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インボイス制度で本名がバレる? 生じるリスクや公表したくないときの対処法を解説

最終更新日:2023/08/28

監修 宮川 真一 税理士、1級FP技能士・CFP

インボイス制度で本名がバレる? 生じるリスクや公表したくないときの対処法を解説

インボイス制度で本名がバレるとSNSなどで話題になっています。本名が公開される理由や、公表しなくて済む方法を解説します。

実際に本名が公になれば、プライバシーの侵害やストーカー被害などにつながりかねません。

芸名やペンネームで活動している著名人だけでなく、個人で仕事を請け負う人は、リスクを把握して登録するかどうか検討しましょう。

目次


なぜインボイス制度で本名がバレるのか?

インボイス制度で本名がバレる理由は、インボイス制度に登録した人の情報が「適格請求書発行事業者公表サイト」に掲載され、かつ掲載情報を誰でも閲覧できるためです。

出典:国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」

インボイス制度に登録した人は「適格請求書発行事業者」となります。適格請求書発行事業者の情報登録と公表に関しては、消費税法で定められています。

適格請求書発行事業者の登録等に関する規定(抜粋)

● 請求書発行事業者の登録を受ける際に氏名などを登録すること
● 税務署長は登録事項を公表すること
ただし登録した情報は、必ずしもすべて公表されるわけではありません。個人事業者のペンネームや、住所の公表は任意です。つまりインボイス制度に登録したとしても、すぐに本名とペンネームが結び付けられるわけではありません。

公表が必須公表が任意
法人法人名
本店または主たる事務所の所在地
登録番号
登録年月日
登録取消(失効)年月日
人格のない社団など名称
登録番号
登録年月日
登録取消(失効)年月日
本店または主たる事務所の所在地
個人事業主氏名
登録番号
登録年月日
登録取消(失効)年月日
主たる屋号(ペンネーム)
主たる事務所の所在地など
参考:国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト よくある質問」

しかし登録番号を適格請求書発行事業者公表サイトで検索すれば、本名が掲載されています。そのため住所まではバレませんが、登録番号を知られれば、本名はどうしてもバレてしまいます。

適格請求書発行事業者公表サイトで情報を閲覧する方法

適格請求書発行事業者公表サイトで情報を閲覧する方法は、以下の2種類です。

適格請求書発行事業者公表サイトで情報を閲覧する方法

● 登録番号で検索する
● 全件データをダウンロードする
本名など登録番号以外の情報で検索ができないのは、公表の目的が「請求書の発行者が登録取消などを受けていないか」を確認するためです。

たとえば法人名で検索した場合、同名の企業が複数表示されるなどの理由で対象を特定できない可能性があります。一方、登録番号であれば容易に相手方を特定できます。

方法①登録番号で検索する

適格請求書発行事業者公表サイトのトップページの検索欄に登録番号を入力すると、以下の情報が表示されます。

登録番号を検索すると表示される情報

● 登録番号
● 氏名または名称
● 登録年月日
● 所在地
● 最終更新年月日
登録番号は10件まとめて検索できるので、複数の請求書を一括で確認が可能です。

出典:国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」

方法②全件データをダウンロードする

個別の登録番号を検索する以外に、適格請求書発行事業者の全件データをダウンロードして閲覧する方法もあります。

トップページ上部メニュー「ダウンロード Web-API」内の「公表情報ダウンロード」から、以下の2種類のデータをダウンロードできます。

適格請求書発行事業者公表サイトでダウンロードできるデータ

● 全件データ
● 差分データ

出典:国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」

全件データは、前月末日時点の公表データです。当月中に登録・公開された情報は含まれません。

差分データは、日次の更新情報が反映されています。全件データよりも直近の情報を確認する際に有用です。

以前はダウンロードデータ内に個人事業主の氏名や、事業所所在地が掲載されていました。現在は個人事業者に限り、登録番号と登録日・更新日のみの掲載となっています。

インボイス制度の公表サイトは個人でも閲覧できる?

インボイス制度の公表サイトは事業者だけでなく、個人でも閲覧可能です。利用のための事前申請などは必要なく、登録番号での検索や公表情報のダウンロードもできます。

個人事業者はペンネームや住所などの公表が任意なので、ペンネームを知られたくない場合は公表しないほうがいいでしょう。

本名だけでなく住所も公開せざるを得ない可能性がある

前述した通り、個人事業者はペンネームや住所の公表が任意です。しかし仕事を請け負う際に、本名だけでなく住所も公開せざるを得なくなるおそれもあります。

たとえば「A」というペンネームで活動している個人事業者が、ある企業から仕事を請け負ったとします。Aは公表サイト上では、ペンネームと住所を公表しておらず、企業はAの本名を知りません。

この状態でAから請求書を受け取った企業が登録番号で検索しても、閲覧できるのはAの本名のみです。企業側がAの本名を知らないと、検索で表示される氏名がAの本名であるかどうかを確認できません。

