監修 内山 貴博 1級FP技能士・CFP

競馬は、騎手や競走馬を応援したり、レース結果を予想したりしながら馬券を購入して楽しむものです。
予想が的中すれば、払戻金を受け取れます。ただし、競馬の払戻金は一時所得(または雑所得)に区分されるため、利益が一定額を超えると確定申告をして税金を納めなければなりません。
納税義務があるにもかかわらず確定申告をしなかった場合、重い追徴課税の対象となる可能性があります。本記事では、競馬の払戻金における所得区分、税金の計算方法、確定申告が必要となる金額について詳しく解説します。
目次
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競馬の利益に税金がかかる?
一般的に、競馬で得た払戻金は「一時所得」に区分され、所得金額によっては税金がかかります。
最高裁判所の判例により、馬券購入の期間や頻度などを考慮して、「雑所得」に区分されるケースもあるため、所得区分を踏まえて、正しく税金を計算する必要があります。
一時所得と雑所得の違いは、以下の通りです。
競馬で税金がかかる場合
- 一時所得:営利目的の継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務・役務の対価としての性質や資産譲渡の対価としての性質を有しない一時の所得
- 雑所得:ほかの所得区分(利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得)に該当しない所得
出典:国税庁「No.1490 一時所得」
出典:国税庁「No.1500 雑所得」
以下、競馬で得た払戻金が「一時所得」および「雑所得」として扱われる場合の計算方法を説明します。
一時所得の税金計算方法
一時所得とは、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得」です。
一時所得の代表例は、懸賞や福引の賞金品・生命保険の一時金・損害保険の満期返戻金などが挙げられます。競馬の払戻金も、基本的には一時所得として扱われます。
一時所得の金額の算出方法は以下です。
一時所得の金額 = 総収入金額 − 必要経費 − 特別控除額(最高50万円)
一時所得における必要経費とは、その収入を得るために直接支出した費用を指します。競馬の払戻金の場合、当たり馬券の購入費用のみが必要経費として認められ、外れ馬券の購入費用は含まれません。
さらに、「一時所得の金額 × 1/2」で算出した額を、給与所得など、ほかの所得と合算して総所得金額を求め、税額を計算します。
国税庁公式サイトでは、一時所得を計算するためのエクセルファイル「公営競技の払戻金に係る所得の計算書」をダウンロード可能です。開催日・競技場・レース・受取額・投票額を入力することでスムーズに一時所得を計算できるため、ぜひご活用ください。
出典:国税庁「公営競技の払戻金の支払を受けた方へ」
一時所得の税金計算方法
雑所得とは、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得のいずれにも当たらない所得をいいます。代表的な所得は、公的年金や副業などによって生じる所得です。
雑所得の金額の算出方法は、以下です。
雑所得の金額 = 総収入金額 ― 必要経費
雑所得の場合、当たり馬券の購入費用も外れ馬券の購入費用も、必要経費に算入できます。なお、最高裁判所の判例により、競馬による所得が雑所得に区分されるケースもありますが、条件は厳しいです。
競馬によって得た所得の種類に関する判例
2017年12月15日に最高裁判所で、競馬の払戻金を「雑所得」と認める判決が下されました。
出典:最高裁判所「平成28年(行ヒ)第303号 所得税更正処分等取消請求事件 平成29年12月15日 第二小法廷判決」
上記判例では、馬券購入の期間・回数・頻度・そのほかの態様・利益発生の規模などの事情が総合的に考慮されています。
具体的には、独自の条件設定や計算式に基づいた購入パターンにしたがい、年間を通じてほぼ全てのレースの馬券を購入していました。また、年間の収支で利益を得るため多数の馬券を購入していた点などを理由として、「営利を目的とした継続的行為」と判断されました。
この判決では、競馬の払戻金が雑所得と認められたため、外れ馬券の購入費用も必要経費に含まれています。
一方、東京高等裁判所が2016年9月29日に下した判決では、「雑所得ではなく一時所得に該当する」と判断されました。なお、最高裁判所が2017年12月20日に上告棄却したことにより、確定しています。
「年単位で多額の損失が生じている」「利益が出る合理的な購入条件を設定していない」などの点が、雑所得と認められなかった理由です。「営利を目的とした継続的行為」と認められるためのハードルは高いといえます。
出典:国税庁「競馬の馬券の払戻金に係る課税について」
出典:国税庁「「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」
競馬の利益にかかる税金のシミュレーション例
所得区分が「雑所得」と認定されるためのハードルは高く、多くのケースでは「一時所得」に区分されます。以下、競馬で得た所得が「一時所得」に区分される場合の税金の計算方法を解説します。
「払戻金が年間で150万円、当たり馬券の購入額が年間30万円」のケースを想定しましょう。この場合の一時所得額は、上述した計算式に代入すると、下記のように算出されます。
1,500,000円 – 300,000円 - 500,000円(特別控除額)= 700,000円
税額を計算する際は、一時所得額の2分の1に相当する金額(35万円)に、一時所得以外の所得金額を合算して総所得金額を求めてください。そのうえで、各種控除(扶養控除・生命保険料控除など)を差し引いて課税所得額を算出し、税率をかけて所得税額を算出しましょう。
出典:国税庁「No.1490 一時所得」
競馬で勝ったとき確定申告が必要になるのはどんな場合?
