公開日:2023/09/25
監修 大柴 良史 社会保険労務士・CFP
働く女性の数は増加傾向にあるものの、女性役員数は少ないのが現状です。本記事では、女性活躍を推進するために企業が行うべき対応などを解説します。
また役員や管理職として活躍する女性を増やすため、政府が実施するさまざまな取り組みについても紹介します。
女性役員の人数を増やしたいと考えている、企業の経営者や人事労務担当者の人はぜひ参考にしてください。
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目次
諸外国より圧倒的に低い! 日本の女性役員比率
2022年7月末時点の日本の女性役員割合は15.5%、全上場企業役員に占める女性役員の割合は9.1%です。
日本の女性役員数は増加傾向にありますが、諸外国における女性役員割合と比べると、その水準は高いとはいえません。
フランス・イタリア・イギリス・ドイツなどヨーロッパ諸国やアメリカは、日本の倍以上の割合で女性を役員に登用しています。
日本で女性役員が少ない理由
2013年の独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査で、女性役職者が少ない理由として挙げられた上位5つの回答は次の通りです。
女性役職者が少ない理由トップ5
● 採用の時点で女性が少ない● 現時点では、必要な知識や経験、判断力などを有する女性がいない
● 可能性のある女性はいるが、在職年数など満たしていない
● 女性のほとんどが役職者になるまでに退職する
● 能力などの要件を満たしても女性本人が希望しない
なかでも、女性役員数が少ない要因として注目したいのは、「女性の勤続年数の短さ」と「女性本人が希望しない」ことです。
出産前に仕事をしている女性の約60%の女性が第1子出産を機に退職しています。さらに、退職した女性の26.1%が、仕事を辞めた理由として「仕事と育児の両立の難しさ」を挙げています。
出典:厚生労働省「女性の活躍推進が求められる日本社会の背景」
両立が難しい具体的な原因として、「勤務時間があわなかった」や「職場に両立を支援する雰囲気がなかった」と回答する人は少なくありません。
現在、女性役員比率を上げるために行われている取り組み
安倍元総理は成長戦略の策定として、2013年から2014年にかけて経済団体へ下記の要請をしました。
経済団体への要請内容
● 上場企業は役員に1人は女性を登用する● 育児休業等を取得しやすい職場環境を整備する
● 女性登用に向けた目標を設定する
● 女性登用状況などの情報開示を推進する
女性役員登用に関する制度改正
● 有価証券報告書などにおいて、役員の男女別人数および女性比率の記載を義務付ける● 女性活躍推進法において、役員に占める女性の割合などを定める
2030年に上場企業の女性役員比率を30%以上に
政府は「女性版骨太の方針2023」において、プライム市場上場企業を対象とした以下の取り組みを決定しました。
女性版骨太の方針における取り組み目標
● 2030年までに、女性役員比率30%以上を目標とする● 2025年を目処に、女性役員を1名以上選任する
● 上記の目標を達成するための行動計画の策定を推奨する
企業経営を担う女性リーダー研修の充実、リスキリングによる能力向上支援などの取り組み支援も行う方針です。
また、J-Startup(政府と民間が集中支援を行うプログラム)で掲げられた女性起業家の目標割合は20%以上であり、2023年5月時点で8.8%です。
今政府は女性起業家を総合的にサポートし、ロールモデルの創出を目指しています。
女性役員比率を上げるために企業でするべき対応
女性役員の人数を増やすため、企業でするべき主な対応は以下の通りです。
女性役員を増やすために企業がするべき主な対応
● 女性の就業継続をサポートする● 社内の意識改革を行い、人事評価制度などを見直す
● 女性管理職のロールモデルを用意する
女性の就業継続をサポートする
豊富な経験やスキルが求められる管理職に女性を登用するには、女性が長く勤められる環境を用意するのが大切です。
就業継続のサポートとして、次のような内容が挙げられます。
就業継続のサポート
● 子育てと両立できる制度を充実させる● 労働時間を見直す
● やりがいを感じられる仕事を用意する
また長時間の残業が発生していないか、あらためて労働環境を見直すのも重要です。
「時短勤務だから」などという理由で仕事の内容を限定するのは、やりがいやモチベーションの低下につながる可能性があります。本人の意向を尊重しながら、仕事を割り振ることも大切です。
社内の意識改革を行い、人事評価制度などを見直す
女性が活躍する企業を目指すには、「女性は管理職に不向き」といった意識を、根本から変えなければなりません。
以下のような取り組みによって、女性がいきいきと働ける職場を作りましょう。
意識改革のための取り組み
● 社内外において、意識改革のための研修を実施する● 女性管理職の目標人数を設定する
● 能力や役割、成果を軸とした人事制度を導入する
さらに、透明性の高い評価制度へ転換することで、労働意欲のある女性社員に対し将来に向かって安心感を与えられます。その結果、モチベーションの向上や帰属意識の強化につながることが期待できます。
女性管理職のロールモデルを用意する
女性社員が管理職を希望しない理由として、女性で管理職を経験している人が身近にいないことも挙げられます。また「管理職=長時間労働」という実態も多く、子育てや家庭との両立に不安を感じる女性は少なくありません。
管理職に対するネガティブなイメージを取り除くために、社外の女性活躍推進セミナーや交流会に参加する機会を用意しましょう。
女性管理職というロールモデルを身近に感じることは、キャリア開発のための大切な第一歩です。
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まとめ
日本の女性役員割合は、増加傾向にありますが、諸外国に比べるとまだ低い水準です。女性役員が増えない原因として、女性の勤続年数の短さや、管理職へのモチベーションの低さが挙げられます。
女性が意欲的かつ長期的に働ける企業を目指すなら、子育てとの両立支援や人事評価制度の見直しなどを行いましょう。
よくある質問
日本の女性役員比率はどのくらい?
2022年7月末時点の上場企業の女性役員割合は9.1%です。
日本の女性役員比率について知りたい方は、「諸外国より圧倒的に低い!日本の女性役員比率」をご覧ください。
日本の女性役員はなぜ少ない?
「そもそも女性の採用数が少なかった」や「役職者になるまでに退職してしまう」といった理由が挙げられます。
日本の女性役員が少ない原因を知りたい方は、「日本で女性役員が少ない理由」をご覧ください。
監修 大柴 良史(おおしば よしふみ) 社会保険労務士・CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験を活かし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。