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手取り計算の方法とは? 早見表や収入から引かれる項目を紹介

公開日:2023/06/17

監修 安田 亮 公認会計士・税理士・1級FP技能士

手取り計算の方法とは? 早見表や収入から引かれる項目を紹介

手取り計算は、会社の支給額から所得税や健康保険料などを控除して行います。手取り計算の方法と目安となる早見表、控除項目を解説します。

手取りは生活費や貯金の目安となる収入です。給与から差し引かれる税金や社会保険料の内容を知り、生活設計に役立てましょう。また、手取りの増加につながる所得控除もあわせて紹介します。

目次

年収から手取りを計算する方法

手取りは「額面年収」から「税金」や「社会保険料」を差し引いて計算します。

額面年収-(税金+社会保険料)=手取り
「額面年収」とは、会社から支給される給与の総額です。一般的に、基本給に通勤手当・役職手当・住宅手当・時間外手当などの各種手当が加算されて支給されます。

実際に受け取れる「手取り」は、給与から税金や社会保険料が差し引かれた金額です。所得税や住民税などの税金、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料が控除されます。

手取りは額面の金額や扶養人数などにより違いはありますが、およそ額面年収の75%~85%程度です。

月給20万円の方の手取りを計算する方法

手取り計算を具体的にイメージするために、月給20万円で扶養人数0人、年齢22歳で社会人1年目の男性のケースをシミュレーションします。

額面税金と社会保険料
基本給180,000円健康保険料10,000円
通勤手当10,000円厚生年金保険料18,300円
住宅手当10,000円雇用保険料1,200円
源泉所得税3,700円
支給額合計200,000円控除額合計33,200円
手取り 166,800円


各種手当は勤務先により異なりますが、今回は通勤手当と住宅手当があると仮定しました。右側の「税金と社会保険料」の項目で、控除される金額の大まかな内容がわかります。控除金額のなかでは、健康保険料や厚生年金保険料が比較的大きな金額です。

なお、住民税は前年の所得を基準に納付額が決まるため、上記の計算には含めていません。住民税を納付することから、社会人2年目以降は上記のシミュレーションよりも住民税の分だけ控除額が多くなり、手取りは少なくなります。

また、40歳以上の方は介護保険料が控除されます。

より詳しく計算したい方は、「給与計算のやり方まとめ!正しい計算方法を分かりやすく解説」の記事が参考になるでしょう。

月給や年収、ボーナスの手取り早見表

手取りを知るためには、健康保険料や厚生年金保険料の計算が必要です。さらに、雇用保険料は業種ごとに保険料率が異なるなど、複雑な計算が求められます。

以下では、額面の75%~85%で計算した早見表を紹介します。大まかな手取りを知りたいときの参考にしてください。

月給の手取り早見表

月給の大まかな手取りの早見表は下記の通りです。

手取りの目安は、額面月給に0.75または0.85を乗じて計算しています(たとえば額面月給16万円の場合、計算式は「16万円×0.75~0.85」、手取りの目安は「12万円~13万6,000円」)。

額面月給手取りの目安
額面月給の75%額面月給の85%
16万円12万円13万6,000円
18万円13万5,000円15万3,000円
20万円15万円17万円
22万円16万5,000円18万7,000円
24万円18万円20万4,000円
26万円19万5,000円22万1,000円
28万円21万円23万8,000円
30万円22万5,000円25万5,000円
35万円26万2,500円29万7,500円
40万円30万円34万円
45万円33万7,500円38万2,500円
50万円37万5,000円42万5,000円
55万円41万2,500円46万7,500円
60万円45万円51万円

年収の手取り早見表

年収の大まかな手取りの早見表は下記の通りです。

手取りの目安は、額面年収に0.75または0.85を乗じて計算しています(たとえば額面年収150万円の場合、計算式は「150万円×0.75~0.85」、手取りの目安は「112万5,000円~127万5,000円」)。

額面年収手取りの目安
額面年収の75%額面年収の85%
150万円112万5,000円127万5,000円
200万円150万円170万円
250万円187万5,000円212万5,000円
300万円225万円255万円
350万円262万5,000円297万5,000円
400万円300万円340万円
450万円337万5,000円382万5,000円
500万円375万円425万円
550万円412万5,000円467万5,000円
600万円450万円510万円
650万円487万5,000円552万5,000円
700万円525万円595万円

ボーナスの手取り早見表

ボーナス(賞与)の支給は通常、組織の方針や企業・従業員の業績、契約条件に基づいて行われます。一般的に、ボーナスは年に数回、定期的に支給されます。

手取りの目安は、月給や年収と同様に、額面賞与へ0.75または0.85を乗じて計算しています(たとえば額面賞与10万円の場合、計算式は「10万円×0.75~0.85」、手取りの目安は「7万5,000円~8万5,000円」)。

