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【2022年】電気通信事業法改正とは?変更のポイントや対策をわかりやすく解説

公開日:2023/06/17

監修 松浦 絢子 弁護士

【2022年】電気通信事業法改正とは?変更のポイントや対策�をわかりやすく解説

電気通信事業法改正は2023年6月に施行予定で、新たに規律が追加されます。電気通信事業の経営者は、変更点や必要な対応を把握しなければなりません。

本記事では改正電気通信事業法の概要や大きく変わったポイント、必要な対策などを解説します。

目次

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【2022年】電気通信事業法の改正

2022年6月に、電気通信事業法の一部を改正する法律が可決・成立されました。改正法は2023年6月に施行が予定され、主な改正項目は以下の3点です。

改正項目目的
情報通信インフラの提供確保国内どこでも・誰でも利用できるユニバーサルサービスの確保
安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保誰もが安心・安全に利用できる環境の整備
電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備事業者の公正な競争環境と低廉なサービスの実現
出典:総務省「電気通信事業法施行規則等の一部改正について」

近年は、デジタル技術を活用したサービスの普及が拡大しています。

デジタル技術の拡大に一役買っているブロードバンドサービスは、もはやインフラとして欠かせません。人の集まる地域だけでなく、山岳地帯などの不採算地域にも安定して提供する必要があります。

しかし、デジタル技術を活用したサービスの拡大に伴い、情報漏えいなどのリスクが高まっています。サービスを提供する事業は、保有するデータをより一層適切に取り扱わなければなりません。

電気通信事業法とは?

電気通信事業法は簡潔にいうと、電気通信の健全な発達と国民の利便性の確保を図るために制定された法律です。

電気通信事業法では、以下の3点を主軸としています。

電気通信事業法の3つの主軸

● 公正競争の促進
● 電気通信役務の円滑な提供確保
● 利用者利益の保護
上記を主軸に誰もが安心・安全に利用できる安定したネットワークと、安価で多種多様なサービスの提供の実現を目指しています。

電気通信事業法の対象となる事業者

電気通信業法の対象となるのは、電気通信サービスの提供自体を事業としており、当該事業で利益を得ようとする事業者です。

ただし以下の事業は、電気通信サービスを提供していても電気通信事業として該当せず、電気通信事業法は適用されません。

電気通信事業として該当しない事業の例

● 企業・個人・自治会等のホームページ運営
● 証券・金融商品等のオンライン販売
● 物・商品のオンライン販売
● 製造した商品のオンライン販売
出典:総務省「電気通信事業参入マニュアル ガイドブック」

電気通信事業とは

電気通信事業とは、電気通信事業法で「電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業」とされています。

電気通信事業を営む事業者で総務大臣の登録を受け、総務省令で定めるところにより届出をした者を「電気通信事業者」といいます。

たとえば、スマートフォンなどの携帯電話回線や、インターネット回線を提供する事業者です。

また電気通信事業を営む者は登録・届出が必要な「電気通信事業者」と、登録・届出が不要な「第3号事業者」にわかれます。

事業者電気通信事業者第3号事業者
登録・届出の有無必要不要
サービス例● 固定電話
● 携帯電話
● 電子メール
● インターネット接続サービスなど
● SNS
● 各種情報のオンライン提供
● オンライン検索サービスなど
出典:総務省「電気通信事業参入マニュアル ガイドブック」

第3号事業者は電気通信事業法の規定が適用されませんが、「検閲の禁止」「通信の秘密の保護」などの義務は生じます。

電気通信事業法改正で大きく変更されたポイント

2022年に交付された改正電気通信事業法の主な変更点は、以下の3つです。

改正電気通信事業法の主な変更点

● 情報通信インフラの提供確保
● 安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保
● 電気通信市場を巡る動向に応じた公正な競争環境の整備
出典:総務省「電気通信事業法施行規則等の一部改正について」

上記のうち、特に大きな影響を与えると考えられている「安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保」に関する変更点を3つ紹介します。

