再雇用または中途採用の実績
9 男女の賃金の差異
1~8の項目から1項目選択
9の項目は必須
【職業生活と家庭生活との両立】
1 男女の平均継続勤務年数の差異
2 10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
3 男女別の育児休業取得率
4 労働者の一月あたりの平均残業時間
5 雇用管理区分ごとの労働者の一月あたりの平均残業時間
6 有給休暇取得率
7 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率
1~7の項目から1項目選択
出典:厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」

【2020年6月~】プラチナえるぼし認定を創設

2020年6月より、従来の「えるぼし」よりもさらに水準の高い「プラチナえるぼし」が創設されました。

女性活躍推進に関する状況などが優良と認められる企業は「えるぼし認定」を受けられますが、「プラチナえるぼし」の認定には、まず、3段階ある「えるぼし」のいずれかを受けなければなりません。

認定を受けると、厚生労働大臣が定める認定マークを自社の商品や備品、広報活動などに利用でき、認定企業であるとPRできます。

また、公共調達では加点評価され、日本政策金融公庫の融資は通常より低い金利が適用されるメリットもある制度です。

さらに2024年度税制改正により、大企業のうち従業員数2,000人以下の法人では、プラチナえるぼし(3段階目)認定またはプラチナくるみん以上の認定を受けている場合、法人税の税額控除率に5%が加算されることになります。

また中小企業では、教育訓練費にかかる税額控除率の上乗せ措置について、くるみんやえるぼし(2段階目)以上の認定を受けた場合、税額控除率に5%を加算します。

このような税制優遇は、子育てと仕事の両立や女性活躍推進を後押しする観点から講じられる措置です。

企業によっては税制優遇のメリットもあるため、プラチナえるぼし認定を受けられるよう女性活躍推進を進めましょう。

なお「プラチナくるみん認定」は、子育てサポート企業として高い水準で取り組みを行っている企業が受けられる認定です。

【2022年4月~】行動計画の策定や情報公開義務の対象を拡大

2022年4月からは、労働者101人以上300人以下の事業主も、女性活躍に資する行動計画の策定・届け出、女性活躍に関する情報公開が必須となりました。

2016年4月の施行時点から労働者301人以上の事業主には義務づけられていましたが、さらに対象となる事業主の範囲が拡大された形です。

東京労働局が作成・公開している「行動計画策定かんたんガイド」も参考に行動計画を策定し、所定の情報公開を実施しましょう。

女性活躍推進法の施行により必要とされる取り組み

女性活躍推進法の施行にともない、企業には行動計画の策定や、女性活躍実績を作る取り組みが求められます。

また、本当に女性が活躍できる状態にするには、社内制度の拡充や社内の意識改革も重要です。

行動計画を策定し届け出る

女性活躍に資する行動計画の策定・届け出の対象となる企業なら、事業所所在地の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ届け出る必要があります。

行動計画書の作成に不安がある場合は、東京労働局が公開している「行動計画策定かんたんガイド」を参考にするといいでしょう。

行動計画を策定し、届け出るまでを3段階のステップに分けて解説し、事例ごとの計画例も紹介しています。

行動計画を策定する過程では女性の採用状況や管理職に占める割合、残業時間などの現状を把握し、課題分析するため、企業内の問題点を洗い出す機会にもなります。

認定要件や他社事例を参考に女性活躍実績を作る

具体的に何を行えば女性活躍実績になるか分からない場合、えるぼし認定の認定要件や他社の取り組み事例を参考にしましょう。

認定取得するかは任意ですが、えるぼし認定の「女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準」では、実績として評価される項目が挙げられています。何をすれば実績ありと判断されるか、指標にできます。

評価項目の分類は以下の通りです。

評価項目

● 採用(女性採用の競争倍率、正社員の女性比率)
● 継続就業(女性の勤続年数)
● 労働時間等の働き方(法定時間外労働及び法定休日労働時間の合計時間)
● 管理職比率(女性の昇進・管理職割合)
● 多様なキャリアコース(女性の雇用管理区分間の転換、30歳以上の採用など)
自社と同じ規模や同じ産業、あるいは同じ課題を抱えている他社が認定を得ているなら、取り組み事例を参考に、取り入れられる部分がないか考えてみましょう。

また、認定を取得すれば企業PRやブランド力強化にもつながります。採用活動の場で求職者を増やす効果も狙えるため、えるぼし認定の取得も前向きに検討してみましょう。

出産・育児などと両立できる職場を作る

女性が活躍できる企業にするため、出産・育児を理由に退職する女性が多い状況を脱却しなければなりません。

ライフステージの変化があっても仕事を続けやすい職場にし、時短勤務や在宅ワークなど柔軟な働き方を導入するなど、産休・育休制度を充実させましょう。

ただし、企業が制度を用意しただけでは「産休を取ったら同僚に負担をかけるのではないか」「自分だけ時短勤務するのは周りに申し訳ない」などの懸念から、利用してもらえない可能性もあります。

制度を作るだけでなく、社内の意識や協力体制も整え、利用しやすい状態を作る取り組みが必要です。

制度を整えて長く働ける職場になれば、女性従業員のキャリア形成促進や管理職割合の増加も見込めます。

女性活躍推進法を理解し、社内の意識改革も行う

女性が本当に活躍できる体制を作っていくと同時に、女性活躍推進法への理解を深める取り組みも重要です。

経営者や人事担当者は、女性活躍推進法を正しく理解して社内周知し、社内の意識も強化しましょう。

女性活躍推進法が制定・施行されているのは、女性だけ業務負担を軽くしたり、女性を優先的に役職に就けたりするためではありません。

女性活躍推進法の目的は女性の優遇ではなく、社会が抱える男女間の不平等を改善です。

男女間の不平等を改善するには、女性が仕事に参画しやすくするとともに、男性が家事や育児、介護などへ積極的に関われる環境が求められます。

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まとめ

女性活躍推進法は、働きたくても働けない女性がいる状態や、管理職の女性割合が少ない実態を解消するために制定されました。また、将来的な労働力不足を解決するには、女性の活躍が不可欠です。

2016年4月から施行されている法律ですが、2020年・2022年に改正された女性活躍推進法が現在施行されています。

改正された女性活躍推進法では、女性活躍で公表する情報の内容が強化され、対象企業の範囲が拡大されました。

加えて「えるぼし認定」には、従来の「えるぼし」の上位となる「プラチナえるぼし」が創設されています。

対象となる企業は行動計画の策定や情報公開に対応し、女性の活躍実績が作れる体制を整えましょう。

よくある質問

女性活躍推進法とは?

男女間での就労状況や条件の差をなくし、女性が活躍できる社会の実現を目的に制定された法律です。

女性活躍推進法を詳しく知りたい方は「女性活躍推進法とは?」をご覧ください。

女性活躍推進法で企業は何をする必要がある?

企業は行動計画を策定し、社内制度の拡充や意識改革を進めて、女性が活躍できる職場環境を整える必要があります。

女性活躍推進法に伴って企業に必要とされる取り組みを詳しく知りたい方は「女性活躍推進法の施行により企業が必要とされる取り組み」をご覧ください。

監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

監修者 松浦絢子