監修 内山 貴博 1級FP技能士・CFP
福岡市は、起業を希望する人の割合がもっとも高いと知られる都市です。充実した起業支援や豊富な人材など、事業を始めやすい環境が整っています。
本記事では、福岡で起業するメリット・デメリットと、利用できる支援制度・施設をまとめました。福岡で起業するときの注意点、手順も解説するので、起業を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
- 福岡市で起業しやすい理由とは?
- 福岡で起業する4つのメリット
- (1)支援制度・施設が充実している
- (2)ビジネス環境に優れている
- (3)人口増加率が高く若者が多い
- (4)住みやすい
- 福岡の起業支援制度
- 起業前の支援
- 資金支援
- 創業後の経営支援
- スタートアップ企業の法人税軽減
- 福岡で起業する際の注意点
- 東京と比較してセミナー開催が少ない
- 九州全体で見ると人口は減っている
- 福岡で起業する際の手順
- 起業に必要な知識を身に付ける
- 事業計画を立てる
- 起業資金を準備する
- 事業開始に必要な手続きをする
- 開業届はツールで簡単・正確に!
- まとめ
- よくある質問
- 福岡で起業するメリットは?
- 福岡の起業支援制度とは?
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福岡市で起業しやすい理由とは?
福岡市の開業率(2021年度)は6.3%であり、4年連続1位(21大都市中)を獲得しています。
背景にあるのは、福岡市が早くから力を入れてきた起業支援です。2012年には「スタートアップ都市ふくおか宣言」を行い、日本でもっとも起業しやすい街として支援に取り組んでいます。
起業の準備や相談ができる多彩なサポートが、福岡市に起業家を集めているのでしょう。具体的には「スタートアップカフェ」や、起業支援のための施設「Fukuoka Growth Next」などがあります。
また福岡市は、起業希望者の割合も政令指定都市のなかでもっとも高い、10.2%となっています(※)。
(※)起業希望者:新たに仕事をしたいと思う人のうち起業を希望する人
福岡で起業する4つのメリット
住みたい街として人気の福岡ですが、起業にも適しています。福岡で起業する主なメリットは、以下の4つです。
福岡で起業する4つのメリット
● 支援制度・施設が充実している● ビジネス環境に優れている
● 人口増加率が高く若者が多い
● 住みやすい
(1)支援制度・施設が充実している
福岡市は、創業と雇用を生み出す国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に選定され、多彩な起業・創業支援を行っています。
福岡市の起業・創業支援の例
● 起業前の学習・準備● 資金調達
● 人材確保
● 販路拡大
● イノベーション促進
(2)ビジネス環境に優れている
東京や大阪、名古屋と比べて安価な賃料でオフィスを構えられるのも、福岡のメリットです。
福岡市によると、東京(丸の内)の大規模ビルのオフィスビル募集賃料が月40,954円/坪であるのに対し、福岡(天神)は月15,978円/坪と約4割にとどまっています。(※)
(※)大規模ビルは、1フロア面積200坪以上のビルを指します。
また、福岡市は空港へのアクセス時間が世界48都市中2位の短さ(2022年)です。福岡空港から博多駅まで地下鉄一本で5分、天神駅まで11分で到着します。そのため、東京だけでなくアジア各国にもアクセスしやすいメリットがあります。
取引先と対面でのコミュニケーションが取りやすいのは、ビジネスをスムーズに進めるうえで重要でしょう。
(3)人口増加率が高く若者が多い
福岡市は、政令指定都市のなかでもっとも人口増加数・増加率が高い街です。また、若年層が多く流入しており、若者(10代・20代)の人口率もトップです。
人が多く集まる街は活気があり、事業を始めるのに適しています。優秀な人材を確保しやすいため、事業の成長も期待できるでしょう。
(4)住みやすい
住居や商業施設などの生活機能をコンパクトに集約した都市(コンパクトシティ)である福岡市は都市部と自然が近接しており、住みたい街として多くの人に選ばれています。
福岡市が市民に行った「令和4年度 市政に関する意識調査」によると、福岡市は住みやすいと答えた人が96.2%にのぼる結果でした。
