社会保険料とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の5つの社会保険にかかる保険料のことです。保険の種類や保険者、収入、年齢などによって税率(%)が異なります。
当記事では、社会保険料の計算方法・加入条件・計算時の注意点などについて、わかりやすく解説します。
目次
社会保険料とは
そもそも社会保険料とは、5つの社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険)にかかる保険料のことです。
厳密には、健康保険料と介護保険料、厚生年金保険料をまとめて社会保険料と呼び、雇用保険料と労災保険料をまとめて労働保険料と呼びます。
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社会保険の計算に必要な標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、従業員の給与などの平均額を等級に分類したものです。また、健康保険料と介護保険料は1〜50の等級で分類され、厚生年金保険料は1〜32等級で分類されます。
毎年4月〜6月の賃金をベースに決定し、毎年9月に改定が行われ、原則1年間同じ標準報酬月額で保険料を計算します。標準報酬月額によって、社会保険料の計算を簡単にすることができるのです。
出典:全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?」
標準報酬月額についての詳細は別記事「標準報酬月額とは?決め方や変更方法、計算方法をわかりやすく解説」をあわせてご確認ください。
社会保険料の計算方法
社会保険料の中で、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料は企業と折半するかたちで納付します。なお、社会保険料の計算には、上述した「標準報酬月額」が使用されます。
ここでは、企業と折半するかたちで納付する、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の計算方法について解説します。雇用保険料の計算方法についての詳細は別記事「雇用保険料とは?雇用保険料の計算方法や対象について解説」をあわせてご確認ください。
健康保険料の計算方法
健康保険料は、以下の計算式で算出します。
健康保険料の計算式
健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率
従業員が負担する健康保険料 = 健康保険料 ÷ 2
従業員が負担する健康保険料は企業と折半になるため、「健康保険料 ÷ 2」で計算することで、従業員の負担分を算出します。
健康保険には「健康保険組合」と「全国健康保険協会(協会けんぽ)」の2種類があり、健康保険組合は、厚生労働大臣の許可を受けて設立・運営しています。
なお、健康保険組合を設立・運営するのは、常時700人以上の従業員がいる事業所や、同種・同業の事業所が集まり3,000人以上の従業員がいる複数の事業所です。
一方、協会けんぽは、国の運営する健康保険事業を引き継ぐかたちで設立された公法人を指します。健康保険組合を設立していない事業所が加盟対象となり、主に中小企業が加盟しています。
健康保険料の計算例
保険料は、協会けんぽも健康保険組合も標準報酬月額に応じて変動します。協会けんぽの保険料率は都道府県ごとに決められていますが、健康保険組合の場合は、各組合の規約ごとに保険料率が異なります。
以下では、協会けんぽの健康保険料の計算例を解説します。自分で保険料を計算する場合は、協会けんぽのホームページから該当する都道府県の保険料率を確認してください。
出典:全国健康保険協会「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」
例:標準報酬月額30万円、東京都で協会けんぽに加入している場合
保険料率:9.98%
300,000 × 9.98% ÷ 2 = 14,970円
出典:全国健康保険協会「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額(東京都)」
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料も健康保険料と同様に、標準報酬月額から保険料率を掛けることで算出できます。
厚生年金保険料の計算式
厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 18.300%
従業員が負担する厚生年金保険料 = 厚生年金保険料 ÷ 2
※2017年9月(10月納付分)以降の厚生年金保険料率は、18.300%で固定されました。
厚生年金保険料の計算例
具体的な厚生年金保険料の計算例は、以下のとおりです。
例:標準報酬月額30万円、協会けんぽに加入している場合
保険料率:18.300%
300,000 × 18.300% ÷ 2 = 27,450円
