紙の小切手・手形は、2027年3月末(2026年度末)を目標に廃止が進んでいます。しかし、三菱UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行の3メガバンクはすでに最終振出期限を2026年9月30日に設定しており、制度上の期限を待たずに使えなくなります。また、受け取った小切手には振出日から10日の呈示期間があり、期限を過ぎると資金化できなくなるおそれがあります。
本記事では、紙の小切手・手形廃止の時期・スケジュール・理由から、企業が取るべき対応と代替手段まで、実務に沿って解説します。
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目次
- 小切手・手形の廃止はいつ?
- 小切手・手形はいつまで使える?
- 小切手・手形廃止までのスケジュール
- 小切手・手形が廃止される理由
- 紙の小切手・手形廃止による企業へのメリット
- 管理・押印・郵送の負担とコストを減らせる
- 紛失・盗難のリスクを抑えられる
- 受取側の資金繰りの負担を解消できる
- 小切手・手形の廃止は製造業・建設業への影響が大きいのはなぜか
- 小切手・手形廃止に向けて企業が対応すべきこと
- 支払サイトと支払方法を見直す
- 取引先への切り替え案内・社内体制の整備
- 小切手・手形の代替手段
- でんさい(電子記録債権)
- インターネットバンキングによる振込
- まとめ
- 電子帳簿保存法の要件を満たしながら帳簿書類を簡単に電子保存する方法
- よくある質問
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小切手・手形の廃止はいつ?
紙の小切手・手形は、2026年度末(2027年3月末)までに電子交換所における交換枚数をゼロにすることを目標に、政府・産業界・金融界が連携して廃止に向けた取り組みを進めています。廃止の対象は「紙の小切手・手形」であり、でんさい等の電子記録債権やインターネットバンキングによる振込は、引き続き利用できます。
なお、廃止には罰則が設けられているわけではありませんが、多くの金融機関が2027年3月末を待たずに小切手・手形の取り扱いを段階的に縮小しています。金融機関の対応スケジュールは、後述の「小切手・手形はいつまで使える?」をご覧ください。
小切手・手形はいつまで使える?
制度上の目標は2027年3月末ですが、多くの金融機関が前倒しで紙の小切手・手形の取り扱いを縮小しており、実際にはそれより早く使えなくなるケースが生じています。主な前倒し対応の例は次のとおりです。
- 手形帳・小切手帳の発行受付終了:三菱UFJ銀行・三井住友銀行は2025年9月30日をもって手形・小切手の発行受付を終了。みずほ銀行は2024年1月4日以降の新規当座預金口座開設者に対して発行を停止し、既存口座向けの発行受付は2026年4月1日をもって終了
- 最終振出期限の設定:三菱UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行の3メガバンクはいずれも最終振出期限を2026年9月30日に設定しており、それ以降に振り出された手形・小切手は当座勘定からの支払いができない
- 2027年4月以降を期日とする取立受付の停止:多くの金融機関が、2027年4月以降を支払期日とする手形・小切手の代金取立受付をすでに停止している
対応時期や内容は金融機関によって異なるため、取引銀行に直接確認してください。
また、受け取った小切手の換金には期限があります。国内で振り出された小切手は、振出日から10日以内に銀行へ呈示しなければなりません。この期間を過ぎると振出人が支払委託を取り消せるため、期限を過ぎた小切手は資金化できなくなるおそれがあります。廃止に向けて金融機関の取り扱いが縮小しつつあることから、受け取った小切手はできるだけ早めに換金手続きを進めましょう。
小切手・手形廃止までのスケジュール
小切手・手形の廃止は、政府方針の決定から金融機関の前倒し対応まで、以下のとおり段階的に進んできました。
2021年6月18日
政府が公表した「成長戦略実行計画」に、以下2点の内容が盛り込まれる
- 5年後の約束手形の利用の廃止に向けた取組を推進する
- 小切手の全面的な電子化を図る
2021年7月19日
一般社団法人 全国銀行協会が「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画」を公表。同計画内で以下の目標を定める
- 2026年度末までに電子交換所における交換枚数(手形・小切手)をゼロにする
2021年7月20日~
政府方針を受け、各金融機関が前倒しで手形・小切手の取り扱い縮小を進める
※発行受付終了・最終振出期限の設定・取立受付の停止など、行ごとに対応時期が異なる
2027年3月末(2026年度末)
全国銀行協会の目標期限。電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにする目標日
廃止に罰則は設けられていませんが、多くの金融機関が2027年3月末を待たずに発行受付終了や最終振出期限の設定を前倒しで進めており、実質的に紙の手形・小切手を使い続けることが難しくなります。取引銀行の対応スケジュールによっては、制度上の期限より早く手形・小切手が使えなくなるため、早めの移行が求められます。
