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【令和5年分】住民税の申告不要制度が変わる!所得税と異なる課税方式の選択が廃止

公開日:2023/09/25

監修 安田 亮 公認会計士・税理士・1級FP技能士

【令和5年分】住民税の申告不要制度が変わる!所得税と異なる課税方式の選択が廃止

令和4年度税制改正で、上場株式等の配当所得等について、所得税と住民税の課税方式を一致させる改正が行われました。

改正前は、所得税で総合課税、住民税で申告不要制度を選択するなどの方法が可能でした。しかし、令和5年分からは、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することはできなくなります。

本記事では、株式投資や投資信託をしている方向けに、3つの課税方式と「異なる課税方式」の選択廃止による影響を解説します。

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目次

住民税申告不要制度とは

上場株式の配当金や投資信託の分配金を受け取った場合、支払いの際に源泉徴収されることで納税が完結します。そのため、別途確定申告をする必要はありません。これを「申告不要制度」といいます。

また、確定申告をすれば、「総合課税」または「申告分離課税」の選択も可能です。

従来の制度では、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することができました。つまり、所得税で総合課税や分離課税で申告した場合でも、住民税では申告しない選択ができました。

たとえば、所得税で総合課税を選択し、住民税で申告不要制度を選択すれば、税額や保険料を抑えられる場合があります。

異なる課税方式の選択を正しく理解するため、配当所得等に関する3つの課税方式を以下で詳しく解説します。

配当所得等に関する3つの課税方式

配当所得等に関する課税方式は、申告不要方式を含む以下の3つです。選択する課税方式によって、税額が変わってきます。

項目申告不要制度総合課税申告分離課税
税率所得税(※):15%
住民税:5%
所得税(※):累進税率
住民税:10%
所得税(※):15%
住民税:5%
配当控除の適用有無なしありなし
譲渡損失との損益通算なしなしあり
合計所得金額への参入なしありあり
出典:総務省「上場株式の配当等への課税方式の選択」
(※)2037年までは、基準所得税額の2.1%の復興特別所得税(日本大震災からの復興に用いるための税金)を所得税とあわせて納付します。

申告不要制度は、配当金や分配金が支払われる際に源泉徴収(所得税15%、住民税5%)されることで、納税が完結する課税方式です。

申告不要制度を選択した場合、合計所得金額には算入されないため、住民税の非課税判定や扶養控除の適用などに影響はありません。(※)
(※)合計所得金額は、給与所得や事業所得、不動産所得などの所得金額を合計した金額(繰越控除を適用される前の金額)です。

総合課税は、各種の所得金額を合計して所得税額を計算する課税方式です。所得税は累進税率(課税所得金額に応じて5%~45%)、住民税は10%の税率で算出します。総合課税を選択して申告すれば、配当控除の適用が受けられます。

申告分離課税は、ほかの所得金額とは分離して税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式です。

申告分離課税を選択した場合、上場株式などの売却で損失が生じた場合に、配当金などと相殺できます。また、損益通算をしても損失が残る場合は、翌年以降3年間の繰越控除が可能です。

令和5年分からは所得税と住民税で異なる課税方式を選択できない

令和5年分の所得税の確定申告(令和6年度の住民税)からは、所得税と住民税で別の課税方式を選択できなくなります。

金融商品から得られる所得の課税は、所得税・住民税が一体として設計されてきました。このような事情を踏まえ、不公平感をなくす観点から令和4年度税制改正で課税方式の一致が決定しました。

令和5年分以降、所得税で総合課税を選択した場合は、住民税でも総合課税として申告することになります。また、所得税で申告不要制度を選択すれば、住民税にも申告不要制度が適用されます。

