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外国人の在留資格「高度人材(高度専門職)」とは?優遇内容や申請方法を解説

公開日:2023/10/19

監修 志塚 洋介 行政書士・1級FP技能士・CFP

外国人の在留資格「高度人材(高度専門職)」とは?優遇内容や申請方法を解��説

「高度人材ポイント制」や「特別高度人材制度(J-Skip)」は、高度外国人材・特別高度人材の受け入れを推進する目的で設けられた制度です。

本記事では、高度外国人材とは何か高度人材ポイント制の仕組み優遇内容高度外国人材の申請方法などを解説します。

人手不足対策や海外展開強化などの観点から、高度外国人材の確保は企業にとっても重要性を増しています。高度外国人材のことを詳しく知りたい企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

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高度人材とは

「高度人材」とは、日本の産業にイノベーションをもたらすような知識や技能を有している外国の人材です。

国が発表している報告書によると、「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」と定義されています。
出典:法務省入国管理局「高度人材に対するポイント制による出入国管理上の優遇制度について」p.2

就労の在留資格に関する要件を満たす場合に、「高度外国人材」と認定され、在留資格「高度専門職」が付与されます。

高度人材ポイント制とは

日本では、高度外国人材の受け入れを促進するために「高度人材ポイント制」が導入されています。

高度人材ポイント制とは、ポイント制によって高度外国人材と認められた外国人に、出入国在留管理に関する優遇を行う制度です。ポイントが70点に達した場合、在留期間5年の付与や永住許可の要件緩和などの優遇が受けられます。

ポイント評価の仕組み


出典:出入国在留管理庁「高度人材ポイント制とは?」

高度人材ポイント制では、高度外国人材の活動類型を以下の3つに区分しています。

高度外国人材の活動類型

1. 高度学術研究活動「高度専門職1号(イ)」
2. 高度専門・技術活動「高度専門職1号(ロ)」
3. 高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」
3つの類型それぞれの特性に応じて、学歴や年収などの項目ごとに設定されたポイントを計算します。ポイントの合計が70点に達すると高度外国人材と認められる仕組みです。

主な評価項目

● 学歴
● 職歴(実務経験)
● 年収
● 年齢
● 研究実績
● 地位
具体的なポイントについては、法務省のウェブサイトに掲載されている「ポイント計算表参考書式」をご覧ください

高度人材ポイント制の優遇措置

高度人材に認定されると、ほかの在留資格よりも優遇された「高度専門職」が付与され、出入国在留管理上の優遇措置が受けられます。

高度専門職の在留資格は、以下の2つに分けられ、それぞれ優遇内容が異なります。

高度専門職の在留資格

● 高度専門職1号
・在留期間5年が一律で付与される
・配偶者が就労の制限なく働ける
・入国・出国の優遇処理 など

● 高度専門職2号
・専門職1号の優遇措置がすべて受けられる
・就労に関する在留資格で認められるほぼすべての活動が行える
・在留期間が無期限になる など
なお、高度専門職2号は、高度専門職1号で3年以上活動を行っていた方が対象です。

在留資格が「高度専門職1号」の場合の優遇措置

「高度専門職1号」の在留資格が付与された場合、以下の優遇措置が受けられます。

高度専門職1号の優遇措置

1 複合的な在留活動の許容
2 在留期間「5年」の付与
3 在留歴に係る永住許可要件の緩和
4 配偶者の就労
5 一定の条件下での親の帯同の許容
6 一定の条件下での家事使用人の帯同の許容
7 入国・在留手続きの優先処理