小切手・手形が廃止される理由
小切手・手形には、デジタル化が進む現代のビジネス環境にそぐわない複数のデメリットがあります。廃止推進の背景を理解しておくことで、電子化への移行判断がしやすくなります。
紙の小切手・手形を使用することによるデメリットは次のとおりです。
紙の小切手・手形を使用するデメリット
- 現金が手元に入るまでの期間が長い
- 支払期限前に現金化する際の割引料が高い
- 振り出しなどの事務手続きが煩雑
- 郵送料や印紙税がかかる
- 紛失や盗難のリスクがある
とくに郵送料・印紙税などのコストや紛失・盗難のリスクは、紙媒体という現物を使う決済手段に固有のデメリットです。紙媒体の手形・小切手を廃止して電子化することで、これらのデメリットを解消するねらいがあります。
たとえば、手形の種類のひとつである「約束手形」には、受取側の負担が大きいという問題もあります。以下は、約束手形を用いた商取引の流れです。
②手形の振り出しから⑦支払いまでの期間が3〜4ヶ月空くことが一般的で、その間受取人であるA社は現金を受け取れません。商品やサービスの提供が完了しているにもかかわらず数ヶ月先まで現金が入ってこないことは、資金繰りのうえで大きな負担となります。こうした状況から、紙の手形利用に消極的になる企業も増えていました。
さらに小切手には、不渡りのリスクがあります。小切手は振出人の当座預金から支払われる仕組みのため、受け取った側が銀行に持ち込んだ時点で振出人の口座残高が不足していると、支払いが拒絶されます。これを不渡りといい、受取側は現金を回収できなくなります。現金と引き換えに商品やサービスを提供したにもかかわらず、代金を受け取れないリスクは、紙の小切手に固有のものです。
小切手の不渡りについて詳しく知りたい方は、別記事「不渡りとは?主な原因や種類、対策についてわかりやすく解説」をご覧ください。
なお、廃止されるのは「紙の手形・小切手」であり、電子化されたもの(電子記録債権・でんさい)は引き続き利用できます。
紙の小切手・手形廃止による企業へのメリット
小切手・手形が廃止されることで、コスト削減や紛失・盗難のリスク低減につながります。
管理・押印・郵送の負担とコストを減らせる
紙の手形・小切手を使った決済では、手形帳への記入・押印・銀行への持ち込み・郵送といった一連の事務作業が発生します。電子化によってこれらの作業がなくなるため、担当者の工数を削減できます。
コスト面でも、郵送費・手数料・印紙代が不要になります。取引件数が多い企業ほど、これらの削減効果は大きくなります。
紛失・盗難のリスクを抑えられる
紙媒体の手形の性質上、紛失や盗難のリスクがあることが懸念点です。また、支払期日を失念するリスクもあります。
これらのリスクは、手形が電子化されることによって抑えられます。支払期日を失念するリスクは、電子化によって支払期日に自動入金されるようになることで大幅に減ると考えられます。
受取側の資金繰りの負担を解消できる
紙の手形は振り出しから支払いまで3~4ヶ月かかるため、受取側の資金繰りに大きな負担をかけていました。電子化によってこの問題が解消され、資金回収までの期間を短縮できます。とくに受取側の立場が弱い下請業者にとって、資金繰りの安定につながります。
小切手・手形の廃止は製造業・建設業への影響が大きいのはなぜか
企業間取引では、仕入れの際に代金をその場で支払わず、「買掛金」として後日まとめて支払うのが一般的です。この場合、買掛金が発生してからおよそ1ヶ月後に現金で支払うことになります。
しかし、手形であれば買掛金よりも遅い期日を支払日として指定できます。高額な仕入れが発生する製造業や建設業では、この仕組みを活用した手形払いが商慣習として広く使われてきました。支払側にとっては資金繰りに余裕が生まれる一方、製造業や建設業の下請業者にとっては商品・サービスの提供から支払いまでの期間が長くなるほど資金繰りが難しくなるといったデメリットも生じていました。
紙の小切手・手形の廃止により、製造業・建設業の下請業者にとっては資金繰りの負担改善につながる可能性があります。
その反面、これまで手形払いによって支払いを先延ばしできていた発注側の企業は、早期の現金払いや電子的決済手段への切り替えが求められます。
小切手・手形廃止に向けて企業が対応すべきこと
2021年3月に公正取引委員会が公表した通達では、手形などによる支払の場合の支払サイトを60日以内とすることなどが定められていました。
さらに、2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法)では、委託事業者(発注者)が中小受託事業者(受注者)に対して手形で支払うことが原則禁止となりました。電子記録債権やファクタリングなどであっても、支払期日までに代金に相当する現金を受け取ることが困難なものも禁止の対象です。あわせて、物品等の受領日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を設定することが義務付けられています。
これらを踏まえ、企業が取り組むべき対応は大きく以下の2つです。
支払サイトと支払方法を見直す
取適法では手形払いが原則禁止となったため、現在手形で支払っている取引については、現金振込や電子記録債権など支払期日までに現金を受け取れる手段への切り替えが求められます。あわせて、物品等の受領日から60日以内に支払期日が収まるよう、取引条件を見直さなければなりません。
