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電子委任状とは? 仕組みやメリット、利用方法をわかりやすく解説

公開日:2023/07/31

監修 安田 亮 公認会計士・税理士・1級FP技能士

電子委任状とは? 仕組みやメリット、利用方法をわかりやすく解説

電子契約の広がりを受け、委任状についても電子委任状法が施行されました。電子委任状の仕組みやメリットのほか、導入の必要性についても解説します。

電子委任状とは、単に委任状をデータ化したものだけではなく、権限範囲や委任期間などをネットワーク上で証明するものです。

電子委任状を活用することで、さらなる効率化を見込めるでしょう。

目次

電子委任状法について

電子委任状法とは、電子契約その他経済活動における、デジタル化の推進を目的とした法律です。

正式名称は「電子委任状の普及の促進に関する法律」で、2019年に施行されました。電子委任状の普及を促進するための基本的な指針や、認定制度に関して定めています。

電子委任状法が作られた背景には、契約手続きのデジタル化があります。電子契約とともに、付随する委任状もデータでのやりとりが増えました。

しかし、ただのデータであれば誰でも作成できるため、なりすましや改ざんの可能性を排除できません。

電子委任状法では、「有効性の証明方法」や「データのセキュリティ」について一定の基準を定めることで、電子委任状の信頼性を担保しています。

なお電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)という法律がありますが、電子委任状法とは異なる法律です。

電子委任状とは

電子委任状とは「委任状および委任内容など委任に必要な情報を電子化し、ネットワーク上で保管、証明を行うもの」です。

広義では、wordなど市販ソフトウェアで作成された委任状も、電子委任状として取り扱われます。

本記事では、後述する「電子委任状取扱事業者」によって証明が行われるものを、電子委任状として解説します。

電子委任状の仕組み

出典:電子認証局会議「電子委任状と認定制度」

電子委任状は、認定を受けた「電子委任状取扱事業者」を介することで、委任状の有効性を証明する仕組みです。いくつか方法はありますが、大まかに以下の流れです。

委任状の有効性を証明する流れ

(1)委任者が電子委任状取扱事業者に電子委任状の作成を申し込む
(2)委任者からの申し込みにもとづき、電子委任状取扱事業者が委任に必要な記録(委任範囲、受任者など)を作成、保管する
(3)電子委任状取扱事業者が受任者に電子証明書を発行する
(4)受任者が契約書に電子証明書に紐づく電子署名を行う
(5)電子委任状取扱事業者が契約相手方の申し出にもとづき委任を証明する
電子委任状の記録方式には、電子委任状の作成を委任者が行うなど3つのパターンがあります。詳細は後述する「電子委任状の記録方式」で解説します。

電子委任状取扱事業者とは

電子委任状取扱事業者とは、電子委任状の取り扱いに関して認定を受けた事業者です。

電子委任状の有効性確認や事業者のセキュリティ対策など、基本指針に定められた基準をクリアした事業者が認定されます。

電子委任状取扱業者を介した電子委任状であれば、有効性が担保されているため、契約相手方で有効性を精査する手間が省けます。

電子委任状で記録するべき項目

電子委任状には、以下の項目が記録されていなければなりません。

電子委任状で記録すべき項目

● 委任者に係る事項(法人代表者であれば法人名)
● 受任者に係る事項(氏名や役職)
● 代理権、代理権の制限、代理期間その他の委任内容に係る事項
● その他委任者または電子委任状取扱事業者が必要と認める事項(電子委任状取り扱い事業者のサービス名など)

電子委任状の記録方式

電子委任状では3つの記録方式があり、以下の観点で区分されています。

電子委任状の記録方式ごとの違い

● 委任状や委任に必要な記録を誰が作成するか
● 電子証明書を受任者に発行するか否か
それぞれの記録方式について解説します。

委任者記録ファイル方式

委任者記録ファイル方式は、電子委任状を委任者側で作成する方式です。

電子委任状の作成委任者
電子委任状の保管電子委任状取扱事業者
有効性確認方法電子委任状取扱事業者から電子委任状を取得


委任者は電子委任状を作成し、電子委任状取扱事業者に送付します。その後、受任者は契約手続きを行いますが、受任者が委任の事実を証明する必要はありません。委任状の確認は、契約相手方が電子委任状取扱事業者に対して行います。
委任者記録ファイル方式のメリットは、社内の契約業務についてフローの変更を最小限で抑えられる点です。

反対にデメリットは電子委任状の作成の手間がかかることと、電子証明の知識が必要な点です。

電子委任状には、その電子委任状が本物であると証明する電子証明を施さなければなりません。委任者記録ファイル方式では、電子証明は委任者が行います。

委任状のデータ自体はpdfなど市販のフォーマットで作成できますが、電子証明に関する知識が必要です。

出典:電子認証局会議「電子委任状と認定制度」

取扱事業者記録ファイル方式

取扱事業者記録ファイル方式は、いわば「電子委任状取扱事業者にすべてお任せする」という方法です。業務フローの変更や委任者の業務負担を最小限に抑えられます。

取扱事業者記録ファイル方式は、委任者記録ファイル方式と似ています。異なる点は、電子委任状の発行を委任者ではなく電子委任状取り扱い事業者が行う点です。

電子委任状の作成電子委任状取扱事業者
電子委任状の保管電子委任状取扱事業者
有効性確認方法電子委任状取扱事業者から電子委任状を取得


出典:電子認証局会議「電子委任状と認定制度」

電子証明書方式

電子証明書方式は、電子委任状の作成も保管も、電子委任状取扱事業者が行う方式です。

電子委任状の作成電子委任状取扱事業者
電子委任状の保管電子委任状取扱事業者
有効性確認方法受任者が契約書に電子署名を行い、電子委任状取扱事業者が電子署名を検証する


