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戸籍に読み仮名が必須に!改正の背景や目的、ポイントを解説

公開日:2023/09/13

監修 松浦 絢子 弁護士

戸籍に読み仮名が必須に! 改正の背景や目的、ポイントを解説

2023年6月改正戸籍法が成立し、戸籍に読み仮名が必須となりました。行政手続きや個人間コミュニケーションの正確性を向上させることが目的です。戸籍法の改正が施行されると、1年以内に戸籍の氏名の読み仮名を届ける必要があります。

本記事では、戸籍法が改正された背景や目的、改正のポイントを解説します。戸籍法が改正されたポイントを把握し、必要な対応を行いましょう。

目次

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戸籍に読み仮名が必須に!改正戸籍法が成立

2023年6月2日、改正戸籍法が参院本会議で可決され、成立しました。改正戸籍法は2024年度には施行される予定です。

戸籍法の改正により、これまで漢字表記のみで読み仮名の記載がなかった戸籍に、読み仮名の記載が義務付けられます。この変更により、すべての方が戸籍法の改正が施行されてから1年以内に、本籍地のある市区町村へ読み仮名の申請が求められます。

また、戸籍法の改正では、氏名の読み方に一定の基準も設けられました。改正の詳しい内容は後述する「戸籍法改正のポイント」で紹介しているので、あわせてご確認ください。

戸籍法改正の背景となった課題

戸籍法が改正された背景には、「名字や名前の読み方に法的な根拠がない」点が挙げられます。

戸籍は、日本国民が出生してから死亡するまでの身分関係を証明する公的な記録です。戸籍には本籍・筆頭者氏名・同じ戸籍内に記載される方の名・生年月日・父母の氏名・出生地・婚姻日などが記載されます。読み仮名は戸籍の記載事項に含まれていません。

出生届を提出する際に氏名と読み仮名を地方自治体へ提出し、その読み仮名は住民基本台帳に記載されますが、戸籍には反映されません。

また、公的身分証(免許証・マイナンバーカードなど)に読み仮名を記載する際に、どの法的根拠をもとに記載するかが定まっていなく、公的記録内で氏名の読み仮名が統一されていないのが現状です。そのため、情報システムでの検索や管理が難しく、行政のデジタル化に影響を与えています。

上記のような背景から、戸籍法の改正は諮問機関の民事行政審議会や、法務省民事局の戸籍制度に関する研究会で検討が続けられていました。

戸籍法改正の目的

戸籍法改正の主な目的は、名字や名前の読み方に法的な根拠を与え、政府のデータベースにおけるシステム処理や検索を簡便化させることです。行政サービスの質が向上することによって、国民の行政手続きの利便性向上にも寄与します。

たとえば、データベースで氏名を五十音順に配列する際、漢字表記だけでは配列が難しい場合がありますが、読み仮名を利用することで効率的な配列が可能です。

また氏名の読み仮名を利用すると、社会保障や税金、災害時の給付金の支給などの事務処理が正確かつ迅速に行えます。

なお、個人を特定できる情報としてマイナンバーが考えられますが、マイナンバーは秘匿性の高い情報です。そのため、社会保障や税金などの事務を委託する際に、情報開示の範囲について慎重に考慮する必要があります。

一方氏名の読み仮名は、日常生活で幅広く利用される情報です。行政の事務を民間へ委託する際にも有用な側面が挙げられます。

2020年のデジタル・ガバメント実行計画にて、戸籍に読み仮名を記載する法制化の方針が示され、今回の戸籍法改正につながりました。

戸籍法改正のポイント

戸籍法改正の主なポイントは以下の通りです。

戸籍法改正のポイント

● 戸籍に読み仮名が必須となる
● 読み仮名に一定の基準が設けられる
● 読み仮名の変更の手続きは家庭裁判所の許可が原則必要になる
● マイナンバーカードへの記載も検討されている
各ポイントの詳細を解説します。

