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ストレスチェック義務化が全事業場に拡大|50人未満の中小企業が今から準備すべきこと

ストレスチェックとは、労働安全衛生法第66条の10に基づき、事業者が常時使用する労働者に対して年1回実施する、心理的な負担の程度を把握するための検査です。

2015年12月の制度開始以来、常時50人以上の事業場に義務付けられていましたが、2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、従業員数にかかわらず全ての事業場に義務化が拡大されます。

本記事では、改正の内容と施行スケジュール、50人未満の事業場が直面する課題と解決策、実施手順、外部リソースの活用方法を解説します。

目次

ストレスチェック制度の概要と改正内容

ストレスチェックは「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域で労働者の心理的負担を把握する検査で、標準は職業性ストレス簡易調査票(57項目)です。

実施者は医師・保健師のほか、所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師に限定され、人事権を持つ従業員は就けません。

出典:厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」

なぜ義務化が拡大されるのか

改正の背景には、メンタルヘルス不調による休職・離職の増加があります。

厚生労働省の調査ではメンタルヘルス不調で連続1ヶ月以上休業した労働者がいる事業場の割合が年々上昇しており、努力義務にとどまっていた50人未満の事業場では実施率が低い状態が続いていました。

全事業場でメンタルヘルスの一次予防の基盤を整備するのが今回の義務化の狙いです。

改正のポイント

改正の要点は以下の3点です。

改正の主要ポイント

  • 義務化の対象拡大:従来は50人以上の事業場のみが義務対象だったが、改正後は従業員数にかかわらず全事業場に拡大される
  • 施行スケジュール:施行日は公布後3年以内に政令で定める日(最長2028年5月)。政令による前倒し施行の可能性もある
  • 産業医・衛生委員会の設置は対象外:50人未満の事業場では従来どおり産業医や衛生委員会の設置義務は課されず、ストレスチェックの義務だけが追加される

施行日の確定を待つのではなく、早期に準備を開始する方が現実的です。

出典:厚生労働省「労働安全衛生法の改正について」
義務項目50人以上50人未満(改正前)50人未満(改正後)
ストレスチェック義務努力義務義務
産業医の選任義務不要不要(変更なし)
衛生委員会の設置義務不要不要(変更なし)

50人未満の事業場が直面する課題と解決策

50人未満の事業場にとって最大の課題は、産業医や衛生委員会がない中でストレスチェック実施体制を構築することです。

実施者は医師・保健師等に限定されており、自社内にいなければ外部から確保する必要があり、意見聴取や実施規程の策定も50人以上の事業場とは異なる進め方が求められます。

実施者の確保方法

実施者(医師・保健師等)の確保方法は、地域産業保健センターの活用と外部EAP(従業員支援プログラム)機関への委託の2つです。

地域産業保健センターは50人未満の事業場向けに面接指導や保健指導を無料で提供しており、管轄の労働基準監督署または労働者健康安全機構のサイトで最寄りセンターを検索できます。

外部EAP機関の中には、ストレスチェックの実施から結果集計・面接指導の手配まで一括で受託する事業者もあります。

実施規程の作成

衛生委員会がない50人未満の事業場では、関係労働者の意見を聴く機会を設けたうえで、以下の事項を実施規程として文書化します。

実施規程に記載する事項

  • ストレスチェックの実施時期
  • 使用する調査票と高ストレス者の判定基準
  • 検査結果の保存方法と保存期間
  • 面接指導の申出方法と実施体制

厚生労働省が実施規程の例を公開しているため、これをベースに自社の実態に合わせてカスタマイズすると効率的です。

出典:厚生労働省「ストレスチェック制度実施規程(例)」

ストレスチェックの実施手順

実施手順は、準備段階・実施段階・事後対応の3段階に分かれます。

準備段階

実施規程を作成し、実施者と実施事務従事者を指定します。実施事務従事者は調査票の回収やデータ入力等の事務作業を担いますが、人事権を持つ従業員は就けません。

使用する調査票と高ストレス者の判定基準を決め、労働者には目的・結果の取扱い・本人同意なく事業者へ個々の結果が開示されない点を事前に説明します。

実施・結果通知・事後対応

検査結果は実施者から労働者本人に直接通知し、事業者は本人同意がない限り個々の結果を取得できません。この個人情報保護ルールが制度の根幹です。

高ストレスと判定された労働者から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務を負い、50人未満の事業場では地域産業保健センターへの依頼も可能です。面接指導の結果に基づき労働時間短縮や配置転換等の就業上の措置が必要と医師が判断した場合は、事業者はその意見を踏まえて対応します。