出典:全国健康保険協会「令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額(東京都)」
厚生年金保険料についての詳細は別記事「厚生年金とは?総まとめ!制度と計算方法を分かりやすく解説」をあわせてご確認ください。
介護保険料の計算方法
介護保険料は、以下の計算式で求めます。
介護保険料の計算式
介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率
従業員が負担する介護保険料 = 介護保険料 ÷ 2
介護保険料率は毎年改定されて、2024年4月分(4月30日納付期限分)からの介護保険料率は全国一律で1.60%です。
なお、介護保険料の納付が発生するのは、40歳以上の従業員のみです。それに伴い、従業員本人の介護保険への加入も40歳からとなります。
40〜64歳(第2号被保険者)は、健康保険料に上乗せする形で介護保険料も納めます。65歳以上(第1号被保険者)は、会社勤めであっても自身が暮らしている市区町村に介護保険料を納める必要があります。
介護保険料の計算例
介護保険料の計算例は、以下のとおりです。
2024年10月から社会保険料の加入条件が拡大
2024年9月末までの社会保険の加入対象は、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業で週20時間以上勤務する短時間労働者です。
しかし、2024年10月から加入要件が拡大され、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業に勤務し要件を満たす短時間労働者は、社会保険加入が義務付けられます。
また、社会保険料の加入が義務付けられる企業のことを「特定適用事業所」といいます。
特定適用事業所で勤務する短時間労働者で、社会保険加入が義務付けられる要件は以下のとおりです。
短時間労働者の社会保険加入対象条件
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
出典:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」
社会保険料を計算する上での注意点
社会保険料の計算にあたって注意すべき点は、以下の2つです。
- 社会保険料率の改定
- 賞与も社会保険の対象になる
社会保険料率の改定
社会保険料率は、種類や居住する都道府県によって変動があります。たとえば、協会けんぽの健康保険料率は、会社がある都道府県によって異なります。
さらに、健康保険や介護保険の保険料率は、定期的に改定があるためその度に変動があることも覚えておきましょう。なお、厚生年金保険料は、2017年9月(10月納付分)以降の保険料率は、一律18.300%です。
賞与も社会保険の対象になる
社会保険料は毎月の給与だけでなく、賞与(ボーナス)も対象です。賞与から天引きされる保険料は、標準賞与額に健康保険料率・厚生年金保険料率、40歳以上は介護保険料率を掛けて決まります。
社会保険の対象となる賞与には、年3回以下で支給されるものが該当します。金銭での報酬だけではなく、自社製品など現物で支給されるものも含まれるので注意しましょう。
賞与にかかる各種社会保険料の計算式は、以下のとおりです。
賞与にかかる社会保険料の計算式
賞与にかかる健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率 ÷ 2
賞与にかかる厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率 ÷ 2
賞与にかかる介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率 ÷ 2
賞与についての詳細は別記事「賞与(ボーナス)の仕組みとは?決め方や計算方法を解説」をあわせてご確認ください。
まとめ
社会保険料は、標準報酬月額から各保険料率を掛け合わせることで算出できます。また、介護保険のように40歳以上になってから加入する保険もあるので覚えておきましょう。
社会保険料は従業員の収入や年齢、扶養家族の有無によって異なるので、新卒入社の社員であっても全員が一律同じ保険料ということにはなりません。
また、法改正などさまざまな要因で保険料率や加入対象も変動するため、正しい保険料を計算できるように、被保険者や法改正の情報を収集することが大切です。
よくある質問
標準報酬月額とは?
給与などの平均額を等級に分類したもので、社会保険料の計算に使用されます。社会保険料の中で、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料・雇用保険料は企業と折半するかたちで納付します。
詳しくは記事内「社会保険の計算に必要な標準報酬月額とは」をご覧ください。
社会保険料の計算方法は?
社会保険料は、標準報酬月額を使用し、各社会保険に設定された保険料率をもって計算します。標準報酬月額に保険料率を掛け、さらに2で割ることで具体的な金額を算出できます。
詳しくは記事内「社会保険料の計算方法」をご覧ください。