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社会保険料まとめ!計算方法から社会保険料控除まで徹底解説

最終更新日:2023/08/18

社会保険料まとめ!計算方法から社会保険料控除まで徹底解説

社会保険料とは、5つの社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険)にかかる保険料のことです。保険によって料率(%)が異なります。

少子化対策の財源としても話題に上がる「社会保険料」ですが、社会保険料が上がると私たちの生活にどのように影響があるのでしょうか。

本記事では、そもそも社会保険とは何か、また令和5年度(2023年度)の社会保険料の計算方法まで分かりやすく解説します。

目次

社会保険料の計算や手続きを安心・確実に

freee人事労務なら、従業員情報や勤怠データを基に自動で給与計算します。一人ひとりに合わせた社会保険料や雇用保険料、所得税を自動で計算するのでミスなく安心です。

社会保険料とは

社会保険料とは、5つの社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険)にかかる保険料のことです。

狭義では、健康保険料と介護保険料、厚生年金保険料をまとめて社会保険料と呼び、雇用保険料と労災保険料をまとめて労働保険料と呼ぶこともあります。


社会保険の広義と狭義のイメージ

社会保険は、被保険者が病気や怪我、出産や労働災害などの理由により休職、もしくは失業し収入が途絶えてしまった場合に、生活を保障する公的な保険制度です。

社会保険を適用している会社に勤める従業員で条件を満たす場合、必ず社会保険に加入する必要があります。

企業に属している従業員が保険料を負担する必要があるのは、5つの社会保険のうち健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険です。労災保険に関しては従業員の負担はなく、会社が全額納付します。

月々の給与から差し引くことによって納められる社会保険料は、課税対象額から外されることで「社会保険料控除」が適用されます。社会保険料控除とは、1年間に支払った社会保険料のうち、給料から天引きされるもの以外のものを所得から控除する制度です。

被保険者だけでなく、配偶者や子どもの社会保険料を支払っている場合も、年末調整の際に社会保険料控除が適用されます。国民年金保険料や健康保険料を支払う際には、忘れずに申告するようにしましょう。

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社会保険とは? 雇用保険との内容や加入条件の違いについて解説
年末調整における社会保険料控除とは

社会保険料の計算方法

社会保険料の中で、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料は企業と折半するかたちで納付します。なお、社会保険料の計算には「標準報酬月額」が使用されます。

標準報酬月額とは、給与等の平均額をキリの良い数字に区分した等級表に当てはめたものです。

ここでは、各保険料の計算方法を解説します。雇用保険料と標準報酬月額について詳しく知りたい方は以下の記事をあわせてご確認ください。

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雇用保険料とは?雇用保険料の計算方法や対象について解説

健康保険料の計算方法

健康保険料は以下の計算式で算出できます。

健康保険料の計算式

・健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率
・従業員が負担する健康保険料 = 健康保険料 ÷ 2

従業員が負担する健康保険料は企業と折半になるため、「健康保険料 ÷ 2」をすることで、従業員の負担分を算出できます。

健康保険には「健康保険組合」と「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の2種類があります。健康保険組合は、常時700人以上の従業員がいる事業所や、同種・同業の事業所が集まり3,000人以上の従業員がいる事業所が、厚生労働大臣の許可を受けてそれぞれ健康保険組合を設立・運営しています。

一方、協会けんぽは、元々は国が運営していた健康保険事業を引き継いで設立された公法人です。健康保険組合を設立していない事業所が加盟対象となり、主に中小企業が加盟しています。

健康保険料の計算例

保険料は、協会けんぽも健康保険組合も標準報酬月額に応じて変動します。協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに設定されていますが、健康保険組合の保険料率は、各組合の規約ごとに異なります。

ここでは、協会けんぽの健康保険料の計算例を解説します。自分で保険料を計算する場合は、協会けんぽのホームページから該当する都道府県の保険料率を確認してください。


出典:全国健康保険協会「令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)」

健康保険料の計算例

例:標準報酬月額30万円、東京都で協会けんぽに加入している場合


  • 保険料率:10.00%
  • 300,000 × 10.00% ÷ 2 = 15,000円
出典:全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額」

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料も健康保険料と同様に、標準報酬月額から保険料率を掛けることで算出できます。

