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産休手当とは?いつ・どれくらいもらえる?支給条件や申請方法まで詳しく解説

監修 竹国 弘城 1級FP技能士・CFP

産休手当とは?いつ・どれくらいもらえる?支給条件や申請方法まで詳しく解説

産休手当は正式には「出産手当金」と呼ばれ、産休の取得で減ってしまった収入をカバーし、生活をサポートする役割を果たします。会社員として働く女性が出産のために産休(産前・産後休暇)を取り、一定の条件を満たすと産休手当の支給対象となります。

この記事では、いわゆる産休手当について、制度の概要や必要な手続き、受給できる金額などをわかりやすく解説します。また産休手当の他に、会社勤めの方が妊娠・出産でもらえるお金についても紹介します。

目次

産休手当とは

産休手当とは、その名の通り、出産のために休暇をとった女性に支払われる給付金です。正式には「出産手当金」といいます。

出産のための休業期間として、労働基準法では産休(産前・産後休業)が定められています。会社は原則としてこの間に女性労働者を働かせてはいけません。産前期間は、出産予定日を含む42日間(多胎妊娠の場合は98日間)、産後期間は出産翌日から56日間です。

ただし、本人が希望し医師が支障ないと認めた業務については、産前の42日間(または98日間)と産後42日間経過後から就業可能です。

産休手当(出産手当金)は健康保険から支払われます。支給対象期間は、労働基準法に規定された産休期間である98日間(多胎妊娠の場合は144日)の範囲内で、会社を休んで給与の支払いがなかった期間です。

給与が支払われる場合も、産休前より減少していれば、産休前給与との差額が産休手当として支給されます。出産日が予定日より遅れたときは、予定日から出産日までの日数分も支給対象になります。

産休手当を受給できる条件

産休手当(出産手当金)を受給するには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。

産休手当(出産手当金)の受給条件

  • 健康保険の被保険者であること
  • 産休中に給与を受け取っていない、または産休前よりも給与額が減少していること
  • 妊娠4ヶ月以降の出産(流産を含む)であること

出産手当金は健康保険の被保険者が支給対象であり、出産する女性自身の健康保険への加入が条件です。健康保険の被保険者であれば、正社員やパートなどの雇用形態や加入期間は問われません。

支給対象は原則として産休中に給与を受け取っていない人ですが、産休中に給与を受け取った人でも、受け取った給与の日額が産休手当の日額よりも少なければ、その差額分を産休手当として受け取れます。

なお、国民健康保険の被保険者や健康保険の被扶養者、任意継続で前職の健康保険に加入している方は対象外です。産休中に退職した場合、次の2つの条件を満たしていれば、退職後も産休手当を受け取れます。

退職後に産休手当を受け取る条件

  • 退職日(被保険者資格喪失日の前日)までに1年以上の加入(被保険者)期間がある
  • 被保険者資格喪失時点で産休手当を受け取っているか、受給条件を満たし

退職日に出勤すると、後者の条件「被保険者資格喪失時点で産休手当を受け取っている」を満たさなくなるため、退職日の翌日以降(資格喪失後)の産休手当は受け取れなくなります。

産休手当の申請に必要な手続き

産休手当(出産手当金)の申請は、通常、従業員に代わって企業側が行います。

従業員が自分で申請する場合には、所定の出産手当金申請書を健康保険組合へ提出します。産休に入る前に勤め先で書類を受け取り、医師または助産師に必要事項を記入してもらうなどの準備が必要です。

申請は産前分と産後分など、複数回に分けて行えます。申請書類と会社(事業主)の証明は申請ごとに必要です。医師または助産師の証明は、1回目の申請が出産後であり、そのときの証明で出産日などが確認できれば、2回目以降省略できます。

なお、未来の日付分の産休手当は申請できません。手続きを一度で済ませたいなら、支給対象期間終了後に産前産後分をまとめて申請しましょう。出産日翌日から2年以内であれば申請可能です。

産休手当の計算方法

産休手当(出産手当金)の1日あたりの金額は、標準報酬日額の3分の2です。この金額に支給対象日数をかければ、産休手当の受給額となります。

健康保険では、従業員が勤め先から受け取る給与などの報酬を切りのよい金額で区分した「標準報酬月額」をベースに保険料などを計算しています。この標準報酬月額を30日で割ると「標準報酬日額」です。

1日あたりの産休手当は「支給開始日の属する月以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2」で計算されます。支給開始日以前の健康保険への加入期間が12ヶ月に満たないときには、別途、標準報酬月額を設定して計算します。

たとえば、産休手当支給開始日前12ヶ月の月収(支給額)がずっと30万円だった女性が予定日当日に出産した場合を考えてみましょう。法定の産休期間中はすべて会社を休み、その間の給与の支払いはなかったとします。

この女性の標準報酬月額は「30万円(22等級:報酬月額290,000円〜310,000円の区分)」、標準報酬日額は「標準報酬月額(30万円)÷30日=1万円」です。1日あたりの支給額は、「標準報酬日額(1万円)×3分の2=6,667円(1円未満四捨五入)」、支給総額は、「1日あたり支給額(6,667円)×支給対象日数98日(産前休暇日数42日+産後休暇日数56日)=65万3,366円」と計算できます。

