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人材育成型出向等支援とは?雇用調整型出向との違いやメリットを解説

監修 大柴良史 社会保険労務士・CFP

人材育成型出向等支援とは?雇用調整型出向との違いやメリットを解説

人材育成型出向等支援は、人材育成や企業間交流、従業員の自発的なキャリアアップを図るための出向を支援する制度です。

企業の成長戦略課題を解決する目的で、公益財団法人産業雇用安定センターが2018年度から実施しています。

本記事では、人材育成型出向等支援の概要従来の雇用調整型出向との違いメリットを解説します。

人材育成型出向等支援の具体例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

人材育成型出向等支援とは

人材育成型出向等支援とは

出典:公益財団法人産業雇用安定センター「人材育成型出向等支援の概要」

人材育成型出向等支援とは、公益財団法人産業雇用安定センターが行う出向支援のひとつです。

人材育成や企業間交流を目的とした「人材育成・交流型出向」と、労働者の自発的なキャリアアップを目的とする「キャリア・ステップアップ型出向」の支援を指します。


出向とは、出向元と何らかの関係を保ったまま出向先との間で新たな雇用契約関係にもとづき、一定期間継続的に勤務する形態です。

「在籍型出向」と「移籍型出向」に大別されます。

在籍型出向と移籍型出向

● 在籍型出向:出向元・出向先双方の企業と雇用関係を結ぶ
● 移籍型出向:出向元との雇用関係を解消する
なお、公益財団法人産業雇用安定センターとは、厚生労働省や日経連、産業団体などが協力し、「出向・移籍(転籍)の専門機関」として発足した公的機関です。

公益財団法人産業雇用安定センターでは、労働者を出向させたい企業と人材を確保したい企業のマッチング支援を無料で実施しています。

人材育成型出向等支援が創設された背景

日本では、少子高齢化を背景に生産年齢人口(15~64歳)が減少し、人手不足が大きな課題となりつつあります。

2070年には65歳以上の人口が約40%になり、2020年に59.5%だった生産年齢人口は52.1%に減少する見込みです。

今後さらに人手不足が深刻化すると予想されるなか、人材配置の最適化は、企業の成長にとってますます重要な課題となっています。

こうした課題への解決に向け、出向によって企業の成長をサポートするのが「人材育成型出向等支援」です。

雇用調整型出向との違い

公益財団法人産業雇用安定センターでは、従来から雇用調整型の出向支援を行っています。

雇用調整型出向とは、雇用調整・要員調整を図ることを目的とした出向です。出向期間終了後は、原則として出向元の企業に復帰します。

人材育成型出向と雇用調整型出向の違いは、出向の目的です。

雇用調整型出向は雇用調整を目的としており、一時的な生産量の縮小などで労働者の雇用維持を図りたい場合などに導入するものです。

従業員を解雇せず雇用を維持できるため、労務費を抑えられます。

新型コロナウイルスの影響で人手が余った企業が、従業員の雇用を維持するために人手不足の企業に出向するケースが増えています。

一方、人材育成型出向は従業員の能力開発や人材育成、キャリアアップを図るための出向です。

人材育成型出向等支援の種類

財団法人産業雇用安定センターによる人材育成型出向等支援は、大きく2つに区分されます。

人材育成型出向等支援は2種類

1 人材育成・交流型
2 キャリア・ステップアップ型

1 人材育成・交流型

「人材育成・交流型」は、人材育成や企業間交流を目的とした出向です。

人材育成・交流型出向の目的

● 従業員の能力開発や人材育成、特に高度人材の育成によって企業力の強化を図る
● 人材交流を目的とした取り組みによって企業間の連携強化、新分野への展開のための基盤整備、組織の活性化などを図る
人材育成・交流型出向では、出向期間が終了すると元の企業に復帰します。

2 キャリア・ステップアップ型

「キャリア・ステップアップ型」は、労働者の自発的なキャリアのステップアップを目的とする出向です。

キャリア・ステップアップ型出向の目的

● 従業員によるキャリア・ステップアップへの主体的な挑戦を後押しする
● 従業員自身のキャリアパスやライフプランに合わせた職域拡大、UIJターンなどを支援する
出向期間終了後は、元の企業に復帰する、または出向先企業へ移籍します。

