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民事裁判の費用は誰が負担する? 知っておきたい費用の相場や手続きの流れを解説

監修 松浦 絢子 弁護士

民事裁判の費用は誰が負担する? 知っておきたい費用の相場や手続きの流れを解説

民事裁判(民事訴訟)とは、民事上のトラブルの解決を目的とした裁判です。民事裁判費用の相場や、手続きの流れをわかりやすく解説します。

毎日の生活のなかで、裁判に発展するトラブルに巻き込まれる可能性がないとは言い切れません。

「民事裁判にはどの程度費用がかかるのか」や「費用は誰が負担するのか」を知っておくと、裁判を起こす必要が生じた際に冷静な対応ができます。

目次

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民事裁判とは? 対象となるトラブルや刑事裁判との違い

民事裁判とは、民事上のトラブルを法律によって解決するための手続きです。

訴えを起こした側を原告、訴えられた側を被告と呼び、弁護士を依頼した場合は弁護士が双方どちらかの代理人として、言い分を主張したり証拠の提出に行ったりします。

以下では、民事裁判の対象となるケースや刑事裁判などとの違いを説明します。

民事裁判で対象となるトラブル

民事裁判では、民事上の法的なトラブルについて双方の言い分を聞き証拠を調べたうえで、裁判官からの判決や和解をもって解決を図ります。

民事裁判で対象となるのは、たとえば以下のようなケースです。

民事裁判の対象となるケース

● 貸したお金の返還を求める場合
● 不動産に関するトラブル
● 解雇や賃金の不払いなど労働関係に関わるトラブル
● 交通事故などによって発生した損害に対する賠償を求める場合
どの裁判所に申し立てるかは、請求する金額や対象物の経済的価値によって変わります。
訴訟の目的の価額が140万円以下であれば簡易裁判所、140万円超であれば地方裁判所で手続きを行います。

また、民事裁判は本来「判決」によって解決を図る手続きですが、途中で裁判官から「和解(話し合いによる解決)」を提案される場合もあります。そして、判決が出るよりも和解で終わるケースの方が多いです。

民事裁判と民事調停の違い

お金のトラブルや損害賠償に関する問題を解決したいが、民事裁判まで起こしたくない人には、民事調停という方法があります。

裁判官の判決によって解決を目指す民事裁判と異なり、民事調停は「当事者同士の合意」が基本です。

裁判官1人と一般市民から任命される調停委員2人から構成される「調停委員会」が間に立ち、双方の言い分を聞きます。

民事調停は、法律的に白黒を決める民事裁判よりも当事者同士の歩み寄りを重視しているため、より円満な解決を目指せます。

また、裁判を起こすよりも手続きが簡易で、費用を抑えられる点がメリットです。民事調停で双方が同意できなかった場合は、改めて民事裁判を起こすことも可能です。

民事裁判と刑事裁判の違い

民事裁判と刑事裁判では、扱う内容や目的が大きく異なります。民事裁判は、個人と個人(または会社)など、私人間のトラブルの解決を目的とする手続きです。

一方、刑事裁判では、罪を犯したと疑われる人(被疑者)に対し「本当に罪を犯したのかどうか」、有罪の場合には「どのような刑罰が妥当なのか」などを裁判所が判断します。

なお、刑事裁判を起こせるのは検察官のみです。事件が発生すると、警察などの捜査機関が証拠を集め、犯人や犯罪内容を特定します。

被疑者が犯人である可能性が高いと判断し、検察官が刑事裁判を求めることを「起訴」といいます。起訴されると被疑者は「被告人」と呼ばれ、弁護士は被告人の弁護人として弁護活動を行う場合があります。

民事裁判の手続きの流れ

民事裁判を起こした場合、一般的に以下の手順で裁判が進みます。

民事裁判の手順

1. 原告(訴える側)が訴状を裁判所へ提出
2. 裁判所は訴状の受付・審査・審理期日の指定を行い、被告側へ訴状・期日呼出状を送達
3. 被告(訴えられる側)は訴状を受け取った後、答弁書を提出
4. 原告は被告の答弁書を受領
5. 原告・被告の双方で、証拠書類や証人の準備
6. 法廷にて審理
7. 判決または和解によって解決
判決に不服がある場合、判決送達日の2週間以内に上級の裁判所へ控訴(上告)できます。

控訴・上告とは、裁判所の判決に対して、再度の審理を求める手続きです。たとえば、第一審の地方裁判所の判決が納得できないのであれば、高等裁判所に「控訴」し、第二審の高等裁判所の判決にも不服があるなら、最高裁判所に「上告」します。

判決が確定したにも関わらず、判決内容が実行されない場合、勝訴した側は実現を求める「民事執行手続き」を行えます。民事執行手続きのひとつである「債権執行手続き」では、債務者の給料の差し押さえや、銀行預金の差し押さえによって、債権の回収を図ります。

4種に分類される民事裁判

民事裁判は下記のとおり、大きく分けると4種に分類されます。

● 通常訴訟
主人同士のトラブルに関する一般的な訴訟を指します。貸した金銭の返還や、不動産の明渡し、損害賠償を請求する訴えなどが含まれます。

● 手形小切手訴訟
民事訴訟法の特別の規定によって審理される手形・小切手の支払を求める訴訟です。手形・小切手の支払を求める原告は、手形小切手訴訟か通常訴訟か、訴訟の類型を選択できます。