戸籍に読み仮名が必須となる

戸籍法改正のひとつめのポイントは「戸籍に読み仮名が必須となる」点です。読み仮名はカタカナで記載されます。

新生児の場合は、出生届に記載された読み仮名が戸籍にも反映されます。一方、すでに戸籍に氏名が記載されている方の場合は、以下の経過措置にしたがって記載する方針です。

すでに戸籍に記載されている方の場合

● 改正の施行日から1年以内に限り、戸籍の筆頭者は氏名、それ以外は名前の読み仮名を届け出られる
● 戸籍の筆頭者が除籍されている場合は、第二順位の配偶者や第三順位の子が届け出られる
● 本籍地の市町村長は、施行日以後に住民基本台帳などで把握している読み仮名を通知する
● 届け出がない場合、本籍地の市町村長は把握している読み仮名を職権で戸籍に記載する
2024年に予定される戸籍法改正の施行後、本籍地の市町村長から戸籍の読み仮名に関する通知が送付されます。読み仮名を届け出たい場合は、1年以内であれば認められる仕組みです。

もし届け出をしなければ、現在、住民基本台帳などに記載されている読み仮名が戸籍に記載されます。

読み仮名に一定の基準が設けられる

戸籍法の改正では、読み仮名に以下の一定の基準が設けられました。

戸籍法の改正で設けられた基準

「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」
出典:法務省「戸籍法等の改正に関する要綱案のたたき台」

基準の詳細は今後法務省から通達される予定です。なお、法務省はすでに使っている氏名の読み仮名は認める方針をとっています。

注意点は、新しく生まれてくる子どもの名前の読み仮名をどこまで許容するかです。戸籍法の改正が可決された2023年6月時点では、以下の読み仮名は許容しない方向が示されています。

許容しない方向の読み仮名

● 漢字の意味と反対の読み仮名
● 読み違いかどうか判断できない読み仮名
● 漢字の意味や読み方から連想できない読み仮名
たとえば、「高」の漢字で「ヒクシ」と読ませる読み仮名は、漢字の意味と反対となるため許容されない可能性が高いです。そのほか、読み違いか判断できない例には「太郎」で「ジロウ」と読ませる読み仮名が挙げられます。

なお読み仮名は、常用漢字表や辞書に掲載されていない読み方でも、届け出た方の説明を受けたうえで判断するとされています。これまでの日本の命名文化を踏まえた運用となる予定です。

読み仮名の変更の手続きは家庭裁判所の許可が原則必要になる

戸籍法の改正では、読み仮名の変更は原則として、家庭裁判所の許可を得て届け出ることとしています。

なおすでに戸籍に記載されている方の経過措置として、一度のみ、家庭裁判所の許可がなくても届け出だけで変更が可能です。ただし、変更できる読み仮名は、一般に認められる範囲内である点に注意してください。

マイナンバーカードへの記載も検討されている

2024年に海外でのマイナンバーカード利用が開始されることから、マイナンバーカードへのローマ字表記も検討されています。今回の戸籍法改正を受け、マイナンバー法などの一部改正も行われる方向です。

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まとめ

戸籍法が改正され、これまで記載されていなかった戸籍の読み仮名の記載が必須となりました。

既存の読み仮名は認められる方針ですが、新生児などの新たな読み仮名がどこまで認められるかは、今後の通達を待つ必要があります。

一方で、戸籍に読み仮名が記載され、統一した読み仮名が法制化されれば、行政のデジタル化にプラスの影響を与えます。戸籍法の改正は行政サービスの向上につながるメリットもある法改正です。

よくある質問

戸籍に読み仮名が法制化されるのはいつから?

戸籍に読み仮名が必須となるのは、2024年度に改正戸籍法が施行された以降です。

戸籍の読み仮名に関して詳しく知りたい方は「戸籍に読み仮名が必須に! 改正戸籍法成立」をご覧ください。

戸籍法改正のポイントは?

戸籍の読み仮名を1年以内に届け出る必要があるほか、読み方に一定の基準が設けられます。

戸籍法改正を詳しく知りたい方は「戸籍法改正のポイント」をご覧ください。

監修 松浦絢子(まつうら あやこ) 弁護士

松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

監修者 松浦絢子