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カーボンニュートラルとは? 企業の取り組み事例や対策をわかりやすく解説

公開日:2023/08/16

監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

カーボンニュートラルとは? 企業の取り組み事例や対策をわかりやすく解説

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることです。本記事では、カーボンニュートラルの概要や必要性などを解説します。

現在、気候変動問題を解決するため、世界各国が「2050年カーボンニュートラル実現」を目標に掲げている状況です。

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みは手間や費用がかかりますが、経費を削減し、事業の見直しが成長機会につながる場合もあります。

各国の動向を参考に企業が取り組み可能な対策を講じ、カーボンニュートラルの実現を目指しましょう。

目次

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カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、GHG(温室効果ガス)の排出量と吸収量を差し引いた合計を0にすることです。GHGの種類は、以下の通りです。


カーボンニュートラルとは

GHG(温室効果ガス)の種類

● CO2(二酸化炭素)
● メタン
● N2O(一酸化二窒素)
● フロンガス

GHGの排出量は、企業活動を行ううえで削減できても完全にはなくせません。カーボンニュートラルでは、やむを得ず排出されるGHGを植林や森林管理で吸収量を増やし、差し引き0を目指します。

現在、日本を含めた120以上の国と地域が、2050年カーボンニュートラル実現に向けて活動しています。

カーボンニュートラルの実現はなぜ必要?

カーボンニュートラルの実現は、世界的な気温上昇と気象災害を回避するために必要だと考えられています。

世界の平均気温は、1850~1900年の工業化前と比較し、2020年時点で約1.1℃の上昇が確認されています。

気温上昇と気候変動の因果関係は、明らかでない部分もありますが、さまざまな地域で異常気象による気象災害が多発しています。


カーボンニュートラルの実現は、今を生きる私たちだけでなく、次世代の人たちも安心して暮らせる持続可能な社会をつくるために必要です。

また企業にとっても、カーボンニュートラルに取り組む必要性が高まっています。

近年、原料調達から消費者の手元に届くまでのサプライチェーン全体で、カーボンニュートラルを目指すグローバル企業が増加しています。

企業としてカーボンニュートラルに対応していない場合、今後発注先として候補に上がらなくなる未来があるかもしれません。

今すぐではなくとも、カーボンニュートラルへの取り組みが、将来企業経営に大きな影響を及ぼすことが考えられます。

カーボンニュートラルと脱炭素の違い

「カーボンニュートラル」と「脱炭素」はほぼ同義で扱われており、明確な区別はされていません。

ただし、少し異なるニュアンスで使われる場合もあります。

カーボンニュートラル脱炭素
削減対象CO2(二酸化炭素)を含めたGHG(温室効果ガス)全般CO2(二酸化炭素)
目的GHG(温室効果ガス)全般の排出量を削減し吸収量を増やして実質0にするため、地球温暖化の抑止に加え、企業の積極的な取り組みによる技術革新や経済効果をもたらすCO2(二酸化炭素)の排出量を0にして、地球温暖化を抑止する


両者はほぼ同義で使われますが、上記のように異なるニュアンスをもつ場合もあると覚えておくといいでしょう。

カーボンニュートラルの実現に向けた動き

カーボンニュートラルの実現に向けて、世界各国で取り組みが実施されています。以下では、世界と日本の動きに分けて解説します。

世界の動き

カーボンニュートラル実現に向けた、主な世界の動きは以下の通りです。

主な動き目標主な取り組み
アメリカ・2019年11月、気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」を脱退
・2021年1月、パリ協定復帰を決定
・2050年カーボンニュートラル実現
・2030年に、2005年比でGHG排出量を50~52%削減
・クリーン自動車の普及、燃費・排ガス規制を強化
・クリーン水素の活用やメタンの排出規制
・低炭素製品の普及支援
・エネルギー効率の向上支援
EU2050年カーボンニュートラル実現を目指した長期戦略を提出・2050年カーボンニュートラル実現
・2030年に1990年比で、少なくともGHG排出量を55%削減
・再生可能エネルギーの導入
・エネルギー効率化
・ガソリン車からの脱却
・燃料の転換
イギリス経済活動の脱炭素電化を進めるとして、2050年カーボンニュートラルを法定化・2050年カーボンニュートラル実現
・2030年に1990年比で少なくともGHG排出量を68%削減
・EV化
・省エネの推進
・低炭素燃料への転換
・CO2回収
中国2020年9月、2060年カーボンニュートラルを表明・2060年カーボンニュートラル実現
・2030年までの炭素排出ピークアウト実現
電気自動車の普及


多くの国が2050年にカーボンニュートラルを実現することを目標としており、2030年までの中間目標を定めています。

日本の動き

2020年10月、日本では菅元総理が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。温暖化対策やグリーン成長戦略の検討、エネルギー計画など議論を重ね、加速化を指示しています。