複合的な在留活動の許容

高度外国人材は、複数の在留資格にまたがるような在留活動が行えます。

外国人の方は本来、在留資格ごとに認められているひとつの活動しか行えません。

しかし、高度外国人材と認められれば、日本の大学で研究をしながら事業の経営を行うなどの複合的な活動が可能となります。

在留期間「5年」の付与

高度外国人材には、在留期間「5年」が一律で付与されます。

通常なら、就労資格の在留期間は15日~5年の間で決定されます。審査によって決まるため、5年間が付与されるとは限りません。

しかし、高度外国人材は例外で、最初から法律上の最長期間である5年が与えられます。

在留歴に係る永住許可要件の緩和

高度外国人材は、永住許可の要件が緩和されます。

通常、永住許可を受けるには、原則として引き続き10年以上日本に在留していなければなりません。

しかし、高度外国人材のうち以下のいずれかの要件を満たす人は、10年以上在留していなくても永住許可の対象となります。

永住許可要件緩和の要件

● 高度外国人材としての活動を3年以上継続して行っている
● 高度人材ポイント制のポイントが80点以上で、高度外国人材としての活動を1年以上継続して行っている

配偶者の就労

高度外国人材の配偶者は、学歴や職歴などの要件を満たさなくても一定の在留活動を行えます。一定の在留活動とは、以下の在留資格に該当する活動です。

高度外国人材の配偶者に認められる一定の在留活動

● 研究
● 教育
● 技術・人文知識・国際業務
● 興行
通常、外国人労働者の配偶者は、資格外活動許可を得れば就労できますが、週28時間までに制限されます。

しかし、高度外国人材の配偶者は就労時間の制限なく就労できます。なお、高度外国人材の配偶者として許可を受けるための主な要件は、以下の通りです。

高度外国人材の配偶者として許可を受けるための要件

● 在留中、高度外国人材と同居を継続している
● 日本人と同等額以上の報酬を受ける

一定の条件下での親の帯同の許容

一定の要件を満たせば、高度外国人またはその配偶者の親(養親を含む)も入国・在留が認められます。帯同が許可されるのは、以下のケースです。

親の帯同が許可されるケース

● 高度外国人材またはその配偶者の7歳未満の子(養子を含む)を養育する場合
● 妊娠中の高度外国人材または妊娠中の配偶者の介助などを行う場合
また、以下のような要件を満たす場合に認められます。

親の帯同の要件

● 高度外国人材の世帯年収(予定)が800万円以上
● 高度外国人材と同居する
なお就労に関する在留資格の場合、通常なら親の受け入れは認められていません。

一定の条件下での家事使用人の帯同の許容

高度外国人材の場合、一定の要件を満たせば家事使用人を帯同させられます。

通常、家事使用人の雇用は、在留資格「経営・管理」「法律・会計業務」などで在留する一部の外国人にしか認められていません。

高度外国人材の家事使用人の帯同は、3つの類型に区分されています。類型ごとに要件が異なるので注意しましょう。

区分要件
①入国帯同型外国で雇用していた家事使用人を引き続き雇用する
②家庭事情型①以外の家事使用人を雇用する
③金融人材型投資運用業等に従事する金融人材が家事使用人を雇用する

入国・在留手続きの優先処理

高度外国人材に対する入国・在留審査は、優先的に処理されます。

区分処理日数の目安
入国事前審査申請受理から10日以内
在留審査申請受理から5日以内


ただし、提出書類の内容などによっては期間がかかる場合もあるため、注意しましょう。

在留資格が「高度専門職2号」の場合の優遇措置

高度専門職2号の在留資格は、在留期間・活動制限が大きく緩和されます。具体的な優遇内容は、以下の通りです。

高度専門職2号の優遇措置

1 高度専門職1号で認められる活動のほか、その活動とあわせて就労に関する在留資格で認められるほぼすべての活動を行える
2 在留期間が無期限になる
3 高度専門職1号の③~⑥までの優遇措置が受けられる

特別高度人材制度(J-Skip)とは

高度外国人材のなかでも、トップレベルの能力をもつ人材の受け入れを促進するため、2023年4月から新たに「特別高度人材制度(J-Skip)」が導入されました。

学歴または職歴と年収が一定水準以上であれば、ポイント制によらない基準で高度専門職1号が付与され、より拡充した優遇措置が受けられます。また、高度専門職1号の在留資格を取得後、1年間の在留で高度専門職2号への移行が認められます。

「特別高度人材」として高度専門職が付与されるのは、以下のいずれかを満たす人です。

特別高度人材の要件

● 修士号以上取得かつ年収2,000万円以上
● または職歴10年以上かつ年収2,000万円以上
ただし、高度人材の3つの活動類型のうち「高度経営・管理活動」の要件は、「職歴5年以上かつ年収4,000万円以上の方」です。

特別高度人材制度(J-Skip)の優遇内容

特別高度人材として認められると、高度人材ポイント制の優遇措置に加え、追加で以下の優遇が受けられます。

特別高度人材制度の優遇内容

1 世帯年収が3,000万円以上の場合、家事使用人を2人まで雇用できる
2 配偶者は、在留資格「教授」「芸術」「宗教」「報道」「技能」に該当する活動についても就労時間の制限なく就労できる
3 出入国時に大規模空港などに設置されているプライオリティーレーンを使用できる
また、特別高度人材として1年在留すれば、永住許可が得られます。

高度人材の申請手続方法

これから日本に入国する場合を例に、高度外国人材(高度専門職1号)の申請方法を解説します。提出する主な書類は、以下の通りです。

高度外国人材の申請に必要な書類

● 在留資格認定証明書交付申請書
● 写真(縦4cm×横3cm)
● 返信用封筒(宛先明記・切手貼付)
● 活動ごとに決められた必要書類(活動内容を明らかにする書類など)
● ポイント計算表
● ポイントを立証する資料
活動類型や申請の種類で提出書類も異なるので、詳しくは出入国在留管理庁のホームページなどで確認しましょう。手続きは、以下の流れで行います。

