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住民税非課税世帯とは?年収の目安や受けられる措置について解説

監修 内山 貴博 1級FP技能士・CFP

住民税非課税世帯とは?年収の目安や受けられる措置について解説

住民税非課税世帯とは、住民税が課税されない世帯です。住民税非課税世帯に該当すれば、住民税がかからないため経済的負担が軽くなります。また、さまざまな優遇措置が受けられます。

この記事では住民税非課税世帯とは何か、対象になる人の要件や優遇措置について解説します。

目次

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住民税非課税世帯とは?

住民税非課税世帯とは、文字通り住民税が非課税、つまり住民税がかからない世帯です。

住民税は、行政サービスを行う際の費用に充てるために住民から徴収される税金ですが、一定の要件を満たす低所得者に対しては、住民税を非課税にして課税しないとされています。

住民税が非課税になる要件を世帯員全員が満たし、住民税が課税されている人がいない世帯が住民税非課税世帯です。

住民税の仕組み

住民税非課税世帯を理解するためには、住民税について理解しておく必要があります。そこで、以下では住民税の仕組みを解説します。

前年1年間の所得をもとに税額が決まる

住民税は、1月から12月までの1年間の所得額をもとに税額を計算して翌年に納付します。都道府県民税と市区町村民税があり、納付先は1月1日に住んでいる自治体です。

会社員であれば翌年6月から翌々年5月にかけて給料から天引きされ、個人事業主であれば納付書等で翌年6月以降に納付します。

住民税は、支払う年の所得の状況ではなく支払う前年の所得をもとに税額が決まる点が特徴です。当年に所得がなくても前年1年間に所得があれば住民税がかかる場合があり、また当年に所得があっても前年1年間に所得がなければ住民税はかかりません。

たとえば新卒で入社した場合、前年に所得がなければ入社1年目は住民税がかからず、入社2年目から住民税を納めます。

所得割と均等割の違い

住民税には所得割と均等割の2種類の課税方法があります。

所得割とは、住民税のうち所得額に応じて課税される部分です。1年間の所得額を基準として、扶養控除や社会保険料控除など各種控除を考慮したうえで税率を適用して税額を計算します。税率は自治体によって異なる場合がありますが、標準的な税率は都道府県民税4%、市区町村民税6%です。

均等割とは、住民税のうち所得に関係なく課税される部分で、基本的には都道府県民税が1,500円、市区町村民税が3,500円です。ただし自治体によっては金額が異なる場合があります。

なお都道府県民税と市区町村民税には、東日本大震災復興基本法等に基づき、それぞれ500円ずつ計1,000円が上乗せされていましたが2023年度で終了します。そのため、2024年度からの均等割は都道府県民税が1,000円、市区町村民税が3,000円です。

ただし令和6年度から、新しく創設された森林環境税の課税が始まります。森林環境税とは、森林の整備や促進に関する施策の財源に充てるための国税です。個人住民税の均等割とあわせて年間1,000円が課税されるため、合計の納税額は変わりません。

税目2023年度以前2024年度以降
森林環境税1,000円
住民税均等割(都道府県民税)1,500円1,000円
住民税均等割(市区町村税)3,500円3,000円
合計5,000円5,000円

出典:中央区「令和6年度から適用される個人住民税の主な改正」

住民税が非課税になる人の要件

住民税非課税世帯とは一般的に「所得割と均等割の両方が非課税になる世帯」です。

住民税が非課税になるケースには「所得割と均等割の両方が非課税になるケース」のほかに「所得割のみ非課税になるケース」もあります。

以下ではこの2つのケースについて対象者の要件をそれぞれ紹介します。

所得割のみ非課税になる要件

所得割のみ非課税になるのは、前年の総所得金額等が下記の金額以下の人です。

所得割のみ非課税になる要件

  • 同一生計配偶者または扶養親族がいる場合:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+42万円
  • 同一生計配偶者または扶養親族がいない場合:45万円

所得割と均等割が非課税になる要件

所得割と均等割が非課税になる要件は自治体によって基準額が異なる場合がありますが、東京都23区の場合は、以下のいずれかの要件に該当すると非課税の対象です。

所得割と均等割が非課税になる要件

  • 生活保護法による生活扶助を受けている場合
  • 障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4,000円未満)の場合
  • 前年の合計所得金額が下記の金額以下である場合(東京23区内の場合)
    <同一生計配偶者または扶養親族がいる場合>
    ・35万円 × (本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数) + 31万円
      <同一生計配偶者または扶養親族がいない場合>
    ・ 45万円

住民税非課税世帯になる年収の目安

所得割と均等割が非課税になる要件のうち、前年の合計所得金額に関する要件では基準額が自治体によって異なる場合があるため、住民税非課税世帯になる年収の目安は住んでいる自治体がどこなのかによって変わる場合があります。

そのため、あくまで目安ですが、たとえば単身の給与所得者であれば年収100万円が住民税非課税世帯になる目安です。アルバイトやパートによる収入が100万円以下であれば、住民税はかかりません。また65歳以上の単身者で収入が年金のみであれば、年収155万円以下が目安です。

