健康保険の被扶養者認定基準が2段階で改正されました。第1段階として2025年10月1日から、19歳以上23歳未満の被扶養者について年収要件が130万円未満から150万円未満に引き上げられています。
第2段階として2026年4月1日からは、年間収入の判定方法が「将来の年収見込み」から「労働契約で定められた賃金」に切り替わりました。基準額130万円自体は変わらず、判定に使う金額の算出方法と対象者区分が変わっています。
本記事では、2段階改正の具体的な内容、通達で定められた判定方法、既存被扶養者の扱い、経理・人事担当者の実務対応までを解説します。
目次
- 被扶養者認定基準の2段階改正の全体像
- 2段階改正の概要
- 改正の背景
- 第1段階|2025年10月施行・19〜23歳の150万円特例
- 対象者の範囲
- 判定方法
- 既存被扶養者の取扱い
- 第2段階|2026年4月施行・労働契約で定められた賃金による判定
- 判定に使う金額の定義
- 判定に含まれる賃金と含まれない賃金
- 臨時収入の取扱い
- 19〜23歳の被扶養者は150万円基準で判定
- 既存被扶養者の再判定と新規申請の手続き
- 既存被扶養者の取扱い
- 新規申請の必要書類
- 扶養から外れる場合の手続き
- 経理・人事担当者の実務対応
- 被扶養者一覧の棚卸し
- 従業員への説明のポイント
- freee人事労務での被扶養者情報の管理
- まとめ
- よくある質問
被扶養者認定基準の2段階改正の全体像
被扶養者認定基準の改正は、2つの段階に分かれています。施行日・対象・判定方法が異なるため、どの時点で誰にどの基準が適用されるかを整理することが重要です。
2段階改正の概要
改正の全体像は以下のとおりです。
<2段階改正の概要>
| 段階 | 施行日 | 対象 | 判定方法 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 2025年10月1日 | 19歳以上23歳未満の被扶養者(配偶者を除く) | 従来の年収見込み方式で150万円未満を判定 |
| 第2段階 | 2026年4月1日 | すべての被扶養者 | 労働契約で定められた賃金の年額で判定 |
2026年4月以降、19歳以上23歳未満の被扶養者については第1段階の150万円特例と第2段階の新しい判定方法が組み合わさり、「労働契約で定められた賃金の年額が150万円未満」という基準で判定されます。
基準額130万円(60歳以上・障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者は180万円)は変更ありません。変わったのは19〜23歳区分の特例新設と、判定に使う金額の算出方法です。
改正の背景
従来の被扶養者認定は「将来1年間の年間収入見込みが130万円未満かどうか」で判定されていました。
将来の収入見込みには残業代や臨時収入も含まれ得るため、繁忙期に残業が増えると見込額が基準を超える懸念が生じ、パート従業員が就業調整を行う要因になっていました。
また、19〜23歳の学生が多い年齢層では、アルバイト収入が130万円を超えると扶養から外れて親の負担が増える問題も指摘されていました。
第1段階は税制改正に合わせて19〜23歳の被扶養者の収入枠を拡げるもの、第2段階は判定方法そのものを労働契約に基づく客観的な金額に切り替えるもので、両者は目的が異なります。
第1段階|2025年10月施行・19〜23歳の150万円特例
2025年10月1日から、19歳以上23歳未満の被扶養者について年収要件が130万円未満から150万円未満に引き上げられました。/この特例は2026年4月以降も継続します。
対象者の範囲
特例の対象となるのは、扶養認定日時点で19歳以上23歳未満の被扶養者です。被保険者の配偶者は対象から除かれます。
厚生労働省のQ&Aでは「学生であることは要件ではないのか」という問いに対し「学生であることの要件は求めない。あくまでも、年齢によって判断されたい」と明記されています。大学生や専門学校生に限らず、年齢要件を満たす被扶養者であれば特例の対象です。
年齢の判定はその年の12月31日時点で行います。所得税法の扶養控除等と同様の考え方です。