たとえAが企業側に、請求書と同じ住所が記載された本人確認書類を提示したとしても、本人と断定することは難しいでしょう。このようなケースでは、企業がAに適格請求書発行事業者としてペンネームや、住所の公表を求めることも十分に考えられます。

本名が公表されると生じるリスク

本名が公表されると生じるリスクとして考えられるのは、主に以下の2つです。

本名が公表されることで生じるリスク

● ストーカー被害や活動への悪影響
● インボイス制度関連範囲以外での商用利用
このリスクに関しては、個人からだけでなく民間団体からも懸念の声が出ています。

ストーカー被害や活動への悪影響

本名や住所が公表されると、悪質なストーカー被害や活動への悪影響を及ぼすことが考えられます。

ストーカー被害によって身体や精神に危険が及んだり、遠方での活動中に空き巣に狙われたりする可能性も高まるでしょう。

国内の俳優らが加盟する民間団体は、上記のリスクに対して総務省から「事件が起こるまでは一切動けない」と回答を受けたと明かしています。被害防止のための具体的な対策がないのが現状です。

営利目的で利用される

本名や住所が公表されると、個人情報が営利目的で利用されるおそれもあります。

適格請求書発行事業者公表サイトで公表されている情報(本名含む)は、国税庁適格請求書発行事業者公表サイトの利用規約において、商用利用が可能となっています。

当サイトで公開している情報(以下「コンテンツ」といいます。)は、1)~6)に従って、複製、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由に利用できます。商用利用も可能です。

出典:国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト利用規約」

また同規約において、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの表示4.0国際(以下「CC BY 4.0」)が準用されることが記載されています。

この「CC BY 4.0」は、クリエイティブ・コモンズの中でもっとも自由度が高いライセンスです。商用利用を含むどのような理由でも、情報の共有や編集が自由にできることを保証しています。

もし、広告会社などが適格請求書発行事業者の情報をインボイス制度と関係ない目的で利用しても、規約違反とはなりません。

インボイス制度で本名を公表したくない場合の対処法

インボイス制度で本名を公表したくない場合、以下の2つの対処法があります。

インボイス制度で本名を公表したくない場合の対処法

● 適格請求書発行事業者にならない
● 媒介者交付特例を利用する
それぞれ、詳しく解説します。

適格請求書発行事業者にならない

対処法のひとつ目は、適格請求書発行事業者にならないことです。

本名の公表が行われるのは適格請求書発行事業者だけであり、同事業者にならなければ本名を公表サイトに掲載されることはありません。

そもそもインボイス制度がスタートしたあとも、適格請求書発行事業者としての登録は義務ではありません。適格請求書発行事業者にならずに仕事を受けることも、法律上は可能です。

ただし適格請求書発行事業者にならないことで、以下のデメリットが生じる可能性があります。

適格請求書発行事業者に登録しないことによるデメリット

● 契約を打ち切られる可能性がある
● 契約金額自体の値引きをされる可能性がある
適格請求書発行事業者に報酬を支払うと、支払い元は仕入税額控除を受けられます。しかし、適格請求書発行事業者でない事業者に報酬を支払うと、仕入税額控除を受けられません。

そのため契約金額の減額を求められたり、契約自体を打ち切られたりする可能性があります。

契約後の報酬金額減額は下請法に抵触する可能性もありますが、契約条件の見直しで即違法になるわけではありません。

適格請求書発行事業者でないために、新規契約が取りにくくなるリスクが生じることは覚悟しておきましょう。

次に「媒介者交付特例」で、登録しつつも本名がバレない方法を解説します。

媒介者交付特例を利用する

媒介者交付特例を利用すれば、本名が知られる可能性を減らせます。

媒介者交付特例とは、売り手と買い手(クライアント)の間に媒介者を立て、媒介者が売り手の請求書を発行できる制度です。

出典:国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き」

適格請求書発行事業者に登録すると、請求書に名称や登録番号を記載しなければなりません。しかし媒介者交付特例を利用すると、名称や登録番号を記載する必要がなくなります。

登録番号を買い手に知られないため、登録番号で検索されて本名を知られることもありません。

媒介者交付特例を利用するには、2つの条件があります。

媒介者交付特例の利用条件

● 売り手と媒介者の双方が適格請求書発行事業者であること
● 売り手が適格請求書発行事業者であることを、売り手が媒介者に通知していること
適格請求書発行事業者でなければ、媒介者特例は利用できないため、適格請求書発行事業者公表サイトでの本名公表は避けられません。媒介者交付特例はあくまでも、登録番号で検索される可能性を減らせる方法です。

なお似ている請求書発行の方法として「代理交付」という制度がありますが、媒介者交付特例とは異なります。

媒介者交付特例では売り手の登録番号は請求書に記載されませんが、代理交付では登録番号の記載が必要です。

まとめ

インボイス制度での本名公開は法律で定められているため、適格請求書発行事業者となった場合は本名公表を避けられません。

しかし個人事業主がペンネームや、住所を公開するか否かは任意で選択できます。そのため適格請求発行事業者として登録したからといって、すぐにペンネームと本名が紐づけられることはありません

また媒介者交付制度を利用すれば、相手方に本名が知られる可能性を減らすこともできます。

インボイス制度への登録は任意ですが、登録しないことによるデメリットもあります。自分の仕事の状況や、現在の取引先の意向なども踏まえて判断しましょう。

インボイス制度の理解から実務対応までfreeeで解決!

