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サマータイムとは?会社で導入するメリット・デメリット、注意点を詳しく解説!

監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP

サマータイムとは?会社で導入するメリット・デメリット、注意点を詳しく解説!

サマータイムは日照時間が長い時期に標準時刻を1時間進める制度です。本記事はサマータイムを会社で導入するメリットデメリットなどを解説します。

サマータイム制度は多くの国で導入されていますが、日本ではあまり馴染みがない習慣です。東日本大震災や東京五輪の際、国単位でのサマータイムの導入が検討されていましたが、現状では実現していません。

しかし電力不足などの対策として、個別にサマータイムを取り入れている企業もあります。本記事では、サマータイム導入時の注意点も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

目次

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サマータイムとは、どんな制度?

サマータイムとは、4月〜10月など日照時間が長い時期に、標準時刻を1時間進める制度です。日本では、「夏時間制度」とも呼ばれています。

サマータイムとは、どんな制度?
出典:一般社団法人日本睡眠学会 サマータイム制度に関する特別委員会「サマータイム-健康に与える影響-」

上図のように、日の出時刻にあわせて1時間早めるため、夕方の明るい時間帯に余暇の時間が増えます。睡眠と労働の時間を変えないまま、余暇が生まれるため、時間の有効活用が期待できます。

多くの国で、サマータイムを「実施済み」または「実施中」です。欧州と北米のほとんどの国が採用している一方、日本や韓国といったアジアの国ではあまり実施されていません。

緯度が高く、夏の日照時間が長くなる地域が、サマータイム制度を積極的に取り入れる傾向にあります。

日本のサマータイム導入の現状

日本では、1948年から1951年にサマータイムを実施しています。

当時は、戦後の復興期で電力不足だったため、サマータイムによって資源の節約や健康増進を図りました。ただ1952年以降は廃止されており、現在、国単位でのサマータイムの導入は行われていません。

廃止の原因として、残業が増えたことや、労働条件の悪化が挙げられます。

しかし環境省・経済産業省・日本経済団体連合会などは導入に積極的な姿勢をみせており、2004年にはサマータイム制度推進議員連盟が設立されました。その背景には、地球温暖化防止への取り組みなどがあります。

北海道では、2004年から2006年に、道内の企業や行政機関が参加したサマータイムが実施されました。滋賀県庁でも、2003年に試験的に導入されています。

家族との時間の増加や光熱費の削減といったメリットがある一方、生活リズムの乱れやシステムへの影響など、国として導入するには多くの課題が残っています。

会社にサマータイムを導入するメリット

会社でサマータイムを導入する主なメリットは、以下の通りです。

サマータイムを導入する主なメリット

● エネルギーを節約できる
● 経済効果を期待できる
● 犯罪や交通事故が減る可能性がある
● 余暇を有効活用できる
どのようなメリットがあるのか、それぞれ詳しく見てみましょう。

エネルギーを節約できる

明るい時間帯での活動が増えるため、照明が必要な時間が減ります。地域によっては夏の冷房使用も少なくなるでしょう。

日本生産性本部の資料によると、サマータイムの導入による省エネ効果は、原油換算で約93万キロリットル、CO2削減効果は炭素換算で約40万トンです。

約93万キロリットルの省エネ効果は、たとえると「全国民が使用する冷蔵庫の40日分の電力消費量」に相当します。
出典:日本生産性本部「生活構造改革をめざすサマータイム〜調査結果の概要〜」

サマータイム制度によって光熱費などを抑えることができれば、会社にとっても経費削減につながるでしょう。

経済効果を期待できる

サマータイムの導入で日の入りまでの余暇が増えることで、消費の拡大につながる可能性があります

特に外出を伴う以下の項目での消費が期待されます。

サマータイム導入で期待される消費

● 娯楽やレジャー
● 外食
● 宿泊
● 被服・履物
またアルコール飲料や嗜好品、子どもの習い事といった教育費も支出が増える可能性があります。

ただしサマータイムによって労働時間が伸びてしまう場合、上記のような経済効果はそれほど期待できません。サマータイム導入前に、残業が増えないように業務の棚卸を行う、ノー残業デイを作るなどの対策が必要です。

犯罪や交通事故が減る可能性がある

サマータイムの導入によって、明るいうちに仕事が終わり、暗くなる前に帰宅できるため、ひったくりなど犯罪の発生を抑制できるでしょう。

また通勤の交通量のピークが明るい時間帯になり、交通事故の発生が少なくなると推定されます。通勤ラッシュを避けることができれば、労働者のストレス軽減にもつながるでしょう。

