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出産育児一時金とは?増額されるのはいつから?金額や申請方法をわかりやすく解説

監修 竹国 弘城 1級FP技能士・CFP

出産育児一時金とは?増額されるのはいつから?金額や申請方法をわかりやすく解説

出産育児一時金とは、健康保険から支給される助成金です。本記事では出産育児一時金の支給額や申請方法、いつから増額されるのかを解説します。

出産は原則として保険が適用されず、個人の金銭的負担が重くなる場合があります。個人の負担を少しでも軽くするために支給される助成金が出産育児一時金です。

出産に伴う費用負担や家計への影響を考える際の参考にしてください。

目次

出産育児一時金とは

出産育児一時金とは、出産時に公的医療保険制度から受け取れる一時金で、出産に要する経済的負担を軽減する制度です。

健康保険法等に基づく保険給付として、健康保険や国民健康保険などの被保険者や被扶養者が出産したとき、一定の金額が支給されます。

ケガや病気で入院した場合は、健康保険の適用対象になるため原則3割負担で済みます。しかし通常の出産はケガや病気として扱われないため、基本的に健康保険の適用を受けられません。

健康保険の適用対象外であるため、出産にかかる費用は原則として全額自己負担ですが、出産育児一時金により負担が軽減されます。

出産育児一時金は2023年4月から50万円に増額される

出産育児一時金はこれまで何度か増額されてきましたが、2023年4月にも増額されます。

現在の42万円から8万円増額され、4月以降の出産で受け取れる出産育児一時金は50万円です。

産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産する場合は、現行の40.8万円(※1)から48.8万円に増額されます。

※1令和3年12月31日までの出産の場合は40.4万円

出産育児一時金を受け取る場合、確認しておくべき事項のひとつが、出産育児一時金と出産費用です。

令和3年度の正常分娩費用平均値は473,315円です(※2,3)。

※2出典:厚生労働省「令和4年 出産一時金について」
※3直接支払制度専用請求書を集計したもので、室料差額、産科医療補償制度掛金、その他の費目を除く出産費用の合計額

それに対し、出産育児一時金で支給される金額は以下の通りです。

出産一時金で支給される金額

● 産科医療補償制度に加入している医療機関での出産:500,000円
● 産科医療補償制度に加入していない医療機関での出産の場合:488,000円
正常分娩費用平均値から考えると、出産一時金で出産費用がまかなえると想定できますが、出産する地域や医療機関、分娩方法などによって差が生じます。

また、出産育児一時金で出産費用を全てまかなえるのか、まかなえないのかによって備えも変わってくるでしょう。

次項では、出産費用についての詳細や、出産育児一時金が増額される背景を紹介します。

出産育児一時金が増額される背景

下のグラフは出産費用の平均値の推移を表したグラフです。出産費用が増加傾向にあり、出産する際の費用負担は年々大きくなっています。

出産費用(正常分娩)の推移
出典:厚生労働省「令和4年 出産一時金について」

2021年度の出産費用の平均値(正常分娩のみ)は約47.3万円で、内訳は以下の通りです。

項目金額項目金額
入院料115,776円検査・薬剤料14,419円
分娩料276,927円処置・手当料16,135円
新生児管理保育料50,058円合計473,315円
出典:厚生労働省「令和4年 出産一時金について」

現在の出産育児一時金42万円だけでは、出産時に病院でかかる平均的な費用47.3万円をまかなえません。出産育児一時金を受け取れば負担は軽減できますが、平均すると5万円ほど自己負担している状況です。

2023年4月から出産育児一時金が50万円に増額される背景には、このような状況を改善する意図があります。

増額後の金額50万円は2021年度の出産費用の平均額を上回る額なので、一般的に出産にかかる費用を出産育児一時金でまかなえる計算です。

ただし、上記の出産費用に室料差額は含まれておらず、地域や医療機関ごとの差もあります。50万円を超える出産費用がかかり、出産育児一時金では足りないケースも考えられます。

参考として、2021年度の出産費用の平均額は、もっとも高い東京都では約56.5万円、もっとも低い鳥取県では約35.7万円です(※)。

出典:厚生労働省「令和4年 出産一時金について」

出産育児一時金の対象者

出産育児一時金の支給対象は「妊娠4ヶ月(85日)以上を経過した後の出産」です。早産でも妊娠4ヶ月を過ぎていれば出産育児一時金が支給されます。

死産や流産、人工妊娠中絶(経済的理由による人工妊娠中絶も含む)などで出産に至らなかった場合も、妊娠4ヶ月を過ぎていれば支給対象です。

また支給条件には自然分娩・異常分娩(帝王切開、早産などの正常以外の分娩)による区別はありません。いずれの場合も4ヶ月を過ぎていれば支給を受けられます。

出産育児一時金の申請方法

出産育児一時金の申請方法には3つの申請方法があります。

出産一時金で支給される金額

● 直接支払制度
● 受取代理制度
● 事後申請
どの方法で申請するかによって手続きの流れが変わるため、以下で解説する各申請方法の概要や手続きをよく確認しておきましょう。

直接支払制度を利用して申請するときの手続き方法

出産育児一時金を受け取る権利があるのは被保険者なので、本来は公的医療保険から被保険者に支払われるべきお金です。

しかし、直接支払制度を利用した場合は、公的医療保険から病院に直接出産育児一時金が支払われます。

出産費用が出産育児一時金を超えた場合には、超えた金額のみ病院の窓口で支払います。窓口で出産費用全額を支払ったり、高額な支払いのために現金を用意したりする必要はありません。