既存の基本取引契約に手形払い条項が残っていれば、取適法の対象となる取引から順に契約内容を更新します。どの取引が取適法の対象になるかは、取引先の規模・取引内容によって異なるため、自社の取引を整理したうえで判断してください。
取引先への切り替え案内・社内体制の整備
電子的決済への移行は、自社だけでなく取引先にも対応が必要です。全国銀行協会は、以下の3ステップで進めることを推奨しています。
①取引金融機関への相談・申込
②取引先への案内
③社内の導入準備(事務手続きや管理手順の見直し・初期設定)
具体的な小切手・手形に代わる手段については、後述の「小切手・手形の代替手段」をご覧ください。
小切手・手形の代替手段
紙の手形・小切手に代わる決済手段として、全国銀行協会はでんさいなどの電子記録債権とインターネットバンキングによる振込を推奨しています。自社の取引規模や取引先の状況に合った手段を選ぶことで、移行後の業務負担を抑えられます。
でんさい(電子記録債権)
でんさいとは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が取り扱う電子記録債権です。紙の手形が抱えていた課題を電子化によって解消した決済手段として、2013年のサービス開始以降、利用件数を伸ばしています。
でんさいの利用は、受取企業・支払企業それぞれに以下のようなメリットをもたらします。
受取企業にとってのメリット
- 電子化された債権のため、紛失や盗難のリスクがない
- 支払期日に自動入金され、取り立てのための手続きが不要
- Web上で管理できるため、事務手続きの負担を軽減できる
- 紙の手形ではできない「債権の分割譲渡」が行える
支払企業にとってのメリット
- 手形用紙代や印紙代などが削減できる
- ペーパーレスのため郵送費がかからない
- 手形発行作業が紙と比べて簡単になり、事務手続きを効率化できる
でんさいネットのサービスについて詳しく知りたい方は、別記事「電子記録債権(でんさい)を用いるメリットとは?手形との違いや利用の流れなどわかりやすく解説」をご覧ください。
インターネットバンキングによる振込
インターネットバンキングによる振込は、でんさいの利用登録が不要で、すでに口座を持つ企業がすぐに切り替えられる手段です。支払期日に合わせて振込を行うため、受取側は入金日が明確になり、資金繰りの見通しが立てやすくなります。
手形のように現金化まで数ヶ月待つ必要がなく、振込当日に資金を受け取れる点は受取側の資金繰りの改善に直結します。取引先がでんさいに対応していない場合や、少額・単発の取引では、振込が現実的な選択肢になります。
まとめ
紙の小切手・手形は2027年3月末(2026年度末)を目標に廃止が進んでいます。しかし、多くの金融機関はそれより早く発行受付終了や最終振出期限の設定を進めており、実質的には2026年9月末ごろまでが使用できる期限の目安です。
廃止後の代替手段はでんさい(電子記録債権)とインターネットバンキングによる振込が中心です。取引先との支払条件の見直しや、でんさいの利用登録など、切り替えには一定の準備期間が必要なため、取引銀行への相談を早めに進めることで、移行期の混乱を防げます。
freeeが提供するfreee請求書では、請求書の発行から入金管理まで一元管理でき、電子化への移行後の業務をスムーズに進められます。
電子帳簿保存法の要件を満たしながら帳簿書類を簡単に電子保存する方法
電子帳簿保存法に従って帳簿や書類を電子保存するためには、さまざまな保存要件を満たさなければなりません。タイムスタンプの付与や検索機能の確保など、環境構築からはじめなければならないような要件も多く、担当者に大きな負担がかかってしまいます。
そこでおすすめしたいのが、電子帳簿保存法に対応したシステムの導入です。システムの導入によって、帳簿書類を電子帳簿保存法の各要件を満たしながら簡単に電子保存できます。
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よくある質問
小切手・手形が廃止されるのはいつ?
2027年3月末(2026年度末)が全国銀行協会の目標期限です。ただし多くの金融機関が前倒しで取り扱いを縮小しており、制度上の期限より早く使えなくなるケースが生じています。
詳しくは記事内「小切手・手形廃止までのスケジュール」をご覧ください。
小切手はいつまで使える?
多くの金融機関が最終振出期限を2026年9月30日に設定しており、それ以降に振り出された小切手は当座勘定からの支払いができなくなります。また、受け取った小切手は振出日から10日以内に銀行へ呈示しなければ資金化できなくなるおそれがあります。
詳しくは記事内「小切手・手形はいつまで使える?」をご覧ください。
紙の小切手・手形廃止後は何に切り替える?
でんさい(電子記録債権)またはインターネットバンキングによる振込への切り替えが推奨されています。
詳しくは記事内「小切手・手形の廃止に代わる代替手段」をご覧ください。
廃止されるのは紙だけ?電子は使える?
廃止対象は紙の小切手・手形のみです。でんさいなどの電子記録債権は引き続き利用できます。
詳しくは記事内「小切手・手形の廃止はいつ?」をご覧ください。
