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株で損失が出たら?義務がなくても確定申告すべき理由や手続き方法を解説

監修 内山 貴博 1級FP技能士・CFP

株で損失が出たら?義務がなくても確定申告すべき理由や手続き方法を解説

株取引で確定申告が必要になる場合と不要な場合の違いや、譲渡損失が出たときに確定申告をした方がいい理由、確定申告のやり方を解説します。

また、どのような場合に確定申告をした方がいいのか、条件や手続きの方法も紹介します。

※NISAでの取引は非課税となるため、NISA口座内で損失が生じた場合も含み、今回のケースには当てはまりません。

目次

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株取引で確定申告が必要になるケースとは?

株取引は「確定申告の義務が生じて申告が必要なケース」と「確定申告の義務はなく申告不要のケース」に分かれます。

利益が出た場合損失が出た場合
一般口座確定申告が必要確定申告は不要
特定口座(源泉徴収票なし)確定申告が必要確定申告は不要
特定口座(源泉徴収票あり)確定申告は不要確定申告は不要

ただし、確定申告が不要な場合でもあえて申告をした方がお得になる場合もあります。

以下ではまず、株取引で確定申告が必要な場合と不要な場合の違いを解説します。

【利益が出た場合】申告義務の有無は口座の種類で変わる

株式投資の口座には「一般口座」「特定口座(源泉徴収なし)」「特定口座(源泉徴収あり)」の3種類があり、株取引で利益が出た場合に確定申告が必要になる条件は口座の種類によって変わります。

口座の種類確定申告の義務の有無
一般口座会社員の場合は、株取引による所得額を含めて「給料以外の所得額が年間20万円超」なら確定申告が必要
特定口座(源泉徴収なし)
特定口座(源泉徴収あり)確定申告の義務はない

このうち特定口座(源泉徴収あり)では、株取引で得た利益から税金が源泉徴収されて証券会社が納税を行うので、株取引をしている人が自分で確定申告をする義務はありません。

一方で一般口座や特定口座(源泉徴収なし)では自分で確定申告をしなければいけない場合があります。

株取引で確定申告の義務が生じるのか、判断の基準となるのは「株取引による所得額が年間で20万円を超えるかどうか」です。

会社員や公務員などの給与所得者は、給料以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。

そのため、株取引による所得額を含めて1月1日から12月31日までの1年間に給料以外の所得が20万円超あれば確定申告が必要です。

ただし、住民税には「20万円以下の申告が不要」というルールはありません。よって20万円以下の所得があり所得税の確定申告をしなかった場合はお住まいの役所・役場で住民税の申告手続きが必要です。

【損失が出た場合】確定申告をする義務はない

株取引で譲渡損失が生じた場合は確定申告をする義務はありません。

「義務はなくてもあえて確定申告をした方がいい場合」はありますが、その場合でも法的には確定申告の義務はないので、確定申告をしない選択もできます。

次項では、株取引で損失が出た場合でも確定申告をするべき理由を解説します。

株取引で損失が出たら義務がなくても確定申告をすべき理由

株取引で譲渡損失が出た場合、確定申告の義務はありませんが、確定申告をすると税金が安くなる場合があります。

株取引で生じる譲渡損失と税金を理解するうえで重要になるのは「損益通算」と「繰越控除」の2つです。以下では損益通算と繰越控除についてそれぞれ解説します。

損益通算:利益と損失を相殺できる

損益通算とは、上場株式等で生じた譲渡損失をその年の上場株式等の利子・配当所得と相殺することです。

利子・配当所得額に税金がかかってしまう場合でも、損益通算をすれば利益額から損失額を引いた額を基準に課税されて税金が安くなる場合があります。

まず、特定口座(源泉徴収あり)で取引をしている場合、その口座内で生じた利子・配当所得と譲渡損失は相殺されて自動的に税額が計算されるので、自分で損益通算の計算をする必要はありません。

しかし、異なる証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で生じた利子・配当所得と譲渡損失に関しては相殺されないので、損益通算をする場合は自分で計算する必要があります。

たとえば、A証券の口座で60万円の利子・配当所得が出てB証券の口座で20万円の損失が出た場合、AとBの2証券会社で連携を取って同一人物の口座であると判定したり異なる証券会社の口座間で利子・配当所得と譲渡損失を自動的に相殺してくれたりするわけではありません。

A証券では60万円の利子・配当所得を基準に税金が源泉徴収されてしまいます。

しかし、自分で損益通算をして確定申告をすれば、利子・配当所得額60万円から譲渡損失額20万円を引いた40万円を基準に税金を計算できるので、確定申告をすると税金が安くなります。

繰越控除:翌年以降の利益と相殺できる

繰越控除とは、損益通算をしても損失額が残る場合に、その損失を最大3年間繰り越せて、翌年以降の上場株式等の譲渡益や利子・配当所得から控除できる制度です。

翌年以降に譲渡益や利子・配当所得が出た場合、繰り越し済みの譲渡損失と相殺すれば課税所得金額が低くなって節税になる場合があります。

たとえば、特定口座(源泉徴収あり)で取引をし、ある年にA証券で20万円の譲渡益や利子・配当所得が出てB証券で50万円の譲渡損失が出た場合、A証券では20万円の利益を基準に税金が源泉徴収されますが、確定申告をして損益通算をすれば年間の損益は▲30万円なので税金はかかりません。

