人事労務の基礎知識

社会保険料の計算方法まとめ!算出方法や賞与についてもわかりやすく解説

社会保険料の計算方法まとめ!算出方法や賞与についてもわかりやすく解説

社会保険料とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の5つの社会保険にかかる保険料のことです。保険の種類や保険者、収入、年齢などによって税率(%)が異なります。

本記事では、社会保険料の計算方法・加入条件・計算時の注意点などについて、わかりやすく解説します。

目次

人事労務のすべてをfreeeひとつでシンプルに

freee人事労務は、入社手続きで取得した従業員ごとの保険料・税金と、打刻情報とを紐づけて自動で給与計算し、給与明細も自動で発行します!

ぜひ一度ご覧ください!

社会保険料とは

そもそも社会保険料とは、5つの社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険)にかかる保険料のことを意味します。

もう少し細かく分類すると、健康保険料と介護保険料、厚生年金保険料をまとめて社会保険料、雇用保険料と労災保険料をまとめて労働保険料と呼ぶのが一般的です。社会保険料の種類や改定されるタイミングについての詳細は、別記事「社会保険料とは?改定のタイミングなどをわかりやすく解説」を確認してください。

【関連記事】
社会保険と雇用保険の違いは?内容や加入条件の違いについて解説

社会保険の計算に必要な標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、従業員の給与などの平均額を等級に分類したものです。また、健康保険料と介護保険料は1〜50の等級で分類され、厚生年金保険料は1〜32等級で分類されます。

毎年4〜6月の賃金をベースに決定し、毎年9月に改定が行われ、原則1年間同じ標準報酬月額で保険料を計算します。標準報酬月額によって、社会保険料の計算を簡単にすることができるのです。

出典:全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?」

標準報酬月額についての詳細は別記事「標準報酬月額とは?決め方や変更方法、計算方法をわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。

社会保険料の計算方法

社会保険料の中で、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料は、企業と折半です。納付する社会保険料は、毎月の給与から天引きされ、社会保険料控除となります。なお、社会保険料の計算には、上述した「標準報酬月額」が使用されます。

ここでは、企業と折半するかたちで納付する、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の計算方法について解説します。雇用保険料の計算方法についての詳細は別記事「雇用保険料とは?雇用保険料の計算方法や対象について解説」をあわせてご確認ください。

健康保険料の計算方法

健康保険料は、以下の計算式で算出します。

健康保険料の計算式

  • 健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率
  • 従業員が負担する健康保険料 = 健康保険料 ÷ 2

従業員が負担する健康保険料は企業と折半になるため、「健康保険料 ÷ 2」で計算することで、従業員の負担分を算出します。

健康保険には「健康保険組合」と「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の2種類があり、健康保険組合は厚生労働大臣の許可を受けて設立・運営しています。

なお、健康保険組合を設立・運営するのは、常時700人以上の従業員がいる事業所や、同種・同業の事業所が集まり3,000人以上の従業員がいる複数の事業所です。

一方、協会けんぽは、国の運営する健康保険事業を引き継ぐかたちで設立された公法人を指します。加盟対象は健康保険組合を設立していない事業所で、中小企業がメインで加盟しています。

健康保険料の計算例

保険料は、協会けんぽも健康保険組合も標準報酬月額に応じて変動します。協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに決められていますが、健康保険組合の場合は、各組合の規約ごとに保険料率が異なります。

以下では、協会けんぽの健康保険料の計算例を解説します。自分で保険料を計算する場合は、協会けんぽのホームページから該当する都道府県の保険料率を確認してください。

出典:全国健康保険協会「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」

例:標準報酬月額30万円、東京都で協会けんぽに加入している場合

保険料率:9.98%
300,000(円) × 9.98% ÷ 2 = 14,970(円)

出典:全国健康保険協会「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額(東京都)」

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料も健康保険料と同様に、標準報酬月額から保険料率を掛けることで算出できます。

厚生年金保険料の計算式

厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 18.300%
従業員が負担する厚生年金保険料 = 厚生年金保険料 ÷ 2

※2017年9月(10月納付分)以降の厚生年金保険料率は、18.300%で固定されました。

厚生年金保険料の計算例

具体的な厚生年金保険料の計算例は、以下のとおりです。

例:標準報酬月額30万円、協会けんぽに加入している場合

保険料率:18.300%
300,000(円) × 18.300% ÷ 2 = 27,450(円)

出典:全国健康保険協会「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額(東京都)」

厚生年金保険料についての詳細は別記事「厚生年金とは?総まとめ!制度と計算方法を分かりやすく解説」をあわせてご確認ください。

介護保険料の計算方法

介護保険料は、以下の計算式で求めます。

介護保険料の計算式

介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率
従業員が負担する介護保険料 = 介護保険料 ÷ 2

