人事労務の基礎知識

社会保険料の標準報酬月額とは? 決め方や改定のタイミング

最終更新日:2021/05/24

社会保険料の標準報酬月額とは

社会保険料には厚生年金保険料や健康保険料・介護保険がありますが、この社会保険料は「標準報酬月額」を基にして算出されます。では「標準報酬月額」はどのように決めるのかご存知でしょうか?

この記事では、標準報酬額月額の基礎から実際の標準報酬月額の決め方まで、さまざまなケースも含めてご説明します。[監修:山本 務(特定社会保険労務士)]

目次

社会保険の手続きや保険料の計算がラクに

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標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、社会保険料を計算しやすくするために報酬月額の区分(等級)ごとに設定されている計算用の金額のことです。この区分は、4月から6月の3ヶ月間の給与など(通勤手当を含む)の支給額平均に基づいて決定されます。これを「定時決定」といいます。

定時決定によって算出された標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月まで1年間使用されます。もし被保険者の給与が昇給や減給などにより、大きく変動した場合には、「随時改定」という変更の仕組みが設けられています。

報酬月額に応じて、厚生年金の場合は31段階、健康保険の場合は50段階の等級に区分されており、それを表にしたものが「標準報酬月額等級表」です。実際に支給されている報酬の額と、社会保険料や保険給付の算定に用いられる標準報酬月額とは完全に一致しないという点に注意が必要です。

参考:
全国健康保険協会|令和2年度保険料額表(令和2年9月分から)
日本年金機構|保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)

社会保険料の計算方法

健康保険の保険者(運営主体)には、「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と「健康保険組合」の2つがありますが、この記事では全国健康保険協会(協会けんぽ)について説明します。社会保険料は、標準報酬月額に定められた乗率を掛けた金額で計算されます。

例を挙げると、報酬月額が25万円の場合、25万円以上27万円未満の区分の等級に該当し、標準報酬月額は26万円となります。そのため、社会保険料の計算を行うときは、26万円に保険料率を掛けて計算されます。

【例】東京都の会社に勤務する報酬月額25万円の人の場合(令和2年3月分,4月納付〜)

  • 厚生年金保険料=標準報酬月額(26万円)×保険料率(18.300%)
  • 健康保険料=標準報酬月額(26万円)×保険料率(9.87%)
  • 介護保険料(40~64歳の人の健康保険料に上乗せ)=標準報酬月額(26万円)×保険料率(1.79%)

上記の式によって計算された保険料額を、会社と被保険者が折半負担します。健康保険と厚生年金保険の標準報酬月額と等級ごとの保険料額の一覧表は、令和2年 協会けんぽのホームページから確認することができます。(※協会けんぽの保険料率は都道府県別に異なるため、都道府県ごとに標準報酬月額表が用意されています。)

参考:全国健康保険協会|令和2年度保険料額表(令和2年9月分から)

料率の見直しは、厚生年金保険料率は9月に、健康保険料率はおおむね3月に行われるので、給与計算の際には最新のものを確認しておきましょう。 なお、厚生年金保険料率は、平成29年9月分(10月納付分)から18.3%で固定され、一般と坑内員・船員の区別がなくなっています。

【関連記事】
会社設立時には社会保険加入が必須!準備すべき書類とその作成方法まとめ

標準報酬月額の算定の基礎となる報酬

標準報酬月額を算定する際の報酬には、基本給以外にも定期的に支払われる交通費(通勤手当)や時間外手当など、会社から受け取る労働の対価となるもの全てが計算に含まれます。

ただし、基本給や通勤手当、家族手当などの固定的給与と、時間外手当や休日手当など勤務の状態に応じて発生する非固定的給与は、報酬の大幅な変動による等級変更(随時改定)において取り扱いが異なるため、区分しておく必要があります。

通勤手当については、課税非課税を問わず報酬に含まれます。通勤手当以外にも、通貨以外の現物で支給される食事代や社宅・寮費相当額についても、都道府県ごとに決められた金額で換算し、標準報酬月額の計算の対象となります。ただし、本人から3分の2以上徴収している食費や社宅費、勤務に必要な作業服などの支給分は、報酬に含まれません。(参照:日本年金機構

賞与については、年3回以下支給の場合、1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に対して別途保険料が徴収されるため、報酬には含まれません。年4回以上支給される賞与の場合には、経常的に支払われる報酬の扱いとなります。

そのほか、報酬に含まれないものは、出張旅費などの立て替え金や、恩恵的に支給される慶弔見舞金、臨時に受け取る大入り袋などがあります。労災保険の休業補償、傷病手当金などの社会保険給付も報酬の対象外です。

金銭(通貨)で支給されるもの 現物で支給されるもの
報酬となるもの ・基本給(月給・週給・日給など)
・能率給
・奨励給
・役付手当
・職階手当
・特別勤務手当
・勤務地手当
・物価手当
・日直手当
・宿直手当
・家族手当
・扶養手当
・休職手当
・通勤手当
・住宅手当
・別居手当
・早出残業手当
・継続支給する見舞金
・年4回以上の賞与 など
・通勤定期券
・回数券
・食事
・食券
・社宅
・寮
・被服(通勤服でないもの)
・自社製品 など
報酬とならないもの ・大入袋
・見舞金
・解雇予告手当
・退職手当
・出張旅費
・交際費
・慶弔費
・傷病手当金
・労災保険の休業補償給付
・年3回以下の賞与(標準賞与額の対象になります)など
・制服、作業着(業務に要するもの)
・見舞品
・食事(本人の負担額が厚生労働大臣が定める価額により算定した額の2/3以上の場合)など