被保険者期間が支給開始日以前12ヶ月未満の場合

産休手当の支給開始日以前に健康保険の被保険者期間が12ヶ月に満たないときには、次のうち、いずれか低い金額を標準報酬月額として計算します。

基準となる標準報酬月額

  • 支給開始月以前で直近の継続した月の標準報酬月額平均額
  • 加入する健康保険組合の全被保険者の前年9月30日時点での標準報酬月額平均額

妊娠・出産にまつわる申請と労務手続き

従業員の妊娠と出産にまつわる手当には、産休手当(出産手当金)のほかにも、「出産育児一時金」や「育児休業給付金」、「出生時育児休業給付金」があります。

「出産育児一時金」は、産休手当と同じく健康保険から支払われます。妊娠4ヶ月(85日)以上の出産に対して、原則として子どもひとりあたり42万円を受給できます。

育児休業を取得すると支給されるのが、「育児休業給付金」です。育児休業は、原則として子どもが1歳(状況に応じては最長2歳)になるまで、従業員からの申し出により取得できる休業制度です。育休を利用中は育児休業給付金の対象となります。

2022年10月から始まった「産後パパ育休(出生時育児休業)」の取得者を対象とした手当が、「出生時育児休業給付金」です。産後パパ育休は原則男性従業員を対象とした制度であり、従業員からの申し出により、子どもの出生後8週間以内に4週間(28日)まで育休を取得できます。

産休手当と出産育児一時金が健康保険からであるのに対し、育児休業給付金と出生時育児休業給付金は雇用保険から支給されます。

ここでは、それぞれの手当の申請に必要な労務手続きを紹介します。

出産育児一時金

出産育児一時金は、通常、健康保険の被保険者本人が手続きするため、企業側の労務手続きは不要です。

一時金は出産費用を全額支払った後に申請して受け取る仕組みのため、いったん立替払いが必要です。この負担を軽減する仕組みとして設けられているのが、「直接支払制度」や「受取代理制度」です。

これらの制度を利用すれば、医療機関窓口での支払いは出産費用から出産育児一時金を差し引いた金額のみとなります。出産費用が一時金額より少ないときは、差額が健康保険から支給されます。

出産育児一時金の申請手続きは利用する制度により異なります。直接支払制度を利用する場合は、出産予定の病院と制度利用について合意文書を交わします。受取代理制度では、出産前に受取代理申請書と母子手帳のコピーを健康保険に提出します。

どちらの制度も利用せず、病院で出産費用を全額支払った場合は、出産一時金請求書と領収書のコピー、病院との合意文書のコピー(直接支払制度を利用しない旨を証明する文書)を健康保険に申請します。

申請期限は出産日の翌日から2年以内です。

育児休業給付金と出生時育児休業給付金

育児休業給付金と出生時育児休業給付金は、原則として、従業員に代わって会社が申請します。育休、産後パパ育休とも従業員からの申し出が必要となるため、まずは従業員から育児休業申請書の提出を受けてから手続きが始まります。

申請書を受理後、会社はおおむね2週間以内に育児休業取扱通知書を従業員に交付します。通知書には、育休の申し出を受けた旨、休業開始予定日と終了予定日を記載します。申し出を拒否する場合は、法に基づいた拒否理由を通知します。

受給資格の確認申請と給付金の支給申請は、どちらもハローワークで行います。ハローワークの指定する申請書類の他、賃金台帳などの添付書類を求められます。育休期間に応じて、原則2ヶ月ごとに申請する必要があります。

また、申請内容に変更があったり期間の延長が生じたりしたときにも、随時ハローワークで手続きします。

育休と産後パパ育休(出生時育児休業)をどちらも利用するときは、いずれかの申請をもって初回手続きに代えられます。

育休手当について、別記事「産休育休手当とは?支給される条件や申請手続き、受け取り金額の計算方法を解説」もあわせてご確認ください。

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まとめ

産休手当(出産手当金)とは、女性従業員が出産のために仕事を休み、収入が減少した場合に健康保険から支給される給付金です。

産休を取得する従業員にとっては産休中の大きな支えであり、会社としても従業員から産休取得の申し出があったときに速やかに手続きを進められるように、申請方法をよく理解しておきましょう。

よくある質問

産休手当はどのような手当?

産休手当とは、その名の通り、出産のために休暇をとった女性に支払われる給付金です。正式には「出産手当金」といいます。

産休手当について、詳しくはこちらをご覧ください。

産休手当を受給する条件は?

産休手当(出産手当金)を受給するには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。

産休手当(出産手当金)の受給条件

  • 健康保険の被保険者であること
  • 産休中に給与を受け取っていない、または産休前よりも給与額が減少していること
  • 妊娠4ヶ月以降の出産(流産を含む)であること

産休手当の受給条件について、詳しくはこちらをご覧ください。

監修 竹国 弘城 1級FP技能士・CFP

RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。

監修者 竹国 弘城氏