介護保険料率は毎年改定されて、2024年4月分(4月30日納付期限分)からの介護保険料率は全国一律で1.60%です。

なお、介護保険料の納付が発生するのは、40歳以上の従業員のみです。それに伴い、従業員本人の介護保険への加入も40歳からとなります。

40〜64歳(第2号被保険者)は、健康保険料に上乗せする形で介護保険料も納めます。65歳以上(第1号被保険者)は、自身が暮らす市区町村へ介護保険料を納めなければなりません。これは会社勤めであっても必要となります。

介護保険料の計算例

介護保険料の計算例は、以下のとおりです。

保険料率:1.60%
300,000(円) × 1.60% ÷ 2 = 2,400(円)

出典:全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」

2024年10月から社会保険料の加入条件が拡大

短時間労働者における社会保険の加入対象は、2024年9月末まで厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業で週20時間以上勤務する人とされていました。

しかし、2022年6月に公布された年金制度改正法によって、健康保険法や厚生年金保険法などが改正されました。これにより、2024年10月から加入要件が拡大され、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業に勤務し要件を満たす短時間労働者は、社会保険加入が義務付けられます。

なお厚生年金保険の被保険者とは、全従業員を指すのではなく、特定4分の3未満短時間労働者を除いた、厚生年金保険が適用となる対象者を指しています。

また、社会保険料の加入が義務付けられる企業のことを「特定適用事業所」といいます。特定適用事業所で勤務する短時間労働者で、社会保険加入が義務付けられる要件は以下のとおりです。

短時間労働者の社会保険加入対象条件

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

出典:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」

「週の所定労働時間が20時間以上」とは

週の所定労働時間が20時間以上となる従業員は、「短時間労働者の社会保険加入対象条件」を満たす可能性があります。ただし、週の所定労働時間とは、就業規則や個別の雇用契約によって定められた労働時間で判断します。つまり、従業員が実際に働いた時間ではなく、あくまでも契約上の労働時間が基準となります。

例えば、週の所定労働時間を20時間未満で契約している従業員が時間外労働により、実労働時間が20時間を超えたとしても、「短時間労働者の社会保険加入対象条件」を満たすことにはなりません。

なお、所定労働時間が週以外の単位で定められている場合は、1年を52週として、それぞれの所定労働時間から1週間単位での時間を算出します。また、所定労働時間が特定の期間によって変動する場合は、その特定の期間を除いた通常の期間の所定労働時間をもとに、週所定労働時間が20時間以上となるかを判断します。

1ヶ月単位で定められている場合の計算式

週の所定労働時間 = 1ヶ月の所定労働時間 ÷(52 ÷ 12)
※特定の月に例外的な長短がある場合は除いて算出

1年単位で定められている場合の計算式

週の所定労働時間 = 1年間の所定労働時間 ÷ 52

ただし注意点として、週の所定労働時間が20時間未満の契約であっても、時間外労働を含む実労働時間が2ヶ月を連続して週20時間以上となり、その状況が今後も続くと見込まれる場合には、3ヶ月目から社会保険に加入すると覚えておきましょう。そのため、雇用契約上は週20時間未満であっても、20時間以上の勤務が常態化している場合は、社会保険の加入対象となる可能性があります。

「所定内賃金が月額8.8万円以上」とは

所定内賃金とは、週給・日給・時給を月額換算したものに、各諸手当などを含めた賃金を指します。特定4分の3未満の短時間労働者に多い時給制でたとえると、所定労働時間数に時給を乗じた金額に各諸手当を加え、8.8万円以上になる場合には「短時間労働者の社会保険加入対象条件」を満たすといえます。

ただし、所定内賃金は下記の賃金を除いて計算します。

所定内賃金の除外対象

  • 臨時に支払われる賃金および1月を超える期間ごとに支払われる賃金
    (例:結婚手当、賞与等)
  • 時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金
    (例:割増賃金等)
  • 最低賃金法で算入しないことを定める賃金
    (例:精皆勤手当、通勤手当、家族手当)

出典:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」

「2ヶ月を超える雇用の見込みがある」とは

特定4分の3未満短時間労働者の契約期間が2ヶ月を超える期間となっている場合、「短時間労働者の社会保険加入対象条件」を満たすことになります。2024年10月の法改正により、従来の適用要件である「勤務期間1年以上」が撤廃され、一般の被保険者と同じ勤務期間要件となりました。

また、契約期間が2ヶ月以下であっても、以下のいずれかに該当する場合、雇用期間の当初から加入対象となります。

雇用期間が2ヶ月以内であっても適用される場合

  • 就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、「更新される場合がある旨」が明示されている場合
  • 同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合

