バックオフィスのトレンド情報をまとめて解説!

年収の壁を一覧でわかりやすく解説!今後の見直しについても説明

公開日:2023/06/17

監修 内山 貴博 1級FP技能士・CFP

年収の壁を一覧でわかりやすく解説!今後の見直しについても説明

年収の壁とは、その金額を超えると税金や社会保険料が変わる金額です。本記事では、さまざまな年収の壁の意味や、制度の見直しの可能性を解説します。

年収の壁を超えると、税金や社会保険料が変わって手取りが減る場合があります。年収の壁を超えそうな場合には、生活に影響が出ないか事前に確認しましょう。

またパートやアルバイトなどを雇用している企業も、年収の壁を把握しておくと勤怠管理やシフト調整に活かせます。

それぞれの年収の壁についてわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。

目次

スモールビジネスを、世界の主役に。

freeeは会計・人事労務ソフトなどのサービスを開発・提供し、バックオフィス業務の煩雑さからの解放を目指します。経営に関するお悩みは、ぜひfreeeにご相談ください!

年収の壁とは?

年収の壁とは、税金や社会保険料がかからないように、年収を抑えようと意識される金額のボーダーラインです。

年収がある金額を超えると、税金や社会保険料がかかり始めたり、給与から天引きされる金額が増えたりする場合があります。

基準額を超えないように年収を抑えれば、税金や社会保険料が増えず手取りが減りません。

年収の壁には、税制上の壁と社会保険上の壁の2種類あります。

税制上の年収の壁は以下の4つです。

税制上の年収の壁

● 100万円
● 103万円
● 150万円
● 201万円
社会保険上の年収の壁は以下の2つです。

社会保険上の年収の壁

● 106万円
● 130万円

年収住民税所得税社会保険料配偶者控除配偶者特別控除
100万円以下かからない対象-
100万円かかるかからない
103万円かかるかからない-対象
106万円かかる場合あり
130万円かかる
150万円
201万円

それぞれの年収の壁について以降で詳しく解説します。

社会保険と扶養の関係は、「社会保険の扶養から外れるとどうなる?事業主・従業員が必要になる手続きまとめ」でも詳しくまとめています。

100万円の壁

パートやアルバイトをしていて給与収入がある人は、年収が100万円を超えると一般的に住民税がかかります。

年収が100万円以下で住民税がかからない場合は、収入が増えればその分だけ手取りが増えます。

一方で年収が100万円を超えて住民税がかかる場合は、手取り額は収入から住民税を引いた金額です。

以下のケースで、具体的に解説します。

● 品川区在住、給与収入101万円、収入は給与収入のみ、控除は給与所得控除のみ

【所得割】
給与収入101万 - 給与所得控除55万円 = 給与所得46万円
給与所得46万円 - 基礎控除43万円 = 3万円
3 万円×税率10% = 3,000円

※そのほかの所得控除は考慮していません。

【均等割】
特別区民税3,500円 + 都民税1,500円 = 5,000円

【住民税合計】
所得割3,000円 + 均等割5,000円 = 8,000円
年収が101万円になると、住民税が年間8,000円かかるため、手取りは100万2,000円になります。

住民税が非課税である年収100万円と比べると、年収は1万円増えても年間で増える手取りは2,000円です。

税金がかかると手取りがあまり増えないため、年収100万円前後の場合は、住民税がかからないように年収を100万円以下に抑えようと意識する人もいます。

なお自治体によっては、住民税がかかり始める年収の基準額が100万円とは異なる場合があります。

たとえば、神奈川県愛川町では、所得が1種類で合計金額が「28万円×(扶養人数+1)+17万円(扶養がある場合のみ)+10万円」以下であれば町民税・県民税(個人住民税)が非課税です。非課税となる収入金額は以下表の通りです。

町民税・県民税が課税される方/課税されない(非課税になる)方
出典:愛川町「町民税・県民税が課税される方/課税されない(非課税になる)方」

住民税を意識して働く場合は、住民税がかかり始める年収の基準額がいくらなのか、自治体のサイトなどで確認しましょう。

106万円の壁については、「106万の壁を超えたらどうなる?対象者や130万の壁との違いを解説」でより詳しく解説しています。

103万円の壁

パートやアルバイトで給与収入がある人は、年収が103万円を超えると一般的に所得税がかかります。

たとえば年収が110万円の場合、103万円を超える7万円に対して所得税がかかります。

年収110万円であれば所得税率は5%なので、3,500円(7万円×5%)の所得税が発生し、この金額だけ手取りが減る計算です。

ただし医療費控除など、各種控除の適用を受けられれば、年収が103万円を超えても所得税がかからない場合があります。

106万円の壁

106万円の壁とは、社会保険料がかからずに済む金額のボーダーラインのひとつです。厳密には月額賃金8万8,000円が基準ですが、一般的に年収106万円の壁と呼ばれます。

パートやアルバイトなどの短時間労働者は、以下の要件に該当すると社会保険加入の対象となり社会保険料がかかります。

社会保険の加入条件(短時間労働者)

● 勤務先の従業員数が101名以上
● 週の所定労働時間が20時間以上
● 月額賃金が8万8,000円以上(年間約106万円)
● 2ヶ月を超える勤務の見込みがある
● 学生ではない
所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書などで定められた勤務時間であり、実際の勤務時間ではありません。

また月額8万8,000円以上かどうかは、通勤手当や残業代などを含めない金額で判定します。年収の壁のうち、同じく社会保険上の壁である130万円の壁では通勤交通費を含めて考えます。