引用元:日本年金機構|算定基礎届の記入・提出ガイドブック 令和2年度

標準報酬月額が決定される時期と方法

標準報酬月額の決定・改定時期は5つあり、それぞれ届出が必要です。

  • 新たに被保険者資格を取得したときに行われる「資格取得時決定」
  • 年1回の「定時決定」
  • 報酬額が大幅に変動した際に行われる「随時改定」
  • 「産前産後休業終了時改定」
  • 「育児休業等終了時改定」
これらの変更により、報酬に応じた保険料額となるように調整されます。以下では、それぞれの標準報酬月額の決定・改定時期について見ていきます。

資格取得時決定

入社などによって、新たに社会保険の被保険者資格を取得したときに資格取得時決定を行います。標準報酬月額は、資格取得時点での報酬を基準に月額換算して決定されます。決定された額は、その年の8月まで適用されます。

「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」には、1ヶ月当たりの報酬の見込額を記入します。

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届について知りたい方は、『健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届の提出方法と実務における注意点』の記事をご覧ください。

定時決定

毎年4月から6月の3ヶ月間の報酬の月平均額により、その年の9月1日以降1年間の標準報酬月額が決定されます。

業務の性質上、季節により繁閑の差が激しく、4月から6月の平均による標準報酬月額と、前年の7月から当年の6月までの年間平均による標準報酬月額の間に2等級以上の差が例年生じる場合には、被保険者の同意を得て申し立てることにより、年間平均により手続きを行うことが可能です。

標準報酬月額を計算する際は、4月から6月の報酬支払い日数が17日以上ある月分の報酬平均が用いられます。報酬支払基礎日数が17日未満(短時間労働者で被保険者になっている人は11日未満)の月がある場合は、その月を除いて標準報酬月額が決定されます。

定時決定は、7月10日までに日本年金機構の各都道府県の事務センターまたは管轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届」を提出することにより決定されます。

厚生年金基金や企業年金基金、健康保険組合に加入している事業所は、そちらにも、それぞれ決められた様式で届けを提出する必要があります。

算定基礎届は、7月1日時点での社会保険加入者全員について届出が必要ですが、6月1日以降に資格を取得した人や、7月からの月額変更に該当する場合は対象外となります。

算定基礎届について知りたい方は、『【2020年最新版】算定基礎届とは? 定時決定から算定基礎届の作成方法までわかりやすく解説』の記事をご覧ください。

随時改定(月額変更)

下記で紹介する3つの条件に当てはまった場合は、随時改定を行う必要があります。

・昇給あるいは減給などにより賃金が大幅に増減した場合
報酬は、大きく固定的賃金と非固定的賃金に分けられます。労働時間や能力などに関係なく、毎月一定の金額が支払われる賃金を固定的賃金といい、労働時間や能力に応じて支払われる賃金を非固定的賃金といいます。もし固定的賃金の金額が大きく変動した場合には、随時改定をする必要があります。

・継続した3ヶ月間の月平均額が2等級以上変動した場合
固定的賃金の金額が大きく変動した月と、その後2ヶ月の固定的賃金を合わせた3ヶ月の報酬月額の平均金額が、変動前の月平均額と比較して2等級以上変動した場合は、随時改定の手続きをする必要があります。

・連続する3ヶ月間の報酬支払基礎日数が17日以上の場合
固定的賃金が変動した月と、その後2ヶ月の固定的賃金を合わせた3ヶ月の報酬支払基礎日数が17日以上(短時間労働者で被保険者になっている人は11日以上)の場合は、随時改定の手続きをします。

上記に該当する従業員がいるときは、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」の提出をしましょう。

【関連記事】
月額変更届とは? 標準報酬月額の随時改定の条件や月額変更届の書き方・提出方法

産前産後休業終了時改定

産前産後休業が終了し、職場に復帰後3ヶ月の報酬の月平均額から算出した報酬月額が、休業前と比べて1等級以上差が発生する場合には、「健康保険・厚生年金保険産前産後休業終了時報酬月額変更届」の提出により標準報酬月額の改定が可能です。

ただし、報酬支払基礎日数が17日未満(短時間労働者で被保険者になっている人は11日未満)の月は除いて計算します。

健康保険・厚生年金保険産前産後休業終了時報酬月額変更届について知りたい方は、『産前産後休業や育児休業を従業員が取得する際の手続き』の記事をご覧ください。

育児休業終了時改定

育児休業などが終了し、休業終了後3ヶ月の報酬の月平均額から算出した報酬月額が、休業前と比べて1等級以上差が発生する場合には、「健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出をすることで標準報酬月額の変更が可能です。

ただし、報酬支払基礎日数が17日未満(短時間労働者で被保険者になっている人は11日未満)の月は除いて計算します。

日本年金機構|育児休業等終了時報酬月額変更届

まとめ

標準報酬月額の算定の基礎となる報酬には含むべき給与や手当、含まれない手当や給付金などがあり、紛らわしい点も多くあります。標準報酬月額の決定・改定時の手続きはもちろん、給与計算時には給与額の変動により月額変更が発生していないかどうかについても、漏れがないように確認しましょう。

監修:山本務 <やまもと つとむ>
(特定社会保険労務士)

やまもと社会保険労務士事務所、代表の山本です。労働相談、あっせん代理、労務環境調査、行政調査対応、人事労務管理、就業規則の作成・見直し、労働保険・社会保険の電子申請、給与計算、助成金申請支援など幅広く展開しています。

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