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労働時間とは? 計算方法や月の上限、必要な休憩時間を解説

監修 羽場 康高 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

労働時間とは? 計算方法や月の上限、必要な休憩時間を解説

本記事では労働時間の上限や計算方法、休憩時間との関係を解説します。残業時間や月平均所定労働時間の算出方法なども、併せて説明しています。

企業経営者や人事担当者にとって、労働時間は必須の知識です。労働時間を正しく理解していないと、従業員の勤務管理で問題が起きる場合や労働基準法違反になる場合があります。

目次

労働時間とは

まずは労働時間の定義や、似た用語との違いを紹介します。

労働時間の定義

労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指し、賃金計算の基準となる時間です。

就業規則や雇用契約で労働時間として扱わない旨が記載されている場合でも、実態として使用者の指揮命令下にあれば労働基準法上の労働時間です。

一般的には労働時間を計算する際、ノーワーク・ノーペイの原則により、休憩時間は含めず計算します。休憩時間は労働者が自由に利用でき、使用者の指揮命令下にない時間なので労働時間ではありません。

たとえば9時~17時まで働き、12時~13時に休憩した場合、労働時間は7時間です。

なお、労働時間とよく似た用語に以下の用語があります。混同しやすいですが、少し定義が異なるので区別しておきましょう。

● 勤務時間・就労時間・就業時間
一般的に「就業規則で定められた、業務を開始する時間から終了する時間まで」を指し、休憩時間を含み、残業時間は含まない

● 拘束時間
一般的に会社の拘束下にある時間を指し、実際に働いた時間だけでなく休憩時間と残業時間を含む

法定労働時間と所定労働時間の違い

労働時間には、法定労働時間と所定労働時間の2種類があります。

法定労働時間とは労働基準法で定められている労働時間の上限で、原則として1日8時間、週40時間です。法定労働時間を超えると、法定の割増率以上の割合で残業代の支払いが必要です。

一方で、所定労働時間とは、会社が法定労働時間の範囲内で自由に定める時間を指します。就業規則で始業時刻が朝9時半、終業時刻が18時、休憩時間が1時間と定められている会社なら所定労働時間は7.5時間です。

法定労働時間と所定労働時間の違い

どこまで労働時間に含まれる?

労働時間には、実際に業務をしている時間だけでなく以下の時間も含まれます。

労働時間に含まれる時間の例

● 接客業でお客様がいない時間
● 電話番などで待機している時間
● 警備業務中の仮眠時間
● 作業着や制服に着替える時間
● 朝の清掃やラジオ体操
● 強制参加の社内行事や研修に参加している時間 など
実際に労働していなくても、必要に応じて対応しなければならない場合や、使用者の指揮命令下にある場合は労働時間と見なされます。

労働時間が一定時間以上なら休憩が必要

使用者は1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分の休憩を、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければいけません。

なお休憩時間は、以下の3原則を守らなければなりません。

休憩時間の3原則

● 途中付与の原則
● 一斉付与の原則
● 自由利用の原則
休憩時間は労働時間の途中に与える必要があるので、労働時間の最初や最後に休憩時間を与えることは認められません。

また、休憩時間は原則すべての従業員に一斉に与えたうえで、各従業員が自由に利用できなければなりません。

ただし、業種や労使協定の締結によっては、交代制や個別での付与ができます。

時間外労働時間とは?

時間外労働時間とは、就業規則や法律で定められた時間を超えて働いた時間で、いわゆる残業時間です。

企業経営者や人事担当者が従業員の勤務管理を行う場合、2種類ある時間外労働の違いや従業員に時間外労働をさせる際に必要な手続きを理解しておかなければなりません。

以下では、時間外労働でおさえておくべきポイントを解説します。

2種類の時間外労働がある

残業には法定内残業と法定外残業の2種類があります。

● 法定内残業:所定労働時間を超えるが法定労働時間以内の残業時間
● 法定外残業:法定労働時間を超える残業時間
以下のケースで解説します。
● 就業規則で定める始業時刻:9時
● 終業時刻:17時
● 休憩時間:1時間
● 所定労働時間:7時間
上記のケースで従業員が9時~19時半まで働き2.5時間の残業をした場合(合計9.5時間)、法定労働時間8時間に達するまでの1時間分が法定内残業、8時間を超えて働いた1.5時間分が法定外残業です。

2種類の時間外労働
従業員が法定外残業をした場合、法定の割増率以上の割増賃金を支払わなければいけません。一方で法定内残業には、通常の賃金より割り増して支払う法的な義務は生じません。

1日8時間・週40時間を超える残業には36協定が必要

法律上の労働時間の上限は原則として1日8時間・週40時間です。法定労働時間を超えて従業員に残業をさせるには、36協定を締結し管轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。

36協定とは「時間外労働・休日労働に関する協定届」を指し、労働基準法第36条に基づく協定のため36協定と呼ばれます。

36協定を締結する際は以下のいずれかと、書面による協定の締結が必要です。

以下のいずれかと36協定の締結が必要

● 労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)がある場合はその労働組合
● 過半数組合がない場合は労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)

36協定でも超えられない「労働時間の上限」がある

36協定を締結し届け出れば、労働時間の上限である1日8時間・週40時間を超えて残業できます。

また、特別条項付き36協定を締結し届け出ると、さらに残業することも可能です。ただし、何時間でも残業が認められるわけではありません。

36協定と特別条項付き36協定を締結し届け出た場合の、残業時間上限は以下の通りです。

月間の残業時間上限年間の残業時間上限
36協定45時間360時間
特別条項付き36協定月100時間未満※
(休日労働を含む)
年720時間以内
※複数月平均80時間以内(休日労働を含む)

