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インパクト投資とは?ESG投資との違いや注目されるようになった背景を解説

監修 内山 貴博 1級FP技能士・CFP

インパクト投資とは?ESG投資との違いや注目されるようになった背景を解説

インパクト投資とは、財務的リターンと社会的リターンの両立を目指す投資行動を指します。インパクト投資の概要や、ESG投資との違いを解説します。

近年、「インパクト投資」に注目が集まっており、世界でのインパクト投資の市場規模は年々増えてきました。インパクト投資は、これからの資本主義社会に欠かせない投資です。

投資方法のひとつとしてぜひ参考にしてください。

目次

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インパクト投資とは

インパクト投資とは、財務的リターンと社会的リターンの両立を目指す投資行動を指します。

従来の投資は、「リスク」と「リターン」の2つの面で判定されてきました。一方で、インパクト投資ではリスク・リターンに加えて、「インパクト」の観点からも評価されます。

「インパクト」とは、社会的および環境的変化や効果を意味します。

インパクト投資によって生み出される社会的・環境的な変化や効果は、世界にとってポジティブなものであり、かつ測定可能なものでなければなりません。

さらにインパクト投資は、SDGs実現の観点からも期待されています。

SDGsとは、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称です。2030年までによりよい世界を目指すための国際目標であり、17のゴールと169のターゲットから構成されています。

SDGsの詳細を知りたい方は、「SDGsとは?国際的な取り組みの内容や意味をわかりやすく紹介」をご覧ください。

SDGsの達成のためには世界で年間5兆ドルから7兆ドルが必要とされており、民間の金融機関や企業などからの投資が求められています。インパクト投資は、SDGsに必要な資金を補う手段として注目が集まっています。

出典:知るぽると「投資が社会をよくする?SDGsとESG投資の関係」

インパクト投資には4つの基本構成要素がある

インパクト投資であるか否かは、下記の4つの基本構成要素をもとに判断します。

インパクト投資の基本構成要素

● 意図(Intentionality)
● 財務リターン(Financial Returns)
● 広範なアセットクラス(Range of Asset Classes)
● インパクト測定(Impact Measurement)
まず、投資主体に、ポジティブなインパクトの創出を目指す「意図」があるか否かを見定めます。また投資を通して、インパクトだけでなく財務的なリターンの獲得を目指しているかどうかも、判断する基準のひとつです。

インパクト投資は特定のアセット(資産)に限定されません。株式・債券・融資・リースなど、さまざまな金融取引が対象とされています。

インパクト投資の特徴として、「インパクト測定」があります。「インパクト測定」とは、投資主体が投資活動によって生じた社会的・環境的変化を把握し、価値判断を加える行動です。

なお社会的な効果に関する情報をもとに事業改善や意思決定を行い、インパクトの向上を目指すことを「インパクトマネジメント」といいます。インパクト測定にマネジメントの要素を加えたもので、インパクト投資の「意図」を実現する手段として位置付けられています。

インパクト投資とESG投資の違い

ESG投資は、「従来の財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンス要素も考慮した投資」と定義されています。

インパクト投資とESG投資の違いは、インパクト投資にはインパクト創出の「意図」があり、かつ「インパクト測定」で評価する要件がある点です。

ESG投資は「長期的なリスクの削減」と「企業価値の最大化」を目指しています。一方で、インパクト投資は「特定の社会課題解決」が目的です。

定義目的投資主体の意図インパクト測定・マネジメント
インパクト投資財務的リターンと社会的リターンの両立を目指す投資・特定の社会課題解決あり必須
ESG投資従来の財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンス要素も考慮した投資・長期的なリスクの削減
・企業価値の最大化
なし行わないケースが多い


ただし両者は「財務的リターンと社会的リターンを両立させ、ポジティブな社会的・環境的な変化を生み出すこと」を目指す点は類似しています。

両者を区別するためには、投資主体に「意図」があるか、かつ「インパクト測定・マネジメント」の実施状況の確認が必要です。

ESG投資に関して、詳しくは「ESGとは?SDGsやCSRとの違いや投資の種類を詳しく解説!」で解説しています。

なぜ今インパクト投資が注目されるのか?

インパクト投資に注目が集まる主な理由は、以下の3つです。

インパクト投資に注目が集まる主な理由

● 環境問題への意識変化
● SDGsへの取り組み
● ジェンダー投資への注目の高まり
それぞれ詳しく解説します。

環境問題への意識変化

近年、気候変動および脱炭素社会に向けた対応によって、金融のあり方や投資家たちの意識が変化しています。

気候変動の深刻化によってもたらされるのは、食料生産への影響・紛争の拡大・自然災害の増加です。その結果、企業の事業環境の不安定化につながり、投資利益を損なう可能性があります。

環境問題は、将来的に投資上のリスクになります。気候変動の深刻化が経済に及ぼす影響の大きさに気づき、世界は動き始めました。

そして、気候変動に対応するには多額の資金がかかるため、金融の力が欠かせません。低炭素化・適応関連事業への資金調達のため、投資家に期待される行動も高まっています。

SDGsへの取り組み

SDGsとは、環境問題・貧困・格差などの問題を解決し、よりよい世界を目指すための17のゴールと169のターゲットを指します。

経済的および社会的に広範囲なテーマが対象となる17のゴールがあり、ESG投資だけでは補えない部分を、インパクト投資でカバーすることが期待されています。

SDGsの達成には、年間約5?7兆ドルの資金が必要です。さらに新興国と低所得発展途上国では、2030年には教育や電力、道路など一部分野に2.6兆ドルの追加資金が必要になると試算されています。