● 少額訴訟
少額訴訟では、60万円以下の金銭支払を求める訴えが扱われます。簡易で迅速な手続きが可能な点が特徴です。

● その他の訴訟
その他、離婚や認知など家族関係でのトラブルを訴訟する「人事訴訟」や、行政庁の行為の取消しなどを求める「行政訴訟」などがあります。

民事裁判にはどんな費用が必要? 費用の内訳や相場を解説

民事裁判では、主に「訴訟費用」と「弁護士費用」の2つの費用がかかります。ここでは、訴訟費用や弁護士費用の内容や相場を解説します。

訴訟費用

訴訟費用とは、訴状やその他の申立書に必要な手数料・書類を送るための郵便料・証人の旅費日当など裁判手続きにかかる費用を指します。

弁護士費用は含まれておらず、訴訟費用は弁護士に依頼しない場合でも発生します。

訴訟費用のうち、裁判所に訴えを起こすための「申立手数料」は、下表の通り、訴訟の目的物の価額によって決まります。

訴訟の目的の価額申立手数料額
100万円まで(価額10万円までごとに)1,000円
100万円超え500万円まで(価額20万円までごとに)1,000円
500万円超え1,000万円まで(価額50万円までごとに)2,000円
1,000万円超え10億円まで(価額100万円までごとに)3,000円
10億円超え50億円まで(価額500万円までごとに)10,000円
50億円超え(価額1,000万円までごとに)10,000円
出典:裁判所ウェブサイト「手数料」 別表(民事訴訟費用等に関する法律別表第1(第3条、第4条関係))の項1を基に作成

また、控訴の提起には申立手数料の1.5倍の額、上告の提訴には申立手数料の2倍の額がかかります。

弁護士費用

弁護士に依頼すると、主に「弁護士報酬」と「実費」の2種類の費用が生じます。

弁護士報酬には、着手金・報酬金・手数料などが含まれます。着手金は、結果が成功でも不成功でも生じる費用です。一方、報酬金は、裁判の結果に応じて金額が異なり、完全に敗訴だった場合には発生しません。

実費とは、収入印紙代・交通費・通信費・コピー代など、依頼された事件処理に必要となった費用です。弁護士の遠方への出張などが生じると、想定以上に費用がかかるケースもあります。

2004年4月、弁護士会の報酬基準は廃止され、自由に料金を決定できるようになりました。相場を知るには、日本弁護士連合会がまとめた報酬アンケートが役立ちます。

主なトラブルでの弁護士報酬(着手金・報酬金)の目安は、下表の通りです。

トラブル内容着手金報酬金
離婚調停20万円30万円
建物明渡(原告側)30万円60万円
建物明渡(被告側)20万円10万円
交通事故30万円50万円
金銭の貸借(返還請求)20万円30万円
出典:日本弁護士連合会「市民のための弁護士報酬ガイド」(P4-P12)を基に作成

日本弁護士連合会による調査で、もっともアンケート回答数が多かった金額を記載しています。あくまで目安であり、実際の着手金と報酬金の組み合わせはさまざまです。

民事裁判の費用は誰が払う?

民事裁判を行うには、訴訟費用と弁護士費用が必要となります。訴訟費用と弁護士費用は、それぞれ誰が負担すべきかを解説します。

訴訟費用は負けた側が負担する

訴訟費用は、基本的に敗訴した側が負担します。

訴訟費用を支払う経済的な余裕がない場合は、「訴訟上の救助」制度を利用できます。

「訴訟上の救助」とは、訴訟費用を支払う資力がない場合、裁判所が訴訟費用の支払を猶予する制度です。ただし、明らかに勝訴する見込みがない場合は、猶予が認められない場合もあります。

弁護士費用は相手方に請求できない

弁護士に関する費用は、原則、依頼した本人が負担しなければなりません。

しかし、不法行為を原因とする損害賠償請求の場合などでは、敗訴した不法行為者に対して弁護士費用の一部を請求する場合もあります。

弁護士費用をすぐに支払えない人には、「民事法律扶助による立替制度」があります。

「民事法律扶助による立替制度」とは、日本司法支援センター「法テラス」による制度です。経済的に余裕がない人に向けて、無料で法律相談を実施し、弁護士費用や司法書士費用などを立て替えます。

民事裁判は弁護士なしでも起こせる?

民事裁判は弁護士がいなくても起こせます。代理人として弁護士に依頼するかどうかは自由であり、弁護士に依頼しなくても裁判の手続きはできます。

弁護士をつけずに民事裁判を起こすことを「本人訴訟」といいます。

本人訴訟を行えば、弁護士費用は発生しないため、コストを抑えられる点がメリットです。しかし、訴訟手続きには手間がかかるうえ、相手が弁護士に依頼すると不利になりやすい点はデメリットです。

日本弁護士連合会によると2018年の交通事故損害賠償請求事件総数(※)では、弁護士などに依頼した人が94.7%いるのに対し、本人訴訟を行なった人は5.2%でした。

本人訴訟は不可能ではありませんが、実際には弁護士などの専門家に依頼するケースの方が大きな割合を占めています。

※出典:日本弁護士連合会「弁護士費用保険の現在」

まとめ

民事裁判とは、私人間の民事上のトラブルに対し、和解や判決によって解決を図る裁判手続きです。

民事裁判にかかる費用は、大きく分けて「訴訟費用」と「弁護士費用」の2種類です。原則、訴訟費用は敗訴側に請求可能ですが、弁護士費用は依頼した本人が負担しなければなりません。

経済的な理由で訴訟費用や弁護士費用を負担できない人は、猶予を受けられる制度や立て替え制度の活用をおすすめします。

よくある質問

民事裁判にはどのような費用が必要?

訴訟に必要な訴訟費用や、弁護士に依頼して弁護士に支払う弁護士費用が必要です。

民事裁判の費用を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

監修者 松浦絢子