受任者は電子委任状取扱事業者から電子委任状を発行してもらい、契約書に電子署名を行います。

電子委任状取扱事業者が発行する電子委任状は、公開鍵暗号が用いられているため、なりすましはできません(※)。

契約相手方は、契約書の電子署名が有効かを検証してもらうことで、委任の事実を確認します。

電子証明書方式のメリットは、電子委任状を作成する手間がないこと、契約書一式の管理がラクになることです。

一方で受任者自身が電子契約書を取得し、電子署名を行う必要があるので、業務フローが煩雑になってしまう点がデメリットです。

※ 秘密鍵と公開鍵による暗号方式。秘密鍵はひとつしか存在せず、また公開鍵によって暗号化されたデータは秘密鍵によってしかもとに戻せないため、本人の証明やデータの保護に活用されている。
出典:電子認証局会議「電子委任状と認定制度」

電子委任状の利用が促進される背景

電子委任状の利用が促進される背景には、生産性向上やコスト削減意識の高まりがあります。

企業内だけでなく行政手続きでもデジタル化が推進されており、電子委任状の普及によって以下の効果が期待されています。

電子委任状の利用が促進される背景

● コスト削減、情報管理の効率化
● 国民の利便性向上

電子委任状の必要性

業務の効率化以外の観点からも、電子委任状は必要とされています。電子署名法との整合性と、ガバナンス強化の2点を解説します。

電子署名法との整合性

ひとつ目の理由は、電子署名法との整合性をとるためです。電子署名法では、電子契約における電子署名を「本人」が行うことが規定されています。

しかし実務においては、法務担当者など代表者以外が代表者名義の契約に電子署名を行う場面も少なくありません。このようなケースでも委任の事実があれば、必ずしも違法とはいえないでしょう。

しかし電子契約の記録と委任状が別々のデータになるため、記録の管理や委任の証明が難しくなるだけでなく、電子署名法の規定との齟齬も生じます。

電子委任状の利用により、電子契約書に権限委任の事実を紐づけやすくなり、手続き上の矛盾も解消できます。

ガバナンス強化

電子委任状は、ガバナンス強化においても有効です。電子委任状取扱事業者を介さない委任状は、紙や市販のソフトを使って誰でも作成できます。

また不正に作成や改ざんをされた委任状について、本物かどうかを契約相手方が確認することは容易ではありません。

電子委任状では権限範囲を明確にできるため、担当者による不適切な契約締結を未然に防止できます。

近年重要となっているガバナンスについては、「コーポレートガバナンスとは? 企業統治の意味や内部統制の違いについてわかりやすく解説」で確認しておきましょう。

電子委任状の利用・作成方法

電子委任状を導入する際は、電子委任状取り扱い事業者に依頼するのがおすすめです。導入手順や導入費用は業者によって異なるため、まずは相談するといいでしょう。

また付随する機能やオプションプランなどについても確認しましょう。たとえば電子委任状と電子署名や、電子契約書を一気通貫で管理できるシステムなら、契約業務全体の効率化につながります。

電子契約システムで契約業務を効率化する方法

契約書の作成や郵送、締結後の管理など、契約業務は手間がかかる作業です。テレワークの普及で決裁に時間を要し、契約書の押印や郵送のために出社しなければならないなど、面倒な場面もあります。

面倒な契約業務を効率化するには、電子契約サービス「freeeサイン」がおすすめです。

freeeサインは弁護士監修の契約システムで、文書作成から契約締結までワントップで完結できます。書類はクラウド上に保管され、紛失や破損の心配もなく、書類整理の手間を省けます。

テンプレートを登録でき、必要な項目を入力すれば、簡単に契約書を作成できます。作成から承認までのワークフローもオンラインで管理・完結するから、契約書のためだけに出社する必要もありません。

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契約業務を安心して効率化したい場合は、ぜひ「freeeサイン」をお試しください。

まとめ

電子委任状とは委任に必要な記録をネットワーク上で管理し、委任の信頼性を確保する仕組みです。デジタル化によって効率化が図れるだけでなく、企業内のガバナンス強化の面でもメリットがあります。

作成方式や記録方法はいくつかあるので、まずは電子委任状取扱業者に相談して自社に合った方法で導入してみましょう。

よくある質問

電子委任状とは

電委任状および委任内容など委任に必要な情報を電子化し、ネットワーク上で保管、証明を行うものです。

電子委任状について詳しく知りたい方は「電子委任状とは」をご覧ください。

なぜ電子委任状の利用が促進されている?

電子委任状の利用が推進されている理由は、契約や行政手続きをデジタル化することで国民の利便性向上を図るためです。

電子委任状の利用が推進されている理由を詳しく知りたい方は「電子委任状の利用が促進される背景」をご覧ください。

監修 安田亮(やすだ りょう) 公認会計士・税理士・1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