監修 竹国 弘城 1級FP技能士・CFP
引越しワンストップサービスとは、政府主導で進められているマイナンバーカードを使ったオンラインによる引越し手続きです。
引越しの際の手続きは多岐にわたります。役所への転出届や転入届、子どもの転校手続き、電気やガスなどインフラ関係の解除と契約などです。そのため時間や手間がかかるうえ、手続きもれのリスクもあります。
新サービスにより、こうした現状が解消されると期待されます。本記事では、引越しワンストップサービスの概要やメリットなどをわかりやすく解説します。
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目次
引越しワンストップサービスとは
引越しワンストップサービスとは、マイナンバーカードを利用して、オンラインで手続きを行える制度です。自治体での転出・転入の手続きや、電気・ガス・水道などライフラインの手続きも含め、引越しで必要になる手続き一括で行えます。
引越しにはさまざまな手続きが必要で、新しい住所などの情報を個別に届け出なければなりません。手続きにかかる手間や時間は大きく、また必要な手続きも人によって異なるため、手続きもれが生じやすいです。
政府主導で進められている引越しワンストップサービスは、行政と民間企業が互いに情報を共有し合い、引越しの際の負担や手続きもれリスクの軽減が期待されます。
2023年2月から全国の自治体でサービス開始
引越しワンストップサービスに関する実証実験が始まったのは2019年です。サービス実施に向けて検討すべき課題や留意点、実現するサービスの具体像を、国と民間が一体となって議論してきました。
2020年からはサービスの普及促進に向けて、民間事業者などの協力のもと、実サービス検証を開始しています。
2021年にはマイナカード取得者専用のポータルサイト「マイナポータル」を使ったオンラインによる転出・転入手続きの実務上の課題の把握と検討が、全国の協力自治体により行われています。
そして2023年2月6日より、全国すべての自治体にて、マイナポータルを使った転出届と転入予約が導入されました。さらに今後、民間の引越しポータルサイト経由で引越しに関わるすべての手続きが行えるよう、官民の連携によるサービス実施が予定されています。
引越しワンストップサービスの利用対象者
引越しワンストップサービスは、日本国内で引越しをする本人が対象です。
単身での引越しのほか、同一世帯の人(同じ住民票に記載される人)が同じ転居先へ移るときはまとめての手続きが可能です。また、同一世帯に含まれる本人以外の人、たとえば子どもの引越しでも利用できます。
項目 | 説明 |
利用対象者 | 日本国内で引越しをする本人 |
本人以外に利用可能なケース | ・同一世帯の人がまとめて転居先へ移るとき ・同一世帯に含まれる本人以外の人の引越し |
マイナンバーカード専用のポータルサイト、マイナポータルでの申請が必要なため、サービス利用には次の条件を満たすマイナンバーカードの保有が必要です。
引越しワンストップの利用に必要なマイナカードの条件
● マイナンバーカードの記載事項が最新情報である● 電子証明書が有効なマイナンバーカードを持っている
引越しワンストップサービスでできること
2023年2月から始まった引越しワンストップサービスでは、マイナポータルを経由した自治体に対する転出届と転入予約ができるようになりました。
引越しをする人、つまりサービス利用者は、マイナポータルを通じて全国の市区町村でオンラインによる転出届の提出が可能です。また、転出先の市区町村に対して、役所への来庁予定日を通知する転入予約も行えます。
転出元の市区町村は住民からマイナポータルで転出届が提出されると、届け出の受理と同時に、転入先の市区町村へ転出情報を通知できます。転入先の市区町村は通知された情報と、サービス利用者からのマイナポータルを通じた来庁予定(転入予約)から転入届を受け入れる準備ができます。
引越しワンストップサービスのメリット
これから先、さらなるサービスの拡大が予定されている引越しワンストップサービスですが、すでに多くのメリットがあります。
引越しワンストップのメリット
● 転出届の届出をする際に役所への来庁が不要● 転入届を提出する際の来庁が予約可能
● スムーズな対応や混雑緩和
転入時には本人確認やマイナンバーカードの住所変更があるため、役所に行かなければなりません。しかし、転入予約により必要な手続きや持ち物を事前に確認できるため、手続きもれや持ち物忘れを防止できます。
