人事労務の基礎知識

社会保険料の標準報酬月額とは

社会保険料には厚生年金保険料や健康保険料などがありますが、保険料は「標準報酬月額」から算出されます。ではこの「標準報酬月額」、どのように決めるかご存知でしょうか?今回は、標準報酬額月額の基礎をはじめ、実際の標準報酬月額の求め方をさまざまなケースも含めてご説明します。

標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、報酬額区分(等級)ごとに設定されている計算用の金額で、4~6 月の3ヶ月間の給与等(通勤手当を含む)の支給額平均に基づいて決定されます。これを「定時決定」といいます。定時決定によって算出された標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月まで1年間使用されます。 給与等が大きく変動した場合には「随時改定」など変更のしくみも設けられています。

報酬月額に応じて、厚生年金の場合は31段階、健康保険の場合は50段階の等級にわけて表にしたものが標準報酬月額等級表です。 実際の報酬の額と、社会保険料や保険給付の算定に用いられる標準報酬月額とは完全に一致しないという点に注意が必要です。

社会保険料の計算方法

健康保険の保険者(運営主体)には全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合がありますが、ここでは協会けんぽについて説明します。 社会保険料は、標準報酬月額に定められた乗率を掛けた金額で計算されます。 例を挙げると、報酬月額が25万円の場合、25万円以上27万円未満の区分の等級に該当し、標準報酬月額は26万円となります。そのため、社会保険料の計算を行うときは、26万円に保険料率を掛けて計算されます。

【例】東京都の会社に勤務する報酬月額25万円の人の場合(平成29年9月分〜)
  • 厚生年金保険料=標準報酬月額(26万円)×保険料率(18.300%)
  • 健康保険料=標準報酬月額(26万円)×保険料率(9.91%)
  • 介護保険料(40~64歳の人の健康保険料に上乗せ)=標準報酬月額(26万円)×保険料率(1.65%)

上記の式によって計算された保険料額を、会社と被保険者が折半負担します。
健康保険と厚生年金保険の標準報酬月額と等級ごとの保険料額の一覧表は、協会けんぽのホームページから確認することができます。(※協会けんぽの保険料率は都道府県別に異なるため、都道府県ごとに標準報酬月額表が用意されています。)

厚生年金保険料率は9月に、健康保険料率はおおむね3月に料率の見直しが行われますので、給与計算の際には最新のものを確認しておきましょう。 なお、厚生年金保険料率は、平成29年9月分(10月納付分)から18.3%で固定され、一般と坑内員・船員の区別がなくなります。

標準報酬月額の算定の基礎となる報酬

標準報酬月額を算定する際の報酬には、基本給のほか、定期的に支払われる交通費(通勤手当)や、時間外手当など、会社から受け取る労働の対価となるものについてはすべて計算に含まれます。
ただし、基本給や通勤手当、家族手当などの固定的給与と、時間外手当や休日手当など勤務の状態に応じて発生する非固定的給与は、報酬の大幅な変動による等級変更(随時改定)において取り扱いが異なるため、区分しておく必要があります。

通勤手当については、課税非課税を問わず報酬に含まれます。また、通貨以外の現物で支給される食事代や社宅費相当額についても、都道府県ごとに決められた金額で換算し、標準報酬月額の計算の対象となります。ただし、本人から3分の2以上徴収している食費や社宅費の場合、および勤務に必要な作業服などの支給分は、報酬に含まれません。(参照: 日本年金機構

賞与については、年3回以下支給の場合、1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に対して別途保険料が徴収されるため、報酬には含まれないこととなっています。年4回以上支給される賞与の場合には、経常的に支払われる報酬の扱いとなります。

そのほか、報酬に含まれないものは、出張旅費などの立て替え金や、恩恵的に支給される慶弔見舞金、臨時に受け取る大入り袋などがあります。労災保険の休業補償、傷病手当金などの社会保険給付も報酬の対象外です。

引用元:日本年金機構

標準報酬月額が決定される時期と方法

標準報酬月額の決定・改定時期は下記の5つで、それぞれ届出が必要です。これらの変更により、報酬に応じた保険料額となるように調整されます。

  • 社会保険の資格を取得したとき
  • 年1回の「定時決定」
  • 報酬額が大幅に変動した際に行われる「随時決定」
  • 「産前産後休業終了時改定」
  • 「育児休業等終了時改定」以下では、それぞれの標準報酬月額の決定・改定時期について見ていきます。

資格取得時の決定

社会保険の加入資格を得たときに決定されます。資格取得時点での報酬を基準に月額換算し、標準報酬月額が決定されます。決定された額は、その年の8月まで適用されます。
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」には、1ヶ月当たりの報酬の見込額を記入します。

定時決定

毎年4月~6月の3ヶ月間の報酬の平均により、その年の9月1日以降1年間の標準報酬月額が決定されます。業務の性質上、季節により繁閑の差が激しく、4月~6月の平均による標準報酬月額と、前年の7月から当年の6月までの年間平均による標準報酬月額の間に2等級以上の差が例年生じる場合には、被保険者の同意を得て申し立てることにより、年間平均により手続きを行うことが可能です。

標準報酬月額を計算する際は、報酬支払基礎日数が17日未満(短時間労働者で被保険者になっている人は11日未満)の月を除きましょう。

定時決定は、7月10日までに日本年金機構の各都道府県の事務センターまたは管轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届」を提出することにより決定されます。厚生年金基金や企業年金基金、健康保険組合に加入している事業所は、そちらにも決められた様式で届を提出することが必要です。

算定基礎届は、7月1日時点での社会保険加入者全員について届出が必要ですが、6月1日以降に資格を取得した人や、7月からの月額変更に該当する場合は対象外となります。

随時改定(月額変更)

昇給あるいは減給などにより報酬額が大幅に変動し、その月から連続する3ヶ月間の平均額が標準報酬等級にして2等級以上の差があった場合には、随時決定により標準報酬月額が変更されます。ただし、その連続する3ヶ月はいずれも報酬支払基礎日数が17日以上(短時間労働者で被保険者になっている人は11日以上)であることが必要です。

なお、残業手当など臨時に発生する非固定的給与の変動のみが要因の場合は変更の対象とはなりません。あくまでも固定的に支払いが決定している基本給や通勤手当、家族手当などの変動があったときが対象となります。

該当する従業員がいるときは、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」の提出が必要です。

産前産後休業終了時改定

産前産後休業が終了し、休業終了後3ヶ月の報酬の平均額から算出した報酬月額が、休業前と比べて1等級以上差が発生する場合には、「健康保険・厚生年金保険産前産後休業終了時報酬月額変更届」の提出により標準報酬月額の変更が可能です。ただし、報酬支払基礎日数が17日未満(短時間労働者で被保険者になっている人は11日未満)の月は除いて計算します。

育児休業等終了時改定

育児休業等が終了し、休業終了後3ヶ月の報酬の平均額から算出した報酬月額が、休業前と比べて1等級以上差が発生する場合には、「健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出により標準報酬月額の変更が可能です。ただし、報酬支払基礎日数が17日未満(短時間労働者で被保険者になっている人は11日未満)の月は除いて計算します。

まとめ

標準報酬月額の算定の基礎となる報酬には含むべき給与や手当、含まれない手当や給付金等があり、紛らわしい点も多くあります。標準報酬月額の決定・改定時の手続きはもちろん、給与計算時には給与額の変動により月額変更が発生していないかどうかについても、漏れがないように確認しましょう。

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