判定方法
第1段階の150万円特例は、従来と同じ「年間収入見込み」方式で判定します。
過去の収入・現時点の収入・将来の収入見込みなどから今後1年間の収入を見込む方式で、第2段階で導入される労働契約ベースの判定方法とは異なります。
既存被扶養者の取扱い
2025年9月30日以前に扶養認定済みの19〜23歳の被扶養者については、2025年10月1日以降に年間収入が150万円以上見込まれる場合のみ扶養削除の届出が必要です。
150万円未満の見込みであれば、特に手続きをしなくても扶養が継続します。
第2段階|2026年4月施行・労働契約で定められた賃金による判定
2026年4月1日から、被扶養者認定における年間収入の判定方法が根本的に変わりました。従来の「将来の年収見込み」から、「労働契約で定められた賃金」に基づく判定に移行しています。
判定に使う金額の定義
新しい判定方法では、労働契約で定められた賃金の年額で130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満、19〜23歳は150万円未満)に該当するかを判定します。
「労働契約で定められた賃金」は、労働基準法第11条に規定される賃金を指し、通達の注記では「諸手当及び賞与も含まれる」と明示されています。労働契約書や労働条件通知書に記載されている金額が判定のベースになります。
判定に含まれる賃金と含まれない賃金
判定に含まれるのは、基本給、労働契約に明記された諸手当(役職手当・職務手当・資格手当など)、労働契約に明記された賞与です。一方、判定に含まれないのは、時間外労働に対する賃金(労働契約段階では金額を見込み難いため)と、労働契約に明確な規定がなく事前に金額を見込み難い手当です。
厚生労働省のQ&Aでは「労働契約に明確な規定がなく労働契約段階では見込み難い時間外労働に対する賃金等は、被扶養者の認定における年間収入には含まない」と明示されています。賞与そのものは原則として判定に含まれる一方、時間外労働は含まれない点に注意が必要です。
臨時収入の取扱い
通達では「当初想定されなかった臨時収入により、結果的に年間収入が130万円以上となった場合であっても、当該臨時収入が社会通念上妥当である範囲に留まる場合には、これを理由として被扶養者としての取扱いを変更する必要はない」と定められています。
臨時的な収入で一時的に基準を超えた場合に、ただちに扶養から外れる取扱いではありません。
19〜23歳の被扶養者は150万円基準で判定
2026年4月以降、19〜23歳の被扶養者については第1段階の150万円特例と第2段階の労働契約判定が組み合わさり、「労働契約で定められた賃金の年額が150万円未満」という基準で判定されます。
既存被扶養者の再判定と新規申請の手続き
新しい判定基準を既存の被扶養者にも適用するため、保険者ごとに確認手続きが実施されます。新規申請についても労働契約書類の提出が求められる場面が増えます。
既存被扶養者の取扱い
2026年4月1日より前に認定された被扶養者は、施行日をもって直ちに扶養から外れるわけではありません。
厚生労働省のQ&Aでは「認定年度において引き続き確認を行う必要はないが、翌年度以降少なくとも年1回は保険者において被扶養者の認定の適否に係る確認を行うこと」と示されています。
新基準に基づく再判定は、保険者が毎年実施する被扶養者資格の定期確認のタイミングに組み込まれる形です。実施時期は保険者ごとに異なるため、加入先からの通知に従い書類提出や情報更新で対応します。
新規申請の必要書類
2026年4月1日以降の新規申請は、すべて新基準で判定されます。健康保険被扶養者異動届に加え、被扶養者となる方の労働契約書または労働条件通知書の写しが必要になります。
確認手順は以下の流れです。
- 労働契約書または労働条件通知書から、基本給と労働契約上の諸手当・賞与の年額を確認する
- 時間外労働に対する賃金を除いて年額を算出する
- 130万円未満(19〜23歳は150万円未満、60歳以上・障害者は180万円未満)であれば扶養に該当する
扶養から外れる場合の手続き