厚生年金保険料の計算式

・厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 18.300%
・従業員が負担する厚生年金保険料 = 厚生年金保険料 ÷ 2


※2017年9月(10月納付分)以降の厚生年金保険料率は、18.300%で固定されました。

厚生年金保険料の計算例

具体的な厚生年金保険料の計算例は以下の通りです。

厚生年金保険料の計算例

例:標準報酬月額30万円、協会けんぽに加入している場合


  • 保険料率:18.300%
  • 300,000 × 18.300% ÷ 2 = 27,450円
出典:全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額」

介護保険料の計算方法

介護保険料は次の計算式で求めます。

介護保険料の計算式

・介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率
・従業員が負担する介護保険料 = 介護保険料 ÷ 2

介護保険料率は毎年改定されて、2023年3月分(5月1日納付期限分)からの介護保険料率は全国一律で1.82%です。

なお、介護保険料の納付が発生するのは、40歳以上の従業員のみです。それに伴い、従業員本人の介護保険への加入も40歳からとなります。40〜64歳(第2号被保険者)は、健康保険料に上乗せする形で介護保険料も納めます。65歳以上(第1号被保険者)は、会社勤めであっても自身が暮らしている市区町村に介護保険料を納める必要があります。

介護保険料の計算例

介護保険料の計算例は以下の通りです。

介護保険料の計算例

例:標準報酬月額30万円の介護保険料


  • 保険料率:1.82%
  • 300,000 × 1.82% ÷ 2 = 2,730円
出典:全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」

社会保険の計算に必要な標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、従業員の給与などの平均額を等級に分類したものをいいます。また、健康保険料と介護保険料は1〜50の等級で分類され、厚生年金保険料は1〜32等級で分類されるという違いがあります。

毎年4月〜6月の賃金をベースに決定し、毎年9月に改定が行われ、原則1年間同じ標準報酬月額で保険料を計算します。標準報酬月額によって、社会保険料の計算を簡単にすることができるのです。


出典:全国健康保険協会「あなたの標準報酬月額はいくら?」

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標準報酬月額とは?決め方や変更方法、計算方法をわかりやすく解説

標準報酬月額の対象賃金

標準報酬月額は基本給だけではなく、労働の対象となる給与や諸手当が含まれます。対象となる給与と手当は以下のとおりです。

<標準報酬月額の対象>

  • ・基本給
  • ・残業手当
  • ・家族手当
  • ・住宅手当
  • ・役職手当
  • ・通勤手当
  • ・年4回以上の賞与

残業手当も標準報酬月額に含まれるため、標準報酬月額を算出する4月〜6月の間に他の月よりも残業を多くしてしまうと、その分標準報酬月額が上がり、保険料も上がってしまうので注意が必要です。

逆に標準報酬月額に含まれないものは以下があります。

<標準報酬月額の対象外>
  • ・祝い金、見舞金
  • ・出張旅費
  • ・年3回以下の賞与などの臨時に支給されるもの
  • ・退職手当

標準報酬月額は定期収入ではない一時的、臨時的な収入は該当しません。この代表例として賞与が挙げられますが、年に4回以上の賞与となると定期収入とみなされて標準報酬月額に含まれてしまいます。

また、出張などで発生する出張旅費も通勤費と違い不定期に発生するため、一時的に支払われるものと見なされ標準報酬月額には含まれません。

標準報酬月額を見直す算定基礎届

社会保険に加入している従業員がいる事業所は、毎年6月に標準報酬月額を見直す必要があります。その見直した内容を記載した書類を「算定基礎届」といいます。

この算定基礎届は毎年7月10日までに、日本年金機構の事務センターか、管轄の年金事務所へ提出しなければなりません。これを定時決定といいます。

freee人事労務では、複雑な定時決定の手続き(算定基礎届の作成)も、自動で簡単に行うことができます。もちろん、社会保険料の自動計算も行い、給与額や従業員の年齢などに基づいて健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料を自動で計算できます。


【関連記事】
社会保険料の標準報酬月額とは? 決め方や改定のタイミング

新入社員の標準報酬月額の決め方

新入社員の場合は、給与の実績がないため標準報酬月額を算出することができません。この場合、見積給与を算出し、標準報酬月額を決定します。基本給や通勤手当などの固定給与に、残業代などの変則的な給与を見積もりで算出し加え、1ヶ月分の見積給与を出します。