2023年10月1日からインボイス制度が導入されます。すべての事業者はインボイス制度導入までに制度を理解し、対応するための準備をしなければなりません。

インボイス制度は、売り手・買い手双方の事業者に影響があり、それぞれの立場で対応・検討すべきことが異なります。

freeeではインボイス制度の理解から実務対応方法まで、ステップに沿ってサポートします。個人事業主から上場企業まで幅広く対応しているので、ぜひご活用ください。

インボイス制度の理解から実務対応までfreeeで解決!

freeeはインボイス制度の理解から実務対応方法までをステップに沿ってサポートします。個人事業主から上場企業まで、事業者の立場に合わせたコンテンツを用意しています!ぜひご活用ください。

ここからは、ステップ別にfreeeが提供しているコンテンツ・サービスについて紹介します。

STEP1. インボイス制度について理解する

freeeでは正しくインボイス制度を理解していただくために、さまざまなコンテンツを用意しています。

事業者の立場別に解説したセミナーを開催

インボイス制度は事業者の職種や企業規模によっても対応すべきことが異なります。freeeでは毎週セミナーを実施し、事業者の立場や悩みに合わせてわかりやすく解説しています。

freeeのインボイス制度セミナーの例

  1. インボイス制度の概要
  2. インボイス制度の実務解説
  3. インボイス制度対応に向けて押さえるべき全体像やスケジュール
  4. インボイスの受領を効率化する方法

消費税の仕組みから実務対応まで網羅したインボイス制度ガイドブック

インボイス制度はまず、消費税の仕組みを理解する必要があります。freeeのインボイス制度完全ガイドブックは、消費税の仕組みからインボイス制度による変更点、実務対応のポイントまでをまとめています。

このガイドブックは無料でダウンロードが可能です。ぜひご利用ください。

STEP2. インボイスの登録申請&取引先の登録状況チェック

インボイス制度導入後、適格請求書が発行・保存された取引のみ仕入税額控除の対象となります。

適格請求書を発行するためには、適格請求書発行事業者になる登録をしなければなりません。取引先に請求書を発行している側(売り手)は、この手続きが必要です。

一方、取引先から請求書を交付される側(買い手)は、取引先が適格請求書発行事業者であるかどうかを事前に確認しておく必要があります。

freeeのサービスを利用することで、売り手・買い手双方がすべき対応を効率良く解消できます。

売り手:適格請求書発行事業者への登録申請

インボイス制度導入のタイミングで適格請求書発行事業者であるためには、2023年9月30日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署に提出し、登録を受ける必要があります。

freeeを活用すれば、フォームに沿って入力するだけで登録申請書を簡単に作成することができます。

買い手:取引先の登録状況を把握

インボイス制度に対応している適格請求書と、従来の請求書では扱いが異なるので、取引先がインボイス制度に対応しているのか把握しておかなければなりません。

freeeでは、取引先のインボイス制度への対応状況や登録番号の回収を一括で管理できます。無料で利用できるので、コストをかけずに効率化が可能です。

STEP3. 実務対応

インボイス制度導入後、実務対応の方法は企業規模や立場によって異なります。freeeでは、すべての事業者のバックオフィスをサポートできるよう、さまざまなサービスを提供しています。

【立場別】freeeのおすすめコンテンツ

<適格請求書の発行が必要な事業者(売り手)向け>

  • freee請求書
  • freee債権

<適格請求書の受領が必要な事業者(買い手)向け>
  • freee債務
  • freee経理アウトソース
  • freee会計
  • freee経理

<売り手・買い手双方におすすめ>
  • freee会計

freeeのサービスはすべて電子帳簿保存法に対応しているので、電子保存も可能です。

インボイス制度導入後もスムーズに実務を行うためにも、早めの準備・対応が求められます。freeeのコンテンツを活用して、制度理解を高めて必要な対応について検討していきましょう。

よくある質問

インボイス制度で本名がバレる?

インボイス制度で適格請求書発行事業者として登録すると、本名が掲載されるため、バレてしまいます。

ただし芸名やペンネームの公表は任意であるため、登録番号を知られなければ本名とペンネームの紐づけは避けられます。

インボイス制度で本名がバレるかどうかについて、詳しく知りたい方は「なぜインボイス制度で本名がバレるのか?」をご覧ください。

本名がバレるのを避けたい場合の対処法は?

インボイス制度に登録しても本名がバレるのを避けたい場合は、媒介者交付特例を利用しましょう。

媒介者特例について、詳しく知りたい方は「媒介者交付特例を利用する」をご覧ください。

監修 宮川真一(みやがわ しんいち) 税理士、1級FP技能士・CFP

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業後、税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上となる。現在は「100年先の“みらい”を創る。」税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティングを行う。

監修者 宮川真一