住民税非課税世帯が受けられる優遇措置

住民税非課税世帯に該当すれば、さまざまな優遇措置を受けられます。以下では、住民税非課税世帯に対する主な優遇措置を紹介します。

国民健康保険料・国民年金保険料の減免措置

住民税非課税世帯に該当する場合、国民健康保険料や国民年金保険料の減免基準も原則満たします。国民健康保険料と国民年金保険料の減免基準はそれぞれ以下の通りです。

<国民健康保険料の減免基準(東京都杉並区の場合)>
世帯の前年所得金額が下記の金額以下であれば国民健康保険料の均等割額が減額されます。

国民健康保険料の減免基準

  • 7割減額:43万円+10万円×(給与所得者等の人数-1)
  • 5割減額:43万円+28.5万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の人数-1)
  • 2割減額:43万円+52万円×被保険者数+10万円×(給与所得者等の人数-1)

<国民年金保険料の免除基準>
前年所得が下記の式で計算した金額以下であれば国民年金保険料が免除されます。

国民年金保険料の免除基準

  • 全額免除:(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
  • 4分の3免除:88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
  • 半額免除:128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
  • 4分の1免除:168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

医療費負担の軽減措置

1ヶ月の医療費が高額になった場合、医療費が一定の額(自己負担上限額)を超えると超えた分が支給される高額療養費制度と呼ばれる制度があります。自己負担上限額は年齢や所得に応じて変わり、医療費が多くかかった場合でも負担が重くなり過ぎないようにするための制度です。

住民税非課税世帯では自己負担上限額が低く設定されているので、病気やケガなどで治療費や薬代などがかかっても医療費負担が軽減されます。たとえば住民税非課税世帯で70歳未満の人であれば自己負担上限額は35,400円です。

この自己負担上限額を超える医療費がかかった場合、上限額を超える分は高額療養費制度によって支給されるため、自分で負担する必要はありません。また過去1年間に3ヶ月以上の高額療養費の支給を受けた場合は、4ヶ月目からは自己負担上限額がさらに引き下がり、より負担が軽減されます。

保育料や大学授業料の無償化

住民税非課税世帯であれば0~2歳の保育料は無料です。また学校の成績など一定の条件も満たせば、高等教育の修学支援制度を使い、授業料の減免や給付型奨学金制度を利用できます。

高等教育の修学支援制度は大学や短期大学、高等専門学校、専門学校などを対象とした制度で、家庭の経済的事情から進学できない子どもを支援するための制度です。返済義務がない給付型奨学金を受け取れば学生は生活費等として使えます。

2024年度の税制改正で給付措置が行われる

2024年度の税制改正で、低所得層に対して給付措置が行われることが決定しました。

2024年度には所得税と住民税の定額減税が行われますが、定額減税の恩恵を受けられない低所得者層に対し、物価高対策として行われる措置です。

住民税非課税世帯には1世帯当たり7万円が給付され、住民税均等割のみ課税世帯に対しては、非課税世帯と同水準となる10万円が給付されます。

さらに住民税非課税世帯と住民税均等割のみ課税世帯のうち、子育て世帯には追加で子ども1人当たり5万円が給付されます。18歳以下の子どもが対象です。

住民税非課税世帯に関する注意点

住民税非課税世帯かどうかは基本的に前年の所得を基準に判定されます。そのため現在の所得が少ない場合でも住民税非課税世帯になるとは限りません。

会社を辞めて収入がない場合でも、前年に所得があれば住民税の納付が必要になる場合があるため注意が必要です。

また、住民税非課税世帯が国民健康保険料の軽減措置の適用を受けるためには住民税の申告が必要になる場合があります。

なお、優遇措置の適用を受けるためには手続きが必要になる場合があります。

まとめ

生活扶助を受けている場合や前年の所得が一定額以下の場合、住民税非課税世帯に該当し、住民税の所得割・均等割ともに非課税になります。

住民税非課税世帯に該当すれば一般的に国民健康保険料や国民年金保険料の減免措置の適用を受けられ、医療費の負担軽減措置、保育料や学費の無償化など優遇措置も受けられます。

優遇措置の適用を受けるためには住民税の申告など手続きが必要になる場合があるので、必要な手続きが何か確認して忘れずに手続きが大切です。

よくある質問

住民税非課税世帯とは?

住民税非課税世帯とは、住民税が非課税になる要件を世帯員全員が満たし、住民税が課税されている人がいない世帯です。

住民税非課税世帯を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

住民税非課税世帯にはどんな優遇措置がある?

住民税非課税世帯は、国民健康保険料や国民年金保険料の減免措置や、医療費負担の軽減措置、保育料や大学授業料の無償化などの優遇措置があります。

住民税非課税世帯が植えられる優遇措置を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

監修 内山 貴博 1級FP技能士・CFP

大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。

監修者 内山 貴博氏