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被扶養者認定とは?認定の範囲や基準、年収の壁との関係を解説

監修 松浦絢子 弁護士

被扶養者認定とは?認定の範囲や基準、年収の壁との関係を解説

健康保険は被保険者だけでなく、扶養する家族も保険給付の対象とできます。被扶養者認定の概要対象の範囲・収入基準を解説します。

健康保険への加入は、病気やけがに備えるための大切な手続きです。

結婚や出産、家族との同居など扶養する家族が増えた場合は、被扶養者認定を通じて加入の手続きをし、保険証を発行してもらいましょう。

目次

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被扶養者認定とは?

被扶養者認定とは、被保険者の収入で生計を維持している家族を、被扶養者として認定を受ける手続きです。

被扶養者に認定されると、その被扶養者も病気やけが、出産や死亡した際に保険給付が受けられます。

被扶養者の保険料は、被保険者が納付する保険料でまかなわれます。そのため、被扶養者自身は保険料を納付する必要がありません。

ただし、家族であればすべての人が被扶養者と認定されるわけではなく、法律で一定の基準が定められています。

特に、年収が130万円以上となると被扶養者から外れてご自身で健康保険に加入しなければなりません。そのことを一般的に「130万円の壁」と呼んでいます。

【関連記事】年収の壁を一覧でわかりやすく解説!今後の見直しについても説明

被扶養者認定の範囲と基準

被扶養者と認定される人は、法律で範囲が決められています。以下、被扶養者の範囲と収入基準、2020年に新たに追加された国内居住要件を解説します。

被扶養者の範囲

被扶養者と認定される人の範囲は以下の通りです。

被扶養者の範囲

● 被保険者の直系尊属・配偶者・子・孫・兄弟姉妹で、主として被保険者の収入で生計を維持される人
● 被保険者と同居して家計をともにしている三親等内の親族
被保険者の直系尊属や配偶者とは、ご自身の父や母、祖父母や妻・夫、兄弟姉妹や子ども・孫の関係にあり、被保険者の収入で暮らしている人は被扶養者の範囲です。

同居している必要はなく、一人暮らしをしている子どもも、仕送りなどで被保険者の収入で生活している場合は被扶養者に認められます。

なお、三親等内の親族、具体的には配偶者の兄弟姉妹や伯父・伯母も、家計をともにしている場合は被扶養者の範囲に入ります。

ただし、この場合は同居している条件が加わるので注意が必要です。

被扶養者の収入の基準

被扶養者と認定されるためには、「被保険者の収入で生計を維持している」ことが条件です。

一定以上の収入がある場合は上記の条件を満たさないと判断され、被扶養者認定が受けられません。

被扶養者の収入基準は、同居しているか(同一世帯か)、別居しているかで異なります。

被扶養者の収入の基準

● 同居:年間収入が130万円未満かつ被保険者の年間収入の2分の1未満
● 別居:年間収入が130万円未満かつ被保険者の援助よりも少ない場合
なお、対象者が60歳以上または障害厚生年金を受給している場合は、年間収入の条件が180万円未満に設定されています。

また、被扶養者の「収入」とみなされる範囲は以下の通りです。

収入の範囲

● 給与収入
● 事業収入
● 継続的な不動産収入
● 継続的な利子・配当収入
● 年金
● 雇用保険
● 休業補償
● 生活保護費
● そのほか、実質的に収入と認められる収入
パートやアルバイトなどで得た給与収入のほか、雇用保険の失業給付金や傷病手当金などの休業補償も含まれます。

被扶養者の国内居住要件

2020年に法律が改正され、「被扶養者の国内居住要件」が追加されました。改正にもとづく要件は以下の通りです。

被扶養者の国内居住要件

● 日本国内に住民票がある人
● 日本国内に住所はないが「日本国内に生活の基礎があると認められる」人
国内居住要件は、原則として「国内に住民票があるか」で判定されます。

ただし、以下の人は例外的に国内に住民票がなくても「日本国内に生活の基礎がある」と認められ、被扶養者の対象と認定されます。

国内居住要件の例外

1 外国に留学している学生
2 外国に赴任する被保険者に同行する人
3 観光、保養またはボランティア活動など就労以外の目的で一時的に海外渡航する人
4 被保険者の海外赴任期間に②と同等と認められた人
5 ①~④のほか、渡航目的などの事情を考慮し、日本国内に生活の基礎があると認められる人