出典:知るぽると「投資が社会をよくする?SDGsとESG投資の関係」
出典:Global Steering Group for Impact Investment (GSG) 国内諮問員会「日本におけるインパクト投資の現状と課題 2021年度調査」

SDGs実現のためには民間資金の流入を図る必要があり、インパクト投資への期待が高まっています。

SDGsに関して、詳しくは「SDGsとは?国際的な取り組みの内容や意味をわかりやすく紹介」で解説しています。

ジェンダー投資への注目の高まり

ジェンダー投資とは、女性の地位向上などを積極的に推進することで、事業活動や経済成長のポテンシャル向上を目指す投資行動です。

近年、多くの金融機関や各国政府で、女性の経済的・社会的立場を向上させる支援が積極的に行われています。

たとえば、笹川平和財団が2017年に設定したアジア女性インパクトファンドは、東南アジア地域の女性と女性起業家の支援を目的とした投資です。

ジェンダー投資は、女性の立場の向上だけでなく、移民や障害者など不当な差別を受けることが多い人々への配慮を進めるうえでも効果があるため、大きな「インパクト」として注目が集まっています。

インパクト投資のメリット

インパクト投資の主なメリットは、以下の3つです。

インパクト投資のメリット

● リターンが期待できる
● 社会貢献ができる
● 投資先のテーマが豊富にある
インパクト投資が上手く運用できれば、財務的なリターンだけでなく、ポジティブな社会的・環境的変化、および効果を生み出せます。

また、インパクト投資のアセットクラス(投資先の分類)は、上場株式・債券・融資・クラウドファンディングなどさまざまです。SDGsとの親和性も高いため、種類豊富な投資先の増加が期待できます。

インパクト投資のデメリット

インパクト投資の主なデメリットは、以下の2つです。

インパクト投資のデメリット

● インパクト企業が少ない
● リターンが少ない場合もある
インパクト投資の市場規模は右肩上がりですが、その基盤はまだ十分とはいえません。

プロジェクト発掘の不足や起業家のリテラシー不足も影響し、投資先(インパクト企業)が少ないのが現状です。

また、インパクト投資は、従来の投資と同じく「リスク」があります。必ずしも「リターン」が得られるわけではありません。

インパクト投資のファンドを紹介

インパクト投資を行うファンドを3つ紹介します。

インパクト投資の主なファンド

● ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド(愛称:ポジティブ・チェンジ)
● 世界インパクト投資ファンド(愛称:BetterWorld)
● 日本株インパクト投資ファンド
「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド」では、国や地域、企業規模などに捉われず、長期的に成長が期待できる銘柄を厳選しています。

企業の意思・製品やサービスのインパクト・事業活動の方法の3点から、社会的変化をもたらすかどうかを判断し評価する、独自のインパクト分析を導入している点が特徴です。

「世界インパクト投資ファンド」は、衣食住の確保・生活の質向上・環境問題の3つの投資テーマをメインに、住みよい社会(BetterWorld)を目指すファンドです。

インパクト企業として、中古住宅再生で新たな価値を提供する日本の企業「カチタス」が、組入銘柄に含まれています。

「日本株インパクト投資ファンド」は、国内の社会的課題解決を目指すファンドです。

ライフライン機能の維持改善や家事育児の負担軽減など、持続可能で住みやすい環境作りを目指す「社会的インパクト」に重点を置いています。

出典:MUFG 三菱UFJ国際投信「ベイリー・ギフォード インパクト投資ファンド<愛称:ポジティブ・チェンジ>」
出典:三井住友DSアセットマネジメント「世界インパクト投資ファンド」
出典:りそなアセットマネジメント株式会社「日本株式インパクト投資ファンド」

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まとめ

インパクト投資とは、経済的リターンと社会的リターンを目指す投資活動です。従来の投資とは異なり、環境問題や差別、貧困などの問題の解決を目指し、ポジティブな「インパクト」を創出する「意図」をもっています。

ESG投資の規模拡大やSDGsの推進に伴い、インパクト投資の市場規模も年々増加しています。まだ認知度は低いものの、これからの資本主義社会に欠かせない重要な投資活動となるでしょう。

よくある質問

インパクト投資とは?

インパクト投資とは、財務的リターンと社会的リターンの両立を目指す投資行動です。

インパクト投資の基本的な概要を知りたい方は「インパクト投資とは」をご覧ください。

インパクト投資とESG投資の違いとは?

インパクト投資とESG投資の違いは主に2点です。

● 投資主体の「意図」があるかどうか
● 投資行動の結果を定量的・定性的に評価するかどうか

インパクト投資とESG投資の違いを詳しく知りたい方は、「インパクト投資とESG投資の違い」をご覧ください。

監修 内山貴博(うちやま たかひろ) 1級FP技能士・CFP

大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。

監修者 内山貴博