高度人材の申請手続きの流れ

1 在留資格認定証明書交付申請を行う
2 審査が実施される
3 在留資格認定証明書が交付される

①在留資格認定証明書交付申請を行う

地方出入国在留管理局の窓口で、「在留資格認定証明書交付申請」を行いましょう。手続きできるのは、外国人を受け入れようとする機関の職員などです。

なお、すでに日本に在留している外国人が手続きする場合は、「在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請」を行います。

②審査が実施される

出入国在留管理庁によって、在留資格を満たしているかどうかの審査が実施されます。ポイント計算も審査の際に行われます。

③在留資格認定証明書が交付される

高度専門職の在留資格が認められた場合は、在留資格認定証明書が交付されます。

認められなかった場合も、就労を目的とする高度専門職以外の資格要件に適合していれば、希望により当該在留資格の在留資格認定証明書が交付されます。

高度人材を採用する際の注意点

企業が高度外国人材を採用する際は、以下の点に注意しましょう。

高度人材を採用する際の注意点

● 外国人を採用する際は在留資格要件を満たすか確認する
● 高度外国人材向けの受け入れ準備をする
● 社会保険加入が必要

外国人を採用する際は在留資格要件を満たすか確認する

内定を出しても、在留資格の申請が不許可となれば就労ができません。高度人材を採用するときは、主に以下の点を確認しましょう。

外国人を採用する前の確認事項

● 外国人材が学位を取得しているか
● 仕事が高度な専門性や国際性を必要とする内容か
● 同じ業務を行う日本人と同等以上の待遇か

高度外国人材向けの受け入れ準備をする

高度外国人材がスムーズに入社できるよう、外国人向けの受け入れ準備を行いましょう。

外国人向けの受入れ準備の例

● 日本人社員(受け入れ側)向けの研修
● 高度外国人材の住環境サポート
● 高度外国人材向けのキャリアプランの設定
● 採用する高度外国人材の母国の文化理解
外国人向けの準備を行うことは、コミュニケーション不足などによる採用後のトラブルを防ぐためにも重要です。

社会保険加入が必要

適用事業所に雇用される従業員は、国籍にかかわらず原則として社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が必要です。(※)
(※)適用事業所とは、社会保険の適用を受ける事業所です。

加入の際は、日本人従業員と同様に事業主が「被保険者資格取得届」を提出します。

また、雇用保険の適用要件を満たす場合、外国人であっても被保険者となります。

雇用保険の適用条件

● 所定労働時間が週20時間以上である
● 31日以上の雇用見込みがある
事業主が「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する際、備考欄に「国籍・地域」「在留資格」「在留期間」「資格外活動許可の有無」などを記入して届け出ましょう。

なお、労災保険は従業員ごとの手続きは不要ですが、外国人労働者も同様に適用されます。

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まとめ

高度外国人材とは、日本産業にイノベーションをもたらすような高度な知識や技能をもつ外国の人材です。

ポイント制度によって高度外国人材と認められた外国人は、在留期間や在留活動などで優遇が受けられます。2023年4月からは、特別高度人材制度(J-Skip)もスタートしています。

人材が不足するなかで、専門的な知識や技能を有する高度外国人材の受け入れは、企業にとっても重要です。

在留資格「高度専門職」の概要や高度人材ポイント制、特別高度人材のことを正しく理解しておきましょう。

よくある質問

高度人材とはどのような人を指す?

高度人材とは、日本の産業にイノベーションをもたらすような知識や技能を有している外国の人材のことです。

高度人材の概要を詳しく知りたい方は「高度人材とは」をご覧ください。

高度人材ポイント制とはどのような制度?

高度人材ポイント制とは、ポイント制によって高度外国人材と認められた外国人に、出入国在留管理に関する優遇を行う制度です。

高度人材ポイント制の概要を詳しく知りたい方は「高度人材ポイント制とは」をご覧ください。

監修 志塚 洋介(しづか ようすけ) 行政書士・1級FP技能士・CFP

大学在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。証券会社で資産運用コンサルティングに従事したのち、不動産会社で保有不動産の収支計算や資産管理、収支改善業務などに従事し、独立開業。行政書士とファイナンシャルプランナーというお金と法律の2つの側面から会社設立、相続、遺言、運用、不動産などに関する幅広い業務を展開中。雑誌やwebでの執筆や株式や投資のセミナーなどの講師も行い、YouTubeでの投資に関する動画も好評。

監修者 志塚洋介