人材育成型出向等支援に期待されるメリット

人材育成型出向等支援を利用する主なメリットは、以下の3つです。

人材育成型出向等支援のメリット

● 企業力の強化
● 従業員の能力・技術向上
● 従業員本人のキャリアアップ

企業力の強化

人材育成型出向等支援を利用した出向で企業間連携や人材交流が深まり、企業力の強化が期待できます。

出向先企業が自社では得られないスキルや経験をもつ人材を確保することで、従業員によい刺激をもたらします。

また、自社にはない新たな視点が加わり、新たな企画の開発や新規分野開拓につながる可能性もあるでしょう。

従業員の能力・技術向上

他企業(出向先企業)での就業経験を積むことで、従業員(出向元企業)の能力・技術の向上が期待できます。

自社に戻ってきたときに社外で培った経験・スキルを活かしてもらえば、新たなアイデアが生まれる可能性もあります。

厚生労働省の調査によると、出向元企業が在籍型出向を評価する理由(複数回答可)は次の通りでした。

出向元企業が在籍型出向を評価する理由

● 出向労働者の労働意欲の維持・向上につながるため(63%)
● 出向労働者のキャリア形成・能力開発につながるため(59%)
● 出向期間終了後、出向労働者が自社に戻ってくることが確実であるため(56%)
● 出向労働者への刺激になり自社の業務改善や職場活性化に期待できるため(50%)
出典:厚生労働省「在籍型出向に関する アンケート結果について」

多くの出向元企業が、従業員の労働意欲の向上や能力開発をメリットに感じていることがわかります。

従業員本人のキャリアアップ

人材育成型出向等支援を利用した出向は、従業員本人のキャリアアップやスキルアップにもつながります。

出向によって現職とは異なる業務に就けば、新たなスキルや経験を積めるでしょう。

新たな環境で働くことで視野が広がり、自社に戻ったときに業務効率の向上や新たな企画開発につながる可能性もあります。

さらに、スキルや経験を身に付ければ、仕事へのモチベーション向上も期待できます。

人材育成型出向等支援の具体的な例

人材育成型出向等支援を利用し、人材育成・交流やキャリアアップを目的に出向する事例が増えています。そこで、人材育成型出向等支援の具体例をいくつか紹介します。

人材育成型出向等支援の事例

● 社外での実務経験で若手社員のスキルアップが図れた事例
● 管理者不足に悩む企業への出向でリーダー育成が図れた事例
● 従業員の意向に沿って異業種への挑戦を後押しした事例

社外での実務経験で若手社員のスキルアップが図れた事例

出向元企業は、社内教育の限界を感じ、従業員の安全教育や技術向上に課題を抱えていました。

増産対策として未経験者を活用しようと考え、そのために出向先企業に従業員を派遣します。

出向元では若手社員のスキルアップを図り、出向先では即戦力の受け入れを通じてレベルアップが実現しました。

両社がお互いから学び合い、よい成果を上げた事例です。

管理者不足に悩む企業への出向でリーダー育成が図れた事例

出向元企業(製造業)はリーダー育成のため、異業種企業でリーダー経験を積ませたいと考えていました。

そこで、拠点管理者が不足している異業種(サービス業)へ出向させます。

出向元企業では人材育成、出向先企業では管理者不足の解消が実現し、双方にメリットをもたらした事例です。

従業員の意向に沿って異業種への挑戦を後押しした事例

出向元企業(製造業)の自己申告面談で、社員から将来独立したいというキャリアチェンジ希望が出されました。

同種の企業へのアプローチが難しかったため、保有資格を活かせる異業種(保険業)へ出向させることにしました。

出向元企業では社員のキャリアアップを支援し、出向先企業では即戦力として活用できた事例です。

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まとめ

人材育成型出向等支援とは、公益財団法人産業雇用安定センターが行う出向支援のひとつです。

従来の雇用調整型出向は、雇用調整を目的とした出向でした。対して、人材育成型出向等支援は人材育成や企業間交流、従業員のキャリアアップなどを目的とした出向を支援するものです。

出向によって企業間の連携や人材交流が深まれば、企業力の強化や従業員の能力・技術向上などが期待できます。

企業にとって、人材確保や人材配置の最適化はますます重要な課題となっています。

出向の種類や人材育成型出向等支援の目的、メリットを正しく理解しておきましょう。

よくある質問

人材育成型出向等支援とは?

人材育成型出向等支援とは、公益財団法人産業雇用安定センターが行う出向支援のひとつです。「人材育成・交流型出向」と「キャリア・ステップアップ型出向」があります。

人材育成型出向等支援の概要を詳しく知りたい方は「人材育成型出向等支援とは」をご覧ください。

人材育成型出向等支援に期待されるメリットは?

人材育成型出向等支援に期待される主なメリットは、以下の通りです。

人材育成型出向等支援のメリット

● 企業力の強化
● 従業員の能力・技術向上
● 従業員本人のキャリアアップ
人材育成型出向等支援のメリットを詳しく知りたい方は「人材育成型出向等支援に期待されるメリット」をご覧ください。

監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP

1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。

監修者 大柴良史