ただし、特別条項付き36協定の締結にあたっては、臨時的に上限時間を超えて労働させる理由をできる限り具体的に定めなければなりません。

「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」などの抽象的な理由では、恒常的な長時間労働を招く恐れがあるため認められません。

労働時間の計算方法

労働時間は、残業時間を含む実際の業務時間から休憩時間を差し引けば計算できます。

労働時間を計算する際、「残業時間の計算」と「月平均所定労働時間の計算」の2つが重要です。以下ではそれぞれの計算方法を解説します。

残業時間の計算方法

一般的に労働時間のうち残業時間としてカウントするのは、1日8時間及び週40時間を超える部分です。

1日8時間を超えた部分と週40時間を超えた部分は、分けてカウントしなくてはいけません。

1日8時間を超えた部分は、別途時間外労働割増賃金の支給対象です。つまり週で40時間を超えた残業時間に対する割増料金と、1日8時間を超えた残業時間に対する割増料金は、それぞれ別で計算し支払います。

そのため分けてカウントしないと割増賃金が重複して支給されてしまいます。

【ケース①】

合計
労働時間休み10時間9時間7時間7時間7時間7時間47時間
法定外残業時間2時間1時間3時間


まずは1日8時間を超えて働いた時間を計算します。残業時間にあたるのは、月曜日の2時間と火曜日の1時間、合計で3時間です。

続いて週40時間を超える部分を残業時間として計上しますが、1日8時間を超える部分としてすでに残業時間に計上した3時間分は除いて計算します。

月~土の6日間の労働時間は47時間で、残業時間として計上済の3時間を除くと44時間です。

つまり週40時間を超える4時間分を週の法定外残業時間としてカウントします。

3時間と4時間を合計すると法定外残業時間は7時間なので、企業は7時間分の残業代として割増賃金を支払わなければなりません。

【ケース②】
合計
労働時間休み10時間9時間7時間7時間7時間休み40時間
法定外残業時間2時間1時間3時間


ケース①と同様、1日8時間を超えて働いた時間は月曜日2時間、火曜日1時間で合計3時間です。

ケース②では、週の労働時間は40時間であり、40時間を超えていないので残業時間にカウントされる週の法定外残業時間はありません。

しかし、1日8時間を超えて働いた3時間分は法定外残業時間としてカウントされ、残業代として割増賃金の支払いが必要です。

残業代計算の基礎になる月平均所定労働時間の計算方法

残業代は「残業時間×1時間あたりの賃金×割増率」で計算し、1時間あたりの賃金は月給制の場合「月給÷月平均所定労働時間」で計算します。

残業代を計算するには、まず月平均所定労働時間の算出が必要です。月平均所定労働時間とは1ヶ月あたりの平均的な労働時間を指し、以下の計算式で算出します。

月平均所定労働時間=1年間の所定労働日数×1日の所定労働時間÷12
1年の中には31日まである月もあれば28日までしかない月もあります。該当月の労働日数や労働時間を使って1時間あたり賃金を算出すると月によってバラツキが生じるため、残業代は月平均所定労働時間を使って計算します。

たとえば1年間の所定労働日数が258日、1日の所定労働時間が8時間の場合、月平均所定労働時間は「258日×8時間÷12=172時間」です。

月平均所定労働時間を算出できたら、1時間あたりの賃金を求められ残業代を計算できます。

ひとつの例として、以下のケースで残業代を算出してみます。
● 月平均所定労働時間:172時間
● 月給:30万円
● 残業時間:20時間
● 割増率:25%

1時間あたりの賃金: 30万円÷172時間=1,744円
残業代: 20時間×1,744円×25%=43,600円
なお残業代の割増率の下限は残業時間が月60時間を超えるかどうかで変わり、また割増率は時間外労働・休日労働・深夜労働で異なります。労働基準法で定められている割増率は次の通りです。
● 時間外労働のうち「月60時間まで」の部分:25%割増以上
● 時間外労働のうち「月60時間を超える」部分:50%割増以上
● 休日労働:35%割増以上
● 深夜労働:25%割増以上
※家族手当・扶養手当・子女教育手当・通勤手当・別居手当・単身赴任手当・住宅手当・臨時の手当(結婚手当・出産手当・大入り袋など)・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる手当を除く(ただし、家族数や交通費・距離や家賃に比例して支給する手当に限り、一律支給する場合は月給に含める)

【関連記事】残業代の割増率や計算方法を解説!2023年法改正で中小企業が必要になる対応まとめ

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まとめ

労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指し、上限は原則として1日8時間・週40時間です。

従業員に法定外残業をさせるためには、36協定を締結して労働基準監督署に届け出なければなりません。

ただし、残業が無制限に認められるわけでなく、36協定や特別条項付き36協定を締結、届け出た場合でも上限が定められています。

企業経営者や人事担当者が従業員の勤務管理を適切に行うためには、法定内残業と法定外残業の違いや残業時間の上限など、労働時間の正しい理解が必要です。

また、従業員の残業時間を少しでも減らせるように、ワークライフバランスや働きやすい職場環境づくり、生産性向上への取り組みが大切です。

よくある質問

労働時間とは?

労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間です。手待ち時間や制服に着替える時間なども含まれます。

労働時間を詳しく知りたい方は「労働時間とは」をご覧ください。

時間外労働時間とは?

法定労働時間を超えて働いた時間です。

時間外労働時間を詳しく知りたい方は「時間外労働時間とは?」をご覧ください。

監修 羽場康高(はば やすたか) 社会保険労務士・1級FP技能士・簿記2級

現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。

監修者 羽場康高