最終更新日:2023/08/28
監修 安田 亮 公認会計士・税理士・1級FP技能士
インボイス制度は、美容師や美容室にも影響を及ぼします。本記事では、インボイス制度で美容師や美容室が受ける影響、必要な対策などを解説します。
インボイス制度が導入されると、仕入先や委託先が免税事業者の場合、従来通りの仕入税額控除ができません。
免税事業者のままでは取引を続けられない可能性も生じますが、課税事業者に転換した場合、消費税の負担増の懸念もあります。
インボイス制度導入で受ける影響を知り、今からできる対策を考えて実行しましょう。
インボイス制度を詳しく知りたい方は、「2023年10月から始まるインボイス制度とは?図解でわかりやすく解説!」も併せてご覧ください。
目次
- インボイス制度で美容師や美容室経営者が受ける影響
- 業務委託で働くフリーランス美容師がインボイス制度で受ける影響
- 売上高1,000万円超えの美容室がインボイス制度で受ける影響
- 売上高1,000万円以下の美容室がインボイス制度で受ける影響
- インボイス制度で美容師や美容室経営者が対応すべき事柄
- 仕入先・委託先が適格請求書発行事業者かを確認
- 適格請求書(インボイス)の発行事業者になるかを検討
- 業務委託契約の美容師は雇用契約への変更も検討
- インボイス制度に対応できる経理システムを導入
- まとめ
- インボイス制度の理解から実務対応までfreeeで解決!
- よくある質問
- インボイス制度で美容師や美容室が受ける影響は?
- インボイス制度に向けて美容師や美容室に必要な対応は?
インボイス制度で美容師や美容室経営者が受ける影響
インボイス制度が導入されると、仕入税額控除を受けるためには請求書が適格請求書(インボイス)である必要があります。
美容師や美容室の場合、適格請求書でなければ以下の請求に対する仕入税額控除ができません。
美容師や美容室が仕入税額控除をできなくなる費用の例
● 洗髪剤パーマ剤、カラー剤などの仕入れ● 設備のレンタル・リース代
● 業務委託先への支払い
業務委託で働くフリーランス美容師がインボイス制度で受ける影響
インボイス制度が導入されると、業務委託で働く美容師も適格請求書発行事業者にならざるを得なくなる可能性があります。
美容室にとって、業務委託契約をしている美容師が免税事業者である場合、仕入税額控除を受けられないため税負担が増えます。
そのため、業務委託契約で働くフリーランスの美容師は、適格請求書の発行を求められる可能性が高いです。しかし適格請求書は、登録を受けた適格請求書発行事業者しか発行できません。
適格請求書発行事業者になるには、免税事業者から課税事業者への転換が必要です。転換すると消費税の納税義務が発生し、税金の負担が増加するうえ、消費税の申告もしなければなりません。
仮にインボイスを導入しない場合、契約を切られないために契約金額を下げるなどの対応も考える必要が出てきます。
インボイスを導入し納税義務が生じる場合は、「個人事業主のための消費税簡単計算法!確定申告で消費税の処理に悩まないために」で 消費税について理解を深めておきましょう。
売上高1,000万円超えの美容室がインボイス制度で受ける影響
年間の課税売上高が1,000万円を超える美容室は、消費税の確定申告と納税が必要です。消費税の確定申告では、以下のいずれかの方法で仕入税額控除ができます。
仕入税額控除をする方法
● 課税売上に事業ごとに決められたみなし仕入率を掛ける(簡易課税制度)● 課税売上の消費税から仕入分の消費税を差し引く
簡易課税制度を選択していない場合、適格請求書でない仕入は仕入税額控除を受けられません。
適格請求書を発行できるのは、適格請求書発行事業者に登録された課税事業者だけです。仕入先や外注先が免税事業者だと、制度が導入されてからは仕入税額控除を受けられません。
引き続き仕入税額控除を行うには、仕入先や委託先に適格請求書発行事業者の登録をしてもらいましょう。ただし登録してくれるかは相手次第で、要望が通るとは限りません。
免税事業者との取引をインボイス制 度導入後も続ける場合、仕入税額控除をできない分の税負担が増えます。またインボイスとそうでない請求書が混在すると、両者へ対応するために経理作業が複雑化してしまいます。