2023年中に受け取る配当金にも影響があるため、改正後の配当所得の所得税・住民税の扱いを整理しておきましょう。

異なる課税方式の選択廃止による影響と注意点

従来は有利な課税方式を、所得税・住民税のそれぞれで選択できました。しかし、改正後は所得税・住民税を単体で考えると、税額や保険料の負担が増える可能性があります。

令和5年分からは、所得税・住民税の両方の負担を踏まえて、課税方式を選択しなくてはなりません。

所得税と住民税で異なる課税方式を選択している方は、影響を受ける可能性が高いです。以下の通り、異なる課税方式の選択廃止による影響を正しく理解しましょう。

課税方式の一致による影響と注意点

● 住民税単体では総合課税を選択すると不利となる
● 課税所得金額が一定以下なら総合課税が有利となる
● 修正申告や更正の請求で課税方式の変更はできない

住民税単体では総合課税を選択すると不利となる

総合課税を選択すれば配当控除を受けられますが、住民税だけで考えるとほかの課税方式よりも税率が高くなります。

配当控除とは、配当所得があるときに、一定の方法で計算した金額の税額控除を受けられる制度です。

区分配当控除率
所得税10%
住民税2.8%
出典:総務省「上場株式の配当等への課税方式の選択」

申告不要制度や申告分離課税を選択した場合、住民税の税率は5%です。一方、総合課税を選択したときの住民税の税率は10%であり、配当控除2.8%を考慮してもほかの課税方式より高くなります。
10%-2.8%(配当控除)=7.2%
また、所得税で総合課税を選択して確定申告すると、住民税でも申告することになり、当該所得が合計所得金額に算入されます。合計所得金額に算入されると、所得控除の適用や税金・保険料の算定などに影響する可能性があります。

合計所得金額への参入による影響

● 扶養控除や配偶者控除の適用
● 住民税の非課税判定
● 国民健康保険税や後期高齢者医療保険料、介護保険料などの保険料算定

課税所得金額が一定以下なら総合課税が有利となる

課税所得金額が695万円未満の方は、総合課税を選択すればほかの課税方式よりも税率が低くなります。

申告分離課税・申告不要制度の所得税率は15%、総合課税は累進税率です。

課税所得金額税率控除額
1,000 ~ 1,949,000円5%0円
1,950,000 ~ 3,299,000円10%97,500円
3,300,000 ~ 6,949,000円20%427,500円
6,950,000 ~ 8,999,000円23%636,000円
9,000,000 ~ 17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000 ~ 39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円 ~45%4,796,000円
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」

所得税だけで考えると、課税所得金額が900万円未満の場合、「所得税率23%-配当控除10%=13%」となります。そのため、総合課税を選択すると有利です。

しかし、住民税だけで見た場合、総合課税を選択すると税率が高くなります。

所得税と住民税の両方で考えると、総合課税を選択したときの税率が低くなるのは、課税所得金額が695万円未満の場合です。

区分計算式税率
所得税税率20%-配当控除10%10%
住民税税率10%-配当控除2.8%7.2%
合計-17.2%
出典:総務省「上場株式の配当等への課税方式の選択」

課税所得金額が695万円の場合、総合課税を選択したときの税率は17.2%です。したがって、申告しない場合の税率20%(所得税15%+住民税5%)より低くなります。

修正申告で課税方式の変更はできない

所得税の確定申告でいったん課税方式を選択すると、その後修正申告や更正の請求などでの変更はできません。

したがって、所得税と住民税をあわせてどの課税方式が有利なのかを慎重に検討する必要があります。

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まとめ

上場株式等の配当所得等について、従来は所得税と住民税で異なる課税方式が選択できました。しかし、令和5年分の確定申告(令和6年度の住民税)からは、所得税と住民税で同じ課税方式が適用されます。

今後は、所得税・住民税の両方の負担を踏まえて課税方式を選択しなくてはなりません。

税額や保険料の負担が増える可能性があるため、3つの課税方式の違い、所得税・住民税の課税方式の一致による影響を正しく理解しましょう。

よくある質問

住民税申告不要制度はいつから廃止?

令和5年分の所得税の確定申告(令和6年度の住民税)から、所得税と住民税の課税方式が一致されます。

所得税と住民税で異なる課税方式について詳しく知りたい方は「令和5年分からは所得税と住民税で異なる課税方式を選択できない」をご覧ください。

課税方式の統一による影響と注意点は?

課税方式の統一による影響と注意点は、以下の通りです。

課税方式の統一による影響と注意点

● 住民税単体では総合課税を選択すると不利になる
● 課税所得金額が一定以下なら総合課税が有利となる
● 修正申告や更正の請求で課税方式の変更はできない
課税方式の統一による影響と注意点を詳しく知りたい方は「異なる課税方式の選択廃止による影響と注意点」をご覧ください。

監修 安田亮(やすだ りょう) 公認会計士・税理士・1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