令和3年度与党税制改正大綱では、カーボンニュートラル実現に向けて、企業の投資を促進する税制措置創設が盛り込まれました。またカーボンニュートラルに向けた支援策や、補助金制度もスタートしています。

企業が行うカーボンニュートラル実現への取り組み事例

実際に企業が行っている、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み事例を紹介します。

省電力化やエネルギーの転換など、カーボンニュートラルの実現に向けて、さまざまな取り組みが行われています。

省エネルギー化でGHG排出量を削減

自社オフィスで使用する電力を省エネルギー化し、GHG排出量を削減している企業があります。このような取り組みによって、大幅なGHG排出量の削減を達成しました。

CO2フリー電力への切り替えも推進しており、政府が掲げる目標水準を前倒しで達成するため、積極的な取り組みを行っています。

事業所の購入電力を再生エネルギー転換

事業所で利用する電力を、再生エネルギーに切り替えている企業もあります。

2022年度の購入電力は100%の切り替えが完了した事業所では、年間で約10,000t相当のGHG削減効果が見込まれています。

ほかの事業所でも同様の取り組みを行い、2023年度の購入電力が100%再生可能エネルギーへ切り替わる予定です。

同社の目標は、2030年度に2018年度比でGHG排出量を50%削減することです。また今後も各事業拠点で再生可能エネルギーの調達を加速させ、目標達成に向けて取り組むと発表しています。

燃料に次世代バイオディーゼル燃料を使用

車両や船舶・航空機などの燃料に次世代バイオディーゼルを使用し、カーボンニュートラルの実現に取り組んでいる企業もあります。

燃料に使う次世代バイオディーゼルは、燃焼時にCO2を排出します。しかし次世代バイオディーゼルの原料である植物や藻類が成長過程でCO2を吸収するため、実質的にカーボンニュートラルにつながると期待されている燃料です。

空港へ乗り入れる路線バスの燃料に次世代バイオディーゼルを使用し、エンジンへの影響や燃費消費率、CO2削減効果を検証しました。

低炭素な商品の普及を加速

使用時に排出されるCO2を削減した製品の普及に取り組む企業もあります。

自社の製品が使用される際にCO2排出量が多いため、環境性能の向上と環境貢献商品の普及拡大が責務と認識し、カーボンニュートラルへの取り組みを進めています。

エネルギー効率の高い商品や、従来品よりCO2排出量を削減した商品を普及させるべく、5年累計で500億円以上の資金投入を宣言しました。

インターナルカーボンプライシング制度の導入

インターナルカーボンプライシング制度を試行導入する企業もあります。

「カーボンプライシング」とは、排出するCO2に価格をつけ、排出者の行動変容を促す施策です。CO2削減効果を考慮した戦略投資を判断し、削減を加速させるべく取り組んでいます。

カーボンニュートラルの実現に向けて企業ができる対策とは

カーボンニュートラルの実現に向けて、企業ができる主な対策は以下の通りです。

”カーボンニュートラル”実現に向けて企業ができる主な対策

● 自社のGHG(温室効果ガス)排出量を把握し削減計画を策定する
● エネルギーの見直しや設備の入れ替えを実施する
● 事業内容を見直し、必要に応じて再構築を検討する
それぞれ詳しく解説します。

自社のGHG(温室効果ガス)排出量を把握し削減計画を策定する

現状を把握しなければ、GHGの排出削減に向けた取り組みができません。

まずは自社で排出量の多い事業分野を特定し、原因の分析や改善方法を検証しましょう。排出量の多い事業から削減を検討し、具体的な計画を立てて実行に進みます。

必要に応じて、専用ツールの利用や専門家の診断もおすすめです。日本商工会議所は、CO2排出量を見える化するチェックシートを無料提供しています。

出典:日本商工会議所「CO2チェックシート」

また一般社団法人省エネルギーセンターが運営する「省エネ・節電ポータルサイト」では、省エネ最適化診断が受診可能です。費用をかけずに改善提案やアドバイスが受けられ、CO2排出量を可視化するセルフ診断ツールも提供しています。

出典:一般社団法人省エネルギーセンター「省エネ・節電ポータルサイト」

エネルギーの見直しや設備の入れ替えを実施する

企業活動を継続するうえで、使用するエネルギーをエネルギー効率の良いものや、再生可能エネルギーへの転換を考えましょう。

エネルギー効率の悪い設備は取り替え、省エネ化を図れば経費削減にもつながります。

エネルギーの見直しや設備の入れ替えに必要な費用は、補助金や融資制度も利用可能です。費用面で不安がある場合は、活用するといいでしょう。

事業内容を見直し、必要に応じて再構築を検討する

自社の事業内容を見直し、カーボンニュートラルの実現で成長が見込まれる産業分野への転換も検討しましょう。

経済産業省が策定したグリーン成長戦略では、カーボンニュートラルの実現で成長が期待される重要分野を提示しています。

分野
エネルギー関連産業の4分野・洋上風力・太陽光・地熱
・水素・燃料アンモニア
・次世代熱エネルギー
・原子力
輸送・製造関連産業の7分野・自動車・蓄電池
・半導体・情報通信
・船舶
・物流・人流・土木インフラ
・食料・農林水産
・航空機
・カーボンリサイクル・マテリアル
家庭・オフィス関連産業の3分野・住宅・建築物・次世代電力マネジメント
・資源循環関連
・ライフスタイル関連