さらに、仮に翌年の1年間に株取引で70万円の譲渡益や利子・配当所得が出た場合、確定申告をして繰り越し済みの譲渡損失30万円と相殺すれば、70万円から30万円を引いた40万円を基準に課税されるだけで済みます。

そのため、譲渡損失が出た場合には、翌年以降3年以内に譲渡益や利子・配当所得が出た場合に備えて、確定申告をして繰越控除を適用できるようにしておけば、税金を安くできる可能性があります。

株取引で損失が出たときの確定申告のやり方

株取引で利益が出て確定申告の義務が生じた場合や、譲渡損失が出て損益通算や繰越控除の適用を受ける場合、確定申告書を作成して税務署に提出する必要があります。

以下では確定申告のやり方や必要書類を解説します。

申告方法は窓口・郵送・e-Taxの3種類

確定申告の方法は窓口・郵送・e-Taxの3種類です。

メリットデメリット
窓口・分からない点があれば税務署の職員に質問しながら手続きできる・税務署の開庁時間しか手続きできない
・確定申告の時期は税務署が混雑して手続きに時間がかかる場合がある
郵送・窓口に行く手間や時間がかからない・書類に不備があると郵送のやり取りに時間がかかる
e-Tax・スマホやパソコンで確定申告書の作成、提出ができる
・原則24時間いつでも手続きができる
・添付書類を一部省略できる
・e-Taxを使うためには事前の申請手続きが必要

確定申告期間は毎年2月16日~3月15日です。確定申告の義務がある場合は3月15日までに申告をしなければいけません。

なお、申告期限・納期限の日付が土日祝などの国民の休日にあたる場合、翌日または翌々日の月曜日が期限日となります。

また、確定申告の義務がない人が申告して税金の払い戻しを受ける還付申告の場合は2月15日以前でも手続きが可能です。

特定口座年間取引報告書を用意して申告書に記入する

確定申告書には所得金額を記入する必要があります。株取引で利益や譲渡損失が出た人は金額がわかる書類が必要です。

特定口座で取引している場合は、証券会社から発行される特定口座年間取引報告書を用意して金額を記入しましょう。

他の所得がある場合も記入する必要があるので、会社員であればお勤め先から受け取る源泉徴収票を用意して給与額を記入します。

確定申告書の用紙のうち提出する書類はケースごとに異なりますが、株取引の確定申告の場合、提出する確定申告書は一般的に第一表・第二表・第三表の3つです。

確定申告書
出典:国税庁|確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)

税務署の窓口で提出する場合や郵送で提出する場合は確定申告書に手書きで記入し、e-Taxで確定申告書を作成・提出する場合はスマホやパソコンで入力します。

令和4年分の確定申告書は国税庁サイトからダウンロードできます。

また、確定申告書の書き方は別記事「【2023年最新】確定申告書の書き方を記入項目別にわかりやすく解説」で解説してます。

株式投資をしている人が確定申告をするときの注意点

以下では、株取引に関わる確定申告で注意すべき点を解説します。

配偶者控除や扶養控除が受けられず税金が高くなる場合がある

確定申告をしていない場合は、配偶者控除や扶養控除の判定基準となる合計所得金額には株取引による利益は含まれません。

しかし確定申告をした場合は、株取引で得た利益が計算に含まれるので、金額によっては配偶者控除や扶養控除の対象外となり、家族が払う税金が高くなる場合があります。

国民健康保険料や介護保険料が上がって負担が増える場合がある

確定申告をしていない場合は、国民健康保険料や介護保険料の計算に株取引による利益は含まれません。しかし、確定申告をした場合は株取引による利益を含めて計算するため、保険料が上がる場合があります。

たとえば繰越控除の適用を受けるために確定申告をする場合、繰り越し済みの譲渡損失と相殺すれば株取引で得た利益にかかる税金は安くなるかもしれません。ただし、それ以上に社会保険料が上がると家計の負担が重くなるので注意が必要です。

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さらに有料プランでは、チャットで確定申告について質問ができるようになります。オプションサービスに申し込めば、電話での質問も可能です。

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まとめ

株取引で譲渡損失が出た場合、確定申告の義務はありませんが、確定申告をして損益通算や繰越控除の適用を受けると税金が安くなる場合があります。

年間の損益がマイナスだった年は、翌年以降に上場株式等の譲渡益や利子・配当所得が出た場合に相殺できるように、確定申告をして譲渡損失を繰り越せば損失の負担を軽減できます。

e-Taxで確定申告すれば自宅にいながらスマホやパソコンで手続きでき、確定申告書を手書きしたり税務署に行ったりする手間はかかりません。

確定申告の義務がある場合や義務がなくてもあえて申告した方がいい場合は、忘れずに手続きする必要があります。

よくある質問

株取引で確定申告が必要になるのはどんなとき?

株取引で利益が出た際に、確定申告の義務が生じる場合があります。また、譲渡損失が出た場合でも確定申告をした方がいいケースがあります。

株取引に伴う確定申告を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

株取引で損失が出ても確定申告をすべき?

株取引で譲渡損失が出た場合は、確定申告の義務はありませんが、確定申告をすると税金が安くなる場合があります。

株取引で譲渡損失が出た場合の確定申告を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

監修 内山貴博(うちやま たかひろ) 1級FP技能士・CFP

大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。

監修者 内山貴博