特定利用者情報の取り扱いに関する規律が新設

電気通信事業法改正では、新たに「特定利用者情報の取り扱いに関する規律」が創設されています。特定利用者情報とは、以下2つの要件のいずれかに該当する情報です。

情報内容
通信の秘密に該当する情報● 個別の通信にかかわる通信内容
● 個別の通信にかかわる通信の日時、場所
● 通信当事者の氏名、住所、電話番号、個別識別符号、通信回数など
利用者を識別でき、かつ総務省令で定める情報以下の利用者に関するデータベース化された情報
● 電気通信事業者(第三号事業を含む)を営む者との間で契約を行った者
● IDや番号を付与されてサービスを利用する者
出典:総務省「電気通信事業法施行規則等の一部改正について」 出典:総務省「電気通信事業法及び通信(信書等を含む)の秘密」

特定利用者情報を適正に取り扱う義務は、すべての事業者が該当するわけではありません。利用者の利益に与える影響が大きいと判断される、規模の大きい電気通信事業者が該当します。

特定利用者情報の取り扱いに関する規律が該当する事業者

● 利用者数が1,000万人以上の無料電気通信サービス
● 利用者数が500万人以上の有料電気通信サービス
なお、特定利用者情報の取り扱いに関する義務の主な内容は以下です。

特定利用者情報の取り扱いに関する義務

● 特定利用者情報の適正な取り扱いを確保するため、情報取扱規程を定め、指定日から3ヶ月以内に総務大臣へ届け出なければいけない
● 特定利用者情報の取り扱いの透明性を確保するため、情報取扱方針を定め、指定日から3ヶ月以内に公表しなければいけない
● 毎事業年度、特定利用者情報の取り扱いの状況に関する評価を実施し、必要に応じて情報取扱規程・情報取扱方針の見直しをしなければいけない
● 特定利用者情報の取扱業務を統括管理させるため、指定日から3ヶ月以内に、特定利用者情報統括管理者を選任しなければいけない
● 特定利用者情報が漏えいした場合は、漏えいの事実と理由・原因をすみやかに総務大臣へ報告しなければいけない
出典:衆議院「電気通信事業法の一部を改正する法律案」

届出対象の拡大

電気通信事業法改正では新たに以下の概念が設けられ、届出の対象となります。

新たに届出が必要な電気通信役務

● 検索情報電気通信役務
● 媒介相当電気通信役務
検索情報電気通信役務、媒介相当電気通信役務は第三者事業に該当します。そのため、改正前は届出の必要はありませんでした。

しかし改正後は、大規模なインターネット検索サービスやSNSを提供する事業者も、総務大臣に指定を受け届出が必要です。

検索情報電気通信役務と媒介相当電気通信役務の対象になる電気通信役務の要件は、以下です。

電気通信役務要件
検索情報電気通信役務● 利用者数が1,000万人以上
● 分野横断的な検索サービスを提供する電気通信役務(レストランや商品などの特定分野のみの検索サービスは除く)
媒介相当電気通信役務● 利用者数が1,000万人以上
● 主として不特定の利用者間の交流を実質的に媒介する電気通信役務(付随的に当該電気通信役務を提供する電気通信役務および商取引に関する情報のみ取り扱う電気通信役務は除く)
出典:総務省「電気通信事業法施行規則等の一部改正について」

外部送信規律(Cookie規制)の新設

利用者に関する情報の外部送信に対して、規制が新たに創設されます。一般的には外部送信に伴ってCookieが発行されるため、「Cookie規制」とも呼ばれる規制です。

ウェブサイトやアプリの利用者の情報が第三者に外部送信される場合、所定の事項の通知または公表などを義務づけています。

外部送信規律の対象事業者は主に以下です。

外部送信規律の対象事業者

● 利用者間のメッセージ媒介等
● SNS・電子掲示板・動画共有サービス、オンラインショッピングモール等
● オンライン検索サービス
● 各種情報オンライン提供(ニュース配信、気象情報配信、動画配信、地図等)
出典:総務省「電気通信事業法施行規則等の一部改正について」

