バックオフィスのトレンド情報をまとめて解説!

GXとは?定義や注目される背景、取り組み事例をわかりやすく解説

監修 安田亮 公認会計士・税理士・1級FP技能士

ワークプレイスとは?構築が必要な理由や企業の取り組み事例を紹介

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、化石燃料からクリーンエネルギー中心の社会構造へ転換し、経済社会システム全体を変革する取り組みです。

地球温暖化が深刻化するなか、GX推進は政府の重点投資分野に位置付けられ、注目が高まっています。また、GXはDX(デジタルトランスフォーメーション)やSDGsとも関連深い取り組みです。

本記事では、GXの定義や関連用語注目されている背景を解説します。企業がGXを推進するメリットや取り組み事例も紹介するので、GXについて詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

目次

GXとは?

GX(グリーントランスフォーメーション)は、化石燃料からクリーンエネルギー中心の産業構造に移行させ、経済社会システム全体を変革していく取り組みです。

カーボンニュートラルへの対応を成長の機会と捉え、温室効果ガス排出削減と経済成長・エネルギー安定供給を同時に実現することを目指しています。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、合計を実質ゼロにすることです。多くの国や地域がカーボンニュートラルの実現に向けて、さまざまな取り組みを実施しています。

日本でも、2020年10月に政府が「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表し、2050年までに脱炭素社会を目指すと宣言しました。

GXとは?

出典:環境省 脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは」

また 日本は、2030年度に温室効果ガス排出削減目標を達成(2013年度比46%削減)する目標も掲げています。

なお、脱炭素社会とは、カーボンニュートラルが実現された社会です。

DXとの関係

GXと似た言葉に、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」があります。

DXとは、データとデジタル技術を活用し、商品・サービスやビジネスモデル、企業組織、社会などを変革しようとする取り組みです。

一方で、GXはクリーンエネルギーへの移行による社会変革を目指すものです。

企業がペーパーレス化などのDXを推進すれば、GX推進にもつながります。つまり、DXはGX推進の手段のひとつです。

経済産業省は「デジタルガバナンス・コード2.0」のなかで、GXやSXを迅速に進めるにはDXと一体で取り組むことが望ましいと述べています(※)。

(※)「デジタルガバナンス・コード2.0」は、企業のDX推進を促す目的で、経営者に求められる対応を取りまとめた資料です。

SDGsやESGとの関係

SDGsやESGとの関係

出典:日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)「SDGsってなんだろう? 」

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す、17の国際目標です。

7つ目の目標「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」は、GXと直接関係しています。

目標7の達成目標

● 2030年までに、だれもが、安い値段で、安定的で現代的なエネルギーを使えるようにする
● 2030年までに、エネルギーをつくる方法のうち、再生可能エネルギーを使う方法の割合を大きく増やす(※)
● 2030年までに今までの倍の速さでエネルギー効率をよくしていく
出典:日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)「7.エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」
(※)太陽光、風力、地熱などの二酸化炭素を排出しないエネルギー源です。

つまり、GXの推進は、世界が目指すSDGsの実現にも欠かせません。

なお、「ESG」もSDGsに関連する言葉のひとつです。ESGとは、環境、社会、ガバナンス(企業統治)に配慮して投資や経営・事業を行うことです。

ESGとは

● 環境(Environment)
● 社会(Social)
● ガバナンス(Governance)
昨今では投資家が企業価値を判断する際の指標としても重視されるようになっており、ESG投資が拡大しています(※)。
(※)ESG投資とは、ESG(環境、社会、ガバナンス)の要素に配慮した投資です。

GXの推進は、ESGのうち「環境」に配慮して経営や事業を行うことです。つまり、GXを推進する企業は、ESGの観点でも評価されやすくなります。

【関連記事】SDGsとは?国際的な取り組みの内容や意味をわかりやすく紹介
ESGとは? SDGsやCSRとの違いや投資の種類を詳しく解説!

GXが注目されている背景・必要性

GXが注目されている背景にあるのは、地球温暖化や環境問題の深刻化です。

世界はさまざまな環境問題に直面しており、なかでも地球温暖化は、世界的に深刻な問題となっています。IPCCは、有効な温暖化対策をとらなければ、21世紀末(2081~2100年)には世界の平均気温が2.6~4.8℃上昇する可能性が高いと報告しています(※)。
(※)IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)とは、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が設立した政府間組織です。日本語では、「気候変動に関する政府間パネル」と呼びます。

世界では豪雨や洪水などの異常気象が頻発しており、その要因のひとつが地球温暖化です。地球温暖化がこのまま進めば人々の生活に大きな影響を及ぼすことが予測されるため、温室効果ガス削減は急務の課題となっています。

つまり、人々の生活を守るためには、GXの推進が欠かせません。また、GXに注目が集まっている理由としては、下記も挙げられます。

GXに注目が集まっている主な理由

● 政府の重点投資分野への位置付け
● 「2050年カーボンニュートラル宣言」
● ESG投資の拡大

企業がGXを推進するメリット

企業がGXを推進するメリットは、以下の3つです。

企業がGXを推進するメリット

● エネルギーコストを削減できる
● 企業イメージがアップする
● 補助金や助成金が利用できる

エネルギーコストを削減できる

GXの推進によって、企業のエネルギーコスト削減を図れます。温室効果ガス排出を削減するには、省エネの取り組みが欠かせません。

省エネの取り組み例

● 空調設備の使用ルールを決めてムダを減らす
● 省エネ機器を導入する
● 人感センサーでムダな照明点灯を抑える
● テレワークを導入する
上記のような省エネの取り組みや、太陽光発電などの再生可能エネルギーの活用によって、企業のエネルギーコストを削減できます。