ボーナス(賞与)の大まかな手取りの早見表は下記の通りです。

額面賞与手取りの目安
額面賞与の75%額面賞与の85%
10万円7万5,000円8万5,000円
20万円15万円17万円
30万円22万5,000円25万5,000円
40万円30万円34万円
50万円37万5,000円42万5,000円
60万円45万円51万円
70万円52万5,000円59万5,000円
80万円60万円68万円
90万円67万5,000円76万5,000円
100万円75万円80万円


ボーナスについては「賞与(ボーナス)とは?保険料と所得税の計算方法についても解説」で詳しく解説しています。

手取り計算で月給や年収、ボーナスから引かれる項目

給与から引かれる項目の分類と主な種類は下記の通りです。

控除される項目内容
分類名称
税金所得税個人の所得にかかり、国に納付する税金
住民税お住いの自治体に納付する税金
社会保険料健康保険料医療費の軽減や手当金など公的医療保険のための保険料
介護保険料介護保険の財源で、40歳以上の方が支払う保険料
厚生年金保険料老後の生活などを支える厚生年金のための保険料
雇用保険料失業給付や求職教育訓練など雇用保険のための保険料
そのほかの控除金額財形貯蓄や社宅費など、任意で設けられている控除


給与から控除される所得税や住民税は、国の政策や地域のインフラなどに使用されます。また、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、病気やケガ、老後や失業などで働けなくなったときの生活を支える大切なお金です。

以下で、各項目を詳しく解説します。あわせて、控除される金額を減らすポイントも紹介します。

併せて「給与明細とは? 給与明細の見方から給与計算の仕組みを簡単に解説」の記事で、給与明細の見方も学んでおきましょう。

所得税

所得税は勤務先で支給される給与など、個人の所得にかかる税金です。

所得税は源泉徴収制度が採用されていて、会社員の場合は毎月の給与から源泉徴収され、年末調整や確定申告などで最終的な税額が確定します。多く徴収していた場合には還付され、徴収額が少ない場合には不足分を納付する仕組みです。

所得税の控除金額を減らしたいときは、所得控除の活用がポイントです。国は医療費が高額となった方や家族を扶養している方などの負担を軽減する目的で、いくつかの所得控除を設けています。所得控除については後述しているので、「手取りの金額にも関わる所得控除とは?」を参考にしてください。

所得控除を活用すると、それだけ税金の対象となる金額が少なくなり、税負担を軽減できます。

住民税

住民税は、その年の1月1日時点で住民票のある都道府県と市区町村に収める税金です。非課税限度額以上の収入のある方に定額で課税される「均等割」と、所得金額に応じて課税される「所得割」で構成されています。

住民税は、所得税とは違い源泉徴収制度を採用していません。前年の年収をもとに税額が計算されるので、社会人1年目の方は住民税が控除されず、2年目以降に控除が開始されます。

一般的に、5月頃にお住まいの自治体から納税通知書が送付され、6月から住民税の控除が始まります。そのため社会人2年目の6月以降は、手取りの金額が少なくなるケースが多いので覚えておきましょう。

なお、住民税は所得税と同様に、所得金額から所得控除の金額を差し引いて税金の対象となる課税所得金額で計算します。したがって、住民税も所得控除の活用が金額を減らすポイントです。

健康保険料

健康保険料は健康保険に加入している方が支払う保険料です。健康保険に加入していると、病気やケガのときの医療費負担軽減や、休業した際の給付金受給などが受けられます。保険料はご自身と勤務先との半分ずつの負担です。

健康保険料は「標準報酬月額」や「標準賞与額」をもとに金額が計算されます。たとえば、標準報酬月額の決まり方は下記の通りです。

【福利厚生制度】 標準報酬制
出典 :広島県総務局福利課「【福利厚生制度】 標準報酬制」

上記のように、4月~6月の給与を平均して報酬月額を算出する仕組みのことを、定時決定といいます。該当する標準報酬月額の等級に応じて保険料が決まる制度です。

4月~6月の給与をもとに保険料の基準が決まるため、4月~6月の給与を抑えると健康保険料の軽減につながります。具体的には、4月~6月に支給される残業代を少なくするなどです。

ただし、標準報酬月額は健康保険の各種手当額や、後述する厚生年金の年金額の基準にも利用されます。保険料を減らすと手取りの増加が見込めますが、将来的な手当額や年金額が少なくなる可能性があるので注意しましょう。

介護保険料

介護保険料は40歳以上の方が支払う保険料です。介護が必要な高齢者のための、介護保険制度の財源に使われます。

介護保険料は、年齢により被保険者の種類が違い、計算方法も異なります。40歳以上64歳以下の方は「第2号被保険者」です。標準報酬月額をもとに保険料が計算され、健康保険料と一緒に納付されます。