再判定で扶養非該当となった場合は、被扶養者異動届を提出して資格を喪失させます。被扶養者だった方は勤務先の健康保険または国民健康保険に加入する必要があります。国民年金第3号被保険者の資格も連動して喪失するため、第1号被保険者への種別変更届が必要です。
手続きの期限は資格喪失日から原則5日以内(国民健康保険への加入は14日以内)のため、判定結果が確定した段階で速やかに届出を行う必要があります。
経理・人事担当者の実務対応
制度の概要を把握したうえで、経理・人事担当者は自社の被扶養者の認定状況を新基準に照らして確認する必要があります。特に2026年4月以降の再判定に備えた準備が重要です。
被扶養者一覧の棚卸し
まず、自社の従業員の被扶養者のうち、就労して賃金を得ている方を一覧で抽出します。各被扶養者の労働契約書または労働条件通知書を入手し、基本給と労働契約上の諸手当・賞与の年額を確認します。
優先的に確認すべきは、労働契約上の賃金の年額が130万円前後・150万円前後の被扶養者です。時間外労働を除いた労働契約上の賃金で基準を超えていないかを確認し、超えている場合は資格喪失の手続きを検討します。
従業員への説明のポイント
制度変更について従業員から問い合わせを受けた場合、以下の3点を整理して説明することが有効です。
従業員説明のポイント
- 基準額130万円自体は変わらず、変わったのは判定に使う金額の算出方法である点
- 労働契約で定められた賃金の年額で判定されるため、時間外労働が多い月があっても判定に影響しない点
- 19〜23歳の被扶養者は150万円未満で扶養に該当する点
一方で、労働契約上の賃金が基準を超えているにもかかわらず「時間外労働が含まれないから大丈夫」という誤解が生じないよう、労働契約書に記載された年額が基準内であることが前提だと伝える必要があります。
freee人事労務での被扶養者情報の管理
freee人事労務では、従業員情報から被扶養者として登録されている方の情報を一覧で確認できます。
昇給や手当の新設・廃止などで労働契約上の賃金に変更があった場合は、被扶養者の認定状況に影響する可能性があるため、登録情報を最新の状態に保つことが重要です。従業員情報の給与項目を最新の労働条件に更新し、該当する被扶養者の年間賃金が基準額を超えていないかを確認する運用が効率的です。
扶養認定の追加や削除が必要な場合は、freee人事労務から健康保険被扶養者異動届を作成し、電子申請で提出できます。電子申請の利用にはgBizIDアカウントの取得と、e-Govまたはマイナポータルとの連携設定が必要です。
freee人事労務での具体的な操作方法については、freeeヘルプセンター「家族情報を設定する」および「freee人事労務から各種書類の電子申請を行う」を参照してください。
まとめ
健康保険の被扶養者認定基準は2段階で改正されました。
第1段階の2025年10月1日施行では、19歳以上23歳未満の被扶養者について年収要件が130万円未満から150万円未満に引き上げられています。
対象は学生に限らず、年齢要件を満たす被扶養者全般です。第2段階の2026年4月1日施行では、判定方法が従来の年収見込みから「労働契約で定められた賃金」ベースに切り替わりました。
労働基準法第11条に規定される賃金(諸手当及び賞与を含む)で判定し、労働契約段階で見込み難い時間外労働に対する賃金は含まれません。既存被扶養者は翌年度以降の定期確認で新基準による確認が行われます。
よくある質問
「所定内賃金」で判定するという理解で正しいですか?
通達では「所定内賃金」という用語は使われていません。判定に使うのは「労働契約で定められた賃金」であり、労働基準法第11条に規定される賃金(諸手当及び賞与を含む)が対象です。労働契約に明確な規定がない時間外労働に対する賃金のみが判定から除かれる仕組みです。
詳しくは「第2段階|2026年4月施行・労働契約で定められた賃金による判定」で解説しています。
賞与は判定に含まれますか?
労働契約で定められた賞与は判定の年間収入に含まれます。通達の注記で「労働基準法第11条に規定される賃金をいい、諸手当及び賞与も含まれる」と明示されています。
労働契約に明記されていない臨時的な一時金は、通達の臨時収入の取扱いに従って判断されます。
詳しくは「判定に含まれる賃金と含まれない賃金」で解説しています。