通勤交通費の取り扱いを、混同しないように注意しましょう。

130万円の壁

130万円の壁とは、社会保険に関するボーダーラインのひとつで、家族の扶養に入れるかどうかの基準です。

年収が130万円以上だと一般的に家族の扶養から外れ、自分で社会保険に入らなければならないため社会保険料がかかります。

平均的には月々の収入が10万8,333円までであれば、年収130万円未満に収まります。そのため130万円の壁を意識して働く場合は、月収10万8,333円がひとつの目安です。

家族の扶養に入れる条件は、健康保険組合によって異なる場合があります。臨時的に1ヶ月だけ10万8,333円を超えただけであれば、扶養認定は取り消されないケースもあります。

家族の扶養に入る場合は、扶養認定の条件が具体的にどのようになっているのか、家族の勤務先の規定をよく確認しましょう。

個人事業主の方は、併せて「個人事業主は扶養に入れる?扶養に入るメリットと要件を解説」も読んでおくとわかりやすいです。

150万円の壁

150万円の壁とは、税金に関するボーダーラインのひとつで、税金を計算する際の配偶者特別控除額が減り始める基準です。

自分の年収が150万円を超え、配偶者の税金を計算する際に配偶者特別控除額が減ると家族の税負担が増えます。

自分の年収が150万円以下であれば、配偶者の所得税の計算で38万円、住民税の計算で33万円、それぞれ所得額から控除できます。

一方で150万円を超えた場合は、引ける金額が減る仕組みです。

控除額を最大71万円(所得税38万円・住民税33万円)にするためには、年収を150万円以下に抑えなければなりません。

なお配偶者の所得が900万円以上の場合、そもそも配偶者控除・配偶者特別控除が受けられない、または金額が減額されてしまうため注意しましょう。

201万円の壁

201万円の壁とは、税金に関するボーダーラインのひとつで、税金を計算する際の配偶者特別控除額がゼロになる基準です。

年収が201万円を超えると、納税者である配偶者の税金を計算する際の配偶者特別控除額がなくなり税負担が増えます。

年収が150万円を超えると、年収が増えるほど配偶者の税金の計算で引ける配偶者特別控除額が小さくなっていきます。201万円に達すると、配偶者特別控除額がゼロになる仕組みです。

配偶者特別控除の適用を受けるためには、年収を201万円に抑えなければならないので、201万円を年収の壁と呼ばれています。

配偶者の合計所得金額【参考】配偶者の収入が給与所得だけの場合の配偶者の給与等の収入金額控除額
納税者本人の合計所得額
900万円以下900万円超950万円以下950万円超1,000万円以下1,000万円超
配偶者控除48万円以下配偶者が70歳未満103万円以下38万円26万円13万円0円
配偶者が70歳以上48万円32万円16万円0円
配偶者特別控除48万円超
95万円以下
103万円超
150万円以下
38万円26万円13万円0円
95万円超
100万円以下
150万円超
155万円以下
36万円24万円12万円0円
100万円超
105万円以下
155万円超
160万円以下
31万円21万円11万円0円
105万円超
110万円以下
160万円超
1,667,999円以下
26万円18万円9万円0円
110万円超
115万円以下
1,667,999円超
1,751,999円以下
21万円14万円7万円0円
115万円超
120万円以下
1,751,999円超
1,831,999円以下
16万円11万円6万円0円
120万円超
125万円以下
1,831,999円超
1,903,999円以下
11万円8万円4万円0円
125万円超
130万円以下
1,903,999円超
1,971,999円以下
6万円4万円2万円0円
130万円超
133万円以下
1,971,999円超
2,015,999円以下
3万円2万円1万円0円
133万円超2,015,999円超0円0円0円0円
出典:国税庁「No.2672 年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるとき」

年収の壁対策として制度見直しも検討される見込み

年収の壁を意識して働くと収入が十分に増えません。それだけでなく近年の日本では、高齢化により労働人口が減少しており、人手不足の問題が生じています。

年収の壁を意識して働く人が、収入や労働時間を気にせずに働けるようになれば、人手不足の解消につながる可能性があります。

このような状況を改善するため、年収の壁に対策を講じる可能性を岸田首相が明言しました。

具体的な対策は未定ですが、今後は年収の壁を超えても税金や、社会保険料が増えないよう制度改正が行われることも考えられます。

まとめ

年収の壁には、以下のような種類があります。

● 100万円の壁
● 103万円の壁
● 106万円の壁
● 130万円の壁
● 150万円の壁
● 201万円の壁

年収の壁を超えると、税金や社会保険料が変わって手取りが減ってしまいます。

また年収が一定額を超えると、自分の手取りが減るだけでなく、家族の手取りが減る場合もあります。

年収や手取りを考える際には、自分だけでなく家族を含めた世帯全体で考えることも大切です。

年収によって、税金や社会保険料がどのように変わるのか、正しく理解したうえで年収や手取り額の計算・家計管理を行いましょう。

よくある質問

年収の壁とは?

年収の壁とは、税金や社会保険料がかかり始めたり高くなったりする基準額です。

年収の壁を詳しく知りたい方は、「年収の壁とは?」をご覧ください。

1ヶ月だけ扶養限度額をオーバーしてしまったら?

年収の壁のうち130万円の壁に関しては、臨時的に1ヶ月だけ超えてしまった場合は扶養取り消しにならないケースが多いです。

しかし多くの場合、2ヶ月以上月10万8,333円を超えると扶養から外れます。

1ヶ月だけ扶養限度額をオーバーした場合について、詳しく知りたい方は「130万円の壁」をご覧ください。

監修 内山貴博(うちやま たかひろ) 1級FP技能士・CFP

大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。

監修者 内山貴博