一方、65歳以上の方は「第1号被保険者」となり、前年度の所得に応じて保険料が決まります。

なお、介護保険の運営主体は市区町村と特別区であり、保険料は全国一律ではありません。そのため、お住まいの地域により、保険料を抑えられる場合があります。

介護保険制度について(40歳になられた方へ)
出典:厚生労働省「介護保険制度について(40歳になられた方へ)」

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、厚生年金に加入している方が支払う保険料です。日本の公的年金制度は国民年金と厚生年金の2階建てとなっていて、会社員の方は国民年金と厚生年金の2つに加入します。

厚生年金保険料は健康保険料と同様に、「標準報酬月額」や「標準賞与額」をもとに計算されます。

健康保険料との違いは保険料率で、厚生年金保険料は18.3%(2023年5月時点)、健康保険料は加入している組合や地域により違いはありますが、10%前後です。実際にはどちらも労使折半であるため、保険料率をかけた金額の半分が控除されます。

雇用保険料

雇用保険料は、雇用保険料に加入している方が支払う保険料です。失業した際に求職者給付が受けられるほか、就職促進給付や教育訓練給付などの事業にも使用されています。

雇用保険料は、業種ごとに保険料率が異なります。

厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和5年度雇用保険料率のご案内」
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和5年度雇用保険料率のご案内」

一般の事業を行う会社にお勤めの場合、保険料は0.6%です。比較的定額の保険料で失業時や育児・介護の際の給付、就職のための教育訓練を受けられる制度です。

そのほかの控除金額

勤務先で労使協定が結ばれている場合、税金や社会保険料以外にも給与から差し引けます。たとえば、下記のような金額です。

その他の控除金額の例

● 財形貯蓄
● 社宅費や寮費
● 物品の購入代金
● 組合費
● 住宅等融資返済金
社宅や寮を利用している場合、給与から天引きされると支払いの手間が省けて便利です。一方、手取りを増やしたいときは、「財形貯蓄を停止する」などを行うと良いでしょう。

手取りの金額にも関わる所得控除とは?

所得税では、納税する方のさまざまな事情を考慮し、所得控除を設定しています。所得控除を活用すれば、所得税の金額を小さくでき、結果として手取りの金額を増やせます。

所得控除の種類は下記の通りです(2023年5月時点)。

所得控除内容
基礎控除収入のある方で、合計所得金額が2,500万円以下の方が対象
配偶者控除控除対象の配偶者がいる方で、納税者の合計所得金額が1,000万円以下の場合に受けられる
扶養控除控除対象の扶養家族がいる場合に受けられる
配偶者特別控除配偶者の所得が年間48万円超133万円以下で、納税者の合計所得金額が1,000万円以下の場合に受けられる
医療費控除年間10万円以上の医療費を支払った場合などに受けられる
セルフメディケーション税制年間1万2,000円以上のスイッチOTC医薬品などを購入した場合に受けられる
雑損控除災害や盗難などで損害被った場合に受けられる
社会保険料控除健康保険料や国民年金保険料などの支払いに応じ受けられる
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済やiDeCoなどの支払いに応じ受けられる
生命保険料控除生命保険料の支払いに応じ受けられる
地震保険料控除地震保険料の支払いに応じ受けられる
寄附金控除ふるさと納税などの寄附額に応じ受けられる
寡婦控除配偶者と死別したあと婚姻していない場合などに受けられる
ひとり親控除ひとり親に該当する方が受けられる
勤労学生控除ご自身が勤労学生の場合に受けられる
障害者控除ご自身や同一生計配偶者などが障害者の場合に受けられる控除
出典:国税庁「所得から差し引かれる金額(所得控除)」

上記の所得控除は年末調整の際に申告できるため、該当する所得控除がある場合は勤務先から配布された書類で申告しましょう。

たとえば、生命保険料の控除は「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入し、保険会社から送付される控除証明書を添付します。この手続きによって所得控除が受けられます。

なお、医療費控除や雑損控除、寄附金控除などは年末調整で申告できません。所得控除の適用を受けるためには、確定申告が必要です(ふるさと納税でワンストップ特例制度を活用した場合は除く)。

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まとめ

手取りは、基本給や各種手当などの支給額の合計から、税金や社会保険料などを控除して計算します。

手取りの目安を知っておくと、生活費に使える金額などを事前に確認でき便利です。控除額の計算が難しい場合は、支給額の75%~85%を目安にしましょう。

年末調整や確定申告の際に所得控除を申告すると、課税所得金額が少なくなり、控除額の減少につながります。該当する所得控除がないか確認し、必要な手続きを行ってください。

よくある質問

手取りとは?

手取りとは、会社から支給される額面の給与・ボーナスから、税金や社会保険料を差し引いて実際に受け取れる金額です。

手取りの計算について詳しく知りたい方は「年収から手取りを計算する方法」をご覧ください。

手取り計算で引かれている項目は?

手取りの計算をする際には、所得税や住民税などの税金、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料、勤務先によっては財形貯蓄や社宅費などを差し引きます。

控除項目を詳しく知りたい方は「手取り計算で月給や年収、ボーナスから引かれる項目」をご覧ください。

監修 安田亮(やすだ りょう) 公認会計士・税理士・1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