また、福岡市の通勤・通学時間は平均36分(平日・片道)であり、3大都市圏(※)と比べて短いのが特徴です。移動の負担が少なければ、仕事に集中しやすいでしょう。
(※)3大都市圏とは、関東大都市圏・近畿大都市圏・中京大都市圏の3つです。
福岡の起業支援制度
福岡市の開業率が高い理由に、充実した起業支援・施設があげられます。福岡市で利用できる主な起業支援制度を紹介します。
福岡の起業支援制度
● 起業前の支援● 資金支援
● 創業後の経営支援
● スタートアップ企業の法人税軽減
起業前の支援
福岡市では、起業を検討している方向けにさまざまな支援を行っています。
開業ハンドブック | 事業を始めるのに必要な手続きをまとめた資料 |
スタートアップカフェ | 起業の準備や相談をするための空間 |
特定創業支援事業 | 福岡市が国の認定を受けて連携事業者と実施するセミナーや個別面談 |
スタートアップビザ(外国人創業活動促進事業) | 日本で創業したい外国人に必要な在留資格の要件が緩和される事業 |
開業ハンドブックには、開業準備から事業計画の立て方、会社設立手続きまで細かく記載されています。福岡市の「起業・創業応援サイト」から閲覧できるので活用しましょう。
スタートアップカフェでは、以下のようなサービスが利用できます。
スタートアップカフェで利用できるサービスの例
● 無料相談● 起業前後の各種サポート
● セミナーやイベントの参加
● コワーキングスペースの利用
区分 | サポート | 概要 |
創業前 | 開業ワンストップセンター | 法人設立に必要な各種手続きをまとめて行える |
創業時 | 福岡市スタートアップ人材マッチングセンター | 設立5年未満のスタートアップ企業と求職者をマッチングしてくれる |
福岡市雇用労働相談センター | 弁護士や社会保険労務士などの専門家に雇用に関する無料相談ができる | |
事業拡大期 | グローバルスタートアップセンター | 海外展開をサポートしてくれる |
また、福岡市が連携事業者と実施する「特定創業支援事業」では、起業に必要な知識の習得ができます。加えて、会社設立時の登録免許税が軽減されるなどのメリットも受けられます。
資金支援
次に、福岡市が行っている主な資金支援制度を紹介します。
資金支援制度 | 概要 | 補助額 |
福岡よかとこ起業支援金 | 地域課題解決を目的に、福岡県内で新たに起業する方などに補助金を交付する制度 | 上限200万円 (起業などにかかる対象経費の1/2以内) |
ステップアップ助成事業 | 成長性の高い事業計画をもつ創業者に補助金を交付する事業 | ・最優秀賞上限100万円 ・優秀賞上限70万円 ・奨励賞上限10万円 |
福岡市の制度融資 | 福岡市で創業予定の方や中小企業などが事業資金の融資を長期・低金利で受けられる制度 | 制度によって異なる |
それぞれ要件や補助金交付までの細かいスケジュール・期日が決まっているので、事前に確認しましょう。上記のほか、福岡県の制度融資や日本政策金融公庫の融資があります。
創業後の経営支援
福岡市は、創業後の経営支援も充実しています。
Fukuoka Growth Next | 福岡市が地元企業と連携して運営するスタートアップ支援施設 |
ステップアップ助成事業 | 成長性の高い事業計画をもつ創業者に補助金を交付する事業 |
福岡市の中小企業支援 | 無料の経営相談や融資・事業展開・人材確保などの幅広いサポート |
福岡市インキュベート認定マーク | 市のインキュベート施設の審査に合格し、施設を利用した方に交付されるもの(※) |
「Fukuoka Growth Next」は、スタートアップ企業を支援するためにさまざまなプログラムやサポートを行う施設です。具体的には以下のようなプログラムがあります。
Fukuoka Growth Nextのプログラム例
● 実践的な育成プログラム「FGN JUMP START PROGRAM」● 人材育成のためのスクール
● 認知拡大・販路拡大のためのプログラム
スタートアップ企業の法人税軽減
福岡市では、設立後5年未満の法人を対象に、法人税・法人市民税を軽減する「スタートアップ法人減税」を実施しています。
スタートアップ法人減税(国税) | 設立日から最大5年間、所得金額が20%控除される |
スタートアップ法人減税(市税) | 法人市民税(法人税割)が最大5年間、全額控除される |
国税に関しては要件を満たす場合に最大5年間、所得金額が20%控除され、法人税率が低くなります。