被扶養者認定と「年収の壁」

「年収の壁」とは、社会保険料や税金の支払いが生じる基準となる年収額です。

被保険者の被扶養者に認定されれば、その被扶養者は保険料の負担が発生しません。

しかし、年収が一定以上になると被扶養者から外れ、ご自身で保険に加入する必要があります。

結果、収入が増えたにも関わらず手取り収入が減ってしまう場合があり、この状況を「年収の壁」と表現しています。

社会保険に関する「年収の壁」には、「年収106万円の壁」と「年収130万円の壁」が挙げられます

年収の壁の種類内容
年収106万円の壁厚生年金保険の被保険者が101人以上の事業所で働く人は、年収106万円以上など一定の条件を満たすと厚生年金保険・健康保険に加入する必要があり、保険料が発生する
年収130万円の壁年収130万円以上の人は被扶養者の認定基準を満たさなくなるので、国民年金・国民健康保険へ加入する必要があり、保険料が発生する

たとえば、被扶養者が101人以上の事業所で働き、年収106万円以上など一定の条件を満たすと、厚生年金保険や健康保険に加入しなければなりません。

また、パートやアルバイトなど短時間労働者への保険適用は順次拡大されています。

2024年からは厚生年金保険の被保険者が常時51人以上の事業所も対象となるので、注意が必要です。

さらに、年収130万円以上となると被扶養者の認定基準を満たさなくなり、ご自身で年金や健康保険に加入しなければなりません。

保険に加入すると将来受け取れる年金が増えるなどのメリットがある一方、手取りが減ってしまうデメリットがあります。

【関連記事】106万の壁を超えたらどうなる?対象者や130万の壁との違いを解説

年収の壁・支援強化パッケージ

国は被扶養者を外れてしまう人の負担増を考慮し、2023年10月より「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始しました。パッケージの主な内容は以下の通りです。

年収の壁・支援強化パッケージの主な内容

● 106万円の壁:保険加入に伴う手取り収入を減らさない取り組みをする企業へ、労働者1人あたり最大50万円の支援
● 130万円の壁:収入が一時的に上がっても、事業主の証明手続きで被扶養者認定の継続も可能
出典:首相官邸「年収の壁、突破へ」

「保険加入に伴う手取り収入を減らさない取り組み」とは、社会保険適用促進手当の支給や賃上げによる基本給の増額などを指します。

残業などで一時的に収入が増加して認定基準を満たさなくなっても、事業主の証明で引き続き被扶養者認定が継続可能です。

被扶養者認定の手続きと必要書類

被扶養者となる家族ができた場合は、加入している健康保険で手続きを行いましょう。以下では、手続きの流れや必要な書類を解説します。

被扶養者認定の手続き

被扶養者認定の手続きの流れは以下の通りです。

被扶養者認定の流れ

1 被保険者が「被扶養者(異動)届」を記入し、事業主に提出する
2 事業主は内容を確認のうえ、健康保険組合へ提出する
3 健康保険組合で審査が行われる
4 被扶養者に認定された場合は、健康保険組合から事業主へ保険証が発行される
5 事業主をつうじて被保険者に保険証が手渡される
結婚で健康保険に加入していない配偶者ができたとき、子どもが生れたときなどは、すみやかに手続きを行いましょう。

被扶養者認定の必要書類

被扶養者認定の主な必要書類は以下の通りです。

被扶養者認定に必要な書類

● 被扶養者(異動)届
● 続柄を確認できる書類(被扶養者の戸籍謄本、住民票の写しなど)
● 収入要件を確認できる書類(給与証明書のコピーや雇用保険受給資格証の写しなど)
● 仕送りを確認できる書類(被扶養者が別居している場合)
● 内縁関係を確認できる書類(戸籍謄本や住民票など)
被扶養者(異動)届のほか、被扶養者との続柄を確認できる書類や収入を確認できる書類などが必要です。健康保険の担当者とも相談しつつ、必要な書類を準備しましょう。

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まとめ

被扶養者認定は、子どもや配偶者など扶養している家族を被扶養者として保険に加入させる手続きです。

ただし、家族であればだれでも被扶養者に認定されるわけではありません。範囲や収入基準などを確認し、適切に手続きを行ってください。

近年、被扶養者の収入に関する「年収の壁」が注目されています。国は負担軽減のため支援策を実施しているので、各支援策も活用しつつ、対応していきましょう。

よくある質問

被扶養者認定とは?

被扶養者認定とは、被保険者に扶養されている家族を保険に加入させる手続きです。

被扶養者認定を詳しく知りたい方は「被扶養者認定とは?」をご覧ください。

被扶養者として認定される基準は?

被扶養者の認定には、被保険者との続柄、生計の維持、収入などの基準が設けられています。

被扶養者の基準を詳しく知りたい方は「被扶養者認定の範囲と基準」をご覧ください。

監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

監修者 松浦絢子