企業イメージがアップする

GXに取り組めば「環境に配慮している企業」であることを対外的にアピールできるため、取引先や消費者に良い印象を与えられます。安心感や信頼性が高まり、企業のイメージアップにつながるでしょう。

また、求職者からのイメージもよくなり、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。

補助金や助成金が利用できる

GXに取り組めば、補助金や助成金を受け取れる可能性があります。

たとえば、令和5年度補正予算では、「ものづくり補助金」に「成長分野進出類型」が追加されました(※)。
(※)ものづくり補助金(「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)とは、中小企業などによる生産性向上に資する設備投資を支援する補助金制度です。

成長分野進出類型とは、DX・GX分野に資する革新的な製品・サービス開発に、必要な設備・システム投資などを支援する事業です。通常類型と比べて、補助上限額・補助率が高く設定されています。

政府は、今後10年間で150兆円規模の官民GX投資を目指すと発表しており、GXに関する補助金は今後も増える見込みです。

GXに関する取り組み事例

GXに関する政府と企業の取り組み事例をいくつか紹介します。

GXの取り組み事例

● 内閣の「GX実行会議」
● 経済産業省の「GXリーグ」
● 2018年にカーボンニュートラルを達成した米国企業の事例

内閣の「GX実行会議」

「GX実行会議」は、GXを実行するべく、岸田内閣が2022年7月に立ち上げた会議です。

2023年11月に開催されたGX実行会議(第9回)では、20兆円の支援策を展開していくGX投資促進策の基本原則について議論されました。

また、「COP28」にて、GXの基本的な考えである排出削減・経済成長・エネルギー安定供給の同時実現を目指す考えを共有しています(※)。
(※)COPとは、世界各国が気候変動問題を話し合う国際会議です。「COP28」は、2023年11月30日から開催されます。

経済産業省の「GXリーグ」

経済産業省の「GXリーグ」

出典:GXリーグ公式ウェブサイト「ABOUT GX LEAGUE」

経済産業省は、2022年2月に「GXリーグ基本構想」を発表し、2023年度からGXリーグの活動を開始しました。

GXリーグとは、GXに積極的に取り組む企業が、産官学と協働してGXを牽引する枠組みです。日本のCO2排出量の4割以上を占める企業群(566社)が参画しています。

参画企業が実施する主な活動は、以下の通りです。

GXリーグ参画企業の主な活動

● 自ら設定した目標達成に向けた排出量取引を実施する
● 製品やサービスを通じて削減に貢献する
● サプライチェーン全体での削減を促進するためのルールを形成する

2018年にカーボンニュートラルを達成した米国企業

ある米国の企業では、2018年以降、オフィス・直営店・データセンターの電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうことを実現しています。

この企業は自社だけでなくグローバルサプライチェーンにも積極的に働きかけ、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速するよう要請しました。2020年には、2030年までにすべてのサプライチェーンでカーボンニュートラルを達成すると発表しています。

さらに、2023年9月には、排出量を75%以上削減したカーボンニュートラルなウェアラブル端末を発表しました。

このように、企業でもGX推進への取り組みが実施されています。

スモールビジネスを、世界の主役に。

ビジネスには立ち上げから運営までさまざまなアクションが伴います。

freeeは「統合型経営プラットフォーム」を開発・提供し、ビジネスをより円滑にするためのサポートを行います。

自動化によるプロセスの最適化や管理体制の改善がもたらすのは、業務効率の向上だけではありません。ルーティンワークや非効率な作業に手を取られることがなくなれば、よりクリエイティブな活動に時間を充てられます。

多様なアイデアが生まれ、だれもが自分らしく自然体で働ける環境をつくるために。既存の枠組みにとらわれない働き方を実現し、あらゆる業務の煩雑さからの解放を目指します。

経営に関するお悩みは、ぜひ一度freeeにご相談ください。

まとめ

GXとは、化石燃料からクリーンエネルギー中心の産業構造に移行させ、経済社会システム全体を変革していく取り組みです。

地球温暖化の深刻化や、国の重点投資分野への位置付けを背景に、GXへの注目が高まっています。

企業がGXを推進すれば、コストの削減や企業イメージアップが図れるほか、優秀な人材の確保も期待できます。

今後、ますます国をあげた取り組みが加速するGXの定義や重要性について、理解を深めましょう。

よくある質問

GXとは?

GX(グリーントランスフォーメーション)とは、化石燃料からクリーンエネルギー中心の産業構造に移行させ、経済社会システム全体を変革していく取り組みです。

GXの概要を詳しく知りたい方は「GXとは?」をご覧ください。

GXが注目されているのはなぜ?

GXへの注目が高まっている主な理由は、以下の通りです。

GXが注目されている主な理由

● 地球温暖化や環境問題の深刻化
● 政府の重点投資分野への位置付け
● 「2050年カーボンニュートラル宣言」
● ESG投資の拡大
GXが注目されている理由を詳しく知りたい方は「GXが注目されている背景・必要性」をご覧ください。

監修 安田亮(やすだ りょう) 公認会計士・税理士・1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