国税は「医療」「国際」「農業」「一定のIoT」の4分野、市税はそれに「先進的なIT」を加えた5分野が対象です。
福岡で起業する際の注意点
福岡市は開業率が高く、充実した起業支援が受けられる都市です。一方で、福岡での起業には注意点もあります。
福岡で起業する際の注意点
● 東京と比較してセミナー開催が少ない● 九州全体で見ると人口は減っている
東京と比較してセミナー開催が少ない
有名経営者の講演・イベントの開催は、東京に集中しています。近年、オンライン開催も増えていますが、東京と比べると参加できる機会は少なくなるでしょう。
東京と比べて最新の情報が得られにくいため、積極的に情報を得ようとする姿勢が求められます。
九州全体で見ると人口は減っている
福岡県の人口の動きは転入超過ですが、九州・沖縄全体で見ると福岡県以外は転出が超過しています(※)。人口が減っている地域では、活気や人材確保などの課題を踏まえた検討が必要です。
(※)転入超過は、転出者よりも流入者が多いことを指します。
福岡で起業する際の手順
福岡で起業を検討している方向けに、起業までの手順を解説します。
福岡で起業する際の手順
1. 起業に必要な知識を身に付ける2. 事業計画を立てる
3. 起業資金を準備する
4. 事業開始に必要な手続きをする
起業に必要な知識を身に付ける
起業するにあたって、経営の仕組みや税金、会計に関する最低限の知識習得が必要です。
起業前に身に付けておきたい知識
● 経営や税金の仕組み● 資金繰りの方法
● 決算書の読み方
● 手形・小切手の知識
福岡市でも、セミナーや専門家による相談窓口を設けています。また、「特定創業支援等事業」では、経営・財務・販路拡大・人材育成の知識習得が可能です。
事業計画を立てる
次に、事業の内容を決めて事業計画を立てましょう。どのような目的で始めるのかなどを具体的に決めることが重要です。
事業内容の項目
● 事業を始める理由や目的● 提供する商品・サービスの内容や特徴
● 対象となる顧客
● 商品・サービスの販売形態
● 資金・売上
事業計画書の主な記載事項
● 事業内容● 資金計画
● 収支計画
● 事業スケジュール
● 今後の事業展望
具体的かつ客観的な数値にもとづいた事業計画書を作成すれば、資金調達をするうえで有利になります。
起業資金を準備する
作成した事業計画書をもとに、どれくらいの資金が必要なのかを明確にします。
起業に必要な資金の例
● 事業に必要な機械や備品などの設備資金● 手続きに必要な諸費用
● 仕入代・交通費・通信費などの運転資金
● 家賃・レンタルオフィスの賃貸料
● 人件費
資金調達の方法
● 公的機関の支援制度● 福岡県・福岡市の制度融資
● 日本政策金融公庫や金融機関からの融資
● クラウドファンディング
事業開始に必要な手続きをする
起業の際には、さまざまな手続きが必要です。
事業開始に必要となる主な手続き
● 許可・認可・届け出(許認可などが必要な事業を行う場合)● 会社設立の手続き(法人を設立する場合)
● 税務関係の届け出(法人設立届出書、青色申告の承認申請書など)
● 労働保険・社会保険関係の届け出
起業については「起業するにはどうしたらいい?会社を起業する方法や手続きについてわかりやすく解説」でも詳しく解説しています。
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まとめ
福岡市は、充実した起業支援制度や安価なビジネスコスト、豊富な人材など起業しやすい環境が整っている都市です。起業前の知識習得や資金調達、起業後の経営支援など幅広いサポートが受けられます。
起業の際は、さまざまな準備・手続きが必要です。福岡市の開業ハンドブックや支援制度を活用し、計画的に進めましょう。
よくある質問
福岡で起業するメリットは?
福岡で起業するメリットは主に以下の4つです。
福岡で起業するメリット
● 起業支援制度・施設が充実している● ビジネス環境に優れている
● 人口増加率が高く若者が多い
● 住みやすい
福岡の起業支援制度とは?
福岡では、起業前から創業後の経営支援まで幅広い支援を実施しています。
福岡の起業支援制度
● 起業前の支援● 資金支援
● 創業後の経営支援
● スタートアップ企業の法人税軽減
監修 内山貴博(うちやま たかひろ) 1級FP技能士・CFP
大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。