サマータイムを活用すれば、より安心で安全な労働環境をつくることが可能です。

余暇を有効活用できる

サマータイム制度のメリットとして、家族や友人とコミュニケーションをとったり、趣味やボランティア活動にあてたり、余暇を有効に活用できることが挙げられます。

労働者のワークライフバランスの充実は、仕事へのモチベーション保持にも有効です。結果として、離職率の低下や生産性の向上など、会社にとってプラスの影響が見込めます。

会社にサマータイムを導入するデメリット

会社にサマータイムを導入する主なデメリットは、以下の通りです。

サマータイムを導入する主なデメリット

● 残業時間が増える可能性がある
● システムなどの変更に手間がかかる
● 生活リズムの乱れや睡眠不足の原因となる
各デメリットについて、詳しく説明します。

残業時間が増える可能性がある

日本で過去に実施されたサマータイム試行実験では、「労働時間が増加した」という声があります。退社時間になっても外が明るいと帰りにくく、結果的に残業が増えるというケースが少なくありません。

残業時間が増えると、サマータイム制度で期待される「省エネ」や「消費拡大」の効果が得られず、むしろ悪化する可能性もあります。

社内でサマータイムの意義や目的を周知させ、労働時間が長くなるのを防ぐことが大切です。

システムなどの変更に手間がかかる

サマータイム導入時のデメリットとして、システム管理にかかる手間やコストがあります。

国単位でサマータイムを導入する場合、航空や鉄道など交通機関のダイヤや信号機に関して調整しなければなりません。同様に会社のシステムにおいても、一定の変更作業やコストが必要になるでしょう。

また夏時間および標準時間に切り替わるタイミングでは、時間変更による混乱も想定されます。

生活リズムの乱れや睡眠不足の原因となる

わずか1時間でも生活リズムが変わってしまうと、適応するのに時間がかかるため、労働者の健康への影響が懸念されます。個人差はありますが、身体が慣れるまで、朝に眠気を感じたり、仕事に集中できなかったりするでしょう。

海外で実施された研究によると、時間の変更によって睡眠効率が10%低下することが報告されています。睡眠効率の低下とは、寝つきが悪くなり、睡眠の質が下がることを意味します。とくに夜型の人にとって、サマータイム制度は相性が良くありません。

企業が導入する場合、従業員の生活に支障をきたす恐れがあることを認識し、全従業員に対し導入の目的や期待される効果など、丁寧な説明をすることが大切です。

サマータイムを導入する際の注意点

会社にサマータイムを導入する際には、次の注意点に気をつけましょう。

サマータイム導入時の主な注意点

● 労働強化につながらないよう工夫をする
● サマータイムに適応できない労働者を把握する
● 労働者の健康に配慮する
注意すべきポイントについて、詳しく説明します。

労働強化につながらないよう工夫をする

一般的に、諸外国と比べて日本は労働時間が長く、定時で退社する意識が低い傾向にあります。サマータイムの導入にあたって、夜間残業の禁止や総労働時間の制限など、労働強化につながらないようにルールを設けましょう。

早朝に出勤し、夕方も残業をする環境になってしまうと生産性が低下し、業績にも影響が生じます。サマータイムを始める前に労使間で十分に話し合い、理解してもらうことが重要です。

サマータイムに適応できない労働者を把握する

必ずしも労働者全員がサマータイムに適応できるわけではありません。

子どもがいる場合、保育所の預かり時間によっては早朝出勤が難しいでしょう。また家族の介護をしている場合も、サマータイム制度が負担になる可能性があります。

サマータイム制度が適していない労働者には、強要せずに働きやすい環境になるよう気をつけなければなりません。

労働者の健康に配慮する

出勤時間を1時間早めることにより、労働者の生活リズムや睡眠に影響が生じる場合があります。人によっては、早朝出勤が原因で作業効率が下がったり体調を崩したりするでしょう。

企業は午前や午後に休憩を設けるなど、労働者の健康に配慮する必要があります。生産性をアップさせるには、「労働者が心身ともに健康であること」が何よりも大切です。

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まとめ

サマータイムを適切に取り入れると、生産性が上がり、会社にとっても経費削減や業績向上が期待できます。一方、サマータイムには、労働時間が長くなったり、労働者の健康に影響が生じたりするリスクがあります。

導入にあたっては、労使間で十分コミュニケーションをとったうえで、社内のシステムやルールの見直しを行いましょう。

よくある質問

サマータイムとは?

日照時間が長い時期に、標準時刻を1時間進める制度です。

サマータイムについて詳しく知りたい方は、「サマータイムとは、どんな制度?」をご覧ください。

会社にサマータイムを導入するメリットは?

省エネや経済の活性化、労働環境の向上といったメリットがあります。

サマータイム導入による効果を知りたい方は、「会社にサマータイムを導入するメリット」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史