出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

事業転換を検討する際は、カーボンニュートラルの実現で成長が期待される分野にも注目してみましょう。

カーボンニュートラルに関わる支援策・補助金

カーボンニュートラルの実現には、手間やコストも必要です。取り組む企業の負担を軽減するため、補助金や支援策が展開されています。

カーボンニュートラルに関するサポート

カーボンニュートラルに関するサポートとして、自社で何を取り組めばいいかなどを相談できる「カーボンニュートラル相談窓口」や、「省エネお助け隊」が存在します。

カーボンニュートラル相談窓口は、中小企業・小規模事業者を対象にした中小企業基盤整備機構の窓口です。カーボンニュートラルの取り組み方や取り組みのPR方法、GHG排出量の測定方法を専門家へ無料で相談できます。

また自社の状況確認に使えるカーボンニュートラル・チェックシートを公開しているため、活用するといいでしょう。

出典: J-Net21「カーボンニュートラル・チェックシート」

省エネお助け隊は、経済産業省の採択で活動している組織です。中小企業向けに省エネ取り組みの現状把握から改善まで、細やかなサポートを実施しています。

エネルギー使用量の削減を考えるなら、省エネルギー診断も役立つでしょう。専門家の診断を受けるための費用補助も受けられ、カーボンニュートラルに向けた取り組みを効率よく進められます。

出典:環境共創イニシアチブ「省エネルギー診断」

GHG排出量の把握に役立つツールや補助金

GHG排出量の削減には、現状把握や削減効果の検証も必要です。日本商工会議所は、CO2排出量を見える化できるチェックシートを無料提供しています。

出典:日本商工会議所「CO2チェックシート」

さらに踏み込むなら、省エネルギーセンターが実施している省エネ最適化診断や無料講師派遣も役立つでしょう。データを活用したIoT診断サービスや、セルフ診断ツールも提供しており、現状把握と改善策の検討に役立ちます。

GHGの見える化ツールを本格的に導入する場合、費用面で問題があるなら、IT導入補助金が利用可能です。通常枠(A・B類型)では費用の2分の1・最大450万円を補助してくれます。

GHG排出量の削減を支援する補助金

GHG排出量の測定だけでなく、削減の取り組みを支援する補助金制度も存在します。カーボンニュートラルに取り組むうえで、費用面の問題を解決してくれる存在です。

受付期間や要件、補助される金額の上限などは制度ごとに異なります。

補助金補助対象
ものづくり補助金 グリーン枠温室効果ガスの削減に資する製品・サービスの開発や生産性向上の取り組み
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金エネルギー効率の良い設備への更新
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金電気自動車やプラグインハイブリッド車の導入
太陽光発電導入促進事業補助金太陽光発電の導入
蓄電システム(蓄電池)導入補助金蓄電システムの設置費用

カーボンニュートラルを促進する融資や税制

カーボンニュートラルに取り組む場合、高額な投資を要するケースもあるでしょう。そのような場合に役立つ、優遇制度も存在します。

制度内容
カーボンニュートラルに向けた投資促進税制要件を満たす設備導入に対して最大10%の税額控除、または50%の特別償却
省エネルギー設備投資に係る利子補給金所定の事業に対する融資へ利息の一部を最大1%・最大10年間・年2回補給
地域脱炭素融資促進利子補給所定の融資に対して最大年利1%を上限に最大3年間の利子補給


取り組みに必要な費用が高額な場合は、これらの制度も活用しましょう。

まとめ

カーボンニュートラルは、GHGの排出量と吸収量を差し引いて、実質的に0にする考え方です。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、多くの国々が取り組んでいます。

企業も自社のGHG排出量を把握し、削減に向けた取り組みが必要です。エネルギーの見直しや省エネルギー化、再生可能エネルギーへの転換などを検討・実施しましょう。

カーボンニュートラル実現のため、すでに取り組みを始めている企業も多くあります。カーボンニュートラルに取り組む企業を支援する補助金制度も活用し、できることから始めましょう。

よくある質問

カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引いて、実質的に0にする考え方です。

カーボンニュートラルを詳しく知りたい方は、「カーボンニュートラルとは?」をご覧ください。

カーボンニュートラルの実現に向けて企業ができることは?

温室効果ガスの削減計画を立て、エネルギーの見直しや設備入れ替えを実施し、必要なら事業の再構築を検討しましょう。

カーボンニュートラルの実現に向けて企業にできることを詳しく知りたい方は、「カーボンニュートラルの実現に向けて企業ができる対策とは」をご覧ください。

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修者 羽場康高