各種情報オンライン提供に関しては、自社に関する情報の発信であれば規制対象外です。

しかしお役立ちコンテンツやコラムなど、自社と直接関係のない記事を掲載している場合は該当します。

簡易的なウェブサイト以外は、ほぼ規律の対象となる可能性が高いため、多くの事業者が影響を受ける可能性があります。

電気通信事業法改正の背景

デジタル社会の実現には、通信サービス・ネットワークが安心・安全で信頼され、継続的・安定的かつ確実な提供が不可欠です。

しかし近年は、電気通信事業者から利用者の個人情報や、通信の秘密の漏えいが生じるなどのリスクが顕著化しています。

また電気通信事業者へのサイバー攻撃で、通信サービスの提供停止やデータ漏えいなどの事案が続いています。そのためサイバー攻撃のリスクも深刻です。

このような状況を受け、電気通信事業者のサイバーセキュリティ対策とデータの取り扱い等に係るガバナンス確保の在り方が検証されました。

そしてデジタル時代の安心・安全で信頼できる通信サービス・ネットワークの確保を目的に、電気通信事業法の改正が行われました。

電気通信事業法改正に伴い企業に求められる対応

電気通信事業法改正に伴って、電気通信事業を営む企業は対応を求められます。特に外部送信規律は、多くの企業に影響を与えると考えられるため、対策の必要があるでしょう。

以下、電気通信事業を営む事業者に求められる主な対応を紹介します。

通知・公表を行うためにプライバシーポリシーを改訂する

Cookieなどの利用に関する通知・公表は、共通して以下が求められます。

通信・公表に求められる条件

● 日本語かつ、わかりやすい表現で説明する
● 利用者が拡大・縮小等の作業をせずに済むように適切な文字サイズで表示する
● 利用者が容易に確認できるようにする
電気通信事業法改正が施行されると、プライバシーポリシーやCookieポリシーに記載する際に工夫が必要です。

外部送信規律に関する内容が含まれている旨を、タイトルや見出しに明記し、一括して確認できるようにしましょう。

以下は、国税庁のプライバシーポリシーが記載されているページです。

国税庁ホームページにおける個人情報保護方針
出典:国税庁「国税庁ホームページにおける個人情報保護方針」

さらに上記以外も、通知・公表内容の規定や表示方法などの細かい決まりがあるため、対応が必要な点が多数生じると考えられます。

自社で対応が難しい場合は、外部の専門機関への依頼も検討すると良いでしょう。

利用者の同意を取る方法を考える

外部送信規律は表示・公表すれば良いわけではなく、利用者の同意を取らなくてはいけません。

同意に関しての具体的な方法は定められていませんが、法律により「適切な確認の機会を付与する」旨が記載されています。

しっかりと情報を提供して、確実な形で同意を取ることが望ましいです。

たとえば、利用者の同意を取得する手段としてCMPツールの導入を検討するのも良いでしょう。

CMPツールは、ウェブサイトやアプリ上で、データ取得や利用に関する情報を提供し、ユーザーの同意を得るためのツールです。

CMPツールの導入によって、ウェブサイトやアプリ上で、以下のようなことが可能になります。

CMPツールの導入で可能になること

● 企業によるデータの収集
● 利用状況の案内
● 来訪者の同意取得

オプトアウトの手段を取る

オプトアウトとは、個人データの第三者への提供を本人の求めに応じて停止する設定です。

オプトアウトでは利用者の求めに応じて、当該利用者に対し情報の送信または利用を停止する措置を取らなければなりません。

また、オプトアウトの手段を用意するだけではなく、利用者が容易に認識できるように公表することも大切です。公表の際は以下も明記しましょう。

オプトアウトに関する公表内容

● オプトアウト措置を講じている旨
● オプトアウト措置で情報の送信と利用のどちらが停止するか
● オプトアウト措置の申込方法
● オプトアウト措置の適用により、サービスの利用が制限される場合の内容
● 送信される情報の内容や送信先、利用目的など

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まとめ

2022年6月に、電気通信事業法の一部を改正する法律法が可決・成立し、2023年6月から施行されます。

改正法では、届出範囲の拡大や新たな規律が創設されています。特に外部送信規律は多くの事業者が影響を受けると考えられるため、対応が求められます。

自社での対応が難しい場合は、外部の専門機関への依頼やツールの活用を検討してみましょう。

よくある質問

電気通信事業法とは?

電気通信事業法とは、電気通信の健全な発達及び、国民の利便の確保を目的に策定された法律です。

電気通信事業法を詳しく知りたい方は、「電気通信事業法とは?」をご覧ください。

電気通信事業法改正とは?

電気通信事業法改正は、電気通信事業を取り巻く環境の変化を踏まえ、従来の電気通信事業法に必要な規制が追加され、成立しました。2023年6月に施行される予定です。

電気通信事業法改正を詳しく知りたい方は、「【2022年】電気通信事業法の改正」をご覧ください。

監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

監修者 松浦絢子