申請手続きは、病院から手渡される直接支払制度に関する書類に記入するだけです。病院が被保険者に代わって出産育児一時金の支給申請を公的医療保険に対して行います。

なお、出産費用が出産育児一時金に満たない場合は差額分の支給申請手続きが必要です。

受取代理制度を利用して申請するときの手続き方法

受取代理制度とは、本来なら被保険者が受け取るべき出産育児一時金を病院が被保険者に代わって受け取る制度です。

直接支払制度を導入していない小規模な医療機関などで利用できます。

出産育児一時金を超える額のみ支払う点は直接支払制度と同じですが、直接支払制度と違って受取代理制度では事前の申請手続きが必要です。

受取代理制度を利用できる医療機関は限られるため、利用の可否は出産を予定されている医療機関に確認してください。

事後申請するときの手続き方法

直接支払制度や受取代理制度を利用せず、出産後に自分で手続きをして出産育児一時金を受け取るのが事後申請です。

手続きには直接・受取代理制度を利用していない旨がわかる書類(医療機関との合意書)や、出産費用の内訳が記載された明細書などが必要です。

事後申請では病院の窓口で全額を支払うため、クレジットカードで支払ってポイントが付けば、ポイントの分だけ実質お得になります。ただし、一時的とはいえ出産費用を全額立て替えなければなりません。

クレジットカードの利用限度額をオーバーしないか、そのほかの支払いに支障がでないか、事前に確認しておきましょう。

また、病院がクレジットカード払いに対応していないと、高額な出産費用を現金で払わなくてはなりません。

出産育児一時金に関するポイント

最後に、出産育児一時金に関して知っておくべきポイントをいくつか紹介します。

出産手当金との違い

出産手当金とは、出産のために仕事を休んだとき、給与の支払いがなかった人に支給される手当金です。

出産日以前42日(※)から、出産の翌日以後56日まで支給されます。支給額は月額給与を平均した金額の3分の2です。

※双子以上の多胎出産の場合は出産日以前98日

出産育児一時金では同じ額が一律に支給されますが、出産手当金はその人の給与額によって支給額が変わります。

また出産のために仕事を休み給料が支払われなかった、もしくは給料が出産手当金額よりも少ない期間に支給されます。

【関連記事】産休を取らずに退職したら出産手当金はもらえない?条件と注意点を解説

退職後でも受け取れる場合がある

出産育児一時金の申請先は原則として出産時に加入している公的医療保険ですが、退職後に出産した場合、一定の要件を満たすと在職時の公的医療保険から出産育児一時金を受け取れる場合があります。

出産育児一時金の支給対象になるのは、以下のような一定の条件を満たす場合です。

出産一時金で支給される金額

● 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上被保険者期間がある
● 資格喪失後(退職日の翌日)から6ヶ月以内の出産である など
ただし、現在加入中の健康保険制度と退職前の健康保険制度の両方からは出産育児一時金を受け取れません。その場合はいずれか一方を選択します。

出産育児一時金は税金の計算に含まれない

出産育児一時金は所得税や住民税の計算には含まれず、控除対象配偶者の判定をする際の合計所得金額に含める必要もありません。

たとえば年末調整の対象である給与所得者の場合、給料以外で20万円を超える所得があると確定申告が必要です。

しかし出産育児一時金42万円(2023年4月以降は50万円)を受け取っても、課税対象となる所得には含まれないため、原則確定申告は不要です。

ただし医療費控除の適用を受ける場合は、控除額を計算する際に医療費から受け取った出産育児一時金の金額を差し引きます。

まとめ

出産にはある程度の費用がかかりますが、出産育児一時金を受け取れば負担を軽減できます。

出産育児一時金の支給対象は妊娠4ヶ月(85日)以上の出産で、支給額は2023年3月までは42万円、2023年4月以降は8万円増額され50万円です。

出産育児一時金の申請方法には直接支払制度・受取代理制度・事後申請の3つの方法があります。出産前にどの方法が利用できるかを医療機関に確認し、申請する方法を決めておきましょう。

直接支払制度なら出産育児一時金が病院に直接支払われるため、出産費用全額をその場で払う必要はありません。

直接支払制度に関する書類に記入すれば申請手続きは完了し、病院が出産育児一時金の支給申請をしてくれます。

出産では何かと費用がかかります。出産育児一時金や出産手当金など受け取る金額と出産に伴ってかかる費用の金額をあらかじめ計算しましょう。家計のやりくりに支障はでないか事前の確認が大切です。

よくある質問

出産育児一時金はいつから増額される?

出産育児一時金は2023年4月から増額されます。2023年3月までは42万円ですが、増額後は50万円です。

出産育児一時金の増額について詳しく知りたい方は「出産育児一時金は2023年4月から50万円に増額される」をご覧ください。

出産育児一時金の申請方法は?

出産育児一時金の申請方法には直接支払制度・受取代理制度・事後申請の3つの方法があります。

出産育児一時金の申請方法を詳しく知りたい方は「出産育児一時金の申請方法」をご覧ください。

監修 竹国弘城(たけくに ひろき) 1級FP技能士・CFP

RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。

監修者 竹国弘城