最終更新日:2021/05/31
監修 河島 桃世 特定社会保険労務士
賃金台帳は法定三帳簿の1つで、従業員を雇用している企業は適切に記載をした賃金台帳を作成し、保存することが義務付けられています。
この記事では、賃金台帳の書式や保存期間について詳しく説明します。

目次
賃金台帳とは
賃金台帳とは、従業員への給与の支払い状況を記載した書類です。
労働基準法第108条によって作成が義務付けられており、事業所ごと、あるいは事業部や事業内容が異なる会社の場合は、事業所ごとに作成・保存(労働基準法第109条)する必要があります。
法定三帳簿のひとつである賃金台帳
労働基準法で事業所に設置が義務付けられている帳簿は、賃金台帳だけではありません。
労働基準法第107条に規定されている労働者名簿や、労働基準法第108条に関わる出勤簿も設置の義務がある書類です。この賃金台帳、労働者名簿、出勤簿を総称して法定三帳簿といいます。
賃金台帳の対象
賃金台帳の対象になるのは、事業所で働くすべての従業員です。法定三帳簿のうち、労働者名簿には、日々雇い入れられる者は含まれていませんが、賃金台帳には、記載が必要となります。間違えないように注意しましょう。
また、雇用期間が1ヶ月未満の日々雇い入れられる者の場合は、賃金台帳の対象ではありますが、法定の記載項目の中に賃金計算期間を含める必要はありません。
賃金台帳と給与明細
賃金台帳は従業員への給与の支払い状況を記載した書類と説明しましたが、似たような書類に給与明細があります。実際、労働基準監督署からの要請に応じて、賃金台帳の代わりに提出したケースもあるようです。
しかし、ほとんどの場合、給与明細は賃金台帳の代わりとしては不十分です。
賃金台帳には労働時間や残業時間など、法定の項目の記載が必要ですが、給与明細には記載されていないケースが多いためです。給与明細で代用するのではなく、別途、賃金台帳を作成して保存することが重要です。
賃金台帳の保存期間と罰則について
労働基準法では、賃金台帳の作成は第108条、保存は第109条に基づき、それぞれ規定されています。賃金台帳を作成し、保存するのは事業主の義務です。ここでは、法律で定められている保存期間と作成を怠った場合の罰則についてご紹介します。
賃金台帳の保存期間
賃金台帳は、従業員の賃金を最後に記載した日から起算して3年(原則5年ですが、経過措置として現在は3年)が保存期間となります。
ただし、同じ法定三帳簿であっても、労働者名簿は退職や解雇・死亡の日から3年(原則5年ですが、経過措置として現在は3年)、出勤簿は最終出勤日もしくは最終出勤記録にかかる賃金支払日のどちらか遅い日から3年(原則5年ですが、経過措置として現在は3年)と保存期間の起算日が異なります。
保存すべき賃金台帳を誤って廃棄してしまわないように、賃金台帳に更新日を記載しておくとより安心です。
賃金台帳に関する罰則
賃金台帳の作成は事業主の義務であり、労働基準法で規定されている事項です。そのため、賃金台帳が法律に定められた基準を満たしていない場合や、そもそも賃金台帳を作成していない場合は、罰則の対象となります。労働基準法第120条によると、場合によっては30万円以下の罰金が科せられることもあります。
しかし、賃金台帳が法律の基準を満たしていないからといって、よほど悪質でない限り、すぐに罰則が適用されることはないでしょう。賃金台帳の不備が見つかった場合、一般的には労働基準監督官から自らが是正するように是正勧告書が交付されます。
是正勧告に従わない場合、監督官の判断により送検され、罰則の適用も考えられますので、是正期日までに、適正な賃金台帳を作成し、是正報告書とともに労働基準監督官に提出しましょう。
賃金台帳の書き方
賃金台帳では、以下の合計10項目を記載する必要があります。
- 労働者氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働時間数
- 深夜労働時間数
- 休日労働時間数
- 基本給や手当などの種類と額
- 控除の項目と額
賃金台帳の書式
賃金台帳の書式は特に決まっておらず、記載する項目の確認ができれば良いとされています。基本様式は、厚生労働省のホームページ「賃金台帳(常用労働者)」と「賃金台帳(日々雇い入れられる者)」からダウンロードできます。それをそまま使用するか、参考にして作成をしましょう。
賃金台帳(常用労働者)

画像引用元:厚生労働省「賃金台帳(常用労働者)」
賃金台帳(日々雇い入れられる者)

画像引用元:厚生労働省「賃金台帳(日々雇い入れられる者)」
賃金計算期間

賃金の計算対象となる期間のことです。例えば、毎月末締めの場合、10月1日~10月31日、10日締めであれば9月11日~10月10日などと記載します。
労働日数と労働時間数

賃金計算期間内の労働日数と労働時間、それぞれの合計を記載します。従業員の労働時間が適正であるかどうかを確認する重要な部分であり、労働基準監督官も調査において重点を置く部分でもあります。
休日・早出・深夜労働時間数

労働時間数のうち、休日・早出・深夜に働いた時間数のことです。労働基準法では、従業員に法定時間外労働や休日労働をさせる場合は、36協定を締結し、労働基準監督署へ届出する必要があり、割増賃金を支払わなければならないと定められています。
賃金台帳の休日・早出・深夜労働時間数は、会社が適切な労務管理を行っているかどうかを確認するために、労働基準監督官が重視する大切な部分です。
【関連記事】
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基本賃金、所定時間外割増賃金、手当、臨時の給与、賞与

賃金台帳には、給与支給額の総額ではなく、基本賃金(給)と各手当を別々に記載する必要があります。労働基準法では、基本賃金と各手当の合計額が給与となります。手当のうち、一定のルールに基づいて支払われる通勤手当、家族手当、住宅手当、子女教育手当などは、所定時間外割増賃金(所定時間外とは法定労働時間外を想定しています)の対象にはなりません。
また、労働基準監督署が調査を行う際には、給与が最低賃金を下回っていないかどうかも確認されます。給与を設定する際には、最低賃金を考慮することが大切です。
「小計(a.)」には「基本賃金」、「所定時間外割増賃金」、「各手当」の合計を記入します。「臨時の給与」、「賞与」がある場合には各項目に記入し、(a.)の小計と合算した金額を「合計」に記入します。
控除金

控除金の欄には、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料など、給与から控除される金額を記入します。賃金台帳では、各控除項目を記載します。給与に基づいて正確に控除されているかどうかを確認することが重要です。
最後に、合計から控除金を差し引いた額を実物給与に記入すれば完了です。
まとめ
賃金台帳の作成・保存は、従業員を雇用している企業の義務ですが、正しく労務管理をしていることを証明するためにも重要です。特に中小企業では、賃金台帳と給与明細が混同されているケースもありますので、法律に定められている全10項目を網羅した賃金台帳を作成するようにしましょう。
監修 河島 桃世 特定社会保険労務士
日本年金機構(旧:社会保険庁含む)に15年勤務後、社会保険労務士に。
「人事労務freee認定アドバイザー」社労士事務所。就業規則、労務問題の対応だけでなく、バックオフィス(クラウド給与計算、勤怠管理システムやテレワーク導入など)の効率化の為に積極的にIT導入支援を行っています。
行動指針でもある「私たちは”しません”5つのこと」を掲げている個性的な事務所です。

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