行政側にとっては、窓口の混雑緩和が期待されます。オンラインで転出届や転入予約を受け取る市区町村にとっても、サービス利用者の来庁日や必要な手続きを事前に把握できるため、窓口対応がスムーズに行えると期待されます。
引越しワンストップサービス手続きの準備と流れ
引越しワンストップサービスはマイナポータルを使ったオンライン手続きです。実際にどのような準備と手続きの流れになるのか、具体的にお伝えします。
事前に準備しておくこと
引越しワンストップサービスは、政府の管理するマイナポータル上での手続きが必要です。先述の通り、マイナポータルを利用するにはマイナンバーカードの保有が前提ですが、ほかにも次のような準備をしておきましょう。
● 本人のマイナンバーカード
● マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォン(またはパソコンとICカードリーダライタ)
● 引越し先の新しい住所
引越しワンストップサービスでは、マイナンバーカード利用時に利用者証明用パスワード(数字4文字)、署名用電子証明書パスワード(英数字6~16文字)を使います。パスワード忘れ、有効期限切れに注意しましょう。
また、万一マイナンバーカードのパスワードを忘れてしまった場合は、住民票がある市区町村の窓口でパスワードの再設定手続きをしましょう。
署名用電子証明書パスワードは、利用者証明用パスワードがわかる場合、スマートフォンとコンビニの端末で再設定できます。
マイナポータルを初めて利用するなら、スマートフォンまたはパソコンへのマイナポータルのインストールも必要です。
引越しワンストップサービスは、転居先が決まってから利用できるサービスです。引越し先の新しい住所の入力が必要なので、すぐに入力できるよう手元に用意しておきましょう。また、日中の確認先として電話番号を入力する項目もあります。
マイナポータル上での手続きをしなかった場合は引越しワンストップサービスの利用はできません。従来通り役所で転出届の提出などの手続きを行う必要があります。
手続きの流れ
引越しワンストップサービスは、マイナポータルで手続きします。マイナポータルのトップ画面から専用ページに入ると入力項目が案内されるので、順番に入力していきます。
マイナポータルでの引越しワンストップサービス手順
1. マイナポータルにログイン後、トップページなどから「引越しの手続」を選択2. 「申請をはじめる」ボタンを押す
3. 署名用電子証明書の有効期限とパスワードを確認
4. 引っ越す日を記入し、マイナンバーカードから現住所と氏名を読み取る
5. 電話番号、(未登録の場合は)メールアドレスを入力
6. 新しい住所を入力して、転居先の自治体を選択
7. 同一世帯のなかから新住所に引っ越す人、これまでの住所に残る人を入力
8. 転居先の自治体への来庁予定日を入力
9. 必要となる関連手続き情報を選択
10. これまでの入力内容を確認して申請
11. 行政機関に対する個人情報の取り扱いに同意
12. マイナンバーカードを読み取り、電子署名を付与して入力内容を送信
13. これまでの自治体への返却物、転居先の自治体への持ち物などを確認
まとめ
引越しワンストップサービスは、2023年2月に本格的に稼働した新しい行政サービスです。引越しに伴う手続きをオンラインで一括して行えるため、これまでより時間や手間を減らせます。今後、民間企業との連携が進めば、さらに便利になるでしょう。
ただし、利用するにはマイナンバーカードとマイナポータルの準備が必要など、いくつかの注意点があります。とくにマイナンバーカードは暗証番号も必要になるので、最新の状態を把握できているか確認しておきましょう。
よくある質問
引越しワンストップサービスとは
引越しに関するさまざまな手続きをオンラインで一括して行える政府主導のサービスです。今後、民間企業の協力のもと、幅広い手続きに対応する予定です。
引越しワンストップサービスを詳しく知りたい方は「引越しワンストップサービスとは」をご覧ください。
引越しワンストップサービスでは何ができる?
2023年2月に始まったサービスでは、マイナポータルを通じたオンラインによる転出届・来庁予定の連絡(転入予約)ができます。手続きにはマイナンバーカードが必要です。
引越しワンストップサービスを詳しく知りたい方は「引越しワンストップサービスでできること」をご覧ください。
監修 竹国弘城(たけくに ひろき) 1級FP技能士・CFP
RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。