売上高1,000万円以下の美容室がインボイス制度で受ける影響
年間の課税売上高が1,000万円以下の美容室には、消費税の納税義務はありません。消費税を納税しないため仕入税額控除がなく、適格請求書は不要です。
制度導入で受ける影響はないと見えますが、免税事業者のままでは受けられない支援措置もあります。小規模事業者持続化補助金などの拡充対象は、課税事業者になって適格請求書発行事業者の登録をする事業者に限られます。
課税売上高が1,000万円以下の美容室は経営状況や方針、今後の予定を考えて、課税事業者になるかを慎重に検討しましょう。
インボイス制度で美容師や美容室経営者が対応すべき事柄
2023年10月からのインボイス制度導入に備え、円滑な対応をするために、美容師や美容室は次のような準備が必要です。
美容師や美容室に必要な準備
● 仕入先・委託先が適格請求書発行事業者かを確認● 適格請求書(インボイス)の発行事業者になるかを検討
● 業務委託契約のフリーランス美容師を雇用契約へ変更
仕入先・委託先が適格請求書発行事業者かを確認
インボイス制度が導入されると、仕入税額控除を行うには適格請求書である必要があります。
現在、取引している仕入先や委託先が対応できるかを確認し、円滑な処理に向けて準備しましょう。
適格請求書(インボイス)の発行事業者になるかを検討
免税事業者に該当する美容師や美容室経営者は、課税事業者になり適格請求書発行事業者の登録をするか検討しましょう。
免税事業者から課税事業者になると、消費税納税の負担や確定申告の手間が発生します。しかし課税事業者であることで、新規の取引先獲得につながる可能性もあります。負担が増える点だけでなくメリットも考えて、どちらが適しているか判断しましょう。
業務委託契約の美容師は雇用契約への変更も検討
フリーランスの美容師は、業務委託から直接雇用にできないか相談を持ちかけるのもひとつの方法です。雇用契約を結べば、美容師が免税事業者か課税事業者かで、美容室側が対応を変える問題が発生しません。
取引継続のために課税事業者への転換を考える必要がなくなり、インボイスへの対応を理由に取引中止される不安が解消されます。
ただし、雇用契約を結ぶと美容室側は社会保険料の負担が発生するため、必ずしも受け入れられるかは分かりません。
インボイス制度に対応できる経理システムを導入
インボイス制度に対応した経理システムを導入すれば、手続きや業務の負担を軽減できます。
経理システム導入で負担を軽減できること
● 適格請求書発行事業者になるための手続き● 取引先のインボイス対応状況の確認作業
● 適格請求書(インボイス)の発行・保存
● 異なる税率を扱う際の記帳
IT導入補助金を用いたインボイスへの対応は「IT導入補助金を活用してインボイス制度に対応する方法とは?」で詳しく解説しています。
まとめ
インボイス制度の導入後、簡易課税制度を適用しない事業者が仕入税額控除をするには、請求書が適格請求書でなければなりません。
仕入先や取引先が適格請求書を発行できない場合、今まで通りの仕入税額控除ができません。業務委託で働くフリーランスの美容師は 、適格請求書を発行できないと、取引を見直されるおそれがあります。
現在免税事業者の場合は、課税事業者に転換して適格請求書発行事業者の登録をするか検討しましょう。業務委託で働く場合は、このタイミングで直接雇用に切り替えられないか相談するのも選択肢のひとつです。
美容室は制度導入後の対応を円滑にするため、まずは取引相手が適格請求書発行事業者であるか状況を確認しましょう。
インボイス制度の理解から実務対応までfreeeで解決!
2023年10月1日からインボイス制度が導入されます。すべての事業者はインボイス制度導入までに制度を理解し、対応するための準備をしなければなりません。
インボイス制度は、売り手・買い手双方の事業者に影響があり、それぞれの立場で対応・検討すべきことが異なります。
freeeではインボイス制度の理解から実務対応方法まで、ステップに沿ってサポートします。個人事業主から上場企業まで幅広く対応しているので、ぜひご活用ください。