面接指導の結果は5年間保存する義務があり、面接指導の申出を理由とした解雇・雇い止め・退職勧奨等の不利益取扱いは法律で禁止されています。

50人未満の事業場では部署単位の集計が10人未満になりやすく、集団分析の結果を事業者へ提供する際は個人特定の回避が必要で、原則として10人未満の集団の集計結果は提供されません。

出典:厚生労働省「ストレスチェック制度に関する法令」

外部委託先の選び方と費用

50人未満の事業場の外部委託先は、無料の地域産業保健センターと有料の外部EAP機関の2つに大別され、コストと提供範囲に応じて使い分けます。

地域産業保健センターの無料サービス

地域産業保健センターは独立行政法人労働者健康安全機構が運営する公的機関で、50人未満の事業場向けに面接指導・保健指導を無料で提供しています。最寄りのセンターは管轄の労働基準監督署または労働者健康安全機構のサイトで確認できます。

出典:独立行政法人労働者健康安全機構「地域産業保健センターのご案内」

外部EAP機関への委託

EAP機関にはストレスチェックの実施から結果集計・面接指導の手配まで一括で委託でき、費用はWeb受検のみで1人当たり年間数百円程度、面接指導やカウンセリングを含む包括プランでは数千円程度が目安です。

料金体系はサービス事業者ごとに異なるため、複数社から見積もりを取得して比較します。委託先選定の確認ポイントは以下のとおりです。

委託先選定の確認ポイント

  • 実施者として医師・保健師等が確保されているか
  • プライバシーマーク等の個人情報保護体制が整備されているか
  • 高ストレス者への面接指導体制があるか
  • 結果の保存期間と保存方法が法定要件を満たしているか

freee人事労務での従業員情報管理

freee人事労務はストレスチェックの検査自体を実施する機能は持ちませんが、実施の前後で必要となる従業員情報管理を効率化する基盤として活用できます。

氏名・所属・雇用形態・所定労働時間等の従業員情報を活用すれば対象者リストを効率的に作成できます。実施対象は常時使用する労働者で、パートタイム労働者は契約期間1年以上かつ所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上が判定基準です。

勤怠管理機能で時間外労働の時間数を把握すれば、長時間労働による高ストレス状態の予兆確認にも活用できます。

検査自体は外部EAP機関やオンラインサービスに委託し、freee人事労務は対象者管理・勤怠モニタリング・事後の就業措置記録の基盤として使い分けます。面接指導の結果や就業上の措置の記録は5年間の保存義務があるため、一元管理の仕組みを整えておきます。

まとめ

改正労働安全衛生法により、ストレスチェックの実施義務が全事業場に拡大されます。施行は公布後3年以内(最長2028年5月)ですが、体制構築には時間がかかるため早期の準備着手が現実的です。

50人未満の事業場は地域産業保健センターの無料サービスや外部EAP機関を活用することで、産業医がいなくても実施できます。体制構築には実施者の確保から実施規程の策定まで一定の期間が必要です。

準備は以下の3ステップで始められます。

準備の3ステップ

  • 地域産業保健センターまたはEAP機関に相談して実施者を確保する
  • 厚生労働省の実施規程の例をベースに自社の実施規程を作成する
  • 人事権を持たない従業員から実施事務従事者を指定する

freee人事労務で従業員情報を一元管理しておけば、対象者リストの作成や勤怠状況の確認といった関連業務を効率化できます。施行日が政令で確定した際には、最新の情報を厚生労働省の公式サイトで確認する必要があります。

よくある質問

ストレスチェックを実施しなかった場合、罰則はありますか?

改正法の時点で未実施への直接的な罰則は明記されていません。

ただし未実施でメンタルヘルス不調が発生した場合は、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)として損害賠償責任を問われるリスクがあり、未実施企業が安全配慮義務違反を問われた裁判例も存在します。

50人以上の事業場では労働基準監督署への実施報告義務があり、50人未満の事業場に報告義務が課されるかは今後の政省令で定められます。

詳しくは「ストレスチェック制度の概要と改正内容」で解説しています。

パートタイム労働者や派遣労働者も対象ですか?

パートタイム労働者は契約期間1年以上かつ1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば対象で、短時間勤務でも要件を満たせば実施義務があります。

派遣労働者の実施義務は派遣元にありますが、面接指導後の勤務時間変更等の就業上の措置については派遣先にも協力義務があります。

詳しくは「ストレスチェックの実施手順」で解説しています。

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