算出した見積給与を標準報酬月額に当てはめて、新入社員の社会保険料を計算します。この見積給与に基づいて算出された標準報酬月額は8月まで適用され、9月からは4月〜6月の実際の給与に基づいた標準報酬月額が適用されます。

通勤手当を多くもらっている新入社員は標準報酬月額の等級が上がる場合があるため、新入社員同士でも社会保険料の金額が異なることもあります。

標準報酬月額が年度の途中で変わる場合

9月以後の年度の途中であったとしても、標準報酬月額を改定する場合があります。その条件は、基本給や家族手当などの固定賃金の変動があり、その月から連続する3ヶ月の賃金の平均が、現在適用されている標準報酬月額と2等級以上の差が発生した場合です。

逆にいうと、1等級の差があった場合は改定する必要はなく、翌年度の7月10日に算定基礎届を提出します。

年度の途中で標準報酬月額を改定することを、随時改定と呼びます。随時改訂の際には「被保険者報酬月額変更届」を日本年金機構の事務センター、もしくは管轄の年金事務所に提出する必要があり、社会保険料も変わります。

【関連記事】
月額変更届とは? 標準報酬月額の随時改定の条件や月額変更届の書き方・提出方法

社会保険料率の改定

社会保険料率は、種類やお住まいの都道府県によって変動があります。たとえば、協会けんぽの健康保険料率は、会社がある都道府県によって異なります。

さらに、健康保険や介護保険の保険料率は、定期的に改定があるためその度に変動があります。なお、厚生年金保険料は、2017年9月(10月納付分)以降の保険料率は18.300%で固定されています。

賞与も社会保険の対象になる

社会保険料は、毎月の給与だけではなく、賞与(ボーナス)も対象となります。賞与から天引きされる保険料は、標準賞与額に健康保険料率、厚生年金保険料率、40歳以上は介護保険料率を掛けて決まります。

社会保険の対象となる賞与とは、年3回以下の回数で支給されるものをいいます。金銭での報酬だけではなく、自社製品など現物で支給されるものも含まれるので注意しましょう。

標準賞与額とは

標準賞与額とは、賞与の報酬額の1,000円未満の端数を切り捨てた額のことで、この金額を元にして社会保険料を計算します。

たとえば、賞与の支給総額が316,540円の場合、1,000円未満になる540円を切り捨て、標準賞与額は316,000円になります。この標準賞与額から健康保険料率と厚生年金保険料率、40歳以上の方であれば介護保険料率を掛けて保険料を算出します。

それぞれの計算式

  • 賞与にかかる健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率 ÷ 2
  • 賞与にかかる厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率 ÷ 2
  • 賞与にかかる介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率 ÷ 2

なお、標準賞与額には上限が定められており、健康保険は年度累計で573万円、厚生年金保険は年度累計で150万円です。

【関連記事】
賞与とは? 社会保険料や源泉所得税の計算方法も解説

まとめ

社会保険料は、標準報酬月額から各保険料率を掛けることで算出されます。また、介護保険のように40歳以上になってから加入する保険もあります。

社会保険料は従業員の収入や年齢によって異なるので、新卒入社の社員であっても全員が一律同じ保険料ということではありません。また、法改正などのさまざまな要因で保険料率や加入対象も変動するため、正しい保険料を計算できるように、被保険者や法改正の情報を収集することが大切です。

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freee人事労務 従業員情報の入力画面

入社時の資格取得届の作成が可能

加入義務の事実が発生してから5日以内に、該当従業員の健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を提出する必要があります。被扶養者がいるときは、健康保険被扶養者(異動) 届・国民年金第3号被保険者にかかる届出書も作成します。

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よくある質問

社会保険料とは?

社会保険料とは、5つの社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険)にかかる保険料のことです。狭義では、健康保険料と介護保険料、厚生年金保険料をまとめて社会保険料と呼び、雇用保険料と労災保険料をまとめて労働保険料と呼ぶこともあります。詳しくは社会保険料をご覧ください。

社会保険料の計算方法は?

社会保険料の中で、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料は企業と折半するかたちで納付します。なお、社会保険料の計算には「標準報酬月額」が使用されます。詳しくは社会保険料の計算方法で解説しているのでご覧ください。

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