出典:日本年金機構「厚生年金保険・健康保険の被保険者資格の勤務期間要件の取扱いが変更になります。」

ただし、契約更新をしない旨について書面による合意がある場合はその限りではないため、注意してください。

「学生ではない」とは

「短時間労働者の社会保険加入対象条件」を満たすには、学生ではないことが要件のひとつです。ここでいう学生とは、高等学校、大学、短期大学、専門学校(修業年限が1年以上の課程に限る)など、いわゆる全日制に在学する学生を指します。夜間に授業が行われる定時制や通信制は含まれません。

ただし学生であっても、以下の条件に当てはまる方は、社会保険の加入対象となります。

加入対象者

  • 卒業見込証明書を有する方で、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の方
  • 休学中の方
  • 大学の夜間学部および高等学校の夜間等の定時制の課程の方など

出典:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」

このように、休学中や、卒業後に同事業所へ就職予定がある場合は、在学中でも「短時間労働者の社会保険加入対象条件」を満たす可能性があります。

社会保険料を計算する上での注意点

社会保険料の計算にあたって注意すべき点は、以下の2つです。

  • 社会保険料率の改定
  • 賞与も社会保険の対象になる

定期的な改定や金銭以外も計算に含むなど、細かい注意点があるため、正しい理解が必要です。

社会保険料率の改定

社会保険料率は、種類や居住する都道府県によって変動があります。たとえば、協会けんぽの健康保険料率は、会社がある都道府県によって異なります。

さらに、健康保険や介護保険の保険料率は、定期的に改定があるためその度に変動があることも覚えておきましょう。通常、健康保険料率や介護保険料率は毎年2月に見直しを行い、3月分(4月納付分)から改定されます。

なお、厚生年金保険料は、2017年9月(10月納付分)以降の保険料率は、一律18.300%です。このように、毎年改定される保険料もあれば固定されている保険料もあるため、事業主や担当者は、改定情報に留意して正しい保険料率で計算することが大切です。

賞与も社会保険の対象になる

社会保険料は毎月の給与だけでなく、賞与(ボーナス)も対象です。賞与から天引きされる保険料は、標準賞与額に健康保険料率・厚生年金保険料率を掛けて算出されます。40歳以上は、介護保険料率を掛けて算出されます。

社会保険の対象となる賞与に該当するのは、支給回数が年3回以下のものです。金銭での報酬だけではなく、自社製品など現物で支給されるものも含まれるので注意しましょう。

賞与にかかる各種社会保険料の計算式は、以下のとおりです。

賞与にかかる社会保険料の計算式

賞与にかかる健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率 ÷ 2
賞与にかかる厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率 ÷ 2
賞与にかかる介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率 ÷ 2

賞与についての詳細は別記事「賞与(ボーナス)の仕組みとは?決め方や計算方法を解説」をあわせてご確認ください。

社会保険の手続きや保険料の計算をラクにする方法


従業員の入退社時の手続きや保険料の計算が煩雑でお困りではありませんか?

こうした手続きはfreee人事労務を使うことで、効率良く行えます。

社会保険料の計算含む、給与計算事務全体を効率化

freee人事労務給与計算

freee人事労務では、従業員情報や最新の料率にもとづいて、社会保険の計算をミスなく効率的に行えます。

また、勤怠管理をクラウド上で行うことで、勤怠データをリアルタイムに集計でき、ワンクリックで給与計算・給与明細の発行が完了します。

気になった方は是非freee人事労務をお試しください。

まとめ

社会保険料は、標準報酬月額から各保険料率を掛け合わせることで算出できます。また、介護保険のように40歳以上になってから加入する保険もあるので覚えておきましょう。

社会保険料は従業員の収入や年齢、扶養家族の有無によって異なるので、新卒入社の社員であっても全員が一律同じ保険料ということにはなりません。

また、法改正などさまざまな要因で保険料率や加入対象も変動するため、正しい保険料を計算できるように、被保険者や法改正の情報を収集することが大切です。

よくある質問

社会保険料の計算に必要な標準報酬月額とは?

給与などの平均額を等級に分類したもので、社会保険料の計算に使用されます。社会保険料のうち、健康保険料と厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料は企業と折半して納付します。

詳しくは記事内「社会保険の計算に必要な標準報酬月額とは」をご覧ください。

社会保険料の計算方法は?

社会保険料は、標準報酬月額を使用し、各社会保険に設定された保険料率をもって計算します。標準報酬月額に保険料率を掛け、さらに2で割ることで具体的な金額を算出できます。

詳しくは記事内「社会保険料の計算方法」をご覧ください。

人事労務のすべてをfreeeひとつでシンプルに

freee人事労務は、入社手続きで取得した従業員ごとの保険料・税金と、打刻情報とを紐づけて自動で給与計算し、給与明細も自動で発行します!

ぜひ一度ご覧ください!