競馬で得た払戻金は課税対象ですが、必ずしも確定申告が必要なわけではありません。
一般的な会社員である場合と個人事業主やフリーランスである場合に分けて、確定申告が必要なケースを解説します。
会社員は毎月の給与から源泉徴収され、勤務先で年末調整をしてもらえるため、基本的には自分で確定申告は行いません。
会社員が確定申告しなければならないのは、給与以外の所得が20万円を超える場合です。
したがって、会社員が得た払戻金が「一時所得」の場合、ほかの一時所得(特別控除前)との合計額が90万円を超えない限り申告不要です。また、払戻金が「雑所得」に該当する場合は、必要経費を差し引いた額が20万円以下であれば申告は必要ありません。
ただし、住民税には「20万円以下の申告が不要」というルールはありません。よって20万円以下の所得があり所得税の確定申告をしなかった場合は、お住まいの役所・役場で住民税の申告手続きが必要です。
一方、年間の所得が48万円以上の個人事業主やフリーランスなどは、所得税の確定申告が必要です。確定申告を行う場合は、払戻金の額に関わらず申告を行います。
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競馬で利益を得たときに知っておきたい税金の知識
納税は国民の義務であり、税法に基づいて適切に申告・納税しなければいけません。以下、馬券を買って競馬を楽しむ際に知っておきたい税金に関する知識を紹介します。
競馬で購入した馬券は経費にできるのか
購入した馬券の購入費用を経費にできるかどうかは、所得区分や事業性の有無によって決まります。
一時所得の場合は当たり馬券の購入費用を経費にできますが、外れ馬券の購入費用は経費にできません。一方、雑所得の場合、外れ馬券も含めて、馬券の購入費用を必要経費として計上できます。
一般的な馬券購入者であれば、受け取った払戻金は一時所得として扱われます。懸賞・福引の賞金品など、労働以外で得た偶発的な収入であるためです。
しかし、馬券の購入頻度や期間、継続的に利益を発生しているかなどを考慮した結果、「雑所得」として認められるケースもあります。
競馬で得た利益を申告しないとばれるのか
オンライン購入など、履歴が残る方法で購入した場合は、何らかの形で税務署に知られる可能性があります。
過去に、インターネットの自動購入ソフトウェアで馬券を購入して多額の利益を得た人が、「脱税した」として告発された事例があります。
納税は国民の義務です。申告の必要がある所得を得た場合は、バレるバレないに関わらず、税法に基づいて正しく申告し、納税しなければいけません。
申告漏れがばれるとペナルティがあるのか
確定申告漏れが発覚した場合、下記のペナルティを課せられる可能性があります。
● 無申告加算税
納めるべき税金が発生しているにもかかわらず申告しなかった場合、無申告加算税が課されます。原則、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分には20%を乗じて計算した金額を納めなければなりません。
ただし、自主的に期限後申告を行った場合、無申告加算額は5%まで軽減されます。
● 延滞税
支払うべき税金が期限までに納付されない場合は、原則、法定納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。
通常よりも納める税金が増えてしまわないよう、必ず期限までに申告・納税を実施しましょう。
まとめ
競馬で得た払戻金には、税金がかかる場合があります。
競馬の払戻金の一般的な所得区分は「一時所得」ですが、営利を目的とした継続的行為から得た所得と判断された場合は「雑所得」として認められる可能性もあります。
一時所得に区分される場合は、外れ馬券の購入費用は必要経費として計上できません。しかし、雑所得に区分される場合は、当たり馬券の購入費用に加えて、外れ馬券の購入費用も必要経費として計上可能です。
また、会社員で競馬の払戻金を受け取っている人は、給与以外の所得が20万円を超える場合には確定申告を行わなければなりません。
申告漏れがあると、ペナルティを課せられるケースもあるため、注意が必要です。競馬によって確定申告する必要がある所得を得た場合は、期限までに申告・納税を実施しましょう。
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よくある質問
競馬の利益に税金はかかる?
一般的に、競馬で得た払戻金は「一時所得」に区分され、税金がかかる場合があります。最高裁判所の判例で示された条件を満たせば、「雑所得」に区分される可能性もあります。所得の区分や金額により対応が異なるため、確認が必要です。
詳しくは「競馬の利益に税金がかかる?」をご覧ください。
外れ馬券の購入費用は必要経費として計上できる?
所得区分が「一時所得」の場合、外れ馬券の購入費用は必要経費として計上できません。しかし、「雑所得」の場合は、当たり馬券の購入費用に加えて、外れ馬券の購入費用も必要経費として計上可能です。
詳しくは「競馬で購入した馬券は経費にできるのか」をご覧ください。
監修 内山貴博(うちやま たかひろ) 1級FP技能士・CFP
大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。
